実例23.NEC PC−9821V16/M7にPC/AT機ビデオカードを搭載する。
PC−9821V16M7
PC−9821V16M7
ご存じのようにPC−9821シリーズにはAGPスロットがなく、ビデオカードを搭載しようとしてもPCIビデオカードを搭載するしかありません。
しかも現在販売されているPCIビデオカードはすべてPC/AT機用のもので、PC−9821対応ビデオカードは入手が困難です。
しかし一部のPC/AT用PCIビデオカードは、Windows2000上であればPC−9821でも動作可能であることが知られています。
この場合は、Windows2000用ドライバをインストールすることで動作が可能になりますが、どんな場合でも動作するわけではありません。
しかしWindows98では動作しませんので注意が必要です。
今回、使用したビデオカードはInno3D Tornade GeForce2MX/PCIです。
これはnVIDIA社製GeForce2 MXを搭載したローコストなPCIビデオカードですが、当然のようにPC/AT機用PCIビデオカードですのでPC−9821用ドライバなどあるはずもありませんが、Windows2000であれば動作することが報告されています。

さて、PC/AT機用ビデオカードがPC−9821で動作することを阻害する理由は次のような事が考えられます。
1) VGA BIOSを搭載しているのでこれがPC−9821上では不要どころか邪魔をすることがあります。
2) PC−9821用ビデオドライバーがない。
3) PC−9821が標準で搭載している内蔵98グラフィックスとビデオカードの切り替えがうまくいかない。

まず、1)ですがこれはPC−9821シリーズとPC/ATマシンの画面表示の仕組みの違いに由来するものです。
具体的には次のようになります

PC−9821マシンが動作するときのVGAの挙動について
@PC−9821マシンを起動するとき、まず内蔵98VGAが動作を開始する。この場合、DOS画面で表示される。 A本体が起動し、WindowsがロードされてVGAドライバが読み込まれるとドライバがPCI接続のGAを有効にしてGAによる表示を始める。

PC/ATマシンが動作するときのVGAの挙動について
@マシンが起動し始めると、GA内部にあるVGA BIOSが動作を開始する。いわゆるBIOS画面の状態である。 A本体が起動し、WindowsがロードされてVGAドライバが読み込まれるとドライバがGAによる表示を始める。
GeForce2MX
Tornade GeForce2MX/PCI

このことからわかるように、PC/ATマシン用のビデオカードを接続すると、PC/AT用ドライバでは、本体がWindowsをロードしてドライバを読み込んでも自動的に表示をGAに切り替えてはくれないわけです。
またPC/ATマシンは起動時にGAが持っているVGA BIOSが動作して起動画面の表示を始めるのですが、PC−9821では起動時に動作する専用の内蔵98VGAを持っているので、ビデオカードにはVGA BIOSは必要ないのです。
ハードウェア的にVGA BIOSを切り離せる場合は切り離すことでVGA BIOSを無効にできるのですが、そうでないビデオカードもあります。
今回採用した方法は、PCIセットアップユーティリティで空きのCバススロットに対してVGA BIOSが使うメモリアドレスを設定して、VGA BIOSが悪さをしないようにするという方法です。
この方法は、nVIDIA社製ビデオカードに対しては有効のようです。

