労働組合法第7条 |
使用者は、左の各号に掲げる行為をしてはならない。 |
第1号(組合員であることを理由とした不利益取り扱い、及び黄犬契約) |
労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱をすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。但し、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。 |
第2号(団交拒否) |
使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。 |
第3号(支配介入) |
労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。 |
第4号(報復的不利益取り扱い) |
労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立をしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条第4項の規定による命令に対する再審査の申立をしたこと又は労働委員会がこれらの申立に係る調査若しくは審問をし、若しくは労働関係調整法(昭和21年法律第25号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱をすること。 |
使用者の定義 |
基本的に不当労働行為は、使用者側の利益を代表する者が組合や組合員に対して行う行為ですが、どこまでが使用者側の利益を代表する者かは、簡単には論じることが出来ないことがあります。
目安としては、人事権を持つ管理職以上を指すと考えられます。
しかし、直接には使用者側の利益を代表する者ではない場合でも(下級職制や別組合員など)、会社側の意を体して行った行為に対して、不当労働行為と認められる場合もあります。
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使用者側がこれらの行為を行った場合は、不当労働行為となります。 |
例1 |
使用者側が、組合員であるあなたに対して「組合をやめなければ、解雇する」と発言すれば、組合員であることを理由とした不利益取り扱いということになり、不当労働行為となります。
あなたがもし組合の幹部であれば、状況によっては支配介入となるかもしれません。 |
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例2 |
あなたが会社に入社する際に、「組合に入らないのであれば、採用する」と言われたとすると、これは黄犬契約と呼ばれる不当労働行為であり、この契約は無効となります。
ですから、もしあなたが「わかりました。」と一旦それを承諾して入社し、その後組合に入っても、会社はそれを理由に解雇することは出来ません。 |
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例3 |
組合側が賃上げを要求して、会社側に団体交渉を申し入れているのに、会社側が団体交渉に応じない。やっと応じたと思ったら、ただ「賃上げできない。」の一点張りで、交渉にならない。
もし使用者側が理由も示さず団交に応じないとなれば、団交拒否となる。あるいは、交渉に応じたとしても実質的な協議を行わないとなれば、不誠実団交ということになり、これも団交拒否に相当すると考えられる。 |
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例4 |
組合が賃上げのため、争議行為を予定している時期に、会社側が組合員に対して、「争議行為に参加したら、解雇する」と脅迫した。
この行為は、会社側が組合の正当な組合活動に介入することになり、いわゆる支配介入にあたる不当労働行為である。 |
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例5 |
会社が組合員の一部に呼びかけて、別組合を結成させ、別組合に対して資金提供を行った。
これらの行為は、自主的でない組合を結成させ、組合の結束を乱し、別組合に資金提供を行っているので、支配介入にあたる。 |
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例6 |
組合が会社側の不当労働行為に対して、労働委員会に救済申立てを行った。すると会社側が、組合幹部に対して「労働委員会への救済申立てを取り下げなければ、解雇する」と脅迫した。
この行為は、労働委員会へ救済申立てをしたことに対する報復的不利益取り扱いとなる不当労働行為である。 |
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例7 |
会社側が組合との交渉がうまくいかず、偽装倒産をして従業員を全員解雇した上で、新会社を設立し、非組合員のみを再雇用した。
この場合、新会社は旧会社と同一性を有すると考えられ、組合活動を忌避して偽装倒産を行ったと考えられるので、不当労働行為である。 |
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例8 |
あなたが組合を結成しようとして準備委員会を結成し、組合員を集めるべく活動していることを知った会社側が、些細な過失を理由にあなたを懲戒解雇しようとした。
この場合、まだ組合の結成がなされてはいないが、組合を結成しようと活動していることを知った会社側がそれを忌避して、解雇を強行しようとしたので組合員であることを理由とした不利益取り扱いと考えられ、不当労働行為となる。 |
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こんな行為は、不当労働行為になりません。 |
例1 |
会社側が、新結成された組合側からのチェックオフ(組合費の天引き)を拒否した。
判例では、会社側には必ずしもチェックオフを行う義務はないとされているので、このことだけを理由として不当労働行為とは言えない。そもそもチェックオフ自体は、いわば給料の天引きなので法的には多少疑義があると言われている。 |
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例2 |
会社が新たに支店を開設し、本社の従業員の中から選抜して配置転換を行ったが、その中に組合員が含まれていた。
この場合は、配置転換自体に合理性があると考えられるし、その中に組合員が含まれていたからといって、ただちに不当労働行為とはいえない。ただし、それが組合幹部だったりすると、場合によっては不当労働行為となり得る。 |
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例3 |
会社側と組合側が賃上げ交渉を繰り返し5回行い、会社側は経営状況を資料で示して、これ以上の賃上げは無理だと主張した。
組合側も一歩も譲らず、とうとう物別れに終わった。会社側は、これ以上の交渉には応じられないと通告してきた。
この場合は、会社側は団交に応じており、資料も提供して、賃上げが無理だと説明しているので、不誠実団交とも言えない。
主張が平行線で、これ以上交渉しても進展がない状況で、組合が新たな提案をしていないのであれば、会社側が交渉の打ち切りを主張しても、それがただちに不当労働行為とは言えない。 |
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例4 |
組合が争議行為を行い、営業所を占拠し社有車の鍵を奪い、会社が営業できなくした。この争議行為の後、会社側が組合幹部に対して懲戒処分をおこなった。
この場合は、会社側の財産権を不法に侵害しているので、正当な組合活動を逸脱した行為であると考えられる。
よって、組合幹部を懲戒処分にした会社側の行為は正当であると考えられる。 |
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例5 |
組合が分裂し、会社側が新組合と労働協約を締結した。旧組合が、組合差別だと主張し交渉を申し入れたが、数度の団体交渉でも労働協約締結には至らなかった。
この場合、2つの組合が併存し、会社側が一方と協約を結ぶこと自体は、何ら不当ではない。団体交渉も応じているので団交拒否にもならない。
旧組合は、新組合が御用組合だと主張することもできるが、その証明が出来ない限り、会社側の不当性を立証することは困難であろう。 |
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