都電荒川線の概要
荒川線は、東京都荒川区の三ノ輪橋停留場から新宿区の早稲田停留場までを結ぶ、東京都交通局を事業主体とする東京都電車(都電)の軌道路線(路面電車)です。
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東京都交通局8810電車 |
愛称は、「東京さくらトラム」(2017年4月28日決定)。駅ナンバリングで使われる路線記号は、「SA」となります。2017年11月下旬から順次導入されています。
かつて東京都23区内を中心に、ピーク時で40路線を展開していた都電路線が廃止された後、唯一現存する路線です。東京都23区内で営業を行う軌道線は、AGTである日暮里・舎人ライナーおよびゆりかもめの軌道扱いの区間を除外すると、当線と東急世田谷線のみとなっています。
当線の大部分は専用軌道となっており、自動車道路と重なる併用軌道区間は約1.7キロメートル(全区間の14%)です。併用軌道は明治通り(国道122号)上の王子駅前
- 飛鳥山間と小台 - 熊野前間のみで、後者においては道路中央の区分された空間に軌道を敷設するセンターリザベーション方式が採用されているため、車道と区分されていないのは前者のみです。
当線は、王子電気軌道によって敷設された路線を東京市(現・東京都)が買収したものを端緒とし、都電27系統(三ノ輪橋 - 赤羽)ならびに32系統(荒川車庫前
- 早稲田)と称して2路線別箇に運行していた>。この経緯から、王子電気軌道以来の利用客の中には、いまだ「王子電車」(「王電」)と呼称する者もいる。
1960年代の交通渋滞深刻化への対策ならびに赤字公共事業整理、都営地下鉄整備の費用負担を背景に、東京都は1967年から都電を相次ぎ廃止しています。現在の荒川線の区間についても、第1次財政再建計画において27系統は1970年度、32系統は1971年度に廃止する予定だった。しかし、路線の9割が専用軌道で自動車通行への支障が少ないことと、当路線とほぼ並行している明治通りの渋滞が恒常的で路線バス(都営バス)による運行代替では定時運行が困難であると判断されます。
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三ノ輪橋停留場に入線する8810電車 |
また路線全体に並行する適当な道路がなく、代替輸送にあたり軌道敷を道路化することによる排気ガス・騒音等の自動車公害も懸念され、沿線住民を中心とする利用客からも当線の存続要望が強かった。
当路線は大半が専用軌道であるゆえに交通渋滞を引き起こすことがまれであり、路線の管理も比較的容易であることが勘案され、1972年11月12日までに都電路線のほとんどが廃止された後も、当路線は北本通り上にあった27系統の一部(王子駅前
- 赤羽間)が代替輸送可能として廃止されたのみで、大部分が存続しています。
1974年には撤去計画が撤回され、それまで別系統として運行されていた27系統と32系統を統合し、新たな案内上の統一路線名として「荒川線」の名称が制定されています。
なお、元々の線籍上の正式路線名は、三河島線(三ノ輪橋 - 熊野前)、荒川線(熊野前 - 王子駅前)、滝野川線(王子駅前 - 大塚駅前)、早稲田線(大塚駅前
- 早稲田)と4つに分かれており、系統の統合後も長らく『鉄道要覧』では4つの路線名が記載されていました。1995年(平成7年)度版の『鉄道要覧』より、線籍上の正式路線名も「荒川線」に統一されています。
廃止区間となった旧27系統王子駅前 - 赤羽間(赤羽線)については、ほぼ同じルートに代替として都営バス王57系統が設定されています。旧27系統終点の「赤羽」停留場は、JR東日本の赤羽駅付近ではなく、現在の東京メトロ南北線赤羽岩淵駅近くの都道311号(環八通り)と国道122号(北本通り)が交叉する赤羽交叉点付近の北本通り上に所在していました。ただし都営バス王57系統はここを経由しておらず、南東に赤羽二丁目停留所が設置されています。
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東京都交通局7030電車 |
また、この区間には1991年(平成3年)11月29日に営団地下鉄(現・東京メトロ)南北線が開業しています。
1974年(昭和49年)の「荒川線」改編直後の乗降客は1日平均約9万3千人でした。その後、乗客数は漸減し1日平均5万5,000 - 5万8,000人で推移、2006(平成18)年度には5万3,000人台と1974年(昭和49年)改編当初の約6割に、同じく2011年(平成23年)末の局公式統計では49,130人と5割2分にまで低下しています。さらに2018年(平成30年)までの10年間は4万5000人
- 5万2000人程度で推移しており、荒川線単独の収支が黒字になったのは2年のみです。(´;ω;`)
ううむ、結構苦しいのですね。もっともこのような市内線で常時黒字という路線は富山地方鉄道富山軌道線位なものですが。
