|
E129系電車 |
弥彦線(やひこせん)は、新潟県西蒲原郡弥彦村の弥彦駅から三条市の東三条駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)である。 弥彦山の東麓から燕市の吉田地区と燕地区を経由して、三条市中心部に至る路線で、普通列車のみが運行されている。
全線が旅客営業規則の定める大都市近郊区間の「新潟近郊区間」、およびIC乗車カード「Suica」の新潟エリアに含まれている。
弥彦駅 - 燕三条駅間の架線には吉田駅周辺を除き、JRの路線としては数少ない低コストの直接吊架式が採用されている。
これは電化当時、国鉄が慢性的な赤字に陥っていたため、同じく1984年(昭和59年)に電化された越後線共々、コストダウンを求められていたことによるものである。
残る燕三条駅 - 東三条駅間の大部分はシンプルカテナリー式で吊架されているが、最高速度は全線にわたって85 km/hに制限されている。
弥彦駅 - 吉田駅間は2005年(平成17年)に自動化されるまで非自動閉塞方式(スタフ閉塞式)で運行していたが、これはJRグループの電化旅客路線としては最後まで残った非自動閉塞区間であった。
弥彦線は1985年3月31日まで、国鉄全路線で唯一、起終点両方の駅で他路線との接続がない路線であった。
私鉄ではこういう形態の路線は決して珍しくないが、日本全国に鉄道網を広げていた国鉄では特殊なケースであった。
同年4月1日に東三条駅 - 越後長沢駅間が廃止されたことで弥彦線はこのケースから外れた。
歴史
- 弥彦線は、越後線とともに私鉄の越後鉄道により建設された鉄道路線である。まず弥彦駅 - 西吉田駅(現在の吉田駅)間が、越後一の宮である彌彦神社への参詣鉄道として1916年に開業し、続いて西吉田駅 - 一ノ木戸駅(現在の東三条駅)間が、現在の越後線と信越本線を連絡する目的で1922年から1925年にかけて延伸され、さらに1927年夏には南東の南蒲原郡長沢村の越後長沢駅までの区間が開業した。いずれは鹿峠村と森町村(前掲3村はいずれものちの下田村、現在の三条市)を経て福島県只見町まで路線を延伸する計画の下で建設が進められたが、越後長沢駅まで開業した同年の秋に国有化され計画は消滅した。
- このうち、通称「弥彦東線(やひことうせん)」と呼ばれていた東三条駅 - 越後長沢駅間は、沿線の人口密度が低かった上、終点の越後長沢駅も当時の長沢村の中心地から若干離れていたこともあり、太平洋戦争以前の段階から利用者数は低迷。長沢以東の区間は越後鉄道が森町村大字八木前まで免許を取得していたが、国有化された1927年に失効し、また太平洋戦争中の1944年10月には不要不急線として営業休止に追い込まれ、金属類回収令により軌道は撤去の上で供出された。
- この間、東三条駅 - 越後長沢駅 - 八木前間の貨物輸送は国営自動車(のちの国鉄バスの貨物部門)が代行する方式で実施された。
- 東三条駅 - 越後長沢駅間は戦後に営業を再開したが通学客以外は乗客も少なく、不採算が慢性化。長沢と只見の間については戦後、新潟・福島両県と沿線自治体が中心となって国に対し、八十里越の道路整備と国鉄バスの路線開設を求める請願を提出するなどしたものの、実現には至らなかった。
- また東線の区間にあたる三条市中心部と下田村との間には、並行する県道(のちの国道289号)を経由する中越自動車(のちの越後交通の前身の一つ)の路線バスが運行されており、公共交通の機能が冗長化していた。さらにその後はモータリゼーションが急速に進行したこともあって利用者数は減少の一途をたどり、この区間は1968年にいわゆる赤字83線に指定された。弥彦線のうち弥彦駅から東三条駅までの区間(弥彦西線)は1984年春に電化することとなり、これと同時に東線を廃線とする協議が進められた。しかし地元の強硬姿勢により協議が進まず、西線の電化後、新潟運転所から気動車を毎日回送して運行が継続され、翌1985年に廃止された。
- 弥彦東線の廃線跡は市道および国道289号のバイパス道路として整備され、下田村内で五十嵐川左岸沿いの旧道を経由していた前掲の路線バスの運行経路もこのバイパスに変更された。2015年12月現在、越後交通三条営業所は旧東線に並行する形で下記の路線バス「八木ヶ鼻温泉線」を運行している。
地場産センター前 - 燕三条駅三条口 - 東三条駅前 - 西大崎(越後大崎駅跡付近) - 高岡(大浦駅跡) - 長沢駅跡 - 下田庁舎前 - 笹岡中央 - 八木前 - 八木ヶ鼻温泉
高架化
- 燕三条駅 - 東三条駅間の線路は三条市街地のすぐ北側、寺院や住宅が多く集まる場所に敷設された。
- そのため、1960年代時点では市街地を抜けるまでの僅か2 kmの区間に十数箇所の踏切があり、また生活空間と密接していたため事故が頻繁に発生していた。
- そうした状況から高架化を望む声が上がり、その後時を経て1992年度完成を目標に県主体の連続立体交差事業が着工。
- 実際の高架化開業は1997年となった。旧線跡は遊歩道として整備された。
