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能登中島駅に停車するNT200型気動車 |
のと鉄道七尾線は、七尾駅-穴水駅間33.1kmを結ぶ鉄道線です。全線が石川県内を走ります。
全線単線ですが、七尾駅-和倉温泉駅間5.1kmは直流電化されています。ただし、のと鉄道の列車は、全て気動車です。
七尾駅-和倉温泉駅間を走る電車は、全てJRの特急列車で、JRからの普通列車の乗り入れはありません。
平成27年4月29日からは、七尾駅-穴水駅間に「のと里山里海号」が運行されることになります。これは全車指定席の観光列車です。
のと鉄道株式会社は、元々は国鉄改革にともない第3次特定地方交通線に選定された能登線・穴水駅-蛸島駅間を引き受けるために1987年に設立された、石川県などが出資する第三セクターの鉄道事業者です。
現在のところ、JR西日本が七尾線の線路を保有しており、のと鉄道はJR西日本の線路を使って列車を運行していて、自社で線路を持たない第二種鉄道事業者となっています。
また七尾駅-和倉温泉駅間は、JR西日本も特急列車を乗り入れて、のと鉄道と駅及び線路を共同利用しています。
のと鉄道は、1988年3月25日に能登線・穴水駅-蛸島駅間61.0kmを開業しています。その後、1991年にはJR七尾線が和倉温泉駅まで電化されたのに伴い、非電化の七尾線(和倉温泉駅
- 輪島駅間28.0km)の営業をJR西日本から引き継いでいます。(七尾-和倉温泉間5.1kmは、JR西日本との共用区間)
ところがこの頃から乗客数は目に見えて減少の一途をたどりました。特に、七尾線の経営を引き継いでからの穴水駅-輪島駅間の乗客の減少が著しく、次第に路線の廃止が取り沙汰されるようになりました。
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以前はここから線路が2本出ていたのに・・・ |
この乗客減少は、能登地方全体の過疎化もありますが、能登有料道路を初めとして道路網が整備されたことによるモータリゼーションの進展が原因と考えられます。七尾線と並行して走るバスに対して、のと鉄道の路線は規格が低い上に和倉温泉以北は非電化で運行速度も低く、特に穴水-輪島間は勾配区間が多く、さらに運行速度が低下するので、どうしても特急バスには料金の面でも速度の面でも太刀打ちできなかったのです。もう一つの要因として、七尾線はJR西日本から借用している線路・設備に対する使用料が約1億3400万円も必要となり、これも経営を圧迫したと言えます。
もう一つ、乗客減少の原因として、経営コンサルタントからの経営診断と助言で列車本数を減らしていったことも一因だと思います。そのような主体性のない経営がうまくいくはずがないと思うのは私だけではないはずです。案の定、列車本数が減ると不便になり、ますます客が減っていったわけです。
ただ、のと鉄道は自前の路線を持たない第二種鉄道事業者であったために大胆な設備投資は難しいと思われるので、気の毒な点もあったと思います。しかしJR西日本から鉄道施設を譲渡させたうえで設備投資を図るとか、局面を打開できなかったのかと思います。
さらに能登空港開港に伴う交通再編が想定されることもあり、経営改善も見込めないことから、2000年3月に廃線が決定され、2001年4月1日についに穴水-輪島間20.4kmが廃止されてしまったのです。このケースはJR線から第三セクター線に移管された路線が廃止された初めての事例となりました。本来は七尾線の方が幹線で能登線は支線だったのに幹線の方が廃止となったわけです。さらに七尾線が一部廃止になったことで、今度は能登線までが廃止が危惧される事態となっていきました。
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和倉温泉駅にまで特急列車が乗り入れます |
能登線が第三セクター化されてから、当初は収支がほぼ均衡を保ち、1988年~1990年にかけては単年度黒字を計上していましたが、前述の七尾線(和倉温泉-輪島間)の経営を引き継いでから経営が悪化していったのです。そして2005年4月1日には能登線全線(穴水-蛸島間61.0km)が廃止されて、現在に至っています。
