厚生年金保険法

第1章 総  則
第1条(この法律の目的)

 この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし、あわせて厚生年金基金がその加入員に対して行う給付に関して必要な事項を定めるものとする。

第2条(管掌)

 厚生年金保険は、政府が、管掌する。

第2条の2(年金額の改定)

 この法律による年金たる保険給付の額は、国民の生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が議ぜられなければならない。

第3条(用語の定議)

 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 保険料納付済期間
国民年金法(昭和34年法律第141号)第5条第2項に規定する保険料納付済期間をいう。
二 保険料免除期間
国民年金法第5条第3項に規定する保険料免除期間をいう。
三 報酬
賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

A この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

第4条(権限の委任)

 この法律に規定する社会保険庁長官の権限の一部は、政令の定めるところにより、地方社会保険事務局長に委任することができる。

A 前項の規定により地方社会保険事務局長に委任された権限の全部又は一部は、政令の定めるところにより、社会保険事務所長に委任することができる。

第5条(諮問) 

 削除

 
第2章 被保険者
第1節 資  格
第6条(適用事業所)

 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時5人以上の従業員を使用するもの

イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積みおろしの事業
ト 焼却、清掃又はと殺の事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和26年法津第45号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成7年法律第86号)に定める更生保護事業
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
三 船員法(昭和22年法律第100号)第1条に規定する船員(以下単に「船員」という。)として船舶所有者(船員保険法(昭和14年法律第73号)第10条に規定する場合にあつては、同条の規定により船舶所有者とされる者。以下単に「船舶所有者」という。)に使用される者が乗り組む船舶(第59条の2を除き、以下単に「船舶」という。)

A 前項第3号に規定する船舶の船舶所有者は、適用事業所の事業主とみなす。

B 第1項の事業所以外の事業所の事準主は、社会保険庁長官の認可を受けて、当該事業所を適用事業所とすることができる。

C 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第12条に規定する者を除く。)の2分の1以上の同意を得て、社会保険庁長官に申請しなければならない。

第7条 

 前条第1項第1号又は第2号の適用事業所が、それぞれ当該各号に該当しなくなつたときは、その事業所について同条第3項の認可があつたものとみなす。

第8条 

 第6条第3項の適用事業所の事業主は、社会保険庁長官の認可を受けて、当該事業所を適用事業所でなくすることができる。

A 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第12条に規定する者を除く。)の4分の3以上の同意を得て、社会保険庁長官に申請しなければならない。

第8条の2 

 2以上の適用事業所(船舶を除く。)の事業主が同一である場合には、当該事業主は、社会保険庁長官の承認を受けて、当該2以上の事業所を一の適用事業所とすることができる。

2 前項の承認があつたときは、当該2以上の適用事業所は、第6条の適用事業所でなくなつたものとみなす。

第8条の3 

 2以上の船舶の船舶所有者が同一である場合には、当該2以上の船舶は、一の適用事業所とする。この場合において、当該2以上の船舶は、第6条の適用事業所でないものとみなす。

第9条(被保険者)

 適用事業所に使用される65歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

第10条 

 適用事業所以外の事業所に使用される65歳未満の者は、社会保険庁長官の認可を受けて、厚生年金保険の被保険者となることかできる。

A 前項の認可を受けるには、その事業所の事業主の同意を得なければならない。

第11条 

 前条の規定による被保険者は、社会保険庁長官の認可を受けて、被保険者の資格を喪失することができる。

第12条(適用除外)

 次の各号のいずれかに該当する者は、第9条及び第10条第1項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 国、地方公共団体又は法人に使用される者であつて、次に掲げるもの

 イ 恩給法(大正12年法律第48号)第19条に規定する公務員及び同条に規定する公務員とみなされる者
 ロ 法律によつて組織された共済組合(以下単に「共済組合」という。)の組合員
 ハ 私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)の規定による私立学校教職員共済制度の加入者(以下「私学教職員共済制度の加入者」という。)
二 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては1月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
 イ 日々雇い入れられる者
 ロ 2月以内の期間を定めて使用される者

三 所在地が一定しない事業所に使用される者
四 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して4月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
五臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して6月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
第13条(資格取得の時期)

 第9条の規定による被保険者は、適用事業所に使用されるに至つた日若しくはその使用される事業所が適用事業所となつた日又は前条の規定に該当しなくなつた日に、被保険者の資格を取得する。

 第10条第1項の規定による被保険者は、同条同項の認可があつた日に、被保険者の資格を取得する。

第14条(資格喪失の時期)

 第9条又は第10条第1項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、若しくは共済組合の組合員若しくは私学教職員共済制度の加入者となつたとき、又は第5号に該当するに至つたときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。
三 第8条第1項又は第11条の認可があつたとき。
四 第12条の規定に該当するに至つたとき。
五 65歳に達したとき。

 
第15条から第17条まで 削除
 
第18条(資格の得喪の確認)

 被保険者の資格の取得及び喪失は、社会保険庁長官の確認によつて、その効力を生ずる。ただし、第10条第1項の規定による被保険者の資格の取得及び第14条第3号に該当したことによる被保険者の資格の喪失は、この限りでない。

A 前項の確認は、第27条の規定による届出若しくは第31条第1項の規定による請求により、又は職権で行うものとする。

B 第1項の確認については、行政手続法(平成5年法律第88号)第3章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

第2節 被保険者期間
第19条 

 被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保験者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。

A 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を1箇月として被保険者期間に算入する。但し、その月にさらに被保険者の資格を取得したときは、この限りでない。

B 被保険者の資格を喪失した後、更にその資格を取得した者については、前後の被保険者期間を合算する。

第19条の2 

 被保険者が厚生年金基金の加入員(以下この条において単に「加入員」という。)となつた月は加入員であつた月と、加入員であつた者が加入員でなくなつた月は加入員でなかつた月とみなす。同一の月において、2回以上にわたり加入員であるかないかの区別に変更があつたときは、その月は、最後に加入員であつたときは加入員であつた月と、最後に加人員でなかつたときは加入員でなかつた月とみなす。

第3節 標準報酬
第20条(標準報酬)

 標準報酬は、被保険者の報酬月額に基づき、次の区別によつて定める。

第21条(定時決定)

 社会保険庁長官は、被保険者が毎年8月1日現に使用される事業所において同日前3月間(その事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払の基礎となつた日数が20日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬を決定する。

A 前項の規定によつて決定された標準報酬は、その年の10月から翌年の9月までの各月の標準報酬とする。

B 第1項の規定は、7月1日から8月1日までの間に被保険者の資格を取得した者及び第23条の規定により8月から10月までのいずれかの月から標準報酬を改定され、又は改定されるべき被保換者については、その年に限り適用しない。

第22条(被保険者の資格を取得した際の決定)

 社会保険庁長官は、被保験者の資格を取得した者があるときは、次の各号に規定する額を報酬月額として、標準報酬を決定する。
一 月、週その他一定期間によつて報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した日の現在の報酬の額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額
二 日、時間、出来高又は請負によつて報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した月前1月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額
三 前2号の規定によつて算定することが困難であるものについては、被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額
四 前3号の2以上に該当する報酬を受ける場合には、それぞれについて、前各号の規定によつて算定した額の合算額

A 前項の規定によつて決定された標準報酬は、被保険者の資格を取得した月からその年の9月(7月1日から12月31日までの間に被保険者の資格を取得した者については、翌年の9月)までの各月の標準報酬とする。

第23条(改定)

 社会保険庁長官は、被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間(各月とも、報酬支払の基礎となつた日数が、20日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬の基礎となつた報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬を改定することができる。

A 前項の規定によつて改定された標準報酬は、その年の9月(8月から12月までのいずれかの月から改定されたものについては、翌年の9月)までの各月の標準報酬とする。

第24条(報酬月額の算定の特例)

 被保険者の報酬月額が、第21条第1項若しくは第22条第1項の規定によつて算定することが困難であるとき、又は第21条第1項、第22条第1項若しくは前条第1項の規定によつて算定した額が著しく不当であるときは、これらの規定にかかわらず、社会保険庁長官が算定する額を当該被保険者の報酬月額とする。

A 同時に2以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について、第21条第1項、第22条第1項若しくは前条第1項又は前項の規定によつて算定した額の合算額をその者の報酬月額とする。

第24条の2(船員たる被保険者の標準報酬)

 船員たる被保険者の標準報酬の決定及び改定については、第21条から前条までの規定にかかわらず、船員保険法第4条第2項から第6項まで及び第4条ノ2の規定の例による。

第25条(現物給与の価額)

 報酬の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によつて、社会保険庁長官が定める。

第26条 

 削除

第4節 届出、記録等
第27条(届出)

 適用事業所の事業主又は第10条第2項の同意をした事業主(以下単に「事業主」という。)は、厚生労働省令の定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額に関する事項を社会保険庁長官に届け出なければならない。

第28条(記録)

 社会保険庁長官は、被保険者に関する原簿を備え、これに被保険者の氏名、資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬その他厚生労働省令で定める事項を記録しなければならない。

第29条(通知)

 社会保険庁長官は、第8条第1項、第10条第1項若しくは第11条の規定による認可、第18条第1項の規定による確認又は標準報酬の決定若しくは改定を行つたときは、その旨を当該事業主に通知しなければならない。

A 事業主は、前項の通知があつたときは、すみやかに、これを被保険者又は被保険者であつた者に通知しなければならない。

B 被保険者が被保険者の資格を喪失した場合において、その者の所在が明らかでないため前項の通知をすることができないときは、事業主は、社会保険庁長官にその旨を届け出なければならない。

C 社会保険庁長官は、前項の届出があつたときは、所在が明らかでない者について第1項の規定により事業主に通知した事項を公告しなければならない。

D 社会保険庁長官は、事業所が廃止された場合その他やむを得ない事情のため第1項の通知をすることができない場合においては、同項の通知に代えて、その通知すべき事項を公告しなければならない。

第30条 

 社会保険庁長官は、第27条の規定による届出があつた場合において、その届出に係る事実がないと認めるときは、その旨をその届出をした事業主に通知しなければならない。

A 前条第2項から第5項までの規定は、前項の通知について準用する。

第31条(確認の請求)

 被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、第18条第1項の規定による確認を請求することができる。

A 社会保険庁長官は、前項の規定による請求があつた場合において、その請求に係る事実がないと認めるときは、その請求を却下しなければならない。

  
第3章 保険給付
第1節 通  則 
第32条(保険給付の種類)

 この法律による保険給付は、決のとおりとする。
一 老齢厚生年金
二 障害厚生年金及び障害手当金
三 遺族厚生年金

第33条(裁定)

 保険給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、社会保険庁長官が裁定する。

第34条(年金額の自動改定)

 年金たる保険給付については、総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数(以下「物価指数」という。)が平成10年(この項の規定による年金たる保障給付の額の改定の措置が議ぜられたときは、直近の当該措置が議ぜられた年の前年)の物価指数を超え、又は下るに至つた場合においては、その上昇し、又は低下した比率を基準として、その翌年の4月以降の当該年金たる保険給付の額を改定する。

A 前項の規定による年金たる保険給付の額の改定の措置は、政令で定める。

第35条(端数処理)

 保険給付を受ける権利を裁定する場合又は保険給付の額を改定する場合において、保険給付の額(第44条第1項、第50条の2第1項又は第62条第1項の規定により加算する額を除く。)又は当該加算する額に50円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは、これを100円に切り上げるものとする。

A 前項に規定するもののほか、保険給付の額を計算する場合において生じる1円未満の端数の処理については、政令で定める。

第36条(年金の支給期間及び支払期月)

 年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で終るものとする。

A 年金は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。

B 年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、支払期日でない月であつても、支払うものとする。

第37条(未支給の保険給付)

 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保障給付の支給を請求することができる。

A 前項の場合において、死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であつたときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であつた者の子であつて、その者の死亡によつて遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、同項に規定する子とみなす。

B 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その保険給付を請求することができる。

C 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。

D 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

第38条(併給の調整)

 年金たる保険給付(遺族厚生年金を除く。)は、その受給権者が他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(当該年金たる保険給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)又は他の被用者年金各法(国民年金法第5条第1項第2号から第5号までに掲げる法律をいう。以下同じ。)による年金たる給付(当該年金たる保険給付と同一の支給事由に基づいて支給されるもの(当該年金たる保険給付が老齢厚生年金である場合にあつては、退職共済年金を含む。)を除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。遺族厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金を除く。)又は他の被用者年金各法による年金たる給付を受けることができる場合における当該遺族厚生年金についても、同様とする。

A 前項の規定によっその支給を停止するものとされた年金たる保険給付の受給権者は、同項の規定にかかわらず、その支給の停止の解除を申請することができる。ただし、その者に係る同項に規定する他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付又は他の被用者年金各法による年金たる給付について、この項の本文若しくは次項又は他の法令の規定でこれらに相当するものとして政令で定めるものによりその支給の停止が解除されているときは、この限りでない。

B 第1項の規定によりその支給を停止するものとされた年金たる保険給付について、その支給を停止すべき事由が生じた日の属する月分の支給が行われる場合は、その事由が生じたときにおいて、当該年金たる保険給付に係る前項の申請があつたものとみなす。

C 第2項の申請(前項の規定により第2項の申請があつたものとみなされた場合における当該申請を含む。)は、いつでも、将来に向かつて撤回することができる。

第38条の2 

 前条第1項の規定によりその支給を停止するものとされた老齢厚生年金(同条第2項本文又は同条第3項の規定によりその支給の停止が解除されているものを除く。)の受給権者(配偶者に対する遺族厚生年金又は他の被用者年金各法による遺族共済年金(配偶者に対するものに限る。)の受給権を有するものに限る。)は、当該老齢厚生年金に係る同条第2項の申請を行わないときは、同条第1項の規定にかかわらず、その額の2分の1(第44条第1項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金にあつては、その額から同項に規定する加給年金額を控除した額の2分の1に相当する額に同項に規定する加給年金額を加算した額)に相当する部分の支給の停止の解除を申請することができる。ただし、その者に係る前条第1項に規定する他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付又は他の被用者年金各法による年金たる給付について、同条第2項本文若しくは同条第3項又は他の法令の規定でこれらに相当するものとして政令で定めるものによりその支給の停止が解除されているときは、この限りでない。

