海上自衛隊の潜水艦 |
潜水艦「ゆうしお」型 SS "YUUSHIO" Class |
スペックデータ |
基準排水量 |
基準:2,200t(5番艦以降50t増)水中:2,900t |
主要寸法 |
76x9.9x10.2x7.4m
(長さ、幅、深さ、喫水) |
船型 |
完全複殻式(涙滴型) |
主機械 |
ディーゼル・エレクトリック方式
川崎V8V24/30mAMTL型
ディーゼルエンジン×2基
SG-4型主発電機×2基
SM-4型主電動機×1基
5翔式スクリュープロペラ 1軸 |
馬 力 |
水上3,400PS/水中7,200PS |
速 力 |
水上:12ノット/水中:20ノット |
主要兵装 |
HU-603 533mm魚雷発射管×6門
(72式1型・80式・89式魚雷・ハープーンUSM )
シュノーケル |
定 員 |
75名 |
同型艦 |
SS-573「ゆうしお」
SS-574「もちしお」
SS-575→TSS-3602 「せとしお」
SS-576→TSS-3603 「おきしお」
SS-577「なだしお」
SS-578→TSS-3604「はましお」
SS-579「あきしお」
SS-580「たけしお」
SS-581→TSS-3605 「ゆきしお」
SS-582「さちしお」 |
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潜水艦「ゆうしお」型について
3次防(第3次防衛力整備計画)で建造された涙滴型通常動力潜水艦 「うずしお」型の性能向上型として建造された潜水艦。
航続力の増加や潜水深度の増大、指揮装置の大型コンピュータ化などを図った結果、「うずしお」型よりも排水量が約400トンほど増加した。「うずしお」型と同じ様な艦型であるがセイル(艦橋)が若干前に寄った感じがする。
本型は、1,850トン級のうずしお型SSを元に胴体を4メートル延長して、武器・操縦システムの増強、潜航深度の増大、スクリューの改善および防振・防音措置の強化による静粛性向上を図ったものと言えます。当初は2,400トン超級への大型化が懸念されていましたが、新開発のNS80調質高張力鋼の採用によって、2,200トン級でおさめることに成功しています。
基本的な設計思想はうずしお型と同様であり、船型はSSS型(涙滴型船型・1軸推進方式)、構造様式は複殻式で、耐圧殻はシェーカー型、甲板は3層構成となっています。ただし耐圧殻素材としては、上記の通り、新開発のNS80調質高張力鋼(降伏耐力80
kgf/mm2)が導入されています。1,2番艦)ではうずしお型で用いられていたNS63調質高張力鋼との混用であったが、3番艦以降では、耐圧殻全体にNS80が用いられるようになり、潜航深度が更に増大しています。また船体の延長に伴い、セイル後方に平行部分ができています。なおハッチ構成については、うずしお型の後期建造型では魚雷搭載口と中部昇降口を兼用化して開口部を減らすことで潜航深度の増大を図っていましたが、動線の面で非合理的な部分が多く、本型では再び分離されています。
機関構成と出力はうずしお型最終型と同様ですが、主蓄電池には容量増大および放電効率の改善などの改良が加えられており、内部構造の改善によって2段式として充電時間の短縮と補給水の減少を図ったものと推測されています。あわせて新開発の大容量電流遮断機なども搭載され、水中持続力が向上しています。なお、水中放射雑音低減のため、推進器としては5翔式のスキュー付きスクリュープロペラが初採用されたほか、主電動機の回転数減少、プレーリー・マスカー遮音装置の装備(1番艦は後日装備)などが行われています。
本型の装備面での最大の特徴が、潜水艦指揮管制装置(SCDS)の導入と言えます。これは、うずしお型最終型で採用された魚雷発射指揮装置のディスプレイ機能を発展させたもので、測的機器や航海計器からのデータを受信して目標の運動解析を行い、戦術情報の提供、攻撃兵器の発射と航法の支援、有線誘導魚雷の管制などの機能を備えています。
1?6番艦で搭載されたZYQ-1はデジタル化システムであり、複数目標への対処を実現した。また7?10番艦ではZYQ-2に更新され、システム化が更に進展したほか、潜水艦用慣性航法装置(SINS)も導入されています。
