B 補助記憶装置
補助記憶装置は、プログラムおよびデータを長期間保持するための記憶装置である。
主記憶装置と比較して、アクセス速度は劣り、記憶容量は大きいのが通常である。
主記憶装置は、電気的に情報を保持することから電気が切れると内容も消えてしまい、長期の保存には向いていない。そこで補助記憶装置は、電気が切れても内容が保持できるように工夫された記憶方法で保持するように考えられている。
補助記憶装置にもいろいろな装置が存在するが、現在のパソコンでたいてい標準的に装備しているのは、ハードディスク、光学ドライブ、フロッピーディスクドライブの3種類である。
1) ハードディスク
ハードディスクは、現在のパソコンでは主力の補助記憶装置であり、大容量高速化が著しい。
現在のパソコンでは、ほぼ必ず内蔵していると考えてよい。
標準装備のハードディスクの記憶容量は、80GB〜160GB程度である。
さらに大容量のハードディスクも出回っており、500GBにも達するものもある。
ハードディスクは、プログラムおよびデータを大量に保持し、必要に応じて主メモリに転送するための装置であり、アクセス速度は、補助記憶装置の中では最大であり、群を抜いている。またランダムアクセスが可能であり、読み書きも自由である。
ただし記憶媒体は、内部に固定であり、通常のものは媒体の交換が不可能である。
 (一部のハードディスクでは交換できるものもある。)
ハードディスクは、内部に金属製の円盤が数枚入っており、磁気記憶により情報を保持できる。
読み書きは、磁気ヘッドで行うがヘッドは、ディスクとは接触しない。
ディスクは、非常に高速で回転するので(5400回転〜7200回転程度)もしヘッドが回転中に接触すると、破壊されてしまう(ヘッドクラッシュ)ので衝撃を与えないようにしないといけない。
ハードディスクは、インタフェースの違いで分類できるが、現在のハードディスク用標準インタフェースは、UltraATA(IDE)とSerialATA(SATA)の2種類がある。
既に標準装備のハードディスクは、SATA接続が一般的です。
また通常はハードディスクは本体に内蔵しているが、外付にする場合は、SCSIインタフェースを搭載するかUSB接続のハードディスクの採用が考えられる。
ただしSCSIインタフェースは高価なので、サーバ用など特別な場合を除いて、採用するのはあまり得策ではないと思われる。
ここでは、まずIDEインタフェースと周辺機器の接続方法について説明する。
※IDEインタフェースの接続方法
  
IDEインタフェースは、2系統(ブライオリとセカンダリ)があり、それぞれに2台(マスタとスレイブ)が接続でき、合計4台まで接続可能である。
本来、IDEはハードディスク専用のインタフェースであったがCD-ROMなどそれ以外のIDE対応機器も接続できるE−IDEが登場するようになり、現在IDEといえば必ずE−IDEであるから、ここでIDEと呼べばE−IDEのこととする。
またハードディスク以外の機器とIDEを接続する規格は、ATAPIと呼ぶがこれも ここではIDEと統一して呼ぶものとする。
いずれにしてもIDE機器を増設する場合は、内蔵なのでファイルベイが空きがないと増設できない。実際にはタワー型パソコンでないと増設はできないケースが多い。
IDEインタフェースには、大きく分けてPIO転送モードとDMA転送モードがあり
DMA転送の方が転送速度が大きく、CPU負荷も小さく有利である。
ハードディスク側にもPIO転送にしか対応しないものがあり、インタフェースとハードディスクの両方がDMA転送に対応する場合のみ、DMA転送が可能となる。
ただし、どのような組み合わせでも後に述べる容量制限の条件を満たせば、接続そのものは可能である。
IDEインタフェースの主な転送モードについての一覧を次に揚げる。
転送モード 転送速度 備  考
PIOモード2  8.3MB/s NEC PC9821のほとんどと旧型DOS/Vの一部
PIOモード3  11.1MB/s NEC PC-9821の一部
PIOモード4  16.6MB/s 旧型DOS/Vの一部
UltraATA/33  33.3MB/s DOS/Vマシン
UltraATA/66  66.6MB/s 比較的新しいDOS/V
UltraATA/100  100MB/s 最新のマザーボードに搭載されている。
UltraATA/133   133MB/s  最新のマザーボードに搭載されている。 
また、一部の旧型パソコンでは、IDE接続できるパソコンに対して容量制限がある。
最新のパソコンでは、容量制限は事実上ない。
少し前のパソコンではハードディスク容量が最大137GBという制限があったが、BigDrive規格(48bit IDE)が登場したためこの問題は解消された。
もしBigDriveに対応していないパソコンの場合でもBigDrive対応のUltraATAカードを搭載して、大容量ハードディスクを搭載すればよい。
※SerialATAインタフェース
SATAは、比較的最近登場したハードディスク用インタフェース規格である。
この規格の最大の特徴はこれまでのIDEと異なりシリアル転送であることである。
