福井鉄道株式会社は、福井県内でバス、鉄道を運営している企業です。福井県では、富山県や石川県とは異なり、戦時中に県内の私鉄、バスなどが大合併することがなく、京福電気鉄道と福井鉄道が併存する状況が続いていて、これは現在でもほぼ同様です。福井鉄道は、1945年に福武電気鉄道株式会社と鯖浦電気鉄道株式会社が合併して、福井鉄道株式会社が発足したものです。
福井鉄道の売上高の75.1%を自動車運送事業が占め、鉄道事業の割合は16.7%に過ぎず、しかも鉄道事業は1963年以降赤字が続き、2006年には経営困難に陥る状況となりました。
そのため福井鉄道は2007年8月に鉄道部門の存続が難しいとして、沿線各自治体に支援を要請する事態となりました。
結局、2008年12月29日には名鉄が増資(1株を10億円で引き受け)した上で、増資された1株を含む保有全株(発行済株式数の33.36%を保有)を地元自治体が出資する第三セクターや地元支援団体へ1株1円で全面譲渡することで経営から撤退し、これを受け沿線3市は「法定協議会」を設置し、県および支援団体の支援により福武線が存続することが決まったという経緯があります。
2008年11月25日には臨時株主総会で、福井銀行出身者の村田治夫氏が新社長に選任され、2009年2月24日に国土交通省に申請していた「鉄道事業再構築実施計画」が地域公共交通活性化法に基づき全国初の認定を受けることにより、10年間で10億の国庫補助が設備更新に充てられるほか、固定資産税の優遇措置を受けられることになりました。
鉄道事業では、福武電気鉄道が開業したたけふ新 - 福井市内間の福武線のほか、鯖江 - 織田間19.2km、水落 - 水落信号所間0.3km の鯖浦線(せいほせん)や、社武生 - 戸ノ口間 14.3kmの南越線の2路線を保有していましたが、鯖浦線は1973年(昭和48年)に廃止され、南越線も1981年(昭和56年)に廃止されてしまい、現在は福武線のみが営業路線として運行しています。廃止された路線は、2路線合計32.8kmとなります。
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始発駅となる越前武生駅 |
赤十字前駅に停車する800系電車 |
廃止された2路線は、いずれも比較的人口が少ない地域を走る路線でしたが、当初は道路整備も行き届かない地域だったこともあり、かなり賑わっていたのです。
しかし道路網が整備されバス路線が軌道に乗り始めるとモータリゼーションの進展とも相まって乗客数が減り始めて、廃止に追い込まれたと言えましょう。まあ、地方私鉄ではよくある話ですがやや見切りが早かったのかなという気もします。
本来この地域は積雪地帯で、特に冬季ではバス路線が無ダイヤ状態になることが想像できるのですが、鉄道廃止に反対する声はなかったのでしょうか。
実際には人口が少ない地域で当時は自動車の数自体もそれほどではなかったのでバス路線が渋滞に巻き込まれるという事態がなかったのでしょう。
しかし福井県では、隣の石川県ほど鉄道路線が廃止されるという事態は発生していません。まあ、枝線がなくなったが幹線は維持していますというところでしょうか。
福井県北部に路線を持っていた京福電気鉄道も越前本線と芦原三国線を保有していましたが、あの二度にわたる衝突事故で運営継続を断念してえちぜん鉄道が路線を引き継いでいますので、福井県は鉄道路線の維持には積極的な地域であると考えて良いでしょう。
福井鉄道では本線に当たる福井鉄道福武線は、福井県中央部の都市間を結ぶ路線で、たけふ新 - 田原町間20.9kmと福井城址大名町 - 福井駅前間0.5kmの合計21.4kmの路線をもち、全区間でJR北陸本線と並行しています。
そのうち鉄軌分界点―田原町間2.8kmと福井城址大名町-福井駅前間0.5kmは併用軌道となっていて軌道法による軌道の扱いとなっています。鉄軌分界点―たけふ新間17.8kmは、鉄道事業法による鉄道線となっていますが、軌道線からの低床形車両が乗り入れる関係からホームが嵩下げされています。