能登線は、路線が長大な割に沿線の人口は少なく、路線の規格も低いので運行速度も低く、極めて不利な状況だったわけです。観光路線としても使いにくいし、通勤通学路線としても列車本数は少なく増便もままならないし、ここに至ってはどうにもならなかったと理解できます。
相次ぐ路線の廃止により、のと鉄道は大幅に路線を失うことになりました。当初は七尾線(七尾-輪島間53.5km)および能登線(穴水-蛸島間61.0km)の合計114.5kmで列車を運行していたのが、2005年4月時点で七尾-穴水間33.1kmにまで減少してしまいました。
これで1932年(昭和7年)8月27日に七尾線が穴水まで開業した時点まで路線が後退したことになります。 (泣)
前述のように現在の運行路線は、七尾-穴水間33.1kmですが、このうち七尾-和倉温泉間5.1kmは、JR西日本とのと鉄道の共同区間となっていて、JRの特急列車が和倉温泉まで乗り入れてきます。
ただし、普通列車は七尾駅で乗り換えとなり、JR線からのと鉄道七尾線に乗り入れる普通列車はありません。
七尾線・七尾-穴水間を存続させた理由の一つは、2014年度の北陸新幹線の開業後にJR七尾線(津幡 - 和倉温泉間)が経営分離される可能性があり、石川県に鉄道運営のノウハウを残す必要があったためとされます。
・・・と言われていますが、実のところは職員の再就職先を探すのも困難だったためにのと鉄道自体を解散するわけにはいかないためにもっともらしい理屈をつけたのではないかと推察します。
しかしいずれにしても、このままですと残った七尾線も和倉温泉-穴水間28.0kmの存続も危ういと言わざるを得ません。
このままですと、北陸新幹線が開業するときに、七尾線の電化区間はのと鉄道が引き継ぎ、非電化区間は廃止するとか言い出しかねません。そうなったら能登地方の衰退は火を見るより明らかとなるでしょう。 |
種別 |
路線名 |
区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
電化 |
閉塞方式 |
鉄道 |
のと鉄道七尾線(JR共用区間) |
七尾-和倉温泉 |
5.1km |
1,067mm |
単線 |
直流1500V |
自動閉塞式 |
のと鉄道七尾線 |
和倉温泉-穴水 |
28.0km |
1,067mm |
単線 |
非電化 |
自動閉塞式 |
種別 |
路線名 |
区間 |
総延長 |
軌間 |
単複 |
電化 |
閉塞方式 |
廃止日 |
鉄道 |
のと鉄道七尾線 |
穴水-輪島 |
20.4km |
1,067mm |
単線 |
非電化 |
スタフ閉塞式 |
2001年4月1日 |
のと鉄道能登線 |
穴水-蛸島 |
61.0km |
1,067mm |
単線 |
非電化 |
特殊自動閉塞式・スタフ閉塞式 |
2005年4月1日 |
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のと鉄道七尾-穴水間を走るNT200型気動車 |
和倉温泉-大阪間を走る特急「サンダーバード」 |
のと鉄道を走る気動車は、2009年4月現在、NT200型気動車が唯一の車種です。
これは、2005年3月31日に能登線61kmが廃止される直前の3月25日から七尾線に投入されています。
新潟トランシスで製造され、現時点では7両を保有しています。
これまでのNT100型に比べて最高時速が80km/hから95km/hと15km/hも向上しています。
またのと鉄道のうちJRとの共用区間である七尾-和倉温泉間には、JRの特急列車も乗り入れています。
2009年4月時点では、特急「サンダーバード」「しらさぎ」「はくたか」が和倉温泉発着で運行されています。これらは、JR西日本681系電車、683系電車が投入されています。 |
駅名 |
駅間
キロ |
営業
キロ |
接続路線 |
ホーム |
みどりの
窓口 |
駅員
配置 |
列車
交換 |
種別 |
所在地 |
七尾駅 |
- |
0 |
JR西日本七尾線 |
2面4線 |
○ |
|
◇ |
電化 |
石
川
県 |
七尾市 |
和倉温泉駅 |
