 |
北鉄金沢駅ホーム |
北陸鉄道株式会社は、石川県金沢市を中心に鉄道路線とバス路線を有する中小私鉄です。
現在は鉄道を中心にした経営ではなく、主力は路線バス・高速バス事業となっています。
2009年4月時点で、鉄道路線としては浅野川線・北鉄金沢駅-内灘駅間(6.8km)と、石川線・野町駅-鶴来駅間(13.8km)の2路線が営業しています。
北陸鉄道浅野川線、石川線とも、全線電化単線です。
閉塞方式は、全線が自動閉塞式となっています。
浅野川線は、架線電圧が直流1500Vですが、石川線は直流600Vと路面電車と同様の電圧です。
浅野川線も以前は600Vでしたが、元京王3000系電車を導入することとなり、京王3000系に対応するために、1996年に架線電圧を600Vから1500Vに昇圧しています。
かつては国鉄各駅毎に接続しているほどに石川県加賀地方のほぼ全域と能登地方の一部にも路線を持っていました。
しかし、次第にモータリゼーションの影響で路線が順次廃止されていき、現在は2路線20.6kmを有するのみとなっています。
こうなった一つの原因として、北陸鉄道の各路線は例えばすべての路線がつながっている富山地方鉄道とは異なり、独立した路線が多かったために経営効率が悪かったこともあり、各個撃破されてしまったわけです。
すでに廃止された路線は次の通りです。
浅野川線(内灘駅 - 粟ヶ崎海岸駅間1.3km 1974年一部廃止)
石川線(野町駅 - 白菊町駅間0.8km 1972年一部廃止)
石川線(鶴来駅 -加賀一の宮駅間2.1km 2009年一部廃止)
金名線(加賀一の宮駅 - 白山下駅間16.8km 1987年廃止)
能美線(新寺井駅 - 鶴来駅間16.7km 1980年廃止)
松金線(松任駅 - 野町駅間8.4km 1955年廃止)
金石線(中橋駅 - 大野港駅間7.6km 1971年廃止)
能登線(羽咋駅 - 三明駅間25.5km非電化 1972年廃止)
小松線(小松駅 - 鵜川遊泉寺駅間5.9km 1986年廃止)
加南線は、山中線、山代線、動橋線、連絡線、粟津線の総称です。
このうち、動橋線、連絡線、粟津線は当初は1体として接続された路線でしたが、1962年に粟津線と連絡線の一部が廃止され、残った動橋線と連絡線(河南駅
- 宇和野駅間)が統合されて山代線と改称されています。
山中線(山中駅 - 大聖寺駅間8.9km 1971年廃止)
山代線(河南駅 - 新動橋駅間6.3km 1971年廃止)
(ただし動橋線(宇和野駅 - 新動橋駅間3.4km)連絡線(河南駅 - 宇和野駅間2.9km)
連絡線(宇和野駅 - 粟津温泉駅間7.7km 1962年一部廃止)
粟津線(粟津温泉駅 - 新粟津駅間3.4km 1962年廃止)
片山津線(動橋駅 - 片山津駅間2.7km 1965年廃止)
金沢市内線(12.9km 1967年廃止)
 |
加賀一の宮駅 |
なんと北陸鉄道だけで合計127kmもの路線が廃止されています。ちょっと信じられないくらいの思い切りの良さですが、要するに北陸鉄道は鉄道路線を捨ててバス路線でやっていこうとしたとしか考えられません。それにしても見切りが早すぎると思うのは私だけではないでしょう。
廃止となった理由を見ると、一口で言えば経営不振ということになるのでしょうが、例えば加南線全線が廃止になったのは特急停車駅がこれまで接続していた大聖寺駅でも動橋駅でもなく、加賀温泉駅になったことから温泉街への客の流れが変わってしまったのが決定的であったでしょう。
また金名線のように1984年12月12日の朝に橋梁がかかる岩盤が風化して危険と判明したために直ちに全線休止となり、そのまま廃線となっています。これなどは何とか存続しようといろいろと検討された結果の廃線だったのですが、ツキにも見放されたとも言えます。
石川県内の他の路線はどうかというと、北陸鉄道とは別にのと鉄道も七尾線の一部(穴水駅-輪島駅間20.4km)、能登線(穴水駅-蛸島駅間61.0km)を廃止しています。
これは元々は国鉄・JR線だった路線が第3セクター化した路線でしたが、本来ならば廃止になるような路線ではなかったはずなのに、どこでどう間違ったのか・・・。またナローゲージではありますが、尾小屋鉄道(新小松駅-尾小屋駅間16.8km)も1977年に廃止されています。つまり合計すると石川県から220km以上の鉄道路線が消えたことになります。
 |
内灘駅 |
2009年4月現在、石川県内で維持されている路線は、JR北陸本線(大聖寺駅-倶利伽羅駅間64.2km)、JR七尾線(津幡駅-七尾駅間54.4km)、のと鉄道七尾線(七尾駅-穴水駅間33.1km)、北陸鉄道の2路線20.6kmの合計172.3kmですので、半分以上が消えたわけです。
隣の富山県の例として富山地方鉄道がこれまで廃止した路線は、射水線(新富山駅 - 新港東口駅間14.4km)、笹津線(南富山駅-地鉄笹津駅間12.4km)、富山市内軌道線の一部4.9kmの合計31.7kmで、現在もなお、99.6kmの路線を維持しています。
加越能鉄道は、加越線(石動駅 - 庄川町駅間19.9km)、伏木線(米島口駅 - 伏木港駅間2.9km)を廃止していますが、万葉線は第3セクターとして今も維持しています。
また富山県内のJR路線もこれまでのところ貨物線以外は維持されています。
富山地方鉄道があるいは富山県がこれまで一貫して鉄道路線を極力維持してきた姿勢とは対極にある経営姿勢ですが、これからの時代はどのような経営姿勢が望ましいのでしょうか。
鉄道路線に比べるとバス路線の方がコストが小さく、路線の変更・拡張・廃止も容易であることや、バスの性能が向上したことと道路網の整備が進んだことから鉄道路線が廃止されるような状況になったといえます。
ただし、モータリゼーションが進むと、バスは特に早朝は渋滞に巻き込まれて時間通りに運行できないことや、輸送力に限界があることなど、鉄道よりも不利な点も多くなりますし、北陸地方では冬季には積雪時はバスがほとんど運行できないこともあり得ます。福井県では京福電鉄が運行停止になったあと、えちぜん鉄道が鉄道路線を引き継ぐことになったのも、この積雪時のバス運行の障害問題が大きかったと言われています。