全線が直流600Vで電化されていて、花堂駅-田原町駅間4.0km、福井城址大名町 - 福井駅前間0.5kmは複線(ただし、福井駅前駅の直前で単線になっています)となっています。
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えちぜん鉄道との相互乗入が行われる田原町駅 |
花堂駅 |
駅間距離は北陸本線に比べて短いので駅数も多く、普通列車の本数も北陸本線に比べるとむしろ多いので、客をこまめに拾っている印象はあります。ただし、運行速度が遅いのはやむを得ないでしょう。
以前から併用軌道区間にも鉄道線の大型車両がそのまま乗り入れていましたが、2006年(平成18年)4月から名古屋鉄道より譲り受けた低床型の路面電車形車両が運行を開始しています。そのため鉄道線区間の駅はホームを低くしましたが、ラッシュ時に対応するために従来型の車両も未だに運行しています。ただし、ホームを低床式車両に合わせて低くしたため、鉄道線車両はドアが開くと共に階段状のステップを下げて乗降を行うようになっています。
2010年(平成22年)3月25日のダイヤ改正で福井駅前駅-田原町駅間のシャトル便が廃止され、全ての列車が通し運転となっています。さらに同日、スポーツ公園駅が開業、武生新駅が越前武生駅に、西武生駅が北府駅に、上鯖江駅がサンドーム西駅に、福井新駅が赤十字前駅に、裁判所前駅が仁愛女子高校駅にそれぞれ改称されました。
さらに2011年(平成23年)3月20日には、泰澄の里駅、清明駅の2駅が新規開業しています。
2016年(平成28年)3月27日には駅前線を延長して福井駅前駅を福井駅西口広場に移設し福井駅に改称しています。また木田四ツ辻駅を商工会議所前駅に、公園口駅を足羽山公園口駅に改称しています。
さらに田原町駅でえちぜん鉄道三国芦原線との相互乗り入れを開始し、鷲塚針原駅-たけふ新駅間を運航しています。
これらの相互乗り入れの列車のうち、福井鉄道区間においては、9時台から16時台の間は急行として運転されていて、昼間の急行が復活しています。
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福井市内を走る880系電車 |
ハーモニーホール駅 |
|
路線名 |
種別 |
区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
架線電圧 |
閉塞方式 |
最高速度 |
福武線 |
本線 |
鉄道 |
たけふ新-鉄軌分界点 |
18.1km |
1,067mm |
花堂-鉄軌分界点間複線 |
600V直流 |
自動閉塞式 |
65km/h |
軌道 |
鉄軌分界点-田原町 |
2.8km |
1,067mm |
全線複線 |
600V直流 |
自動閉塞式 |
40km/h |
支線 |
軌道 |
福井城址大名町-福井駅前 |
0.5km |
1,067mm |
末端を除き複線 |
600V直流 |
自動閉塞式 |
40km/h |
種別 |
路線名 |
廃止区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
架線電圧 |
廃止日 |
鉄道 |
鯖浦線 |
鯖江 - 水落信号所 |
2.4km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
1962年1月25日 |
西田中 - 織田 |
11.7km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
1972年10月12日 |
水落 - 西田中 |
5.4km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
1973年9月29日 |
南越線 |
粟田部-戸ノ口 |
5.6km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