年表
- 1916年(大正5年)10月16日 【開業】越後鉄道 西吉田 - 弥彦 【駅新設】矢作(停留場)、弥彦
- 1922年(大正11年)4月20日 【延伸開業】西吉田 - 燕 【駅新設】燕
- 1925年(大正14年)4月10日 【延伸開業】燕 - 一ノ木戸 【駅新設】北三条、一ノ木戸(信越本線の既設駅に乗り入れ)
- 1926年(大正15年)8月15日 【駅名改称】一ノ木戸→東三条
- 1927年(昭和2年)
- 7月31日 【延伸開業】東三条 - 越後長沢(7.9km) 【駅新設】越後大崎、大浦、越後長沢[15]
- 10月1日 【買収・国有化】弥彦線 弥彦 - 越後長沢(25.3km)[16]
- 1944年(昭和19年)10月16日 【休止】東三条 - 越後長沢(-7.9km) 【駅休止】越後大崎、大浦、越後長沢[17]
- 1946年(昭和21年)10月1日 【営業再開】東三条 - 越後長沢(7.9km) 【駅営業再開】越後大崎、大浦、越後長沢
- 1954年(昭和29年)12月25日 【駅新設】西燕
- 1959年(昭和34年)10月1日 【駅名改称】西吉田→吉田
- 1960年(昭和35年)
- 7月25日 【貨物営業廃止】弥彦 - 吉田(-4.9km)
- 12月15日 【貨物営業廃止】東三条 - 越後長沢(-7.9km)
- 1982年(昭和57年)11月15日 【駅新設】燕三条(上越新幹線接続駅)
- 1984年(昭和59年)
- 1月20日 【貨物営業廃止】吉田 - 東三条(-12.5km)
- 4月8日 【電化】弥彦 - 東三条(17.4km) 低コストの直接吊架式架線を採用
- 1985年(昭和60年)4月1日 【路線廃止】東三条 - 越後長沢(-7.9km)、越後交通の路線バスに転換 【駅廃止】越後大崎、大浦、越後長沢
- 1987年(昭和62年)4月1日 【承継】東日本旅客鉄道
- 1988年(昭和63年)10月17日 【ワンマン化】弥彦 - 吉田間の全列車と吉田 - 東三条間の一部列車。同時に弥彦 - 東三条間の直通列車を従来1本だったのを13本とする。
- 1997年(平成9年)9月15日 燕三条 - 東三条間高架化、東三条駅付近のルートを変更(信越線下を通り駅東側ホームに入る形態をやめ、直接駅西側のホームに入る形式に変更。急カーブ解消)
- 2005年(平成17年)12月10日 弥彦 - 吉田間をスタフ閉塞式から特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)化。同時に全線でCTCを導入。
- 2008年(平成20年)3月15日 線内全駅でSuicaのサービスを開始。
- 2024年(令和6年)3月16日 ワンマン列車における後乗り前降りを廃止。(予定)
|
JR弥彦線 路線データ |
管轄(事業種別) |
東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者) |
路線距離
(営業キロ) |
東三条駅 - 弥彦駅 17.4 km |
軌間 |
1,067mm |
駅数 |
8(起終点駅含む) |
複線区間 |
なし(全線単線) |
電化区間 |
全線(直流1500V) 架空電車線方式 |
閉塞方式 |
弥彦駅 - 吉田駅間:特殊自動閉塞式
(軌道回路検知式)
※2005年12月9日まではスタフ閉塞式
吉田駅 - 東三条駅間:自動閉塞式(特殊) |
保安装置 |
ATS-SN |
運転指令所 |
新潟総合指令室 (CTC) |
最高速度 |
85km/h |
|
|
E127系電車 |
|
駅名 |
営業キロ |
接続路線 |
ホーム |
駅
員 |
線
路 |
所在地 |
駅間 |
累計 |
弥彦駅 |
- |
0 |
|
1面1線 |
○ |
| |
西蒲原郡
弥彦村 |
矢作駅 |
2.3 |
2.3 |
|
1面1線 |
|
| |
吉田駅 |
2.6 |
4.9 |
東日本旅客鉄道:越後線(直通運転あり) |
3面5線 |
◎ |
◇ |
燕市 |
西燕駅 |
3.1 |
8.0 |
|
1面1線 |
|
| |
燕駅 |
2.3 |
10.3 |
|
2面2線 |
|
◇ |
燕三条駅 |
2.6 |
12.9 |
東日本旅客鉄道:上越新幹線 |
1面1線 |
◎ |
| |
三条市 |
北三条駅 |
2.5 |
15.4 |
|
1面1線 |
○ |
| |
東三条駅 |
2.0 |
17.4 |
東日本旅客鉄道:信越本線 |
2面4線 |
○ |
◇ |
駅員配置 注 ◎:直営駅 ○:業務委託駅 無印:無人駅
列車交換 注 ◇ ∨ ∧:列車交換可能 |:列車交換不可
廃止区間
駅名 |
営業キロ |
接続路線 |
所在地 |
駅間 |
弥彦から |
東三条駅 |
- |
17.4 |
日本国有鉄道:信越本線 |
三条市 |
越後大崎駅 |
2.0 |
19.4 |
|
大浦駅 |
3.0 |
22.4 |
|
南蒲原郡下田村 |
越後長沢駅 |
2.9 |
25.3 |
|
|