5.1 |
5.1 |
JR西日本のと鉄道七尾線 |
2面2線 |
○ |
|
◇ |
非電化 |
田鶴浜駅 |
3.5 |
8.6 |
|
2面2線 |
|
○ |
◇ |
笠師保駅 |
4.1 |
12.7 |
|
1面1線 |
|
|
| |
能登中島駅 |
3.6 |
16.3 |
|
2面2線 |
|
○ |
◇ |
西岸駅 |
6.2 |
22.5 |
|
2面2線 |
|
|
◇ |
能登鹿島駅 |
4.3 |
26.8 |
|
2面2線 |
|
|
◇ |
鳳珠郡
穴水町 |
穴水駅 |
6.3 |
33.1 |
のと鉄道能登線(2005年廃止)
のと鉄道七尾線(輪島方面)(2001年廃止) |
2面2線 |
○ |
◎ |
∧ |
駅員配置 注 ◎:直営駅 ○:日中のみ駅員配置 無印:無人駅
列車交換 注 ◇∧:列車交換可能 |:列車交換不可
のと鉄道七尾線の時刻表・運賃はこちら
駅名 |
駅間
キロ |
営業
キロ |
穴水から
営業キロ |
接続路線 |
ホーム |
みどり
の窓口 |
駅員
配置 |
列車
交換 |
種別 |
所在地 |
穴水駅 |
- |
33.1 |
0.0 |
能登線(2005年4月1日廃止) |
2面4線 |
○ |
◎ |
∨ |
非電化 |
鳳珠郡穴水町 |
能登三井駅 |
11.0 |
44.1 |
11.0 |
|
1面1線 |
|
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| |
輪島市 |
能登市ノ瀬駅 |
5.0 |
49.1 |
16.0 |
|
1面1線 |
|
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| |
輪島駅 |
4.4 |
53.5 |
20.4 |
|
1面1線 |
○ |
◎ |
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穴水駅ホームに留置されているNT200形気動車 |
では、実際にのと鉄道七尾線の列車に乗車してみましょう。七尾-穴水間の運賃は810円となります。
今回は、穴水9:41発七尾行きの普通列車に乗車します。
のと鉄道七尾線は、全線が単線で運行している列車も普通列車のみです。
また七尾―穴水間で列車交換設備がないのは、笠師保駅だけです。
これは、元々がJR線だったということと、駅間距離がけっこう大きいことが関係していると思われます。
穴水駅は、以前は分岐駅だったのに、ここで分岐していた路線がすべて廃止になってしまい、終点駅となっています。
駅構内は分岐駅だったことからけっこうおおきく、側線も多いし、車両基地もあります。
のと鉄道の各駅にはそれぞれ愛称があり、穴水駅の愛称は「まいもんの里駅」となっています。
「まいもん」というのは「うまいもの」という意味です。
9:41に穴水駅を出発した普通列車は、街中を抜けると、国道249号線とほぼ並行して走ります。
国道が海岸線に沿って走ると線路も海を見ながら走ります。
そして穴水駅を出て最初の駅である能登鹿島駅に9:48に停車します。ここの駅舎はなかなか洒落た造りになっています。
この駅は、愛称「能登さくら駅」と呼ばれていてホームには桜が植えられています。
七尾発穴水行きの普通列車が反対側のホームに到着し、ここですれ違います。
こちらの列車が出発し、七尾へ向かって走り出します。
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能登中島駅前 |
国道と併走しながら左手にはツインブリッジのとが見えます。能登島と本州をつなぐ2本の橋のひとつで斜張橋です。
やがて高台のある西岸駅に停車します。この駅は、愛称に「小牧風駅」と呼ばれています。
西岸駅を9:54に出発した列車は、国道の下をくぐり、今度は国道と離れて走ります。しばらく山の中を走ってから再び国道に沿って走り、能登中島駅に到着します。この駅の愛称は、「演劇ロマン駅」と言い、いうまでもないでしょうが、近くに能登演劇堂があるからです。この能登演劇堂は、仲代達矢が主宰する無名塾が1985年から毎年のようにこの中島町(現:七尾市)で合宿していたことが縁で、1995年7月12日に開館しています。無名塾の全国公演はこの劇場を起点として開催されます。