ソナーについては、当初はうずしお型最終型で採用された、艦首装備のZQQ-3統合ソナーとセイル中段前縁装備のSQS-36J探信儀の組み合わせが踏襲されたが、6番艦「はましお」以降では、統合ソナーは完全デジタル式のZQQ-4に更新され、またSQS-36Jの装備位置も潜舵の下方に変更されたほか、セイル後部に魚雷警報装置が装備されて、コブ状の突起ができている。さらに4番艦「おきしお」は、アメリカから対外有償軍事援助(FMS)で購入したAN/BQR-15曳航ソナー(STASS)を搭載し、これにともなってセイル脇から艦尾にむけて鞘が設置されています。この改正は他の艦にも逐次実施されています。なお潜望鏡配置としては、従来とは逆に、哨戒潜望鏡が前、攻撃潜望鏡が後ろとなっています。
魚雷発射管の配置は、船体中部に片舷あたり3門ずつ、計6門を搭載するといううずしお型の方式を踏襲していますが、その形式はHU-603に更新されています。搭載魚雷としては80式及び72式1型魚雷を搭載しています。また5番艦「なだしお」以降の6隻はハープーン対艦ミサイルの運用能力を持ち、水上排水量が2,250tに増大しています。
平成8年度から当クラスの潜水艦は老朽化のためと定数保持(16隻)のために練習潜水艦へ種別変更や除籍廃艦が行われている。平成20年3月7日には、最後に残っていた練習潜水艦「ゆきしお」が除籍となり、「ゆうしお」型潜水艦はその歴史の幕を閉じた。
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潜水艦「はるしお」型 SS "HARUSHIO" Class |
スペックデータ |
基準排水量 |
基準:2,450トン/水中:3,200トン |
主要寸法 |
77x10.0x10.5x7.7m(長さ、幅、深さ、喫水) |
船型 |
完全複殻式(涙滴型) |
主機械 |
ディーゼル・エレクトリック方式
川崎12V25/25Sディーゼル×2基
主発電機 (2,840 kW)×2基
主電動機×1基
7翔式スクリュープロペラ 1軸 |
馬 力 |
水上3,400ps / 水中7,200ps |
速 力 |
水上:12ノット / 水中:20ノット |
主要兵装 |
HU-603B 533mm魚雷発射管×6門
(80式・89式魚雷・ハープーンUSM)
シュノーケル装置 |
定 員 |
75名 |
同型艦 |
SS-583「はるしお」
SS-584「なつしお」
SS-585→TSS-3606「はやしお」
SS-586「あらしお」
SS-587「わかしお」
SS-588→TSS-3607「ふゆしお」
SS-589→TSS-3601「あさしお」 |
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潜水艦「はるしお」型について
「うずしお」型・ 「ゆうしお」型に続いて建造された第3世代の涙滴型潜水艦。技術的にはこれまでの延長線上にあり飛躍的な発達はないが、「ゆうしお」型をベースに静粛性強化や水中行動能力の向上などが図られている。また艦内スペース拡大に伴い「ゆうしお」型に比べ1メートルほど全長が延びている。
海上自衛隊の潜水艦は最大潜行深度については機密として公表されていないが、「はるしお」型は耐圧船殻の一部にNS110高張力鋼が使用されており、潜行深度は300メートル以上であると推定されている。
本型は、涙滴型船型・1軸推進方式のいわゆるSSS(Single Screw Submarine)型、構造様式は完全複殻構造と、基本的な設計思想ではうずしお型以来の方式を踏襲しています。その一方で、本型は主電動機の防振支持や主機関の二重防振支持、補機・管系の徹底した防振対策、電源装置の静止形化、艦底開孔部の整流、プロペラの多翼スキュー化、制振材使用など、各種の水中放射雑音低減策が盛り込まれています。
これらの対策によってマスカー遮音装置は不要と判断されるほどになり、また本型の後期型では、ソノブイが見えるまではシュノーケル航走を続けても探知されないとされるほどに静粛性に優れたものとなっています。
これらの各種措置のために必要な空間・重量の増大は、耐圧殻の後部側の直径を若干拡大することによって収容されており、結果として、基準排水量は50SSの2,200トン級から2,450トン級へと増大しています。耐圧殻素材としては、ゆうしお型で採用されたNS80調質高張力鋼(降伏耐力80