A 前項の規定により老齢厚生年金の一部の支給の停止の解除を申請した者又は他の法令の規定でこれに相当するものとして政令で定めるものにより他の被用老年金各法による退職共済年金であつて政令で定めるものの一部の支給の停止の解除を申請した者については、前条第2項の規定は、適用しない。

B 前項に規定する者は、遺族厚生年金(配偶者に対するものに限る。)の額の3分の2に相当する部分の支給の停止の解除を申請することができる。

C 前条第3項及び第4項の規定は、第1項及び前項の場合に準用する。

第39条(年金の支払の調整)

 乙年金の受給権者が甲年金の受給権を取得したため乙年金の受給権が消滅し、又は同一人に対して乙年金の支給を停止して甲年金を支給すべき場合において、乙年金の受給権が消滅し、又は乙年金の支給を停止すべき事由が生じた月の翌月以後の分として、乙年金の支払が行われたときは、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなす。

A 年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたときは、その支払われた年金は、その後に支払うべき年金の内払とみなすことができる。年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金が支払われた場合における当該年金の当該減額すべきであつた部分についても、同様とする。

B 同一人に対して国民年金法による年金たる給付の支給を停止して年金たる保険給付を支給すべき場合において、年金たる保険給付を支給すべき事由が生じた月の翌月以後の分として同法による年金たる給付の支払が行われたときは、その支払われた同法による年金たる給付は、年金たる保険給付の内払とみなすことができる。

第39条の2 

 年金たる保険給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」という。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき年金たる保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該年金たる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。

第40条(損害賠償請求権)

 政府は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、号給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

A 前項の場合において、受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。

第40条の2(不正利得の徴収)

 偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、社会保険庁長官は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。

第41条(受給権の保護及び公課の禁止)

 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

A 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。

第2節 老齢厚生年金
第42条(受給権者)

 老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が65歳に達したときに、その者に支給する。ただし、その者の保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たないときは、この限りでない。

第43条(年金額)

 老齢厚生年金の額は、被保険者であつた全期間の平均標準報酬月額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額を平均した額をいう。以下同じ。)の1000分の7.125に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。

第44条 

 老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)の額は、受給権者がその権利を取得した当時その者によつて生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で第47条第2項に規定する障害等級(以下この条において単に「障害等級」という。)の1級若しくは2級に該当する障害の状態にある子に限る。)があるときは、前条の規定にかかわらず、同条に定める額に加給年金額を加算した額とする。

A 前項に規定する加給年金額は、同項に規定する配偶者については231,400円とし、同項に規定する子については1人につき77,100円(そのうち2人までについては、それぞれ231,400円)とする。

B 受給権者がその権利を取得した当時胎児であつた子が出生したときは、第1項の規定の適用については、その子は、受給権者がその権利を取得した当時その者によつて生計を維持していた子とみなし、その出生の月の翌月から、年金の額を改定する。

C 第1項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、配偶者又は子が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、同項の規定にかかわらず、その者に係る同項の加給年金額を加算しないものとし、次の各号のいずれかに該当するに至つた月の翌月から、年金の額を改定する。一 死亡したとき。
二 受給権者による生計推持の状態がやんだとき。
三 配偶者が、離婚をしたとき。
四 配偶者が、65歳に達したとき。
五 子が、養子縁組によつて受給権者の配偶者以外の者の養子となつたとき。
六 養子縁組による子が、離縁をしたとき。
七 子が、婚姻をしたとき。
八 子(障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある子を除く。)について、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。
九 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子を除く。)について、その事情がやんだとき。
十 子が、20歳に達したとき。

D 第1項又は前項第2号の規定の適用上、老齢厚生年金の受給権者によつて生計を維持していたこと又はその者による生計維持の状態がやんだことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

第44条の2(厚生年金基金に関連する特例)

 被保険者であつた期間の全部又は一部が厚生年金基金の加入員であつた期間である者に支給する老齢厚生年金については、厚生年金基金の加入員であつた期間は、第43条に規定する額については、その計算の基礎としない。

A 前項の規定は、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得する前に厚生年金基金連合会が解散した場合における当該厚生年金基金連合会がその支給に関する義務を負つていた年金たる給付の額の計算の基礎となる厚生年金基金の加入員であつた期間については、適用しない。

B 厚生年金基金連合会が解散した場合において、当該厚生年金基金連合会が年金たる給付の支給に関する義務を負つている者が老齢厚生年金の受給権者であるときは、第1項の規定にかかわらず、当該義務に係る年金たる給付の額の計算の基礎となる厚生年金基金の加入員であつた期間をその額の計算の基礎とするものとし、当該厚生年金基金連合会が解散した月の翌月から、当該老齢厚生年金の額を改定する。

第44条の3(支給の繰下げ)

 老齢厚生年金の受給権を有する者であつて65歳に達する前に当該老齢厚生年金を請求していなかつたものは、社会保険庁長官に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が65歳に達したときに、他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金を除く。以下この項において同じ。)若しくは他の被用者年金各法による年金たる給付(退職を支給事由とするものを除く。以下この条において同じ。)の受給権者であつたとき、又は65歳に達した日以後に他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付若しくは他の被用者年金各法による年金たる給付の受給権者となつたときは、この限りでない。

A 前項の申出は、国民年金法による老齢基礎年金の受給権を有する者にあつては、同法第28条第1項に規定する支給繰下げの申出と同時に行わなければならない。

B 第1項の申出をした者に対する老齢厚生年金の支給は、第36条第1項の規定にかかわらず、当該申出のあつた月の翌月から始めるものとする。

C 第1項の申出をした者に支給する老齢厚生年金の額は、第43条及び第44条の規定にかかわらず、これらの規定により計算した額に政令で定める額を加算した額とする。

第45条(失権)

 老齢厚生年金の受給権は、受給権者が死亡したときは、消滅する。

第46条(支給停止)

 第44条第1項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金、共済組合が支給する年金たる給付、私立学校教職員共済法による年金たる給付その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

第3節 障害厚生年金及び障害手当金
第47条(障害厚生年金の受給権者)

 障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。以下同じ。)があるときは、その日とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある場合に、その障害の程度に応じて、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。

A 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。

第47条の2 

 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者であつて、障害認定日において前条第2項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第1項の障害厚生年金の支給を請求することができる。

A 前条第1項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

B 第1項の請求があつたときは、前条第1項の規定にかかわらず、その請求をした者に同項の障害厚生年金を支給する。

第47条の3 

 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(以下この条において「基準傷病」という。)に係る初診日において被保険者であつた者であつて、基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準傷病による障害(以下この条において「基準障害」という。)と他の障害とを併合して障害等級の1級又は2級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたとき(基準傷病の初診日が、基準傷病以外の傷病(基準傷病以外の傷病が2以上ある場合は、基準傷病以外のすべての傷病)に係る初診日以降であるときに限る。)は、その者に基準障害と他の障害とを併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する。

A 第47条第1項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第1項ただし書中「当該傷病」とあるのは、「基準傷病」と読み替えるものとする。

B 第1項の障害厚生年金の支給は、第36条第1項の規定にかかわらず、当該障害厚生年金の請求があつた月の翌月から始めるものとする。

第48条(障害厚生年金の併給の調整)

 障害厚生年金(その権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級又は2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く。以下この条、次条、第52条第4項、第52条の2、第54条第2項ただし書及び第54条の2第1項において同じ。)の受給権者に対して更に障害厚生年金を支給すべき事由が生じたときは、前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金を支給する。

A 障害厚生年金の受給権者が前項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金の受給権を取得したときは、従前の障害厚生年金の受給権は、消滅する。

第49条 

 期間を定めて支給を停止されている障害厚生年金の受給権者に対して更に障害厚生年金を支給すべき事由が生じたときは、前条第1項の規定により支給する前後の障害を併合した障害の程度による障害厚生年金は、従前の障害厚生年金の支給を停止すべきであつた期間、その支給を停止するものとし、その間、その者に従前の障害を併合しない障害の程度による障害厚生年金を支給する。

A 障害厚生年金の受給権者が更に障害厚生年金の受給権を取得した場合において、新たに取得した障害厚生年金が第54条第1項の規定によりその支給を停止すべきものであるときは、前条第2項の規定にかかわらず、その停止すべき期間、その者に対して従前の障害厚生年金を支給する。

第50条(障害厚生年金の額)

 障害厚生年金の額は、第43条の規定の例により計算した額とする。この場合において、当該障害厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする。

A 障害の程度が障害等級の1級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、前項の規定にかかわらず、同項に定める額の100分の125に相当する額とする。

B 障害の程度が障害等級の3級に該当する者に支給する障害厚生年金の額が603,200円に満たないときは、第1項の規定にかかわらず、その額を603,200円とする。

C 第48条第1項の規定による障害厚生年金の額は、その額が同条第2項の規定により消滅した障害厚生年金の額より低額であるときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、従前の障害厚生年金の額に相当する額とする。

第50条の2 

 障害の程度が障害等級の1級又は2級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、受給権者がその権利を取得した当時その者によつて生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者があるときは、前条の規定にかかわらず、同条に定める額に加給年金額を加算した額とする。

A 前項に規定する加給年金額は、231,400円とする。

B 第44条第4項(第5号から第10号までを除く。)及び第5項の規定は、第1項の規定によりその額が加算された障害厚生年金について準用する。

第51条 

 第50条第1項に定める障害厚生年金の額については、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害に係る障害認定日(第47条の3第1項の規定による障害厚生年金については同項に規定する基準傷病に係る障害認定日とし、第48条第1項の規定による障害厚生年金については併合されたそれぞれの障害に係る障害認定日(第47条の3第1項に規定する障害については、同項に規定する基準障害に係る障害認定日)のうちいずれか遅い日とする。)の属する月後における被保険者であつた期間は、その計算の基礎としない。

第52条 

 社会保険庁長官は、障害厚生年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、その程度に応じて、障害厚生年金の額を改定することができる。

A 障害厚生年金の受給権者は、社会保険庁長官に対し、障害の程度が増進したことによる障害厚生年金の額の改定を請求することができる。

B 前項の請求は、障害厚生年金の受給権を取得した日又は第1項の規定による社会保険庁長官の診査を受けた日から起算して1年を経過した日後でなければ行うことができない。

C 障害厚生年金の受給権者であつて、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病(当該障害厚生年金の支給事由となつた障害に係る傷病の初診日後に初診日があるものに限る。以下この項及び第54条第2項ただし書において同じ。)に係る当該初診日において被保険者であつたものが、当該傷病により障害(障害等級の1級又は2級に該当しない程度のものに限る。以下この項及び同条第2項ただし書において「その他障害」という。)の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害その他障害(その他障害が2以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が当該障害厚生年金の支給事由となつた障害の程度より増進したときは、その者は、社会保険庁長官に対し、その期間内に障害厚生年金の額の改定を請求することができる。

D 第47条第1項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

E 第1項の規定により障害厚生年金の額が改定されたときは、改定後の額による障害厚生年金の支給は、改定が行われた月の翌月から始めるものとする。

F 第1項から第3項まで及び前項の規定は、65歳以上の者であつて、かつ、障害厚生年金の受給権者(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による障害基礎年金の受給権を有しないものに限る。)については、適用しない。

第52条の2 

 障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいで支給されるものを除く。)の受給権を有するに至つたときは、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害と当該障害基礎年金の支給事由となつた障害とを併合した障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定する。

A 障害厚生年金の受給権者が、国民年金法による障害基礎年金の受給権を有する場合において、同法第34条第4項及び第36条第2項ただし書の規定により併合された障害の程度が当該障害基礎年金の支給事由となつた障害の程度より増進したときは、これらの規定により併合された障害の程度に応じて、当該障害厚生年金の額を改定する。

第53条(失権)

 障害厚生年金の受給権は、第48条第2項の規定によつて消滅するほか、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 障害等級に該当する程度の障害の状態にない者が、65歳に達したとき。ただし、65歳に達した日において、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過していないときを除く。
三 障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過したとき。ただし、3年を経過した日において、当該受給権者が65歳未満であるときを除く。

第54条(支給停止)

 障害厚生年金は、その受給権者が当該傷病について労働基準法(昭和22年法律第49号)第77条の規定による障害補償を受ける権利を取得したときは、6年間、その支給を停止する。

A 障害厚生年金は、受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつたときは、その障害の状態に該当しない間、その支給を停止する。ただし、その支給を停止された障害厚生年金の受給権者が疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であつた場合であつて、当該傷病によりその他障害の状態にあり、かつ、当該傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、当該障害厚生年金の支給事由となつた障害とその他障害(その他障害が2以上ある場合は、すべてのその他障害を併合した障害)とを併合した障害の程度が障害等級の1級又は2級に該当するに至つたときは、この限りでない。

B 第46条の規定は、障害厚生年金について、第47条第1項ただし書の規定は、前項ただし書の場合について準用する。

第54条の2 

 障害厚生年金は、その受給権者が当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づく他の被用者年金各法による障害共済年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する。

A 第38条第2項及び第4項の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第2項中「他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付又は他の被用者年金各法による年金たる給付」とあるのは、「他の被用者年金各法による障害共済年金」と読み替えるものとする。

第55条(障害手当金の受給権者)

 障害手当金は、疾病にかかり、又は負傷し、その傷病に係る初診日において被保険者であつた者が、当該初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治つた日において、その傷病により政令で定める程度の障害の状態にある場合に、その者に支給する。

A 第47条第1項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

第56条 

 前条の規定により障害の程度を定めるべき日において次の各号のいずれかに該当する者には、同条の規定にかかわらず、障害手当金を支給しない。
一 年金たる保険給付の受給権者(最後に障害等級に該当する程度の障害の状態(以下この条において「障害状態」という。)に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害厚生年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る。)を除く。)
二 国民年金法による年金たる給付、共済組合が支給する年金たる給付又は私立学校教職員共済法による年金たる給付の受給権者(最後に障害状態に該当しなくなつた日から起算して障害状態に該当することなく3年を経過した障害基礎年金の受給権者(現に障害状態に該当しない者に限る。)その他の政令で定める者を除く。)
三 当該傷病について国家公務員災害補償法(昭和28年法律第191号。他の法律において準用する場合を含む。)、地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)若しくは同法に基づく条例、公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する法律(昭和32年法律第143号)若しくは労働基準法第77条の規定による障害補償、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)の規定による障害補償給付若しくは障害給付又は船員保険法による障害を支給事由とする給付を受ける権利を有する者