この駅は跨線橋もありけっこう大きい駅です。ホームには郵便車とのと恋路号が留置されています。
当駅を10:01に発車した列車は、今度は田園地帯を走ります。再び国道とつかず離れずで走りながら、再び海岸近くを走りながら国道と接近します。そうこうしているうちに笠師保駅に停車しました。のと鉄道では唯一の片面ホームですれ違いができない駅ですが、駅舎などはけっこう立派です。愛称は「恋火駅」と呼ばれています。たいへんロマンティックな愛称ですが、当地で開催される塩津かがり火恋祭りが由来のようです。これは海上で男の神と女の神が逢引するという祭りだそうでやはりロマンティックなのでした。10:05に笠師保駅を出発した列車は、さらに国道と併走しながら海岸線を走ります。
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田鶴浜駅前 |
やがて列車は、田鶴浜町に入っていき、田鶴浜駅に到着しました。この駅の愛称は、「たてぐのまち駅」と呼ばれているのですが、建具屋が多いのでしょうか。この駅は跨線橋もあり、駅舎もけっこう立派です。
10:10に駅を出発した列車は、ほとんど国道と併走しながら、和倉温泉の町に入ります。
和倉温泉駅は、日本でも有数の温泉地で、JR特急もこの駅まで乗り入れてきます。
この列車も10:21に到着しました。七尾発穴水行きの普通列車も到着していて、この駅ですれ違いです。
この和倉温泉-七尾間は、JR西日本とのと鉄道の共用区間で双方の列車が混在して走りますが、この区間を走るJR西日本の列車は特急列車のみで、普通列車は七尾駅を境にしてそれぞれが分離されています。
和倉温泉駅を出発した列車は、七尾市の中心部に向けて走ります。
国道と並走して走りながら小丸山大橋の下をくぐり、七尾市の市街地に入っていき、七尾駅に10:27に到着します。
七尾駅は、言うまでもなく七尾市の中心駅で、七尾線の中心駅でもあります。もちろんすべての特急列車は、この駅で停車します。この駅を境に北へは、のと鉄道の普通列車、南はJR西日本の普通列車が走ります。津幡方面に行く場合はここで乗換えとなります。
のと鉄道七尾線の旅はこれで終わりですが、気になったことをいくつかあげておきます。
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七尾駅前 |
まず、のと鉄道は開業当初はかなり利用者が多く、営業的にはうまくいっていたのですが、次第に利用者が減っていき、ついに穴水以北は廃止の憂き目を見ました。
利用者がたいへん少ないのは実際にも肌で感じました。一口で言って閑散としているのです。
終点の穴水駅でもそう感じたのですから、途中駅ではなおさらです。
富山県内の富山ライトレールや万葉線と比べても、どう考えても客が少ないのです。
とすれば、のと鉄道は客をどうやって増やすのかを考えなければいけないでしょう。
能登地方は観光地も多く、見どころはいっぱいあるのにそれを利用していないということになります。
これはもっと大々的なPRが必要でしょうし、のと鉄道も本数を増やすとか年間を通して各地のイベントに客を呼び込むためのパッケージを開発するとか作戦を練らないといけないでしょう。
とにかく穴水以北を廃止してしまったのは失敗だったと思いますが、やってしまったものは仕方ありません。
残った路線をどう利用するかです。
ひとつの機会としてはやはり北陸新幹線でしょう。これが開業すれば東京方面から北陸地方に観光客が誘致できるでしょう。
その際に能登地方の観光資源を活用する際には金沢から穴水までの直通列車くらいは設定しないと絶望的でしょう。何回も乗り換えて来てくれるほど観光客は甘くありません。
もしかすると七尾線全体が第3セクター化される可能性もあり、その場合はのと鉄道が津幡-穴水間を運営するのがもっとも手っ取り早いでしょう。いずれにしても穴水まで電化して特急を乗り入れるくらいの離れ業が見たいものですが。
しかし採算性の点では・・・、かなりきつい状況が予想されます。新幹線開業に向けてどう模索していくのかです。 |