そのためケーブルも細く、インタフェース部分も小さく作れ、取り回しも容易であり、構造が単純で高速化が図りやすいことである。
第1世代のSATAは転送速度が150MB/sとUltraATA133よりも高速であり、既に300MB/sの転送速度を持つ第2世代SATAも登場していてさらに今後も高速化が図られる予定である。
SATAは、IDEが1本のケーブルに2台までユニットを接続できるのに比べて、1本のケーブルに1台しかユニットを接続できないので、RAIDなど多数のハードディスクを接続したい場合は、コネクターが台数分必要となる。
 SerialATAインタフェース SerialATAケーブル
※SCSIインタフェース
SCSIインタフェースは、本来ハードディスク接続用に開発されたパラレルインタフェースでIDEインタフェースに比べて転送能力に優れているのが特徴である。
またCPU負荷もIDEに比べて小さく、有利な点が多い。ただし、IDEに比べてインタフェースも接続する機器もどうしても高価になりがちで、現在では標準装備しているパソコンは非常に少なく、ほとんどが別売りでSCSIインタフェースボードをPCIスロットに装着しなければならない。
また、現在ではハードディスク以外に各種リムーバブルディスク、CD−R、スキャナ等の周辺機器もSCSI対応のものが多く、このような機器を利用したい場合は、SCSIボードが必要となる。 
SCSIボードから対応機器(外付)への接続方法は、次の図のように行う。

SCSI機器にはSCSIコネクタを2つ持っていて、SCSIアダプターからのケーブルと他のSCSI機器へ接続するためのケーブルを接続できるようになっている。このようにいもずる式に接続していく方法をディジーチェーンと呼ぶ。
このことから1枚のSCSIボードに複数のSCSI機器を接続できることになる。
注意すべき点は、各SCSI機器には、ID番号が設定できるようになっていて、その番号が重ならないようにすることと、最後のSCSI機器のコネクタの1つが余るのでそこへターミネータ(終端抵抗)を装着することである。
最近のSCSI機器では、ターミネータの代わりにスイッチでターミネータと同様の機能を持つものが多く、この場合最後の機器だけスイッチをONにする。
いずれにしても接続できる台数、およびケーブル長には制限があり、SCSIインタフェース側の規格とSCSI機器がそれに対応するかで条件が大きく異なることになる。
いずれにしても、ケーブル長はできるだけ短くし、品質のよいケーブルを使用するようにすればトラブルが起こる可能性は低くなる。
またSCSIボードにも規格が異なるボードが存在し、その転送能力に違いがある。
それに接続するSCSI機器もどのSCSI規格に対応するか異なる。
 次の表は、主なSCSIインタフェースの規格とその転送能力の一覧である。
SCSIの規格 転送能力 接続台数 データバス 備  考
SCSI-1 5MB/s 8ビット 最初に登場したSCSI
SCSI-2 10MB/s 8ビット 最近までの主流
UltraSCSI 20MB/s 8ビット 現在の主流
UltraWideSCSI 40MB/s 15 16ビット 最大ケーブル長25m
Ultra2WideSCSI  80MB/s  15  16ビット  サーバー用 
SCSI機器も接続するボードの規格に対応していないと、その転送能力は小さい方に合わせられてしまうが、接続することはできる。ただしSCSIボードとSCSI機器のメーカーが異なる場合、相性の問題が起こって、トラブルが発生する可能性は絶えずあるので注意が必要である。
※SCSIハードディスク
SCSIハードディスクは、内蔵タイプと外付けタイプがあり、いずれもSCSIボードが必要となる。
基本的な構造は、IDEハードディスクと特に違いはないがインタフェース部分が複雑でコスト的にはIDEハードディスクより高価である。
また転送能力もIDEと比べてやや勝る部分もあるが実際のファイル転送になると有意な差があるわけではなく、コストパフォーマンスはIDEハードディスクに比べて悪い。だが、省スペースコンパクト型パソコンのように内部への拡張性がないパソコンの場合、ハードディスクを増設する手段としては、このSCSIハードディスクの導入がもっとも一般的である。この方法であれば、ハードディスク以外のSCSI機器も接続できるのでその場合はおすすめの方法である。
ただし、ハードディスクのみの増設の場合は、内蔵IDEハードディスクを大容量のものに交換した方がコスト的には有利である。
内蔵SCSIハードディスクを使用する場合は、SCSIボードにも内部接続用のコネクターを持つタイプを使用しないといけない。
最近のSCSIボードは、たいてい内部接続用コネクターを持っているが、旧型のSCSIボードでは、それがない場合もあるので注意が必要である。
またすでにSCSIボードを装着している場合は、その規格より高速のハードディスクを接続してもSCSIボード側の転送速度に合わせられてしまうので本来の能力を発揮できないから注意が必要である。もちろん使えない訳ではない。