kgf/mm2)とともに、新開発のNS110が導入されています。これはその名の通りに降伏耐力110 kgf/mm2の性能を確保しており、この種の鋼材としては画期的なもので、本型の潜航深度増大に大きく寄与しています。
ディーゼルエンジンとしては、「おおしお」型SS以来用いられてきた川崎/MAN V8V 24/30シリーズにかえて、川崎重工業が独自に開発した12V25/25S型が採用されています。これは回転数1,200
rpmの高速4サイクル・ディーゼルエンジンで、その名の通りにボア・ストロークともに250ミリ、排気ターボ過給と機械駆動過給の2段過給方式を採用することで、出力増加(水上3,100馬力、シュノーケル運転時2,700馬力)に加えて、シュノーケル運転時の起動の確実性と優れた加速性の確保を図っています。この高回転・高出力ディーゼルエンジンの採用に対応して、主発電機は交流発電機とされています。発電された交流電流は、静止形整流器によって直流に変換されます。電動機は、水中放射雑音低減のためさらに低回転化されているが、その出力は50SSと同様であるため、ディーゼルエンジンの出力増加は充電能力強化につながっています。蓄電池は120基を4群の計480基であり、高エネルギー密度の新型水冷撹拌クラッド式鉛電池を採用することで、水中持続力の向上につながっています。
装備面での最大の特徴は、初のデジタル化ソナーであるZQQ-5の採用であろう(2番艦以降ではZQQ-5Bに更新)。前方ソナー・逆探ソナーとともに、62SSでアメリカからの輸入によって導入された曳航ソナー(STASS)も、ZQR-1として国産化のうえで統合されており、これに信号処理部と操作表示部を加えてシステム構築されています。また、赤外線探知装置、曳航式VLFブイ・衛星通信受信装置なども、海自潜水艦としては初めて採用されています。潜水艦指揮管制装置(SCDS)は、ゆうしお型の最終2隻(57SS以降)で搭載されたZYQ-2に小改正を加えたZYQ-2Bが搭載されています。
魚雷発射管の配置は、船体中部に片舷あたり3門ずつ、計6門を搭載するといううずしお型以来の方式を踏襲しているが、その形式はHU-603Bに更新された。また本級で、新型の89式魚雷が装備化されている。
基本的に「ゆうしお」型の拡大改良版のためシルエットは似たものとなっているが、唯一外見で異なる部分が艦首上部に突き出た逆探知ソナーの突起部であり、この部分で見分けることが可能である。
最終艦の「あさしお」は平成11年度に実施された練習潜水隊の新編に伴い、練習潜水艦(TSS3601)へ種別変更されている。従来は旧式な潜水艦を特務艦に種別変更して潜水艦乗員の育成に使用してきたが、老朽化した艦のため潜水深度などの制限が課せられていた。実戦配備されている艦と同じ探索・攻撃設備を有した新造艦の「あさしお」が練習潜水艦として配備されることで教育効果が高まるのが期待されている。
既に、「あさしお」が練習潜水艦として運用されている以外には、同型のすべての艦が除籍となっている。
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潜水艦「おやしお」型 SS "OYASHIO" Class |
スペックデータ |
基準排水量 |
基準:2,750トン/水中:3,500トン |
主要寸法 |
82x8.9x10.3x7.4m(長さ、幅、深さ、喫水) |
船型 |
複殻式(一部単殻) |
主機械 |
ディーゼル・エレクトリック方式
川崎12V25/25Sディーゼル2基
メインモーター (5,700 kW)×1基
スクリュープロペラ ×1軸 |
馬 力 |
水上:3,400 PS/2,500 kW
水中:7,700 PS/5,700 kW |
速 力 |
水上:12ノット/水中:20ノット |
主要兵装 |
HU-605 533mm魚雷発射管×6門
(89式魚雷・ハープーンUSM)
シュノーケル装置 |
定 員 |
70名 |
同型艦 |
SS-590→TSS-3608「おやしお」
SS-591「みちしお」
SS-592「うずしお」
SS-593「まきしお」
SS-594「いそしお」
SS-595「なるしお」
SS-596「くろしお」
SS-597「たかしお」
SS-598「やえしお」