第57条(障害手当金の額)

 障害手当金の額は、第50条第1項の規定の例により計算した額の100分の200に相当する額とする。ただし、その額が1,206,400円に満たないときは、1,206,400円とする。

第4節 遺族厚生年金
第58条(受給権者)

 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。ただし、第1号又は第2号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者であつて、行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。)が、死亡したとき。
二 被保険者であつた者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であつた間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき。
三 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
四 老齢厚生年金の受給権者又は第42条ただし書に該当しない者が、死亡したとき。

A 前項の場合において、死亡した被保険者又は被保険者であつた者が同項第1号から第3号までのいずれかに該当し、かつ、同項第4号にも該当するときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出をした場合を除き、同項第1号から第3号までのいずれかのみに該当し、同項第4号には該当しないものとみなす。

第59条(遺族)

 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。)であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡のの当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当事。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫、父母又は祖父母については、55歳以上であること。
二 子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。

A 前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。

B 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、第1項の規定の適用については、将来に向つて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。

C 第1項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

第59条(死亡の推定)

 船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた被保険者若しくは被保険者であつた者若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた被保険者若しくは被保険者であつた者の生死が3月間わからない場合又はこれらの者の死亡が3月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族厚生年金の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又はその者が行方不明となつた日に、その者は、死亡したものと推定する。航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた被保吸者若しくは被保険者であつた者若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中に行方不明となつた被保険者若しくは被保険者であつた者の生死が3月間わからない場合又はこれらの者の死亡が3月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合にも、同様とする。

第60条(年金額)

 遺族厚生年金の額は、第43条の規定の例により計算した額の4分の3に相当する額とする。この場合において、第58条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たないときは、これを300とする。

A 配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合において、受給権者が2人以上であるときは、遺族厚生年金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額を受給権者の数で除して得た額とする。

第61条 

 配偶者以外の者に遺族厚生年金を支給する場合において、受給権者の数に増減を生じたときは、増減を生じた月の翌月から、年金の額を改定する。

第62条 

 遺族厚生年金(第58条第1項第4号に該当することにより支給されるものであつて、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であるものを除く。)の受給権者である妻であつてその権利を取得した当時35歳以上65歳未満であつたもの又は35歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であつた者の子で国民年金法第37条の3第1項に規定する要件に該当するもの(当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡後に同法第39条第3項第2号から第8号までのいずれかに該当したことがあるものを除く。)と生計を同じくしていたものが40歳以上65歳未満であるときは、第60条の遺族厚生年金の額に603,200円を加算する。

A 前項の加算を開始すべき事由又は同項の加算を廃止すべき事由が生じた場合における年金の額の改定は、それぞれ当該事由が生じた月の翌月から行う。

第63条(失権)

 遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
三 直系血族及び直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき。
四 離縁によつて、死亡した被保険者又は被保険者であつた者との親族関係が終了したとき。

A 子又は孫の有する遺族厚生年金の受給権は、次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 子又は孫について、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、子又は孫が障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にあるときを除く。
二 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある子又は孫について、その事情がやんだとき。ただし、子又は孫が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。
三 子又は孫が、20歳に達したとき。

B 父母、孫又は祖父母の有する遺族厚生年金の受給権は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、消滅する。

第64条(支給停止)

 遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について労働基準法第79条の規定による遺族補償の支給が行われるべきものであるときは、死亡の日から6年間、その支給を停止する。

第64条の2 

 第58条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金は、その受給権者が当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について他の被用者年金各法による遺族共済年金であつて政令で定めるものを受けることができるときは、その間、その支給を停止する。

A 第38条第2項及び第4項の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第2項中「他の年金たる保険給付、国民年金法による年金たる給付又は他の被用者年金各法による年金たる給付」とあるのは、「他の被用者年金各法による遺族共済年金であつて政令で定めるもの」と読み替えるものとする。

第65条 

 第62条第1項の規定によりその額が加算された遺族厚生年金は、その受給権者である妻が当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により加算する額に相当する部分の支給を停止する。

第65条の2 

 夫、父母又は祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が60歳に達するまでの期間、その支給を停止する。

第66条 

 子に対する遺族厚生年金は、妻が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止する。ただし、妻に対する遺族厚生年金が次項本文又は次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。

A 妻に対する遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、妻が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であつて子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する。ただし、子に対する遺族厚生年金が次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。

B 夫に対する遺族厚生年金は、子が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止する。前項ただし書の規定は、この場合に準用する。

第67条 

 配偶者又は子に対する遺族厚生年金は、その配偶者又は子の所在が1年以上明らかでないときは、遺族厚生年金の受給権を有する子又は配偶者の申請によつて、その所在が明らかでなくなつた時にさかのぼつて、その支給を停止する。

A 配偶者又は子は、いつでも、前項の規定による支給の停止の解除を申請することができる。

第66条 

 配偶者以外の者に対する遺族厚生年金の受給権者が2人以上である場合において、受給権者のうち1人以上の者の所在が1年以上明らかでないときは、その者に対する遺族厚生年金は、他の受給権者の申請によつて、その所在が明らかでなくなつた時にさかのぼつて、その支給を停止する。

A 前項の規定によつて遺族厚生年金の支給を停止された者は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる。

B 第61条の規定は、第1項の規定により遺族厚生年金の支給が停止され、又は前項の規定によりその停止が解除された場合に準用する。この場合において、同条中「増減を生じた月」とあるのは、「支給が停止され、又はその停止が解除された月」と読み替えるものとする。

第69条(支給の調整)

 第58条第1項第4号に該当することにより支給される遺族厚生年金は、その受給権者が当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について他の被用者年金各法による遺族共済年金であつて政令で定めるものを受けることができるときは、同条の規定にかかわらず、支給しない。

 
第70条から第72条まで 削除
 
第5節 保険給付の制限
第73条 

 被保険者又は被保険者であつた者が、故意に、障害又はその直接の原因となつた事故を生ぜしめたときは、当該障害を支給事由とする障害厚生年金又は障害手当金は、支給しない。

第73条の2 

 被保険名又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる。

第74条 

 障害厚生年金の受給権者が、故意若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、第52条第1項の規定による改定を行わず、又はその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして、同項の規定による改定を行うことができる。

第75条 

 保険料を徴収する権利が時効によつて消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であつた期間に基く保険給付は、行わない。但し、当該被保険者であつた期間に係る被保険者の資格の取得について第27条の規定による届出又は第31条第1項の規定による確認の請求があつた後に、保険料を徴収する権利が時効によつて消滅したものであるときは、この限りでない。

第76条 

 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であつた者を故意に死亡させた者には、支給しない。被保険者又は被保険者であつた者の死亡前に、その者の死亡によつて遺族厚生年金の受給権者となるべき者を故意に死亡させた者についても、同様とする。

A 遺族厚生年金の受給権は、受給権者が他の受給権者を故意に死亡させたときは、消滅する。

第77条 

 年金たる保険給付は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その額の全部又は一部につき、その支給を停止することができる。
一 受給権者が、正当な理由がなくて、第96条第1項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の質問に応じなかつたとき。
二 障害等級に該当する程度の障害の状態にあることにより、年金たる保険給付の受給権を有し、又は第44条第1項の規定によりその者について加算が行われている子が、正当な理由がなくて、第97条第1項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による診断を拒んだとき。
三 前号に規定する者が、故意若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、その障害の回復を妨げたとき。

第78条 

 受給権者が、正当な理由がなくて、第98条第3項の規定による届出をせず、又は書類その他の物件を提出しないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。

 
第4章 福祉施設
  
第79条 

政府は、被保険者、被保険者であつた者及び受給権者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。

 
第4章の2 積立金の運用
第79条の2(運用の目的)

 厚生保険特別会計の年金勘定に係る積立金(以下この章において「積立金」という。)の運用は、積立金が厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。

第79条の3(積立金の運用)

 積立金の運用は、厚生労働大臣が、前条の目的を達成するため、年金資金運用基金に対し、次条第1項に規定する基本方針に沿つた運用に基づく納付金の納付を目的として、積立金を攻可託することにより行うものとする。

A 厚生労働大臣は、前項の規定にかかわらず、同項の規定に基づく寄託をするまでの間、財政融資資金に積立金を預託することができる。

第79条の4(基本方針)

 厚生労働大臣は、積立金の運用に関する基本方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めなければならない。

A 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 積立金の運用の基本的な方向
二 積立金の運用に係る長期的な観点からの資産の構成に関する事項
三 年金資金運用基金における年金資金(前条第1項の規定に基づき寄託された資金をいう。以下同じ。)の管理及び運用に関し遵守すべき事項
四 年金資金運用基金における年金資金の管理及び運用の評価に関する事項
五 その他積立金の運用に関する重要事項

B 厚生労働大臣は、基本方針を定めるに当たつては、資産の管理及び運用に関し一般に認められている専門的な知見並びに内外の経済動向を考慮するとともに、積立金の運用が市場その他の民間活動に与える影響に留意しつつ、安全かつ確実を基本とし、積立金の運用が特定の方法に集中せず、かつ、積立金の運用の目的に適合するようこれを定めるものとする。

C 第2項第2号に掲げる事項は、第81条第4項に規定する保険給付に要する費用の予想額及び予定運用収入の額を勘案し、かつ、積立金の運用収入の変動の可能性に留意したものでなければならない。

D 厚生労働大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ社会保障に諮問するものとする。

E 厚生労働大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

F 厚生労働大臣は、積立金の運用の状況及びその年金財政に与える影響、年金資金運用基金における年金資金の管理及び運用の状況、内外の経済動向その他の事情を考慮し、毎年少なくとも1回、基本方針に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

G 厚生労働大臣は、前項の検討を行うに当たつては社会保障審議会の意見を聴かなければならない。

H 第3項、第5項及び第6項の規定は、第7項の規定による基本方針の変更について準用する。

第79条の5(報告書の提出及び公表)

 厚生労働大臣は、毎年度積立金の運用についての報告書を作成し、当該年度における年金資金運用基金の決算完結後遅滞なく社会保障審議会に提出するとともに、これを公表しなければならない。

A 前項の報告書には、当該年度の積立金の運用の状況及びその年金財政に与える影響並びに年金資金運用基金における年金資金の管理及び運用の評価を記載するとともに、当該年度における年金速見金運用基金の業務」概況書を添付しなければならない。

第79条の6(運用職員の責務)

 積立金の運用に係る行政事務に従事する厚生労働省の職員(政令で定める者に限る。以下「運用職員」という。)は、積立金の運用の目的に沿つて、慎重かつ細心の注意を払い、全力を挙げてその職務を遂行しなければならない。

第79条の7(秘密保持義務)

 運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。

第79条の8(懲戒処分)

 運用職員が前条の規定に違反したと認めるときは、厚生労働大臣は、その職員に対し国家公務員法(昭和22年法律第120号)に基づく懲戒処分をしなければならない。

  
第5章 費用の負担
第80条(国債負担)

 国庫は、毎年度、厚生年金保険の管掌者たる政府が国民年金法第94条の2第1項の規定により負担する基礎年金拠出金(以下単に「基礎年金拠出金」という。)の額の3分の1に相当する額を負担する。

A 国庫は、前項に規定する費用のほか、毎年度、予算の範囲内で、厚生年金保険事業の事務(基礎年金拠出金の負担に関する事務を含む。)の執行に要する費用を負担する。

第81条(保険料)

 政府は、厚生年金保険事業に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。

A 保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。

B 保険料額は、標準報酬月額に保険料率を乗じて得た額とする。

C 保険料率は、保険給付に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)の予想額並びに第89条の2第1項に規定する特別保険料、予定運用収入及び国庫負担の額に照らし、将来にわたつて、財政の均衡を保つことができるものでなければならず、かつ、少なくとも5年ごとに、この基準に従つて再計算されるべきものとする。

5 保険料率は、当分の間、1000分の173.5(厚生年金基金の加入員である被保険者にあつては、1000分の173.5から第81条の3第1項に規定する免除保険料率を控除して得た率)とする。

6 前項の保険料率は、その率が第4項の基準に適合するに至るまでの間、段階的に引き上げられるべきものとする。

第81条の2(育児休業期間中の保険料の徴収の特例)

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第2条第1号に規定する育児休業(以下「育児休業」という。)をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令の定めるところにより社会保険庁長官に申出をしたときは、前条第2項の規定にかかわらず、当該被保険者に係る保険料であつてその申出をした日の属する月からその育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係るものの徴収は行わない。

第81条の3(免除保険料率の決定等)

 厚生労働大臣は、次項に規定する代行保険料率を基準として、政令の定めるところにより、厚生年金基金ごとに免除保険料率を決定する。

A 代行保険料率は、当該厚生年金基金の加入員の標準報酬月額の総額に当該代行保険料率を乗じることにより算定した額(第139条第6項又は第7項に規定する申出に係る加入員の標準報酬月額であつて同条第6項又は第7項に規定する期間に係るものに当該代行保険料率を乗じて得た額を控除した額とする。)の収入を代行給付費(当該厚生年金基金の加入員のすべてが加入員でないとして保険給付の額を計算した場合において増加することとなる保障給付に要する費用に相当する費用をいう。)に充てることとした場合において、当該代行給付費の予想額及び予定運用収入の額に照らし、将来にわたつて、財政の均衡を保つことができるものとして、政令の定めるところにより算定するものとする。

B 厚生年金基金は、厚生労働省令の定めるところにより、当該厚生年金基金に係る前項に規定する代行保険料率(次項において単に「代行保険料率」という。)を算定し、当該代行保険料率及びその算定の基礎となるものとして厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。