2)は、Windows2000用ドライバを使うことで動作します。
WindowsNT4.0用ドライバでも動作可能な場合もありますが、Direct3Dも使えませんし、あまりおすすめできません。
ドライバもチップメーカー側のリファレンスドライバを使うか、Windows2000標準のドライバか、ビデオカードメーカーのドライバを使うかで結果が変わってくるので、すべて確認する方が良いでしょう。
動作する場合もパフォーマンスが異なる場合が考えられますので、パフォーマンスの良い方を使いたいところです。
問題は、3)ですが、PC−9821でPCIビデオカードを使用するときは、ビデオカードからRGB INへ付属のケーブルを接続し、モニターとは本体のANALOG RGBと接続するという方法をとります。
前述したように、PC−9821の本体にはWindows画面表示用のビデオカードとは別に、起動時に必要なMS−DOS画面表示用の内蔵98VGAが搭載されています。
そしてWindowsが動作する際に読み込まれた98用ドライバがPCIビデオカードへの切り換えを行っています。
ですからPC/AT用ビデオカードを搭載した場合は、Windows2000用ドライバが自動的に表示を切り換えてくれるなんて事はありませんので、最初からビデオカードとモニターを直接接続しておけばWindows画面は表示されますが、MS−DOS画面が表示されないので、起動時には画面が映らないわけです。
これだと何かあったときに困るので内蔵98VGAとPCIビデオカードの切り替えを自動的に行うためのドライバをインストールします。
今回使用するソフトは、九八 SystemsでおなじみのPOWER Xさんの作品で、DispFlip というものです。
これをダウンロードして解凍してからインストールしてレジストリを書き込んでやればいいのですが、かなり危険が大きいので自信のない向きはこの作業はしないで直接ビデオカードとモニターを接続してもかまいません。
ただし、MS−DOS画面が表示されないので、必要に応じて接続を切り換えないといけません。

実際の作業は、PC−9821V16/M7をプラットホームとして次のように行いました。

@ PCIビデオカードを搭載する。
A ビデオカードと本体RGB INを接続し、モニターとはANALOG RGBと接続します。
B Windows2000を起動するとビデオカードを新規に認識しますのでWindows2000用ドライバを搭載します。
C ドライバをインストールしたら,一旦マシンをシャットダウンしてビデオカードとモニターを直接接続する。
D マシンを起動すると最初は画面が映らないが、Windows2000が起動し始めると画面が映ります。
E DispFlipを解凍してから、C:¥WINNT¥SYSTEM32¥Drivers にDispflip.sysをコピーします。
F Dispflip.reg を実行してレジストリに書き込みます。
G Regedt32.exeをダブルクリックしてレジストリエディタを起動します。
H レジストリを次のように書き換えます。
[HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\DispFlip] "ErrorControl"=dword:00000001
"Group"="Video"
"Start"=dword:00000003 → 自動開始モード(2に変更する)
"Type"=dword:00000001

 [HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\DispFlip\Param] "IOAD"=dword:00000fac
"IOCT"=dword:00000001
"STMD"=dword:00000000 → 自動切換え設定(1に変更する)
I マシンをシャットダウンして、Aのようにケーブルを接続し直す。
J マシンを再起動すると、今度は最初から起動画面が見ることができます。

今回の改造内容
  変更前   変更後
CPU K6−V 400MHz  
ベースクロック 66Mhz  
メモリ SIMM 128MB  
ハードディスク Maxtor 52049U4 20GBMHz  
IDEインタフェース I・O DATA UIDE−66  
ビデオ I・O DATA GA−S2K32/PCI   Inno3D tornade GeForce2MX/PCI 

さて、恒例のベンチマークですが、HDBENCH2.61で測定してみました。

ALL Text Scroll DD Read Write Memory Drive
27949 27189 34970 75288 5707 25037 706 29 28444 26255 23810 C:10MB

従来のGA−S2K32/PCIに比べるとかなりの高性能を発揮しています。
GA−S2K32/PCIは、PC−9821用のWindows2000対応ドライバがどうもよろしくなくてパフォーマンスが上がらなかったのですが、さすがにGeForce2MXは、高性能です。しかしなぜかDirectDrawがあまり上がりませんでした。
ですが、GeForce2MXが実際にPC−9821でも使用可能であることが確認されたのは、かなりのグッドニュースです。
パフォーマンスから考えてもGA−S2K32/PCIなどのPC−9821対応ビデオカードよりも高性能です。
GeForce2MX200/400でもWindows2000であれば使用可能です。
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