SS-599「せとしお」
SS-600「もちしお」
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潜水艦「おやしお」(2代)型について
三世代にわたり性能向上を行ってきた涙滴型潜水艦でしたが、この海上自衛隊最新鋭の潜水艦は涙滴型から脱却し葉巻型とでもいえる形状へ変化しています。そのため涙滴型ではズングリしていた艦型も細長いものとなり艦の最大幅は減少しています。従前は艦首部にだけ装備していたソナーだが、この「おやしお」型からは船体全部を感知部とする新型のコンフォーマル・ソナーを装備しており、探知追尾性能は格段に向上しています。また新型の戦闘情報処理システムも搭載しており、攻撃能力も高められています。
対ソナー対策も充実しており、船体やセイル側面にはゴム製の遮蔽タイルが貼り付けられている。なお最新技術により省力化が進んでいるため定員数は若干減少している。
船体の構造は、船体前後が複殻、中部が単殻の部分単殻構造であり、複殻部分は外フレーム式、単殻部分は内フレーム式とされている。これは、船体中部への側面アレイ・ソナーなどの設置を織り込んだ設計であった。側面アレイ・ソナーの取り付けには極めて高い精度が求められることから耐圧殻への設置が望ましく、従ってこの部分は単殻構造となる必要があった。また従来の涙滴型船型では魚雷発射管が船体中部寄りに設けられていたが、これでは船体装備の側面アレイ・ソナーと干渉することから、魚雷発射管を船体前方に移動させる必要から、艦首ソナーと上下に並べて設置できる葉巻型船型が採択されたといえます。
本型の設計の特徴の1つが、全般的なステルス化です。1980年代後半当時、対潜戦水上艦艇において、AN/SQS-53や75式探信儀 OQS-101など、大出力・低周波の探信儀(アクティブ・ソナー)の配備が進んでいますが、これらは状況次第では第1収束帯(1CZ)以遠という超長距離での潜水艦探知をも期待しうる性能を備えています。艦型拡大に伴うターゲット・ストレングス(TS;
レーダーでのRCSに相当する概念)増大もあり、水中放射雑音の低減にとどまらない全般的な対策が求められるようになっていました。このことから、本型では新開発の水中吸音材が導入されています。これは、外部の音に対して逆位相になるような音を加えることでこれを打ち消すというパッシブノイズキャンセラでした。ただし、低周波ソナーに対応できる吸音材はかなり分厚く、船体全部に貼り付けることは難しかった。このため、セイルには単なる反射材を設置するなど使い分けがなされています。セイルの外板は傾斜しており、ステルス機の対レーダーステルスと同様、探信音を発振元に戻さないようにすることで探知を避けることを狙っています。
機関はおおむねはるしお型SSのものが踏襲されており、ディーゼルエンジンとしては、V型12気筒の高速4ストローク機関である川崎重工業12V25/25S型が採用されています。ただし、葉巻型船型の採用と排水量の増大に対応して主電動機は強化されており、水上3,400馬力、水中7,700馬力とされています。また主蓄電池も改良されています。
また本型では、ディーゼル主機の発停・シュノーケルの終始、トリム注排水移水、発射管注排水の自動化や操舵操縦のワンマン・コントロール化など、省力化・自動化が大幅に導入されていて、発令所の艦制御コンソール(MCC/SCC)からの一元制御とされています。
装備面での最大の特徴が、ZQQ-6ソナーの搭載といえます。これは艦首の円筒アレイ(cylindrical array: CA)と側面アレイ(frank
array: FA)、曳航アレイ・ソナー(TAS)および逆探ソナーによって構成される統合ソナー・システムです。側面アレイでは、船体方向に長くアレイを配置することで、円筒形アレイよりも低い周波数に対応できるようになっています。これはTASと同じ発想であるが、TASではアレイの揺れなどのために探知方位が曖昧であり、適宜の変針による測定が必要でした。これに対し、本型で採用された側面アレイでは、アレイは耐圧殻に直接固定されているために曖昧さがなく、またより多彩な戦術状況で運用できます。また面圧電素子の採用によって探知能力も向上したほか、後期建造艦では側面アレイへの雑音伝播遮断が高度化され、さらに有効性が高まっています。円筒アレイについても、はるしお型後期型と同様のラバードームが導入されています。