 |
野町駅ホーム |
また、環境問題が大きくなってくると電車のように排気ガスを出さないクリーンな乗り物の方が排気ガスを出すバスよりも有利になることも考えられます。電車は電気さえあれば運行できますし、化石燃料が枯渇してきた場合にも原子力発電や水力発電は、二酸化炭素を出さないのでクリーンです。
一方、バスは化石燃料が枯渇してくると運行が難しくなるでしょう。そうなったときは自家用車も同様なので鉄道路線がない地方は極めて交通事情が悪くなる可能性も考えられるでしょう。
最近では、北陸鉄道は2009年11月1日に石川線・鶴来駅-加賀一の宮駅間 (2.1km) を廃止しています。
この路線に限らず、北陸鉄道が赤字に転落し、苦しい経営が続いていて、同区間の橋や変電所などの更新時期が迫っているが、5億円の事業費が必要と見込まれていて、収支面から廃止することになったようです。
それにしてもまたまた路線廃止が取りざたされるとは・・・。
北陸鉄道は前述したように過去にも多数の鉄道路線を廃止していて見切りが良すぎるところがあるのですが、最近ではバス事業が主力になっていて鉄道事業は規模が小さくなっているのでなおさらでしょう。しかし北陸鉄道の経営状態から考えると廃止は不可避ではないと思うのですが。
もっともこれからは公共交通機関は、運営は鉄道会社、施設維持管理は自治体という様にいわゆる上下分離方式でないと、特に地方では難しいのではないかと思います。
この点では富山県の方が進んでいて、第3セクター線として富山ライトレール、万葉線があり、さらには富山地方鉄道と富山市で上下分離方式による富山都心線が2009年12月開業予定となっています。
しかし廃止と新線では・・・明暗が分かれてしまっています。
北陸鉄道も野町と金沢を結べば利用客が増えると思うのですが、地下鉄ではコストがかかりすぎますし、路面電車は土地の確保が難しいでしょう。 |
種別 |
路線名 |
区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
架線電圧 |
閉塞方式 |
鉄道 |
浅野川線 |
北鉄金沢 - 内灘 |
6.8km |
1,067mm |
単線 |
1500V直流 |
自動閉塞式 |
石川線 |
野町 - 鶴来 |
13.8km |
1,067mm |
単線 |
600V直流 |
自動閉塞式 |
種別 |
路線名 |
区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
架線電圧 |
廃止日 |
鉄道 |
浅野川線 |
内灘-粟ヶ崎海岸 |
1.3km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1974年7月8日 |
石川総線 |
石川線 |
野町-白菊町 |
0.8km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1972年9月20日 |
鶴来-加賀一の宮 |
2.1km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
2009年11月1日 |
金名線 |
加賀一の宮-白山下 |
16.8km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1987年4月29日 |
能美線 |
新寺井-鶴来 |
16.7km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1980年9月14日 |
松金線 |
野々市 - 野町 |
3.2km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1944年4月18日 |
松任-野々市 |
5.2km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1955年11月14日 |
金石線 |
中橋-大野港 |
7.6km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1971年9月1日 |
能登線 |
羽咋-三明 |
25.5km |
1,067mm |
単 |
非電化 |
1972年6月25日 |
小松線 |
小松-鵜川遊泉寺 |
5.9km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1986年6月1日 |
加南線 |
山中線 |
山中-大聖寺 |
8.9km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1971年7月11日 |
山代線 |
河南-新動橋 |
6.3km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1971年7月11日 |
連絡線 |
宇和野-粟津温泉 |
7.7km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1962年11月23日 |
粟津線 |
粟津温泉-新粟津 |
3.4km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1962年11月23日 |
片山津線 |
動橋-片山津 |
2.7km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1965年9月24日 |
軌道 |
金沢市内線 |
東金沢駅前 - 鳴和 |
1.0km |
1,067mm |
単 |
600V直流 |
1966年2月28日 |
鳴和 - 橋場町 |
2.0km |
1,067mm |
複 |
600V直流 |
1966年12月26日 |
全線 |
10.0km |
1,067mm |
単複 |
600V直流 |
1967年2月11日 |
|