1971年9月1日 |
社武生-粟田部 |
8.7km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
1981年4月1日 |
路線 |
駅
番
号 |
駅名 |
駅間
キロ |
営業
キロ |
区
急 |
急
行 |
接続路線 |
ホーム |
駅員
配置 |
列車
交換 |
単複 |
区分 |
所
在
地 |
福
武
線 |
F0 |
たけふ新駅 |
- |
0.0 |
● |
● |
北陸本線(武生駅) |
2面3線 |
◎ |
∨ |
単
線 |
鉄
道 |
越
前
市 |
F1 |
北府駅 |
0.6 |
0.6 |
● |
● |
|
2面2線 |
集 |
◇ |
F2 |
スポーツ公園駅 |
1.1 |
1.7 |
● |
● |
|
1面1線 |
|
| |
F3 |
家久駅 |
1.8 |
2.4 |
● |
● |
|
1面2線 |
|
◇ |
F4 |
サンドーム西駅 |
1.7 |
4.1 |
● |
|
|
1面1線 |
※ |
| |
鯖
江
市 |
F5 |
西鯖江駅 |
1.2 |
5.3 |
● |
● |
|
2面2線 |
○ |
◇ |
F6 |
西山公園駅 |
0.7 |
6.0 |
● |
|
|
1面1線 |
※ |
| |
F7 |
水落駅 |
1.3 |
7.3 |
● |
● |
|
1面2線 |
|
◇ |
F8 |
神明駅 |
1.2 |
8.5 |
● |
● |
|
2面3線 |
○ |
◇ |
F9 |
鳥羽中駅 |
1.2 |
9.7 |
|
|
|
1面1線 |
|
| |
F10 |
三十八社駅 |
1.2 |
10.9 |
|
|
|
2面2線 |
|
◇ |
福
井
市 |
F11 |
泰澄の里駅 |
1.2 |
12.1 |
|
|
|
1面1線 |
|
| |
F12 |
浅水駅 |
0.9 |
13.0 |
● |
● |
|
1面2線 |
○ |
◇ |
F13 |
ハーモニーホール駅 |
0.8 |
13.8 |
|
|
|
1面1線 |
|
| |
F14 |
清明駅 |
1.1 |
14.9 |
|
|
|
1面1線 |
|
| |
F15 |
江端駅 |
0.6 |
15.5 |
|
|
|
2面2線 |
|
◇ |
F16 |
ベル前駅 |
0.6 |
16.1 |
● |
● |
|
1面1線 |
△ |
| |
F17 |
花堂駅 |
0.8 |
16.9 |
|
|
|
2面2線 |
|
∧ |
複
線 |
F18 |
赤十字前駅 |
0.9 |
17.8 |
● |
● |
|
1面2線 |
○ |
∥ |
|
鉄軌分界点 |
0.3 |
18.1 |
|
- |
|
- |
- |
- |
軌
道 |
F19 |
商工会議所前駅 |
0.3 |
18.4 |
● |
● |
|
2面2線 |
|
∥ |
F20 |
足羽山公園口駅 |
0.5 |
18.9 |
● |
● |
|
2面2線 |
|
∥ |
F21 |
福井城址大名町駅 |
0.7 |
19.6 |
● |
● |
福井鉄道福武線(支線) |
2面2線 |
▽ |
∥ |
F23 |
仁愛女子高校駅 |
0.6 |
20.2 |
|
● |
|
2面2線 |
集 |
∨ |
F24 |
田原町駅 |
0.7 |
20.9 |
|
● |
えちぜん鉄道三国芦原線 |
1面1線 |
○ |
| |
|
路
線 |
駅
番
号 |
駅名 |
駅間
キロ |
営業
キロ |
区
急 |
急
行 |
接続路線 |
ホーム |
駅員
配置 |
列車
交換 |
単複 |
区分 |
所
在
地 |
支
線 |
F21 |
福井城址大名町駅 |
- |
0.0 |
● |
● |
福井鉄道福武線(本線) |
2面2線 |
▽ |
∨ |
複
線 |
軌
道 |
福
井
市 |
F22 |
福井駅停留場 |
0.6 |
