富山地方鉄道笹津線(1975年4月1日廃止)
富山地方鉄道笹津線の概要
南富山駅ホーム ここから笹津線の電車が発着していました
南富山駅ホーム ここから笹津線の電車が発着していました
富山地方鉄道笹津線は、富山市の南富山駅と大沢野町(現富山市)の地鉄笹津駅とを結ぶ路線距離12.4kmの鉄道路線でした。しかし1975年(昭和50年)3月31日限りで廃止されています。
笹津線の前身は富山軽便鉄道によって1914年(大正3年)12月6日に富山駅(現在の電鉄富山駅) - 笹津駅間17.6kmが開業しています。1915年(大正4年)10月には富山軽便鉄道から富山鉄道に改称しています。
当初は岐阜県神岡にある三井鉱山の鉱石が三井金属鉱業神岡鉄道で笹津まで運ばれてきて、笹津で積み替えて富山方面に輸送されていて、これが収入の約6割を占め、旅客も順調で業績は極めて良好でした。1925年(大正14年)の収支係数は50.8です。しかし、1927年(昭和2年)から国鉄飛越線(高山線)が順次開業するにつれて業績が悪化しています。
富山-猪谷間が1930年(昭和5年)11月27日に開通すると、笹津には貨物が入らなくなり、富山鉄道は笹津線の廃止を決意します。1930年から政府との交渉や駆け引きがあり、最終的には政府の補償を受けて1933年(昭和8年)4月20日に富山鉄道は解散して、堀川新駅(現在の南富山駅) - 笹津駅間は廃止となっています。ただし、富山駅 - 堀川新駅間は同日附で設立された富南鉄道に引き継がれています。これが現在の不二越線となります。なおこの際の廃止補償額は77万3150円となっています。
しかしこの時の笹津線廃止に異を唱える人物がいました。富山電気鉄道の佐伯宗義社長です。
佐伯社長は、笹津から西に路線を延伸して加越線と接続し、金沢までも路線を延長したいと考えていました。
笹津駅 笹津線の終点です
笹津駅 笹津線の終点です
そこで富山鉄道が提出した廃止申請を取り下げさせようとしていたのですが、一度提出した廃止申請を取り下げることはできないとされたために、笹津線復活の機会を虎視眈々と伺っていたのです。
富南鉄道は1941年(昭和16年)12月1日に富山電気鉄道と合併し、1943年(昭和18年)1月1日には富山電気鉄道が中心となって富山地方鉄道が設立されて、富山県内の私鉄線が統合されています。この間に笹津線の復活を申請しているのですが、戦時中のこともあって認可されなかったのです。
戦後になり、富山地方鉄道は再び笹津線の復活を計画し、1947年(昭和22年)12月1日に認可されています。
1950年(昭和25年)9月1日には、南富山駅 - 大久保町駅が開業しています。当初は1500V直流電化の予定でしたが、7月1日に600V直流に変更されています。これは富山市内軌道線からの乗り入れを考えてのことです。10月からはさっそく富山市内軌道線からの乗り入れが開始されています。
さらに1952年(昭和27年)8月15日には大久保町駅 - 地鉄笹津駅間が開業して、19年ぶりに笹津線が復活したことになります。
当初は営業は順調で多くの客でにぎわいましたが、1957年(昭和32年)頃から赤字経営に陥っています。
しかしこの頃でも現在の目からすると、輸送密度は4000人/km日以上でローカル私鉄線としては決して成績は悪くなかったのです。むしろ昭和41年までは輸送密度は上昇しているのです。
笹津駅前 笹津線ホームはこのあたりにあったのです
笹津駅前 笹津線ホームはこのあたりにあったのです
しかし昭和41年以降になるとモータリゼーションが急速に進行した上、1969年(昭和44年)には並行する国道41号の舗装拡幅改良工事が完成したために、乗客が減少しています。(と言っても輸送密度は3000人/km日程度ですが)
1971年(昭和46年)7月に富山地方鉄道は笹津線・射水線の廃止を表明しています。
市町村・沿線住民からは反対されていますが、市町村と富山地方鉄道の度重なる交渉で廃止を承認するにいたり、1975年(昭和50年)3月31日限りで笹津線は全線廃止となっています。この際には射水線は廃止を免れていますが、1980年4月1日には射水線も廃止となっています。
笹津線の廃止は、当時の富山地方鉄道としては赤字路線の整理という見方ができるのですが、現在の目から見るととても廃止対象路線になるような営業成績ではなかったといえます。昭和45年時点での輸送密度は3,864人/km日です。
このときの収支係数は157でしたので、確かに赤字路線ですがどうしようもないほどの赤字ではありません。
現在の富山市南部のベッドタウン化を考えると、行政側の支援を得ながら経営を継続するという考え方もあったのではないかと思うのですが、国道41号線と並行して走る笹津線をこれ以上維持することはできないと判断したのでしょう。
しかし二度も廃線となった笹津線は不運の路線といえるでしょう。とことんツキがなかった・・・。
笹津線跡は現在はほとんどが一般道になっていて路線跡を追跡するのは容易ですが、まったくといっていいほど遺構が残っていません。駅跡を特定するのも困難になっているので、覚悟が必要でしょう。

富山地方鉄道笹津線 路線データ
路線距離  南富山-地鉄笹津間 12.4km
駅数  14駅(起終点含む)
軌間  1,067mm
複線区間  全線単線
電化区間  600V直流
閉塞方式  タブレット閉塞式
開業年月日  1914年(大正3年)12月6日
廃止年月日  1975年(昭和50年)4月1日
使用車両  デ5000形 13両
 5015
 5016-5020
 5027-5030
 5038-5040
富山地方鉄道笹津線 駅一覧
駅名 駅間
キロ
営業
キロ
接続路線 駅員
配置
交換
設備
所在地
南富山駅 - 0.0 不二越線・上滝線
富山市内軌道線
富山市
日本繊維前駅 0.7 0.7     |
袋駅 0.8 1.5     |
赤田駅 0.7 2.2     |
上野駅 0.9 3.1  
熊野駅 1.4 4.5     |
伊豆ノ宮駅 1.4 5.9     |
大久保町駅 1.2 7.1   富山市
(大沢野町)
上大久保駅 0.9 8.0     |
大沢野北口駅 1.1 9.1     |
田村町駅 0.7 9.8     |
大沢野町八木山駅 0.7 10.5  
敷紡前駅 0.7 11.2     |
地鉄笹津駅 0.8 12.4 高山本線 |
富山地方鉄道笹津線 路線マップ
電子国土ポータルへのリンクです