ただしこれにより、円筒アレイと側面アレイの間で、目標情報の整合化を図る必要が生じてきた。前者は比較的高い周波数、後者は比較的低い周波数を用いるため、それぞれの目標について、同じ目標から発される別の周波数の音なのか、あるいは異なる目標なのかを判別しなければならなくなったのである。また6本という多数の魚雷を同時誘導可能な潜水艦情報処理装置ZYQ-3の搭載に伴って、多数目標の現在方位についての的確な情報送出も求められるようになった。しかし急激に変針を繰り返す目標の取り違えを防ぎつつ、潜水艦情報処理装置に対して頻繁に方位を送出し、さらに攻撃対象以外の目標の把握や敵潜水艦への警戒を行う場合、従来システムではソナー員がオーバーロードとなる恐れが大きかったことから、ZQQ-6では大幅に自動化されています。また、ZYQ-3とともに艦のコントロール系と武器系のコンソールの統一化が進められており、ZQX-1B水冷式共通コンソールが用いられています。発令所のレイアウトも、潜望鏡を中心として各種の機器が並んでいた従来方式から、左右舷に統一されたコンソールが置かれた配置に変更されています。なお、潜望鏡にはIR探知装置(熱線映像装置)も備えられています。上記の通り、6門の魚雷発射管HU-605は艦首上部に集中装備されている。上部2門・下部4門が並行装備とされており、発射可能水中速力は向上しています。また、機雷を敷設する能力もあり、新型の自走式機雷も装備できるとされています。また、デコイ発射装置も装備されています。
また3番艦「うずしお」以降で固体アミン式炭酸ガス吸収装置、4番艦「まきしお」以降で主電動機の電機子チョッパー化、5番艦「いそしお」以降で昇降式アンテナなど、順次に装備の更新が図られています。
現在も「おやしお」型潜水艦は主力潜水艦として活動中であり21世紀の潜水隊を支える中心となるでしょう。
2015年3月6日、「おやしお」が練習潜水艦に種別変更されています。
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潜水艦「そうりゅう」型 SS "SOURYU" Class |
スペックデータ |
排水量 |
基準:2,900t / 水中:4,200t |
主要寸法 |
84x9.1x10.3x8.5m
(長さ、幅、深さ、喫水 |
主機械 |
ディーゼル・スターリング・エレクトリック方式
12V25/25SBディーゼル2基
4V-275R MkIIIスターリング機関4基
推進電動機1基 |
馬 力 |
水上:3,900ps/水中:8,000ps |
速 力 |
水上:13ノット / 水中:20ノット |
主要兵装 |
HU-606 533mm魚雷発射管×6門
(89式魚雷、ハープーンUSM)
シュノーケル装置 |
定 員 |
65名 |
同型艦 |
SS-501「そうりゅう」 SS-502「うんりゅう」
SS-503「はくりゅう」 SS-504「けんりゅう」
SS-505「ずいりゅう」 SS-506「こくりゅう」
SS-507「じんりゅう」 SS-508「せいりゅう」
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潜水艦「そうりゅう」型について
海上自衛隊初のAIP(Air-Independent Propulsion、非大気依存推進)潜水艦である。そうりゅう型は、性能面では従来艦と比較して大幅に向上しており、水中排水量4,200tは現代の通常動力潜水艦としては世界最大となる。
船体はおやしお型とおなじ“葉巻型”だが、舵に水中運動性が高く舵損傷の危険の少ないX舵を採用している。
前級のおやしお型では、船体及びセイル側面にとどまっていた吸音タイルが、船体の上構部を始め艦全体に取り付けられ、セイル前面基部にフィレットと呼ばれる流線形の覆いを追加し、静粛性向上が図られている。
本型では長さ11メートルのAIP区画を挿入したにもかかわらず、艤装の高密度化によって全長は2メートル程度の延長で収まっていて、船型についても、「おやしお」型SSと比べると艦首や艦尾の曲線が変更され、セイルをやや前方に移動させ、その基部にフィレットと呼ばれる流線形の覆いを追加するなどの改良を加えていて、第2世代の葉巻型船型ということができる。
