労働協約とは、労使が団体交渉によって取り決めた労働条件やその他の事項を書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印したものをいいます。(労働組合法第14条)
労働協約の内容は、労働関係法などの法令や公序良俗に反しない限り、労使が自由に取り決めることができます。
一般的には、
1)賃金、労働時間、休日、休暇などの労働条件
2)昇進、解雇などの人事の基準
3)安全衛生、災害補償、福利厚生など
4)組合活動、ショップ制、団体交渉
などが考えられます。
労働協約が締結されていると次のような効力を持ちます。
1)平和義務
労働協約の有効期間中に、その協約に定められた事項の変更を要求して、争議行為を行うことは許されません。
2)規範的効力
労働協約で定められた労働条件やその他労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約や就業規則は、違反する事項は無効となり、労働協約が優先します。(労基法第92条、労組法第16条)
3)債務的効力
労働協約のうち団体交渉のルールなど使用者と労働組合との関係を規律した債務的部分については、一般の契約と同様に当事者間に債権債務の関係が発生します。
このなかでも重要なのが2)です。つまり労働協約が就業規則に優先するという点です。 就業規則は、ある程度会社側が一方的に変更できますが、労働協約を締結してしまうと、それが意味をなくすことになるわけです。ただし、これはあくまで組合員に適用される事項なので非組合員にもそのまま適用されるということではありません。
これについては、労働協約の拡張適用と呼ばれる条件を満たす必要があります。(後述)
しかし、労働協約にも有効期間というものがあります。一度締結した労働協約も社会の情勢の変化とともに、労働条件の変更が必要となる場合もあり得るからです。 労働協約の有効期間の定めは3年をこえることはできず、3年をこえる定めをしたものについても3年とみなされます。
ただし、有効期間が定めにより更新された場合は、その都度締結されたものとみなされます。
また、期間の定めのないものを解約する場合は、少なくとも90日前に文書による解約の予告が必要です。(労組法第15条)
ですから、組合側としては現在締結している労働協約に不満がなければ、黙っていればいいわけです。
逆に組合側に不利な労働協約は、一度締結すると最大3年間も不利な状況が続くので、避けなければいけません。
最後に労働協約の拡張適用について説明します。
労働協約の拡張適用とは、一つの工場や事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上が、一つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種の労働者にもその協約が適用されます。(労組法第17条)
また、一つの地域の同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けている場合には、当事者の申立て等によって、労働大臣又は知事は、労働委員会の議決を経て、その地域の他の同種の労働者及び使用者にもその協約の適用を受けることを決定できます。(労組法第18条)
これにより、非組合員も労働協約の適用を受けるという場合があり得るわけですが、反面問題もあります。
というのもその労働協約が従業員にとって不利な内容が含まれる場合、非組合員までが望まないのにその影響を受けてしまうわけです。
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