これには沿線の事業所や教育機関の郊外移転、荒川線が走る東京都区部北部での他の公共交通機関(JR東日本の山手線・京浜東北線・常磐線、東京メトロの千代田線・有楽町線・日比谷線・南北線・副都心線、都営三田線、日暮里・舎人ライナー、都営バス)への乗客分散などが影響しているのでしょう。要するに以前に比べてライバルが増えたわけです。
ただし、荒川線利用客がJR東日本各線に乗り換える王子駅前と大塚駅前の両停留場においては、時間帯を問わず乗降客が多数存在しています。
2007年(平成19年)5月27日の9000形営業運転開始に関連して、一部停留場の照明にガス灯を模した街路灯の設置が計画されています。1955年(昭和30年)頃をイメージした案内サイン、時計塔、公衆トイレや地域情報発信コーナーなども登場し、その第1弾が
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東京都交通局8902電車 |
三ノ輪橋停留場となっています。それと併せて荒川電車営業所の敷地内にそれまで留置線に残っていた都電の旧形車両2両(5500形5501・7500形7504)を移設し、「都電おもいで広場」として展示しています。
毎週末に公開し、車両に沿って停留場を模したウッドデッキを設け、イベントスペースも確保されています。なお、同年12月25日から2008年(平成20年)4月4日まではトイレや車両を覆う屋根の新設などを行う改修工事のため休園しています。さらに同年12月19日には庚申塚停留場も三ノ輪橋と同じスタイルに生まれ変わっています。
2008年(平成20年)4月から2009年(平成21年)1月にかけ、明治通り上の急勾配を走る王子 - 飛鳥山間で、雨天時に大型ダンプカーやレジャー用多目的車(RV)がスリップ・横転して線路をふさぎ、運行できなくなる事故が4件発生しています。深刻な事故につながる恐れもあるため、都と警視庁が対策を検討しているとのことですが・・・また解決策は見出されていないようです。
2018年(平成30年)10月21日、都電を含む都営交通の乗車券・グッズ販売や沿線案内の拠点として、三ノ輪橋停留場近くに「三ノ輪橋おもいで館」を開設しています。
外国人観光客の利用促進策としてはこのほか、沿線に残る昔ながらの暮らしや伝統文化を体験してもらう「TODEN LIFE TOURISM」を、Airbnbと協力して2019年(平成31年)1月17日に始めています。
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荒川一中前停留場の東京都交通局8807電車 |
当路線は、全線一系統であり系統番号は存在しません。ただし全線運転列車と区間運転列車が存在します。
区間運転は王子駅前・荒川車庫前・町屋駅前・大塚駅前の各停留場を始発・終着とする便があります。最も短い区間運転は夜間に運転される王子駅前 - 荒川車庫前間(所要4分)です。
運輸実績 |
年度 |
乗客数 |
1975 |
31,880,230人 |
1980 |
27,474,570人 |
1985 |
23,519,503人 |
1990 |
24,198,246人 |
1995 |
22,619,658人 |
2000 |
20,894,415人 |
2005 |
19,881,531人 |
2010 |
18,073,714人 |
朝夕はおおむね2分から5分、日中でも6分間隔程度の運転間隔で、早朝・深夜など時間帯でも最大で10数分以内に次の列車が運行されています。各停留場ホームに掲出されている時刻表には、日中時間帯の表示欄に平日は「6
- 7分間隔」、土曜日と休日は「6分間隔」と表記されています。全線の所要時間は日中標準56分となります。
各停留場には、今度到着する列車の行き先と現在到達位置表示を行う発車標が設置されています。また、繁忙時間帯を中心に複数の列車が続行運転している場合もあるが、これは作為的に行っているのではなく、繁忙時間帯においては各停留場において多数の乗客による乗降時間が長くなることや、併用軌道における交通混雑や公道との平面交差点における停止信号による交通混雑によって、実際の運行が標準運行時間に対して遅延傾向となっているためです。
以前は都営バスと同じく、最終列車の一つ前の列車を緑色背景の行き先表示で、最終列車を赤色背景で表示することによる告知を行っていた。その後、新型車両導入が進むにともなって、最終列車の一つ前の列車の表示は廃止されたが、最終列車については「終電」表示を併記して告知しています。
1977年(昭和52年)10月1日以降1両編成(単行)で、運転士のみが乗務するワンマン運転が採用されている(全列車ワンマン運転化は翌年4月1日から実施)。車掌は配置されておらず、運転士は運転のほか、車内放送の操作、運賃収受を一人で行います。また、多客時間帯の王子駅前を除くと、停留場に「駅員」も配置されておらず、路面電車や路線バスの標準的な形態となっています。 |
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