C 厚生年金基金の設立の認可の申請を行う適用事業所の事業主は、厚生労働省令の定めるところにより、当該申請のときに当該設立される厚生年金基金に係る代行保険料率を算定し、当該代行保険料率及びその算定の基礎となるものとして厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。

D 厚生労働大臣は、第1項の規定により免除保険料率を決定したときは、その旨を当該厚生年金基金に通知しなければならない。

E 厚生年金基金は、前項の通知を受けたときは、速やかに、これを当該厚生年金基金に係る適用事業所の事業主に通知しなければならない。

F 前項の適用事業所の事業主(当該厚生年金基金が設置された適用事業所の事業主に限る。)は、同項の通知を受けたときは、速やかに、これを当該通知に係る加入員に通知しなければならない。

第82条(保険料の負担及び納付義務)

 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

A 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

B 被保険者が同時に2以上の事業所又は船舶に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令の定めるところによる。

 

第83条(保険料の納付)

 毎月の保険料は、翌月末日までに、納付しなければならない。

A 社会保険庁長官は、納入の告知をした保険料額が当該納付義務者が納付すべき保険料額をこえていることを知つたとき、又は納付した保障科額が当該納付義務者が納付すべき保険料額をこえていることを知つたときは、そのこえている部分に関する納入の告知又は納付を、その納入の告知又は納付の日の翌日から6箇月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。

B 前項の規定によつて、納期を繰り上げて納入の告知又は納付をしたものとみなしたときは、社会保険庁長官は、その旨を当該納付義務者に通知しなければならない。

第83条の2(口座振替による納付)

 社会保険庁長官は、納付義務者から、預金又は貯金の払出しとその払い出した金銭による保険料の納付をその預金口座又は貯金口座のある金融機関に委託して行うことを希望する旨の申出があつた場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その申出を承認することが保険料の徴収上有利と認められるときに限り、その申出を承認することができる。

第84条(保険料の源泉控除)

 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月分の保険料、被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月分及びその月分の保険料)を報酬から控除することができる。

A 事業主は、前項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

(保険料の繰上徴収)

 保険料は、次の各号に掲げる場合においては、納期前であつても、すべて徴収することができる。
一 納付義務者が、次のいずれかに該当する場合

イ 国税、地方税その他の公課の滞納によつて、滞納処分を受けるとき。
ロ 強制執行を受けるとき。
ハ 破産の宣告を受けたとき。
ニ 企業担保権の実行手続の開始があつたとき。
ホ競売の開始があつたとき。
二 法人たる納付義務者が、解散をした場合
三 被保険者の使用される事業所が、廃止された場合
四 被保険者の使用される船舶について船舶所有者の変更があつた場合、又は当該船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く運航に堪えなくなるに至つた場合
第85条の2(厚生年金基金連合会の解散に伴う責任準備金相当額の徴収)

 政府は、厚生年金基金連合会が解散したときは、その解散した日において当該厚生年金基金連合会が年金たる給付の支給に関する義務を負つている者に係る政令の定めるところにより算出した責任準備金に相当する額を当該解散した厚生年金基金連合会から徴収する。

第86条(保険料等の督促及び滞納処分)

 保険料その他この法律(第9章を除く。以下この章、次章及び第7章において同じ。)の規定による徴収金を滞納する者があるときは、社会保険庁長官は、期限を指定して、これを督促しなければならない。ただし、第85条の規定により保険料を徴収するときは、この限りでない。

A 前項の規定によつて督促をしようとするときは、社会保険庁長官は、納付義務者に対して、督促状を発する。

B 前項の規定による督促状は、納付義務者が、健康保険法(大正11年法律第70号)第11条の規定によつて督促を受ける者であるときは、同法同条の規定による督促状に併記して、発することができる。

C 第2項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。ただし、第85条各号の一に該当する場合は、この限りでない。

D 社会保険庁長官は、納付義務者が次の各号の一に該当する場合においては、国税滞納処分の例によつてこれを処分し、又は納付義務者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあつては、区とする。以下同じ。)に対して、その処分を請求することができる。
一 第2項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収令を納付しないとき。
二 第85条各号の一に該当したことにより納期を繰り下げて保険料納入の告知を受けた者がその指定の期限までに保険料を納付しないとき。

E 市町村は、前項の規定による処分の請求を受けたときは、市町村税の例によつてこれを処分することができる。この場合においては、厚生労働大臣は、徴収金の100分の4に相当する額を当該市町村に交付しなければならない。

第87条(延滞金)

 前条第2項の規定によつて督促をしたときは、社会保険庁長官は、保険料額につき年14.6パーセントの割合で、納期限の翌日から、保険料完納又は財産差押の日の前日までの日数によつて計算した延滞金を徴収する。但し、左の各号の一に該当する場合又は滞納につきやむを得ない事情があると認められる場合は、この限りでない。
一 保険料額が千円未満であるとき。
二 納期を繰り上げて徴収するとき。
三 納付義務者の住所若しくは居所が国内にないため、又はその住所及び居所がともに明らかでないため、公示送達の方法によつて督促したとき。

A 前項の場合において、保険料額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料は、その納付のあつた保険料額を控除した金額による。

B 延滞金を計算するにあたり、保険料額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

C 督促状に指定した期限までに保険料を完納したとき、又は前3項の規定によつて計算した金額が100円未満であるときは、延滞金は、徴収しない。

D 延滞金の金額に100円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

E 第40条の2及び第85条の2の規定による徴収金は、前各項の規定の適用については、保険料とみなす。

第88条(先取特権の順位)

 保険料その他この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

第88条(徴収に関する通則)

 保険料その他この法律の規定による徴収金は、この法律に別段の規定があるものを除き、国税徴収の例により徴収する。

第89条の2(特別保険料)

 政府は、厚生年金保険事業に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)に充てるため、第81条の規定により徴収する保険料のほか、特別保険料を徴収する。

A 特別保険料は、被保険者が賞与等(賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。以下同じ。)を受ける月につき、徴収するものとする。

B 特別保険料額は、賞与等の額(その額に100円未満の端数がある場合においては、その端数を切り捨てた額)に1000分の10を乗じて得た額とする。

C 第25条の規定は、賞与等の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合におけるその価額の算定について準用する。

D 第81条の2、第82条から第85条まで及び第86条から第89条までの規定は、特別保険料について準用する。この場合において、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。

第6章 不服申立て
  
第90条(審査請求及び再審査請求)

 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

A 審査請求をした日から60日以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

B 第1項の審査請求及び前2項の再審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。

C 被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは、その処分についての不服を当該処分に基つく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることができない。

第91条 

 保険料又は特別保険料(以下「保険料等」という。)その他この法律の規定による徴収金の賦課若しくは徴収の処分又は第86条の規定による処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる。

第91条の2(行政不服審査法の適用関係)

 前2条の審査請求及び再審査請求については、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第2章第1節、第2節(第18条及び第19条を除く)及び第5節の規定を適用しない。

第91条の3(不服申立てと訴訟との関係)

 第90条第1項又は第91条に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求又は審査請求に対する社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。

  
第7章 雑  則
 
第92条(時効)

 保険料等その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、2年を経過したとき、保険給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。

A 年金たる保険給付を受ける権利の時効は、当該年金たる保険給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。

B 保険料等その他この法律の規定による徴収金の納入の告知又は第86条第1項の規定による督促は、民法(明治29年法律第89号)第153条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。

第93(期間の計算)

 この法律又はこの法律に基く命令に規定する期間の計算については、この法律に別段の規定がある場合を徐くほか、民法の期間に関する規定を準用する。

第94条 

 削除

第95(戸籍事項の無料証明)

 市町村長は、社会保険庁長官、地方社会保険事務局長、社会保険事務所長又は受給権者に対して、当該市町村の条例の定めるところにより、被保険者、被保険者であつた者又は受給権者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

第96条(受給権者に関する調査)

 社会保険庁長官は、必要があると認めるときは、年金たる保険給付の受給権者に対して、その者の身分関係、障害の状態その他受給権の消滅、年金額の改定若しくは支給の停止に係る事項に関する書類その他の物件の提出を命じ、又は当該職員をしてこれらの事項に関し受給権者に質問させることができる。

A 前項の規定によつて質問を行なう当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

第97条(診断)

 社会保険庁長官は、必要があると認めるときは、障害等級に該当する程度の障害の状態にあることにより、年金たる保障給付の受給権を有し、又は第44条第1項の規定によりその者について加算が行われている子に対して、その指定する医師の診断を受けるべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの者の障害の状態を診断させることができる。

A 前条第2項の規定は、前項の規定による当該職員の診断について準用する。

第98条(届出等)

 事業主は、厚生労働省令の定めるところにより、第27条に規定する事項を除くほか、厚生労働省令の定める事項を社会保険庁長官に届け出なければならない。

A 被保険者は、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働省令の定める事項を社会保険庁長官に届け出、又は事業主に申し出なければならない。

B 受給権者は、厚生労働省令の定めるところにより、社会保険庁長官に対し、厚生労働省令の定める事項を届け出、かつ、厚生労働省令の定める書類その他の物件を提出しなければならない。

C 受給権者が死亡したときは、戸籍法(昭和22年法律第224号)の規定による死亡の届出義務者は、10日以内に、その旨を社会保険庁長官に届け出なければならない。

第99条(事業主の事務)

 厚生年金保険の施行に必要な事務は、厚生労働省令の定めるところにより、その一部を事業主に行わせることができる。

第100条(立入検査等)

 社会保険庁長官は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する決定に関し、必要があると認めるときは、事業主に対して、文書その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をして事業所に立ち入つて関係者に質問し、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

A 第96条第2項の規定は、前項の規定による質問及び検査について準用する。

B 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第100条の2(資料の提供)

 社会保険庁長官は、年金たる保険給付に関する処分に関し必要があると認めるときは、受給権者に対する他の被用者年金各法による年金たる給付又はその配偶者に対する第46条に規定する政令で定める給付の支給状況につき、国民年金法第3条第2項に規定する共済組合等又は第46条に規定する政令で定める給付に係る制度の管掌機関に対し、必要な資料の提供を求めることができる。

第100条の3(経過措置)

 この法律に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。

第101条(実施規定)

 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

 
第8章 罰  則
  
第102条

 事業主が、正当な理由がなくて次の各号の一に該当するときは、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
一 第27条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第29条第2項(第30条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第81条の3第7項の規定に違反して、通知をしないとき。
四 第82条第2項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに保険料を納付しないとき。
五 第100条第1項の規定に違反して、文書その他の物件を提出せず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

A 解散した厚生年金基金連合会が、正当な理由がなくて、第85条の2の規定により負担すべき徴収金を督促状に指定する期限までに納付しないときも、前項と同様とする。

第102条の2 

 第81条の3第3項又は第4項の規定に違反して、同条第3項又は第4項に規定する厚生労働省令で定める事項につき、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

2 第81条の3第6項の規定に違反して、通知をしなかつた者も前項と同様とする。

第103条 

 事業主以外の者が、第100条第1項の規定に違反して、当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

第104条 

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第105条 

 左の各号に掲げる場合には、10万円以下の過料に処する。
一 第98条第1項の規定に違反して、事業主が届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第98条第2項の規定に違反して、被保険者が届出をせず、若しくは虚偽の届出をし、又は申出をせず、若しくは虚偽の申出をしたとき。
三 第98条第4項の規定に違反して、戸籍法の規定による死亡の届出義務者が、届出をしないとき。

 
第9章 厚生年金基金及び厚生年金基金連合会
 
第1節 厚生年金基金
第1款 通  則
第106条(基金の目的)

 厚生年金基金(以下「基金」という。)は、加入員の老齢について給付を行ない、もつて加入員の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とする。

第107乗(組織)

 基金は、適用事業所の事業主及びその適用事業所に使用される被保険者をもつて組織する。

第108条(法人格)

 基金は、法人とする。

A 基金の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

第109条(名称)

 基金は、その名称中に厚生年金基金という文字を用いなければならない。

A 基金でない者は、厚生年金基金という名称を用いてはならない。

第2款 設立
第110条(設立)

 1又は2以上の適用事業所について常時政令で定める数以上の被保険者を使用する事業主は、当該1又は2以上の適用事業所について、基金を設立することができる。

A 適用事業所の事業主は、共同して基金を設立することができる。この場合において、被保険者の数は、合算して常時前項の政令で定める数以上でなければならない。

第111条 

 適用事業所の事業主は、基金を設立しようとするときは、基金を設立しようとする適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得て、規約をつくり、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

A 前項の場合において、適用事業所に使用される被保険者の3分の1以上で組織する労働組合があるときは、事業主は、同項の同意のほか、当該労働組合の同意を得なければならない。

B 2以上の適用事業所について基金を設立しようとする場合においては、前2項の同意は、各適用事業所について得なければならない。

第112条 

 第6条第3項の規定による認可の申請と同時に基金の設立の認可の申請を行う場合にあつては、前2条中「適用事業所」とあるのは「適用事業所となるべき事業所」と「被保険者」とあるのは「被保険者となるべき者」とする、

第113条(成立の時期)

 基金は、設立の認可を受けた時に成立する。

第114条 

 基金が成立したときは、理事長が選任されるまでの間、基金の設立の認可の申請をした適用事業所の事業主が、理事長の職務を行なう。この場合において、当該適用事業所の事業主は、この章の規定の適用については、理事長とみなす。

第3款 管理
第115条(規約)

 基金は、規約をもつて次に掲げる事項を定めなければならない。
一 名称
二 事務所の所在地
三 基金の設立に係る適用事業所の名称及び所在地(船舶の場合にあつては、船舶所有者の名称及び所在地)
四 代議員及び代議員会に関する事項
五 役員に関する事項
六 加入員に関する事項
七 標準給与に関する事項
八 年金たる給付及び一時金たる給付に関する事項
九 年金たる給付及び一時金たる給付に充てるべき積立金の管理及び運用に関する契約に関する事項
十 掛金及びその負担区分に関する事項
十一 事業年度その他財務に関する事項
十二 解散及び清算に関する事項
十三業務の委託に関する事項
十四 公告に関する事項
十五 その他組織及び業務に関する重要事項