0.6 |
● |
● |
北陸本線
えちぜん鉄道勝山永平寺線 |
1面1線 |
券 |
| |
※駅員欄 ◎:終日配置、○:早朝と深夜以外配置、△:日中のみ配置(曜日不規則)、▽:田原町方面ホームのみ常駐(集札のみ)、集:平日朝のみ配置(集札のみ)、※:イベント時のみ配置 券:終日無人だが普通乗車券を除く各種乗車券の発売のみ福井駅西口臨時きっぷうりばで実施
※区急:区間急行 単複:単線or複線
福井鉄道福武線は、越前武生-田原町間の本線に福井城址大名町-福井駅の支線があって、運行系統も複雑です。
しかも時間帯により運行系統にばらつきがあるので、慣れていないととんだ間違いをやらかしそうです。
そこでどのような運行系統があるのかを図式化してみます。
|
運行系統 |
列車本数 |
うち急行 |
下り系統 |
系統① 越前武生-田原町 |
12 |
8 |
系統① 神明-田原町 |
1 |
|
系統① 越前武生-田原町-鷲塚針原 |
9 |
9 |
系統② 越前武生-田原町-福大前西福井 |
2 |
|
系統③ 越前武生-福井駅-田原町 |
26 |
|
系統③ 越前武生-福井駅 |
2 |
|
系統④ 福井駅-田原町 |
1 |
|
上り系統 |
系統① 田原町-越前武生 |
9 |
5 |
系統① 鷲塚針原-田原町-越前武生 |
9 |
9 |
系統② 福大前西福井-田原町-越前武生 |
2 |
|
系統③ 田原町-福井駅-越前武生 |
28 |
1 |
系統③ 福井駅-越前武生 |
2 |
1 |
系統④ 田原町-福井駅 |
1 |
|
これを見ると最も列車本数が多い系統は、系統②の越前武生→福井駅→田原町ですが、この区間を走る急行はあまりないのです。
福井駅でスイッチバックしないといけないので、時間的には不利ですから、そういうことになるのでしょうか。
急行は、えちぜん鉄道の鷲塚針原-田原町-越前武生のルートのものがほとんどです。
ちょっと解せないのは、下り線では早朝における越前武生からの列車が福井駅に入らないのです。
これだと越前武生方面から福井駅には通勤通学には使えないことになりますが、、北陸本線で来るからでしょうか。
上り線もラッシュ時には福井駅には入らないのですが、どうなっているのでしょうか。
日中は、普通列車は福井駅に入り急行は入らないのですが、夕方以降は急行は走らず普通列車は福井駅に入るので、さほど問題はないのですが・・・。
このような不可思議なダイヤが組まれているのも、ひげ線があることで複雑なダイヤにならざるを得ないのと、ラッシュ時には福井駅に立ち寄ることで時間が掛かることが原因になっているのでしょう。
このような現象は、万葉線でも伏木線が運行上の支障となったことと、氷見線が開業したことで不要になったために廃線になっているというのと共通性があるでしょう。 |
福井鉄道福武線 |
路線距離 |
本線 |
たけふ新 - 田原町間 |
20.9km |
支線 |
福井城址大名町-福井駅前間 |
0.5km |
合計 |
21.4km |
|
鉄道線 |
たけふ新-鉄軌分界点 |
18.1km |
軌道線 |
鉄軌分界点-田原町間 |
2.8km |
|
市役所-福井駅前間 |
0.5km |
|
軌間 |
1,067mm |
駅数 |
24駅(起終点駅含む) |
複線区間 |
本線 |
花堂 - 田原町間 |
4.0km |
支線 |
福井城址大名町-福井駅前間 |
0.2km |
|
電化区間 |
全線(直流600V) |
閉塞方式 |
自動閉塞式 |
最高速度 |
40km/h(軌道線)
65km/h(鉄道線) |
開業年月日 |
1924年(大正13年)2月23日 |
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田原町駅に停車する888形路面電車 |
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時刻表はこちら ・運賃表はこちら |