争議行為の予告通知について
 
概 要
公益事業に係わる事業で関係当事者争議行為を行うには、少なくとも10日前までに、労働委員会と労働大臣又は都道府県知事に通知する必要があります。予告なしに争議行為を行った場合は、その争議行為の実行について責任のある者は処罰の対象となります。
 
予告通知
届出方法
   予告通知を提出する際には、争議行為の日時、場所、概要を記載した文書によることが必要です。
 なお、公益事業における争議行為は公衆の日常に大きな影響を与えるという法の趣旨から、届出に当たっては、争議行為の目的、争議行為を行う期間、場所及び争議行為の概要について、できるだけ詳しく具体的な内容を記載していただくことが望ましいものです。→ 記載例
届出期日
   届出期日については争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までです。その計算方法は、通知の日及び争議行為予定日を含まずに満10日間が間に必要です。(民法1編第5章の期間の計算方法によります。)
 例えば、争議行為を4月25日に予定しているとすれば、4月14日までに予告通知を届け出する必要があります。
 なお、予告通知は公益事業の争議行為が公衆に及ぼす影響を考慮して事前に公衆に予知するという法の趣旨から早期に把握し、公表する必要がありますので、できましたら関係機関等に対する届出については、12日間あけていただくようお願いします。
届出先
 
届出窓口については以下のとおりです。
@) 争議行為が一の都道府県の区域内のみである場合
地方労働委員会事務局調整主管課
都道府県労政主管課
の2カ所にそれぞれ届け出る必要があります。
A) 争議行為が二以上の都道府県にわたるものであるとき、又は、全国的に重要な問題である場合
中央労働委員会事務局調整第一課
労働省労政局労働組合課
の2カ所にそれぞれ届け出る必要があります。
 なお、この場合であっても、地方労働委員会又は都道府県を経由して届け出ることも可能です。(ただし、あて先はそれぞれ中央労働委員会会長、労働大臣とすることが必要です。)
 [公益事業]
労働関係調整法が規定する公益事業は以下の事業です。
 運輸事業
 郵便又は電気通信事業
 水道、電気又はガス供給事業
 医療又は公衆衛生事業
 [関係当事者]
「関係当事者」とは、公益事業における使用者(又はその団体)と労働組合その他の労働者の団体のことをいいます。またこの中には争議団等の一時的な労働者の団体も含まれています。
 [争議行為]
争議行為とは具体的には、同盟罷業(ストライキ)、怠業(スローダウン)、作業所閉鎖(ロックアウト)、その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます。
 [争議行為の目的]
労使間の紛争の内容が、当事者間の労働関係に関係のないもの(例えば、政治上の目的の要求、純粋に経営に関する要求、第三者に関する同情スト等)は労働関係法上の労働争議でないため、このような目的で争議行為を行う場合は、届出を受理しないことがあります。
 [運輸事業]
運輸事業の中で公益事業に該当するものは、「一般公衆の需要に応じ、一定の路線を定め、定期的に、旅客または貨物を輸送する事業」です。したがって、路線バス・鉄道・航空事業などは該当しますが、ハイヤーやタクシー事業は、路線でなく区域であるため該当しません。
    
記載例
 
平成○○年○○月○○日
労働大臣○○○○殿
(又は、中央労働委員会会長 )
(又は、都道府県知事 )
(又は、地方労働委員会会長)
 
○○○○労働組合
中央執行委員長 ○○○○
(使用者の場合事業所名と代表者名)
 
争議行為予告通知書
 
 労働関係調整法第37条の規定に基づき、下記のとおり争議行為に関する通知をいたします。
 
 
1. 目的
 ○○年賃上げ要求、労働協約改定要求、組合員の解雇撤回要求
 
2. 日時
 平成○○年○月○日 ○時以降
 
3. 場所
 (名称及び所在地)
○○○○株式会社○○支社 (○○県○○市○○1−2−3)
○○○○株式会社○○営業所(○○県○○市○○1−2−3)
 
4. 概要
全職場において、ストライキ(使用者の場合はロックアウト)を実施します。
○○営業所と○○営業所に於いてストライキを実施します。
 
5. 経過
 ○○○○労働組合は、平成○○年○月○日第○回中央委員会において要求とスト権の確立を決定しました。○月○日、○○○○株式会社に対し、賃上げ等の要求書を提出し、交渉を重ねてきましたが、合意にいたらず、ここに争議行為の通知を行うものであります。
  
争議予告 Q and A
Q1:  公衆の日常生活に欠くことのできない事業と、そうでない事業を営んでいますが、この場合両方とも公益事業となりますか(例:路線バスと観光バスを兼営している乗合自動車事業)
A1:  この場合両部分を分けて、一方を公益事業と判断します。よって例の場合、路線バス部門のみ公益事業として取扱います。
 
Q2:  病院を経営していますがその業務の中で、請負契約等により行わせている以下の事業があります。これらは公益事業に含まれますか。イ.給食業務 ロ.寝具設備の取扱 ハ.保存血液の取扱 ニ.保険薬局 ホ.売店、食堂、喫茶店
A2:  イ、ロ、ハ、ニについては、病院以外の者によって行われていたとしても、それは病院の行う医療業務に不可欠なものであるため、公益事業にあたります。ホについては、医療事業のために必要不可欠なものと考えられないので、公益事業にはあたりません。
 なお、医療または公衆衛生の事業であって、公益事業にあたるものの範囲には疾病傷害の治療、助産、伝染病に関する予防、消毒及び汚物清掃並びに埋火葬などの業務があげられます。