A 前項の規約の変更(政令で定める事項に係るものを除く。)は、厚生労働大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

B 基金は、前項の政令で定める事項に係る規約の変更をしたときは、遅滞なく、これを厚生労働大臣に届け出なければならない。

第116条(公告)

 基金は、政令の定めるところにより、基金の名称、事務所の所在地、役員の氏名その他政令で定める事項を公告しなければならない。

第117条(代議員会)

 基金に、代議員会を置く。

A 代議員会は、代議員をもつて組織する。

B 代議員の定数は、偶数とし、その半数は、設立事業所(基金が設立された適用事業所をいう。以下同じ。)の事業主において設立事業所の事業主(その代理人を含む。)及び設立事業所に使用される者のうちから選定し、他の半数は、加入員において互選する。

C 代議員の任期は、3年を超えない範囲内で規約で定める期間とする。ただし、補欠の代議員の任期は、前任者の残任期間とする。

D 代議員会は、理事長が招集する。代議員の定数の3分の1以上の者が会議に付議すべき事項及び招集の理由を記載した書面を理事長に提出して代議員会の招集を請求したときは、理事長は、その請求のあつた日から20日以内に代議員会を招集しなければならない。

E 代議員会に議長を置く。議長は、理事長をもつて充てる。

F 前各項に定めるもののほか、代議員会の招集、議事の手続その他代議員会に関し必要な事項は、政令で定める。

第118条

 次に掲げる事項は、代議員会の議決を経なければならない。
一 規約の変更
二 毎事業年度の予算
三 毎事業年度の事業報告及び決算
四 その他規約で定める事項

A 理事長は、代議員会が成立しないとき、又は理事長において代議員会を招集する暇がないと認めるときは、代議員会の議決を経なければならない事項で臨時急施を要するものを処分することができる。

B 理事長は、前項の規定による処置については、次の代議員会においてこれを報告し、その確認を求めなければならない。

C 代議員会は、監事に対し、基金の業務に関する監査を求め、その結果の報告を請求することができる。

第119条(役員)

 基金に、役員として理事及び監事を置く。

A 理事の定数は、偶数とし、その半数は、設立事業所の事業主において選定した代議員において、他の半数は、加入員において互選した代議員において、それぞれ互選する。

B 理事のうち1人を理事長とし、設立事業所の事業主において選定した代議員である理事のうちから、理事が選挙する。

C 監事は、代議員会において、設立事業所の事業主において選定した代議員及び加入員において互選した代議員のうちから、それぞれ1人を選挙する。

D 役員の任期は、3年を超えない範囲内で規約で定める期間とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

E 役員は、その任期が満了しても、後任の役員が就任するまでの間は、なお、その職務を行なう。

F 監事は、理事又は基金の職員と兼ねることができない。

第120条(役員の職務)

 理事長は、基金を代表し、その業務を執行する。理事長に事故があるとき、又は理事長が欠けたときは、設立事業所の事業主において選定した代議員である理事のうちから、あらかじめ理事長が指定する者がその職務を代理し、又はその職務を行なう。

A 基金の業務は、規約に別段の定めがある場合を除くほか、理事の過半数により決し、可否同数のときは、理事長の決するところによる。

B 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して、年金たる給付及び一時金たる給付に充てるべき積立金の管理及び運用に関する基金の業務を執行することができる。

C 監事は、基金の業務を監査する。

D 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は代議員会に意見を提出することができる。

第120条の2(理事の義務及び損害賠償責任)

 理事は、前条第3項に規定する基金の業務について、法令、法令に基づいてする厚生労働大臣の処分、規約及び代議員会の議決を遵守し、基金のため忠実にその職務を遂行しなければならない。

A 理事が前条第3項に規定する基金の業務についてその任務を怠つたときは、その理事は、基金に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。

第120条の3(理事の禁止行為等)

 理事は、自己又は当該基金以外の第三者の利益を図る目的をもつて、年金たる給付及び一時金たる給付に充てるべき積立金の管理及び運用の適正を害するものとして厚生労働省令で定める行為をしてはならない。

A 基金は、前項の規定に違反した理事を、規約の定めるところにより、代該員会の議決を経て、交代させることができる。

第120条の4(理事長の代表権の制限)

 基金と理事長(第120条第1項の規定により理事長の職務を代理し、又はその職務を行う者を含む。以下この条において同じ。)との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事が基金を代表する。

第121条(基金の役員及び職員の公務員たる性質)

 基金の役員及び基金に使用され、その事務に従事する者は、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

第4款 加入員
第122条(加入員)

 基金の設立事務所に使用される被保険者は、当該基金の加入員とする。

第123条(資格取得の時期)

 加入員は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日に、加入員の資格を取得する。
一 設立事業所に使用されるに至つたとき。
二その使用される事業所又は船舶が、設立事業所となつたとき。
三設立事業所に使用される者が、第12条の規定に該当しなくなつたとき。

第124(資格喪失の時期)

 加入員は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条各号のいずれかに該当するに至つたとき、若しくは共済組合の組合員若しくは私学教職員共済制度の加入者となつたとき、又は第5号に該当するに至つたときは、その日)に、加入員の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 その設立事業所に使用されなくなつたとき。
三 その使用される事業所又は船舶が、設立事業所でなくなつたとき。
四 第12条の規定に該当するに至つたとき。
五 65歳に達したとき。

第125条(加入員の資格の得喪に関する特例)

 加入員の資格を取得した月にその資格を喪失した者は、その資格を取得した日にさかのぼつて、加入員でなかつたものとみなす。

第126条(同時に2以上の基金の設立事業所に使用される者等の取扱い)

 同時に2以上の基金の設立事業所に使用される被保険者は、第122条の規定にかかわらず、その者の選択する一の基金以外の基金の加入員としないものとする。

A 前項の選択は、その者が2以上の基金の設立事業所に使用されるに至つた日から起算して10日以内にしなければならない。

B 第1項に規定する者は、同項の選択をしたときは、その者が2以上の基金の設立事業所に使用されるに至つた日にさかのぼつて、その選択した一の基金以外の基金の加入員でなかつたものとする。

C 第1項に規定する者が同項の選択をしなかつたときは、その者は、政令の定めるところにより、当該2以上の基金のうちその一の基金を選択したものとみなす。

D 甲基金の加入員が同時に乙基金の設立事業所に使用されるに至つた場合において、第1項の規定により乙基金を選択したときは、その者は、乙基金の加入員となつた日に、甲基金の加入員の資格を喪失する。

E 第1項に規定する者が、同項の規定により選択した基金の加人員でなくなつたときは、その者は、その日に、当該基金以外の基金の加入員の資格を取得する。

第127条 

 同時に設立事業所と設立事業所以外の事業所又は船舶に使用される被保険者は、第122条の規定にかかわらず、その者の申出により基金の加入員としないものとする。

A 前項の申出は、その者が同時に設立事業所と設立事業所以外の事業所又は船舶に使用されることとなつた日から起算して10日以内に、当該設立事業所に係る基金にしなければならない。

B 設立事業所以外の事業所又は船舶に使用される被保険者が同時に設立事業所に使用されることとなつた場合において、第1項の申出をしたときは、同時に設立事業所と設立事業所以外の事業所又は船舶に使用されることとなつた日にさかのぼつて、当該設立事業所に係る基金の加入員とならなかつたものとする。

C 基金の加入員が同時に設立事業所以外の事業所又は船舶に使用されることとなつた場合において、第1項の申出をしたときは、同時に当該基金の設立事業所と設立事業所以外の事業所又は船舶とに使用されることとなつた日に、当該基金の加入員の資格を喪失する。

第128条(設立事業所の事業主の届出)

 設立事業所の事業主は、加入員に関する第18条第1項の規定による確認又は標準報酬の決定若しくは改定につき第29条第1項の規定による通知があつたときは、すみやかに、その通知があつた事項を基金に届け出なければならない。

第129条(標準給与)

 基金は、加入員の給与の月額に基づき、標準給与を定めなければならない。

A 基金は、加入員が当該基金の設立事業所以外の適用事業所(第10条第2項の同意をした事業主の事業所を含む。以下この条において同じ。)に同時に使用される者であるときは、その者が当該基金の設立事業所以外の適用事業所で受ける給与の月額を前項に規定する標準給与の基礎となる給与の月額に算入しなければならない。

B 前2項に規定する給与の範囲及び月額の算定方法、標準給与の基準並びに標準給与の決定及び改定の方法は、政令で定める。

C 設立事業所の事業主は、加入員の給与の月額に関する事項を基金に届け出なければならない。

D 基金は、標準給与の決定又は改定を行なつたときは、その旨を当該事業主に通知しなければならない。

E 設立事業所の事業主は、前項の通知を受けたときは、すみやかに、これを当該通知に係る加入員に通知しなければならない。

F 当該基金の設立事業所以外の適用事業所の事業主は、第2項に規定する給与の月額に関する事項を同項の基金に届け出なければならない。

第5款 基金の行う業務
第130条(基金の業務)

 基金は、第106条の目的を達成するため、加入員又は加入員であつた者に対し、年金たる給付(以下「年金給付」という。)の支給を行なうものとする。

A 基金は、政令の定めるところにより、加入員若しくは加入員であつた者の死亡又は加入員の脱退に関し、一時金たる給付の支給を行なうことができる。

B 基金は、加入員及び加入員であつた者の福址を増進するため、必要な施設をすることができる。

C 基金は、その業務の一部を信託会社(信託業務を営む銀行を含む。以下同じ。)、生命保険会社、厚生年金基金連合会その他政令で定める法人に委託することができる。ただし、年金数理に関する業務は、厚生年金基金連合会に委託することができない。

第130条の2(年金給付及び一時金たる給付に要する費用に関する契約)

 基金は、年金給付及び一時金たる給付に要する費用に関して、信託会社若しくは生命保険会社と信託若しくは保険の契約を締結し、又は投資顧問業者(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和61年法律第74号)第2条第3項に規定する者をいう。以下同じ。)と投資一任契約(同条第4項に規定する契約をいう。以下同じ。)を締結するときは、政令で定めるところによらなければならない。

A 基金は、前項に規定する投資一任契約を締結する場合においては、当該投資一任契約に係る年金給付等積立金(年金給付及び一時金たる給付に充てるべき積立金をいう。以同じ。)について、政令の定めるところにより、信託会社と運用方法を特定する信託の契約を締結しなければならない。

 

B 信託会社、生命保険会社又は投資顧問業者は、正当な理由がある場合を除き、前2項に規定する契約の締結を拒絶してはならない。

第130条の3(年金数理)

 基金は、適正な年金数理に基づいてその業務を行わなければならない。

第131条(年金給付の基準)

 基金が支給する年金給付は、少なくとも、当該基金の加入員又は加入員であつた者が老齢厚生年金の受給権を取得したときに、その者に支給するものでなければならない。

A 老齢厚生年金の受給権者に基金が支給する年金給付は、老齢厚生年金の受給権の消滅理由以外の理由によつて、その受給権を消滅させるものであつてはならない。

第132条

 基金が支給する年金給付は、政令の定めるところにより、加入員の標準給与及び加入員であつた期間に基づいてその額が算定されるものでなければならない。

A 基金が支給する年金給付であつて、老齢厚生年金の受給権者に支給するものの額は、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となつた被保険者であつた期間のうち同時に当該基金の加入員であつた期間(以下この項において「加入員たる被保険者であつた期間」という。)の平均標準報酬月額の1000分の7.125に相当する額に加入員たる被保険者であつた期間に係る被保険者期間の月数を乗じて得た額を超えるものでなければならない。

B 基金は、その支給する年金給付の水準が前項に規定する額に2.84を乗じて得た額に相当する水準に達するよう努めるものとする。

第133条 

 老齢厚生年金の受給権者に基金が支給する年金給付は、当該老齢厚生年金がその全額につき支給を停止されている場合を除いては、その支給を停止することができない。ただし、当該年金給付の額のうち、前条第2項に規定する額を超える部分については、この限りでない。

A 第38条の2第1項の規定による申請に基づきその一部の支給の停止が解除されている老齢厚生年金の受給権者に基金が支給する年金給付について前項の規定を適用する場合においては、同項中「規定する額」とあるのは、「規定する額の2分の1に相当する額」とする。

第134条(裁定)

 基金が支給する年金給付及び一時金たる給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基づいて、基金が裁定する。

第135条(年金給付の支払期月)

 老齢厚生年金の受給権者に基金が支給する年金給付の支払期月については、当該老齢厚生年金の支払期月の例による。ただし、年金給付の額が政令で定める額に満たない場合における支払期月については、政令の定めるところによる。

第136条(準用規定)

 第37条、第40条、第40条の2及び第41条第1項の規定は、基金が支給する年金給付及び一時金たる給付について、第36条第1項及び第2項並びに第39条第2項前段の規定は、基金が支給する年金給付について、第41条第2項の規定は、死亡を支給理由とする一時金たる給付(以下「死亡一時金」という。)について準用する。この場合において、第37条第1項から第3項まで及び第40条中「受給権者」とあるのは「受給権を有する者」と、同条中「政府」とあり、及び第40条の2中「社会保険庁長官」とあるのは「基金」と、第41条第1項中「老飴厚生年金」とあるのは「基金が支給する年金給付又は脱退を支給理由とする一時金たる給付」と、それぞれ読み替えるものとする。

第136条の2(年金給付等積立金の積立て)

 基金は、政令の定めるところにより、年金給付等積立金を積み立てなければならない。

第136条の3(年金給付等積立金の運用)

 年金給付等積立金は、次に掲げる方法により運用しなければならない。
一 信託会社への信託(運用方法を特定するものを除く。)
二 生命保険会社への保険料の払込み
三 投資顧問業者との投資一任契約であつて政令で定めるものの締結
四次に掲げる方法であつて金融機関、証券会社その他の政令で定めるもの(以下「金融機関等」という。)を契約の相手方とするもの