なお、AIP区画の挿入によって船体内は6区画とされ、セイルへの昇降は第1防水区画から行うように変更されています。また前部脱出筒と魚雷搭載口は、将来装備予定の個人脱出スーツ(Mk.10)の寸法に配慮して分離されています。
ターゲット・ストレングス(TS; レーダーでのRCSに相当する概念)低減のため、水中吸音材・反射材の装備やセイルの傾斜構造化を行った点では「おやしお」型と同様だが、本型では入射音を音源と異なる方向に全反射させる反射材が開発され、船体全てが水中吸音材または反射材で覆われることになりました。またフィレットの設置も、水中抵抗の低減とともに、乱流による雑音発生の低減による水中放射雑音削減に貢献しています。
外見上の最大の変化が前述する後舵装置(X舵)の採用であろう。従来は、回頭を担当する垂直舵(縦舵)と姿勢制御を担当する水平舵(横舵)による十字型舵を採用してきたのに対し、X舵ではこれらを45度ずつ傾けた形で装着して、4枚の舵すべてに回頭と姿勢制御の両方の役割を担当させる仕組みとなっています。この方式は機動性に優れるほか、舵面が1枚が損傷しても他の3枚で分担できることから冗長性にも優れ、また着底・沈座時にも舵面が損傷しにくいというメリットがあります。
「あさしお」のAIP化改造では、全長で約9m、基準排水量で340tの増加となったが、そうりゅう型では、機器の小型化やAIP区画以外の各区画でスペース圧縮が図られた結果、おやしお型と比較し前述するように全長で2m、基準排水量で150tの増加に留まった。省力化により乗員は逆に5名減少している。
海上自衛隊では次世代潜水艦のAIP(Air-Independent Propulsion、非大気依存推進)システムとして、スウェーデンのコックムス社のケロシンと酸素を燃料とするスターリング機関(4V-275R
MkII)の採用を決定し、2001年には練習潜水艦「あさしお」を改造して搭載し、実艦試験を行ってきた。
そうりゅう型ではその改良型である4V-275R MkIII(連続定格出力75kW、川崎重工業でライセンス生産)を4基搭載し、数日間が限度だった低速時の水中持続力を二週間以上に延長した。電動機は直流から交流へ変更されている。
ただしスターリングAIPシステムは出力が低い低速機(4〜5ノット程度)であるため、高速力を発揮する際には、従来通りのディーゼル・エレクトリック方式が用いられます。ディーゼルエンジンとしては、はるしお型SS以来用いられてきたV型12気筒の高速4ストローク機関である川崎重工業12V25/25Sの小改良型である12V25/25SBが搭載されています。
AIPとともに本型で導入された新機軸の1つが永久磁石同期電動機です。ハイブリッドカーや電気自動車、電車などでは既に使用されてきましたが、潜水艦用に交流電動機装備が開発されて搭載されたもので初めての試みといえます。
当初は、5番艦から、主蓄電池としてリチウムイオン蓄電池を搭載することで、艦の巡航速度を改善し高速航行可能な時間を増大させる予定となっていました。しかし財政上の理由により、実際の搭載は11番艦以降となっています。その際には水中持続力等向上のため、スターリングAIPと鉛蓄電池をすべてリチウム電池で置き換える方式に決定しています。
兵装としては、艦首上部に6門のHU-606 533mm魚雷発射管を装備しています。89式長魚雷及び、パープーンUSMを搭載しています。また8番艦からは新たに潜水艦魚雷防御システム(Torpedo
Counter Measures :TCM)が装備される予定です。魚雷発射指揮装置としては潜水艦発射管制装置ZYQ-51が搭載されているが、これはSLIに連接されてサブシステムとなっている。
潜望鏡は従来の光学式2本から、従来型と非貫通式潜望鏡1型(英国、タレスUK社製非貫通式潜望鏡CMO10を三菱電機でライセンス生産)各1本へ変更された。
ソナーシステムは、おやしお型のZQQ-6から「そうりゅう」はZQQ-7に、「うんりゅう」はZQQ-7Bに改良されている。
指揮管制支援ターミナル(C2T:Command and Control Terminal)の装備など新機軸も採用されている。
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