イ 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)に規定する受益証券(証券投資信託又はこれに類する外国投資信託に係るものに限る。)又は投資証券、投資法人債若しくは外国投資証券(資産を主として有価証券に対する投資として運用すること(有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引、外国市場証券先物取引、有価証券店頭指数等先渡取引、有価証券店頭オプション取引又は有価証券店頭指数等スワップ取引を行うことを含む。)を目的とする投資法人又は外国投資法人であつて政令で定めるものが発行するものに限る。)の売買
ロ 貸付信託の受益証券の売買
ハ 預金又は貯金
ニ 運用方法を特定する信託であつてイからハまでに掲げる方法又はコール資金の貸付け若しくは手形の割引により運用するもの
一 次に掲げる方法であつて金融機関等を契約の相手方とするもの
イ 有価証券(証券取引法(昭和23年法律第25号)第108条の2第3項の規定により国債証券又は外国国債証券とみなされる標準物(ハにおいて単に「標準物」という。)を含み、前号イ及びロに規定するものを除く。)であつて政令で定めるもの(株式を除く。)の売買
ロ イの規定により取得した有価証券のうち政令で定めるものの銀行その他政令で定める法人に対する貸付け
ハ 債券オプション(当事者の一方の意志表示により当事者間において債券(標準物を含む。)の売買契約を成立又は解除させることができる権利であつて政令で定めるものをいう。)の取得又は付与
ニ 先物外国為替(外国通貨をもつて表示される支払手段であつて、その売買契約に基づく債権の発生、変更又は消滅に係る取引を当該売買の契約日後の一定の時期に一定の外国為替相場により実行する取引(金融先物取引所の開設する市場において行われる取引又はこれに類する取引であつて、政令で定めるものに該当するものを除く。)の対象となるものをいう。)の売買
ホ 通貨オプション(当事者の一方の意思表示により当事者間において外国通貨をもつて表示される支払手段の売買取引(ニの政令で定める取引に該当するものを除く。)を成立させることができる権利をいう。)の取得又は付与
ヘ 運用方法を特定する信託であつて次に掲げる方法により運用するもの
(1)イからホまでに掲げる方法
(2)株式の売買であつて政令で定めるところにより証券取引法第2条第18項に規定する有価証券指数その他政令で定めるもの(株式に係るものに限る。)の変動と一致するように運用するもの
(3)証券取引法第2条第18項に規定する有価証券指数等先物取引及び同条第19項に規定する有価証券オプション取引((2)の有価証券指数その他政令で定めるものに係るものに限る。)
(4)コール資金の貸付け又は手形の割引

A 第130条の2第2項の規定は、前項第3号に掲げる投資一任契約について準用する。

B 基金は、第1項第4号イ若しくはロ又は同項第5号イからホまでに掲げる方法により運用する場合においては、金融機関等と当該運用に係る年金給付等積立金の管理の委託に関する契約を締結しなければならない。

C 基金は、第1項第5号に掲げる方法により運用する場合においては、政令で定めるところにより、年金給付等積立金の管理及び運用の体制を整備しなければならない。

D 第1項の運用は、政令で定めるところにより、安全かつ効率的に行われなければならない。

第136条の4(年金給付等積立金の運用に関する基本方針等)

 基金は、年金給付等積立金の運用に関して、運用の目的その他厚生労働省令で定める事項を記載した基本方針を作成し、当該基本方針に沿つて運用しなければならない。

 

A 前項の規定による基本方針は、この法律(これに基づく命令を含む。)その他の法令に反するものであつてはならない。

B 基金は、前条第1項第1号から第3号までに掲げる方法(政令で定める保険料の払込みを除く。)により運用する場合においては、当該運用に関する契約の相手方に対して、協議に基づき第1項の規定による基本方針の趣旨に沿つて運用すべきことを、厚生労働省令で定めるところにより、示さなければならない。

C 基金の業務上の余裕金は、政令の定めるところにより、事業の目的及び資金の性質に応じ、安全かつ効率的に運用しなければならない。

D 基金は、事業年度その他その財務に関しては、前2条及び前項の規定によるほか、政令の定めるところによらなければならない。

第6款 費用の負担
第137条 

 削除

第138条(掛金)

 基金は、基金が支給する年金給付及び一時金たる給付に関する事業に要する費用に充てるため、掛金を徴収する。

A 掛金は、年金給付の額の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。

B 掛金の額は、政令の定めるところにより、加入員の標準給与の月額を標準として算定するものとする。

C 第129条第2項に規定する加入員に係る掛合の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額に、標準給与の月額の基礎となる給与の月額に対する当該基金の設立事業所で受ける給与の月額の割合を乗じて得た額とする。

第139条(掛金の負担及び納付義務)

 加入員及び加入員を使用する設立事業所の事業主は、それぞれ掛金の半額を負担する。

A 基金は、前項の規定にかかわらず、政令で定める範囲内において、規約の定めるところにより、設立事業所の事業主の負担すべき掛金の額の負担の割合を増加することができる。

B 設立事業所の事業主は、その使用する加入員及び自己の負担する掛金を納付する義務を負う。

C 設立事業所の事業主は、基金の同意があるときは、政令の定めるところにより、掛金を金銭に代えて証券取引法第2条第14項に規定する証券取引所に上場されている株式で納付することができる。

D 加入員が同一の基金の設立事業所の2以上に同時に使用される場合における各事業主の負担すべき掛金の額及び掛金の納付義務については、政令の定めるところによる。

E 育児休業をしている加入員(第129条第2項に規定する加入員を除く。)を使用する設立事業所の事業主が、厚生労働省令の定めるところにより基金に申出をしたときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、その申出をした日の属する月からその育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係る掛金のうち、免除保険料額(当該加入員の標準報酬月額に第81条の3第1項に規定する免除保険料率を乗じて得た額をいう。以下同じ。)を免除する。

F 育児休業をしている加入員であつて第129条第2項に規定する加入員である者を使用する設立事業所の事業主が、厚生労働省令の定めるところにより基金に申出をしたときは、第1項及び第2項の規定にかかわらず、その申出をした日の属する月からその育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係る掛金のうち、免除保険料額に前条第4項に規定する割合を乗じて得た額を免除する。

第140条(徴収金)

 基金は、第129条第2項に規定する加入員に係る年金給付の支給に要する費用の一部に充てるため、当該加入員につき第138条第3項の規定により算定した額から当該加入員に係る掛金の額を控除した額に相当する金額を徴収する。

A 当該加入員及び第129条第2項に規定する当該基金の設立事業所以外の適用事業所の事業主(第10条第2項の同意をした事業主を含む。)は、それぞれ前項の徴収金を負担する。

B 前項の規定により事業主が負担する徴収金の額は、事業主が当該基金の設立事業所の事業主であるとした場合において当該加入員につき掛金として負担すべきこととなる額に相当する額とする。ただし、その額が次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該各号に定める額を超えるときは、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 当該事業主が設立事業所の事業主である場合
当該加入員がその事業主の事業所又は船舶に設立された基金の加入員であるとした場合においてその者につき掛金として負担すべきこととなる額
二 当該事業主が設立事業所の事業主でない場合
当該加入員が加入員でないとした場合においてその者につき保険料として負担すべきこととなる額からその者につき保険料として負担する額を控除した額に相当する額

C 当該加入員は、第1項の徴収金の額から前項の規定により事業主が負担する額を控除した額を負担する。

D 第1項の徴収金は、当該加入員に係る年金給付の額の計算の基礎となる加入員であつた期間の各月につき、徴収するものとする。

E 当該加入員を使用する事業主は、当該加入員及び自己の負担する徴収金を納付する義務を負う。

F 当該加入員が当該基金の設立事業所以外の事業所又は船舶の2以上に同時に使用される場合における各事業主の徴収金の納付義務については、政令の定めるところによる。

G 当該加入員に係る前条第7項に規定する申出があつたときは、第1項から第4項までの規定にかかわらず、その申出のあつた日の属する月からその育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係る第1項の徴収金のうち、免除保険料額から前条第7項の規定により免除された額を控除した額を免除する。

H 育児休業をしている当該加入員を使用する事業主は、当該加入員を使用する当該基金の設立事業所の事業主に代わつて、前条第7項に規定する申出をすることができる。

第141条(準用規定)

 第83条、第84条及び第85条の規定は、掛金及び前条第1項の規定による徴収金について、第86条から第89条までの規定は、掛金その他この節の規定による徴収金について準用する。この場合において、第83条第2項及び第3項、第86条第1項、第2項及び第5項並びに第87条第1項中「社会保険庁長官」とあり、並びに第86条第6項中「厚生労働大臣」とあるのは「基金」と、第87条第1項から第3項までの規定中「保険料額」とあるのは「格金又は第140条第1項の規定による徴収金の金額」と、第87条第1項、第2項、第4項及び第6項中「保険料」とあるのは「掛金又は第140条第1項の規定による徴収金」と読み替えるほか、掛金については、第83条第2項中「納付した保険料額」とあるのは「納付した掛金(証券取引法(昭和23年法律第25号)第2条第14項に規定する証券取引所に上場されている株式で納付した掛金を除く。)の額」と、第84条中「被保険者」とあるのは「加入員」と、第85条第3号中「被保険者の使用される事業所」とあるのは「設立事業所」と、同条第4号中「船舶」とあるのは「設立事業所である船舶」と、前条第1項の規定による徴収金については、第84条中「事業主」とあるのは「当該基金の設立事業所以外の適用事業所の事業主(第10条第2項の同意をした事業主を含む。)」と、「被保険者」とあるのは「当該基金の設立事業所以外の適用事業所に使用される加入員である被保険者」と、第85条第3号中「被保険者の使用される事業所」とあるのは「設立事業所以外の事業所」と、同条第4号中「船舶」とあるのは「設立事業所以外の船舶」と、それぞれ読み替えるものとする。

A 基金が前項において準用する第86条第2項の規定によつて督促をした場合に係る掛金の納付については、第139条第4項の規定は適用しない。

B 基金は、第1項において準用する第86条第5項の規定により国税滞納処分の例により処分をしようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

第7款 合併及び分割
第142条(合併)

 基金は、合併しようとするときは、代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

A 合併によつて基金を設立するには、各基金がそれぞれ代議員会において役員又は代議員のうちから選任した設立委員が共同して規約をつくり、その他設立に必要な行為をしなければならない。

B 合併により設立された基金又は合併後存続する基金は、合併により消滅した基金の権利義務を承継する。

C 基金が合併したときは、合併により消滅した基金の加入員であつた者の当該基金の加入員であつた期間は、合併により設立された基金又は合併後存続する基金の加入員であつた期間とみなす。ただし、厚生年金基金連合会がその支給に関する義務を承継している年金給付の額の計算の基礎となる基金の加入員であつた期間については、この限りでない。

第143条(分割)

 基金は、分割しようとするときは、代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

A 基金の分割は、設立事業所の一部について行なうことはできない。

B 分割を行なう場合においては、分割により設立される基金の加入員となるべき被保吸者又は分割後存続する基金の加入員である被保険者の数は、第110条第1項の政令で定める数以上でなければならない。

C 分割によつて基金を設立するには、分割により設立される基金の設立事業所となるべき適用事業所の事業主が規約をつくり、その他設立に必要な行為をしなければならない。

D 分割により設立された基金は、分割により消滅した基金又は分割後存続する基金の権利義務の一部を承継する。

E 前項の規定により承継する権利義務の限度は、分割の議決とともに議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

F 基金が分割したときは、分割により設立された基金に年金給付の支給に関する義務が承継された者の分割により消滅した基金又は分割後存続する基金の加入員であつた期間は、当該義務を承継した分割により設立された基金の加入員であつた期間とみなす。ただし、厚生年金基金連合会がその支給に関する義務を承継している年金給付の額の計算の基礎となる基金の加入員であつた期間については、この限りでない。

第144条(設立事業所の増減)

 基金がその設立事業所を増加させ、又は減少させるには、その増加又は減少に係る適用事業所の事業主の全部及びその適用事業所に使用される被保険者の2分の1以上の同意を得なければならない。

A 基金がその設立事業所を増加させる場合において、その増加に係る適用事業所に使用される被保険者の3分の1以上で組織する労働組合があるときは、前項の同意のほか、当該労働組合の同意を得なければならない。

B 前2項の場合において、その増加又は減少に係る適用事業所が2以上であるときは、第1項の被保険者の同意又は前項の同意は、各適用事業所について得なければならない。

C 第6条第3項の規定による認可の申請があつた事業所に係る該立事業所の増加に関する規約の変更の認可の申請を行う場合にあつては、前3項中「被保険者」とあるのは、「被保険者となるべき者」とする。

D 第1項の規定により設立事業所を減少させる場合においては、基金の加入員は、設立事業所を減少させた後においても、第110条第1項の政令で定める数以上でなければならない。

第144条の2(基金間の権利義務の移転)

 甲基金は、乙基金に申し出て、甲基金の設立事業所(以下この条において「脱退事業所」という。)に使用される甲基金の加入員に係る甲基金の加入員であつた期間(厚生年金基金連合会がその支給に関する義務を承継している年金給付の額の計算の基礎となる甲基金の加入員であつた期間を除く。)に係る年金給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を移転することができる。

A 前項の規定により権利義務の移転を行う場合には、甲基金は、乙基金に申し出て、脱退事業所に使用される甲基金の加入員であつた者であつて当該加入員の資格を喪失したもの(同項に規定する脱退事業所に使用される甲基金の加入員を除く。)のうち次項の同意をしたものに係る甲基金の加入員であつた期間(厚生年金基金連合会がその支給に関する義務を承継している年金給付の額の計算の基礎となる甲基金の加入員であつた期間を除く。)に係る年金給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を移転することができる。

B 甲基金が前項の規定により当該甲基金の加入員の資格を喪失した者に係る権利義務の移転を申し出るには、当該加入員の資格を喪失した者の同意を得なければならない。

C 甲基金が第1項及び第2項の規定により権利義務の移転を申し出るには、脱退事業所の事業主の全部及び当該脱退事業所に使用される甲基金の加入員の2分の1以上の同意を得、並びに甲基金の代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、及び甲基金の脱退事業所以外の設立事業所に係る代議員の4分の3以上の同意を得た上で、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

D 前項の場合において、脱退事業所が2以上であるときは、甲基金の加入員の同意は、各脱退事業所について得なければならない。

E 乙基金は、第1項及び第2項の規定により権利義務の移転の申出があつたときは、当該年金給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を承継することができる。

F 乙基金は、前項の規定により権利義務を承継しようとするときは、その代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

G 乙基金が第6項の規定により権利義務を承継したときは、乙基金に年金給付の支給に関する義務が承継された者の甲基金の加入員であつた期間は、乙基金の加入員であつた期間とみなす。

H 乙基金が第6項の規定により権利義務を承継することにより、甲基金の設立事業所が減少することとなるときは、当該脱退事業所については前条第1項の規定による同意を得たものとみなす。

第8款 解散及び清算
第145条(解散)

 基金は、次に掲げる理由により解散する。
一 代議員の定数の4分の3以上の多数による代議員会の議決
二 基金の事業の継続の不能
三 第179条第5項の規定による解散の命令

A 基金は、前項第1号又は第2号に掲げる理由により解散しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

第146条(基金の解散による年金給付等の支給に関する義務の消滅)

 基金は、解散したときは、当該基金の加入員であつた者に係る年金給付及び一時金たる給付の支給に関する義務を免れる。ただし、解散した日までに支給すべきであつた年金給付又は一時金たる給付でまだ支給していないものの支給に関する義務については、この限りでない。

第147条(清算)

 基金が第145条第1項第1号又は第2号の規定により解散したときは、理事が、その清算人となる。ただし、代議員会において他人を選任したときは、この限りでない。

A 次に掲げる場合には、厚生労働大臣が清算人を選任する。
一 前項の規定により清算人となる者がないとき。
二 基金が第145条第1項第3号の規定により解散したとき。
三 清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるとき。

B 前項の場合において、清算人の職務の執行に要する費用は、基金が負担する。

C 解散した基金の残余財産は、規約の定めるところにより、その解散した日において当該基金が年金給付の支給に関する義務を負つていた者(以下「解散基金加入員」という。)に分配しなければならない。

D 第121条の規定は、基金の清算人について、民法第73条及び第78条から第80条まで並びに非訟事件手続法(明治31年法律第14号)第138条の規定は、基金の清算について準用する。この場合において、同法第138条第3号中「裁判所」とあるのは、「厚生労働大臣」と読み替えるものとする。

E 前各項に定めるもののほか、解散した基金の清算に関し必要な事項は、政令で定める。

第148条 

 厚生労働大臣は、解散した基金について必要があると認めるときは、その清算事務の状況に関する報告を徴し、又は当該職員をして当該基金の事務所に立ち入つて関係者に質問させ、若しくは実地にその状況を検査させることができる。

A 第100条第2項において準用する第96条第2項の規定は、前項の規定による質問及び検査について、第100条第3項の規定は、前項の規定による権限について準用する。

B 厚生労働大臣は、第1項の規定により報告を徴し、又は質問し、若しくは検査した場合において、その清算事務が法令、規約、若しくは厚生労働大臣の処分に違反していると認めるとき、その清算事務が著しく適正を欠くと認めるとき、又は清算人がその清算事務を明らかに怠つていると認めるときは、期間を定めて、解散した基金又はその清算人に対し、その清算事務について違反の是正又は改善のため必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

C 解散した基金又はその清算人が前項の命令に違反したときは、厚生労働大臣は、当該基金に対し、期間を定めて、当該違反に係る清算人の全部若しくは一部の改任を命じ、又は当該違反に係る清算人を解任することができる。

第2節 厚生年金基金連合会
第1款 通  則
第149条(連合会)

 基金は、第160条第1項に規定する中途脱退者及び解散基金加入員に係る年金給付の支給を共同して行うため、厚生年金基金連合会(以下「連合会」という。)を設立することができる。

A 連合会は、全国を通じて一個とする。

第150条(法人格)

 連合会は、法人とする。

A 連合会の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

第151条(名称)

 連合会は、その名称中に厚生年金基金連合会という文字を用いなければならない。

A 連合会でない者は、厚生年金基金連合会という名称を用いてはならない。

第2款 設立及び管理
第152条(設立の認可等)

 連合会を設立しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

A 前項の認可の申請は、5以上の基金が共同して規約をつくり、基金の3分の2以上の同意を得て行なうものとする。

B 連合会は、設立の認可を受けた時に成立する。

C 厚生労働大臣は、基金の行なう事業の健全な発展を図るために必要があると認めるときは、基金に対し、連合会に加入することを命ずることができる。

D 第114条の規定は、連合会について準用する。この場合において、同条中「基金の設立の認可の申請をした適用事業所の事業主」とあるのは「連合会の設立の認可の申請をした基金の理事長」と、「当該適用事業所の事業主」とあるのは「当該基金の理事長」と読み替えるものとする。

第153条(規約)

 連合会は、規約をもつて次に掲げる事項を定めなければならない。
一 名称
二 事務所の所在地
三 評議員会に関する事項
四 役員に関する事項
五 会員の資格に関する事項
六 年金給付及び一時金たる給付に関する事項
七 附帯事業に関する事項
八 年金給付等積立金の管理及び運用に関する契約に関する事項
九 会費に関する事項
十 事業年度その他財務に関する事項
十一 解散及び清算に関する事項
十二 業務の委託に関する事項
十三 公告に関する事項
十四 その他組織及び業務に関する重要事項

A 第115条第2項及び第3項の規定は、連合会の規約について準用する。

第154条(準用規定)

 第116条の規定は、連合会について準用する。

第155条(評議員会)

 連合会に、評議員会を置く。

A 評議員会は、評議員をもつて組織する。

B 評議員は、会員である基金の理事長において互選する。

C 評議員の任期は、2年とする。ただし、補欠の評議員の任期は、前任者の残任期間とする。

D 評議員会は、理事長が招集する。評議員の定数の3分の1以上の者が会議に付議すべき事項及び招集の理由を記載した書面を理事長に提出して評議員会の招集を請求したときは、理事長は、その請求のあつた日から20日以内に評議員会を招集しなければならない。

E 評議員会に議長を置く。議長は、理事長をもつて充てる。

F 前各項に定めるもののほか、評議員会の招集、議事の手続その他評議員会に関し必要な事項は、政令で定める。

第156条 

 次に掲げる事項は、評議員会の議決を経なければならない。
一 規約の変更
二 毎事業年度の予算
三 毎事業年度の事業報告及び決算
四 その他規約で定める事項

A 理事長は、評議員会が成立しないとき、又は理事長において評議員会を招集する暇がないと認めるときは、評議員会の議決を経なければならない事項で臨時急施を要するものを処分することができる。

B 理事長は、前項の規定による処置については、次の評議員会においてこれを報告し、その承認を求めなければならない。

C 評議員会は、監事に対し、連合会の業務に関する監査を求め、その結果の報告を請求することができる。

第157(役員)

 連合会に、役員として理事及び監事を置く。

A 理事及び監事は、評議員において互選する。ただし、特別の事情があるときは、評議員以外の者のうちから評議員会で選任することを妨げない。

B 理事のうち1人を理事長とし、理事において互選する。

C 役員の任期は、2年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

D 役員は、その任期が満了しても、後任の役員が就任するまでの間は、なお、その事務を行なう。

E 監事は、理事又は連合会の議員と兼ねることができない。

第158条(役員の職務等)

 理事長は、連合会を代表し、その業務を執行する。理事長に事故があるとき、又は理事長が欠けたときは、理事長のあらかじめ指定する理事がその職務を代理し、又はその職務を行なう。

2 連合会の業務は、規約に別段の定めのある場合を除くほか、理事の過半数により決し、可否同数のときは、理事長の決するところによる。

3 理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して、年金給付等積立金の管理及び運用に関する連合会の業務を執行することができる。

C 監事は、連合会の業務を監査する。

D 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は評議員会に意見を提出することができる。

E 第121条の規定は、連合会の役員及び連合会に使用され、その事務に従事する者について準用する。

第158条(理事の義務及び損害賠償責任)

 理事は、前条第3項に規定する連合会の業務について、法令、法令に基づいてする厚生労働大臣の処分、規約及び評議員会の議決を遵守し、連合会のため忠実にその職務を遂行しなければならない。

A 理事が前条第3項に規定する連合会の業務についてその任務を怠つたときは、その理事は、連合会に対し連帯して損害賠償の責めに任ずる。

第158条の3(理事の禁止行為等)

 理事は、自己又は連合会以外の第三者の利益を図る目的をもつて、年金給付等積立金の管理及び運用の適正を害するものとして厚生労働省令で定める行為をしてはならない。

A 連合会は、前項の規定に違反した理事を、規約の定めるところにより、評議員会の議決を経て、交代させることができる。

第158条の4(理事長の代表権の制限)

 連合会と理事長(第158条第1項の規定により理事長の職務を代理し、又はその職務を行う者を含む。以下この条において同じ。)との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事が連合会を代表する。

第3款 連合会の行う業務
第159条(連合会の業務)

 連合会は、第160条第5項の規定により年金給付の支給に関する義務を承継している中途脱退者及び解散基金加入員に対し年金給付の支給を行うほか、第160条の2第3項及び第162条の3第5項の規定により一時金たる給付の支給を行うものとする。

A 連合会は、次の事業を行うことができる。ただし、第1号に掲げる事業を行う場合には、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
一 解散基金加入員に支給する年金給付につき一定額が確保されるよう、基金の拠出金等を原資として、年金給付の額を付加する事業
二 基金の行う事業の健全な発展を図るために必要な事業であつて政令で定めるもの

B 連合会は、基金の加入員及び加入員であつた者の福祉を増進するため、必要な施設をすることができる。

C 連合会は、第130条第4項の規定による委託を受けて、基金の業務の一部を行うことができる。

D 連合会は、その業務の一部を信託会社、生命保険会社その他政令で定める法人に委託することができる。

第159条の2(年金給付及び一時金たる給付に要する費用に関する契約)

 連合会は、年金給付及び一時金たる給付に要する費用に関して、信託会社若しくは生命保険会社と信託若しくは保険の契約を締結し、又は投資顧問業者と投資一任契約を締結するときは、政令で定めるところによらなければならない。

A 連合会は、前項に規定する投資一任契約を締結する場合においては、当該投資一任契約に係る年金給付等積立金について、政令の定めるところにより、信託会社と運用方法を特定する信託の契約を締結しなければならない。

 

B 第130条の2第3項の規定は、前2項に規定する契約について準用する。

第159条の3(年金数理)

 連合会は、適正な年金数理に基づいてその業務を行わなければならない。

第160条(中途脱退者に係る措置)

 基金は、政令の定めるところにより、連合会に申し出て、中途脱退者(当該基金の加入員の資格を喪失した者(当該加入員の資格を喪失した日において当該基金が支給する年金給付の受給権を有する者を除く。)であつて、政令の定めるところにより計算したその者の当該基金の加入員であつた期間が政令で定める期間に満たないものをいう。以下同じ。)の当該基金の加入員であつた期間に係る年金給付の支給に関する義務を移転することができる。

A 連合会は、前項の規定により義務の移転の申出があつたときは、これを拒絶してはならない。

B 第1項の規定により義務の移転を行なう場合には、基金は、連合会に対し、当該中途脱退者の加入員であつた期間に係る年金給付の現価に相当する金額(以下「現価相当額」という。)を交付しなければならない。

C 前項の規定により交付すべき現価相当額の計算については、政令で定める。

D 連合会は、第3項の規定により現価相当額の交付を受けたときは、当該年金給付の支給に関する義務を承継するものとする。

E 連合会は、前項の規定により中途脱退者に係る年金給付の支給に関する義務を承継したときは、その旨を当該中途脱退名に通知しなければならない。

F 連合会は、中途脱退者の所在が明らかでないため前項の通知をすることができないときは、同項の通知に代えて、その通知すべき事項を公告しなければならない。

第160条の2 

 基金は、規約の定めるところにより、前条第1項の規定による申出に係る中途脱退者に支給すべき脱退を支給理由とする第130条第2項の一時金たる給付(以下「脱退一時金」という。)の額に相当する額(以下「脱退一時金相当額」という。)の交付を連合会に申し出ることができる。

A 前項の規定により申出をした基金は、当該中途脱退者に係る前条第3項の規定による現価相当額の交付をするときに、当該申出に係る脱退一時金相当額を連合会に交付しなければならない。

B 連合会は、前項の規定により脱退一時金相当額の交付を受けたときは、当該交付金を原資として、政令の定めるところにより、当該中途脱退者に係る年金給付の額を加算し、又は死亡一時金その他の一時金たる給付を支給するものとする。

C 基金は、第2項の規定により脱退一時金相当額を交付したときは、当該中途脱退者に係る脱退一時金の支給に関する義務を免れる。

D 連合会は、第3項の規定により中途脱退者に係る年金給付の額を加算し、又は一時金たる給付を支給することとなつたときは、前条第6項の規定による通知に併せて、その旨を当該中途脱退者に通知しなければならない。

E 前条第2項の規定は、第1項の規定による申出について、同条第7項の規定は、前項の規定による通知について準用する。

第161条 

 連合会が第160条第5項の規定により年金給付の支給に関する義務を承継している中途脱退者が再びもとの基金の加入員となつたときは、当該基金は、当該中途脱退者に係る当該年金給付の支給に関する義務(前条第3項の規定により連合会が当該年金給付の額を加算して支給するものとされている場合にあつては、当該加算された額の年金給付の支給に関する義務とし、同項の規定により連合会が一時金たる給付を支給するものとされている場合にあつては、当該一時金たる給付の支給に関する義務を含む。)を承継するものとする。

A 前項の場合においては、当該基金は、連合会に対し、当該中途脱退者に係る年金給付及び一時金たる給付の現価相当額の交付を請求することができる。

B 前項の現価相当額の計算については、政令で定める。

第162条 

 第160条第1項の規定により中途脱退者に係る年金給付の支給に関する義務を連合会に移転した基金につき合併若しくは分割又は第144条の2第1項の規定による権利義務の移転があつた場合において、当該中途脱退者が当該合併若しくは分割があつた基金の権利義務を承継する基金又は当該権利義務の移転があつた基金の当該権利義務を承継する基金の加入員となつたときは、前条第1項中「再びもとの基金」とあるのは、「合併若しくは分割があつた基金の権利義務を承継する基金又は第144条の2第1項の規定により権利義務を移転した基金の当該権利義務を承継する基金」と読み替えて、同条の規定を適用する。

A 前項に規定する者については、第142条第4項ただし書及び第143条第7項ただし書の規定は、適用しない。

第162条の2 

 第161条第1項の規定により加算された額の年金給付及び一時金たる給付の支給に関する義務を承継した基金の当該義務の承継に係る加入員について第160条から前条までの規定を適用する場合においては、第160条第1項及び第3項中「に係る年金給付」とあるのは「に係る次条第3項の規定によりその額が加算された年金給付及び同項の規定による一時金たる給付」と、同条第5項及び第6項中「年金給付」とあるのは「年金給付及び一時金たる給付」と、第160条の2第3項中「一時金たる給付を支給する」とあるのは「一時金たる給付の額を加算する」と、同条第5項中「の額を加算し、又は一時金たる給付を支給する」とあるのは「又は一時金たる給付の額を加算する」と、第161条第1項及び前条第1項中「年金給付」とあるのは「年金給付及び一時金たる給付」とする。

第162条の3(解散基金加入員に係る措置)

 連合会は、基金が解散したときは、解散基金加人員に係る第85条の2に規定する責任準備金に相当する額を当該解散した基金から徴収する。

A 解散基金加入員が老齢厚生年金の受給権を取得したとき又は基金が解散した日において当該基金に係る解散基金加入員が老齢厚生年金の受給権を有していたときは、連合会は、当該解散基金加入員に年金給付を支給するものとする。

B 前項の年金給付の額は、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となつた被保険者であつた期間のうち同時に当該解散した基金の加入員であつた期間に係る第132条第2項に規定する額とする。

C 解散した基金は、規約の定めるところにより、第147条第4項の規定により解散基金加入員に分配すべき残余財産の交付を連合会に申し出ることができる。

D 連合会は、前項の規定による申出に従い解散基金加入員に分配すべき残余財産の交付を受けらときは、当該交付金を原資として、政令の定めるところにより、当該解散基金加入員に係る年金給付の額を加算し、又は死亡一時金その他の一時金たる給付を支給するものとする。

E 連合会が前項に規定する残余財産の交付を受けたときは、第147条第4項の規定の適用については、当該残余財産は、当該解散基金加入員に分配されたものとみなす。

F 連合会は、第5項の規定により解散基金加入員に係る年金給付の額を加算し、又は一時金たる給付を支給することとなつたときは、その旨を当該解散基金加入員に通知しなければならない。

G 第160条第2項の規定は、第4項の規定による申出について、同条第7項の規定は、前項の規定による通知について準用する。

第163条(裁定)

 第159条第1項の年金給付及び一時金たる給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基づいて、連合会が裁定する。

(年金給付の支給停止)

 連合会が第162条の3第2項の規定により支給する年金給付は、当該事故基金加入員か受給権を有する老齢厚生年金につき第38条第1項前段の規定によりその支給が停止されているときは、その間、その支給を停止するものとする。ただし、当該年金給付のうち、第162条の3第5項の規定により加算された額に相当する部分については、この限りでない。

A 第38条の2第1項の規定による申請に基づきその一部の支給の停止が解除されている老齢厚生年金の受給権者について前項の規定を適用する場合においては、同項中「その支給を停止」とあるのは、「その額の2分の1に相当する部分の支給を停止」とする。

第164条(準用規定)

 第37条、第40条、第40条の2及び第41条第1項の規定は、連合会が支給する年金給付及び一時金たる給付について、第36条第1項及び第2項、第39条第2項前段並びに第135条の規定は、連合会が支給する年金給付について、第35条及び第45条の規定は、連合会が第162条の3第2項の規定により支給する年金給付について、第41条第2項の規定は、死亡一時金についで準用する。この場合において、第35条中「(第44条第1項、第50条の2第1項又は第62条第1項の規定により加算する額を除く。)又は当該加算する額」とあるのは「(第162条の3第5項の規定により加算された額を除く。)」と、第37条第1項から第3項まで、第40条及び第45条中「受給権者」とあるのは「受給権を有する者」と、第40条中「政府」とあり、及び第40条の2中「社会保険庁長官」とあるのは「連合会」と、第41条第1項及び第45条中「老齢厚生年金」とあるのは「連合会が支給する年金給付」と、それぞれ読み替えるものとする。

第86条から第89条までの規定は、前項において準用する第40条の2の規定及び第162条の3第1項の規定による徴収金について準用する。この場合において、第86条第1項、第2項及び第5項並びに第87条第1項中「社会保険庁長官」とあり、並びに第86条第6項中「厚生労働大臣」とあるのは、「連合会」と読み替えるものとする。

第136条の2から第136条の4の規定は、連合会の年金給付等積立金の積立て及びその運用、業務上の余裕金の運用並びに事業年度その他その財務について準用する。

第165条 

削除

第4款 解散及び清算
第166条(解散)

 連合会は、次に掲げる理由により解散する。
一 評議員の定数の4分の3以上の多数による評議員会の議決
二 第179条第5項の規定による解散の命令

A 連合会は、前項第1号に掲げる理由により解散しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

第167条(連合会の解散による年金給付等の支給に関する義務の消滅)

 連合会は、解散したときは、中途脱退者及び解散基金加入員に係る年金給付及び一時金たる給付の支給に関する義務を免れる。ただし、解散した日までに支給すべきであつた年金給付又は一時金たる給付でまだ支給していないものの支給に関する義務については、この限りでない。

第168条(清算)

 連合会が第166条第1項第1号の規定により解散したときは、理事が、その清算人となる。ただし、評議員会において他人を選任したときは、この限りでない。

A 連合会が第166条第1項第2号の規定により解散したときは、厚生労働大臣が清算人を選任する。

B 第147条第2項(第2号を除く。)、第3項、第5項及び第6項並びに第148条の規定は、連合会の清算について準用する。

第3節 雑  則
第169条(不服申立て)

 標準給与若しくは年金給付若しくは一時金たる給付に関する処分又は掛金その他この章の規定による徴収金の賦課若しくは徴収の処分若しくは第141条第1項及び第164条第2項において準用する第86条の規定による処分に不服がある者については、第6章の規定を準用する。この場合において、第91条の3中「第90条第1項又は第91条」とあるのは、「第169条において準用する第90条第1項又は第91条」と読み替えるものとする。

第170条(時効)

 掛金その他この章の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、2年を経過したとき、年金給付及び一時金たる給付を受ける権利は、5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。

A 年金給付を受ける権利の時効は、当該年金がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。

B 掛金その他この章の規定による徴収金の納入の告知又は第141条第1項及び第164条第2項において準用する第86条第1項の規定による督促は、民法第153条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。

第171条(期間の計算)

 この章又はこの章の規定に基づく命令に規定する期間の計算については、この章に別段の規定がある場合を除くほか、民法の期間に関する規定を準用する。

第172条(戸籍事項の無料証明)

 市町村長は、基金、連合会又は年金給付若しくは一時金たる給付の受給権を有する者に対して、当該市町村の条例の定めるところにより、加入員、加入員であつた者又は年金給付若しくは一時金たる給付の受給権を有する者の戸籍に関し、無料で証明を行なうことができる。

第173条(書類等の提出)

 基金又は連合会は、必要があると認めるときは、年金給付又は一時金たる給付の受給権を有する者に対して、障害の状態に関する書類その他の物件の提出を求めることができる。

第174条(準用規定)

 第98条第1項の規定は、設立事業所の事業主について、同条第2項の規定は、加入員について、同条第3項の規定は、年金給付又は一時金たる給付の受給権を有する者について、同条第4項の規定は、これらの給付の受給権を有する者が死亡した場合について準用する。この場合において、同条第1項中「第27条」とあるのは「第128条」と、第98条第1項及び第2項中「社会保険庁長官」とあるのは「基金」と、同項中「事業主」とあるのは「設立事業所の事業主」と、同条第3項及び第4項中「社会保険庁長官」とあるのは「基金又は連合会」と、それぞれ読み替えるものとする。

第175条 

 削除

第176条(届出)

 基金及び連合会は、第130条第4項又は第159条第5項の規定によりその業務の一部を委託したときは、厚生労働省令の定めるところにより、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。委託に係る契約の条項に変更を生じたときも、同様とする。

A 基金及び連合会は、年金給付等積立金について、第136条の3第1項第5号イからヘまでに掲げる方法により、それぞれ始めて運用するときは、厚生労働省令の定めるところにより、同条第4項(第164条第3項において準用する場合を含む。)に規定する年金給付等積立金の管理及び運用の体制について厚生労働大臣に届け出なければならない。当該体制に変更を生じたときも、同様とする。

第176条の2(年金数理関係書類の年金数理人による確認等)

 この法律に基づき基金(第111条第1項若しくは第143条第4項の規定に基づき基金を設立しようとする事業主又は第142条第2項の規定に基づき合併により基金を設立しようとする設立委員を含む。)又は連合会が厚生労働大臣に提出する年金数理に関する業務に係る書類であつて厚生労働省令で定めるものについては、当該書類が適正な年金数理に基づいて作成されていることを次項に規定する年金数理人が確認し、署名押印したものでなければならない。

A 年金数理人は、前項に規定する確認を適確に行うために必要な知識経験を有することその他の厚生労働省令で定める要件に適合する者とする。

第177条(報告書の提出)

 基金及び連合会は、厚生労働省令の定めるところにより、その業務についての報告書を厚生労働大臣に提出しなければならない。

第178条(報告の徴収等)

 厚生労働大臣は、基金又は連合会について、必要があると認めるときは、その事業の状況に関する報告を徴し、又は当該職員をして基金若しくは連合会の事務所に立ち入つて関係者に質問させ、若しくは実地にその状況を検査させることができる。

A 第100条第2項において準用する第96条第2項の規定は、前項の規定による質問及び検査について、第100条第3項の規定は、前項の規定による権限について準用する。

第179条(基金等に対する監督)

 厚生労働大臣は、前条の規定により報告を徴し、又は質問し、若しくは検査した場合において、基金若しくは連合会の事業の管理若しくは執行が法令、規約、若しくは厚生労働大臣の処分に違反していると認めるとき、基金若しくは連合会の事業の管理若しくは執行が著しく適正を欠くと認めるとき、又は基金若しくは連合会の役員がその事業の管理若しくは執行を明らかに怠つていると認めるときは、期間を定めて、基金若しくは連合会又はその役員に対し、その事業の管理若しくは執行について違反の是正又は改善のため必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

A 厚生労働大臣は、基金又は連合会の事業の健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、期間を定めて、当該基金又は連合会に対し、その規約の変更を命ずることができる。

B 基金若しくは連合会若しくはその役員が第1項の命令に違反したとき、又は基金若しくは連合会が前項の命令に違反したときは、厚生労働大臣は、当該基金又は連合会に対し、期間を定めて、当該違反に係る役員の全部又は一部の改任を命ずることができる。

C 基金又は連合会が前項の命令に違反したときは、厚生労働大臣は、同項の命令に係る役員を改任することができる。

D 基金又は連合会が第1項の規定による命令に違反したとき、又はその事業の状況によりその事業の継続が困離であると認めるときは、厚生労働大臣は、当該基金又は連合会の解散を命ずることができる。

第180条(権限の委任)

 この章に規定する厚生労働大臣の権限のうち基金に係るものは、厚生労働省令の定めるところにより、その一部を地方厚生局長に委任することができる。

A 前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は、厚生労働省令の定めるところにより、地方厚生支局長に委任することができる。

第181条(実施規定)

 この章に特別の規定があるものを除くほか、この章の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

第4節 罰  則
第182条 

 設立事業所の事業主が、正当な理由がなくて次の各号の一に該当するときは、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
一 第129条第4項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第129条第6項の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第139条第3項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに掛金を納付しないとき。

A 第129条第2項に規定する設立事業所以外の適用事業所の事業主が、正当な理由がなくて次の各号の一に該当するときは、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
一 第129条第7項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 第140条第6項の規定に違反して、督促状に指定する期限までに徴収金を納付しないとき。

B 解散した基金が、正当な理由がなくて、第162条の3第1項の規定により負担すべき徴収金を督促状に指定する期限までに納付しないときも、第1項と同様とする。

第183条

 第178条又は第148条第1項(第168条第3項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくはこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

A 第129条第5項の規定に違反して、同項の規定による通知をしなかつた者も、前項と同様とする。

第184条 

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第185条 

 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした基金又は連合会の役員、代理人若しくは使用人その他の従業者又は清算人は、20万円以下の過料に処する。

  1. 第115条第3項(第153条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
  2. 第148条第3項(第168条第3項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反したとき。
  3. 第177条の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
  4. 第179条第1項の規定による命令に違反したとき。
  5. この章の規定により基金又は連合会が行なうものとされた事業以外の事業を行なつたとき。
第186条 

 基金又は連合会が、次の各号の一に該当する場合には、その役員を20万円以下の過料に処する。
一 第116条(第154条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、公告を怠り、又は虚偽の公告をしたとき。
二 第160条第6項、第160条の2第5項又は第162条の3第7項の規定に違反して、通知をしないとき。
三 第160条第7項(第160条の2第6項及び第162条の3第8項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、公告を怠り、又は虚偽の公告をしたとき。
四 第176条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。

第187条 

 次の各号に掲げる場合には、10万円以下の過料に処する。
一 設立事業所の事業主が、第128条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 設立事業所の事業主が、第174条において準用する第98条第1項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
三 加入員が、第174条において準用する第98条第2項の規定に違反して、届出をせず、若しくは虚偽の届出をし、又は申出をせず、若しくは虚偽の申出をしたとき。
四 戸籍法の規定による死亡の届出義務者が、第174条において準用する第98条第4項の規定に違反して、届出をしないとき。

第188条 

 第109条第2項又は第151条第2項の規定に違反して、厚生年金基金という名称又は厚生年金基金連合会という名称を用いた者は、10万円以下の過料に処する。