国家公務員法

 
公布:昭和22年10月21日法律第120号
施行:昭和23年7月1日(附則一条)
改正:昭22法195, 昭23法222, 法258, 法265, 昭24法2, 法125, 法174,昭25法49, 法95, 昭26法59, 法314, 昭27法41, 法97, 法174, 法207,法252, 法258, 法265, 法267(不施行廃止), 法268, 昭29法164, 昭31法12,法27, 法140, 法161, 昭32法158, 昭33法78, 法86, 昭34法137, 法163昭35法30, 法113, 昭37法77, 法122, 法132, 法140, 法161, 昭38法111,昭39法118, 昭40法69, 法116, 昭41法89, 昭42法61, 昭45法97,昭46法117, 昭47法57, 昭48法116, 昭53法79, 昭54法68,昭56法77,昭57法40, 昭58法65, 法78, 法80, 昭60法97,昭61法93, 平1法1, 平3法79,平5法89, 平6法33, 平7法54, 平8法103, 平9法3
 
第一章 総則
 
 (この法律の目的及び効力)
第一条 この法律は、国家公務員たる職員について適用すべき各般の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。)を確立し、職員がその職務の遂行に当たり、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導されるべきことを定め、以て国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。
2 この法律は、もつぱら日本国憲法第七十三条にいう官吏に関する事務を掌理する基準を定めるものである。
3 何人も、故意に、この法律又はこの法律に基づく命令に違反し、又は違反を企て若しくは共謀してはならない。又、何人も、故意に、この法律又はこの法律に基づく命令の施行に関し、虚偽行為をなし、若しくはなそうと企て、又はその施行を妨げてはならない。
4 この法律のある規定が、効力を失い、又はその適用が無効とされても、この法律の他の規定又は他の関係における適用は、その影響を受けることがない。
5 この法律の規定が、従前の法律又はこれに基づく法令と矛盾し又はてい触する場合には、この法律の規定が、優先する。
 
 (一般職及び特別職)
第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。
2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
3 特別職は、次に掲げる職員の職とする。
 一 内閣総理大臣
 二 国務大臣
 三 人事官及び検査官
 四 内閣法制局長官
 五 内閣官房副長官
 六 内閣総理大臣補佐官
 七 政務次官
 八 内閣総理大臣秘書官(三人以内)及びその他の秘書官(国務大臣又は特別職たる機関の長の各々につき一人)
 九 就任について選挙によることを必要とし、あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員
 十 宮内庁長官、侍従長、皇太后宮大夫、東宮大夫、式部長官及び侍従次長並びに法律又は人事院規則で指定する宮内庁のその他の職員
 十一 特命全権大使、特命全権公使、特派大使、政府代表、全権委員、政府代表又は全権委員の代理並びに特派大使、政府代表又は全権委員の顧問及び随員
 十一の二 日本ユネスコ国内委員会の委員
 十二 日本学士院会員
 十三 日本学術会議会員
 十四 国会職員
 十五 国会議員の秘書
 十六 防衛庁の職員(防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第六十一条第一項に規定する審議会等の委員及び調停職員等で、人事院規則で指定するものを除く。)
4 この法律の規定は、一般職に属するすべての職(以下その職を官職といい、その職を占める者を職員という。)に、これを適用する。人事院は、ある職が、国家公務員の職に属するかどうか及び本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する。
5 この法律の規定は、この法律の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない。
6 政府は、一般職又は特別職以外の勤務者を置いてその勤務に対し俸給、給料その他の給与を支払つてはならない。
7 前項の規定は、政府又はその機関と外国人の間に、個人的基礎においてなされる勤務の契約には適用されない。
 
第二章 中央人事行政機関
 
 (人事院)
第三条 内閣の所轄の下に人事院を置く。人事院は、この法律に定める基準に従つて、内閣に報告しなければならない。
2 人事院は、法律の定めるところに従い、給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告、職階制、試験及び任免、給与、研修、分限、懲戒、苦情の処理その他職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる。
3 法律により、人事院が処置する権限を与えられている部門においては、人事院の決定及び処分は、人事院によつてのみ審査される。
4 前項の規定は、法律問題につき裁判所に出訴する権利に影響を及ぼすものではない。
 
 (職員)
第四条 人事院は、人事官三人をもつて、これを組織する。
2 人事官のうち一人は、総裁として命ぜられる。
3 人事院は、事務総長及び予算の範囲内においてその職務を適切に行うため必要とする職員を任命する。
4 人事院は、その内部機構を管理する。国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)は、人事院には適用されない。
 
 (人事官)
第五条 人事官は、人格が高潔で、民主的な統治組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する年齢三十五年以上の者の中から両議院の同意を経て、内閣が、これを任命する。
2 人事官の任免は、天皇がこれを認証する。
3 左の各号の一に該当する者は、人事官となることができない。
 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
 二 禁錮以上の刑に処せられた者又は第四章に規定する罪を犯し刑に処せられた者
 三 第三十八条第三号又は第五号に該当する者
4 任命の日以前五年間において、政党の役員、政治顧問その他これらと同様な政治的影響力をもつ政党員であつた者又は任命の日以前五年間において、公選による国若しくは都道府県の公職の候補者となつた者は、人事院規則の定めるところにより、人事官となることができない。
5 人事官の任命については、その中の二人が、同一政党に属し、又は同一の大学学部を卒業した者となることとなつてはならない。
 
 (宣誓及び服務)
第六条 人事官は、任命後、人事院規則の定めるところにより、最高裁判所長官の面前において、宣誓書に署名してからでなければ、その職務を行つてはならない。
2 第三章第七節の規定は、人事官にこれを準用する。
 
 (任用)
第七条 人事官の任期は、四年とする。但し、補欠の人事官は、前任者の残任期間在任する。
2 人事官は、これを再任することができる。但し、引き続き十二年を超えて在任することはできない。
3 人事官であつた者は、退職後一年間は、人事官の官職以外の官職に、これを任命することができない。
 
 (退職及び罷免)
第八条 人事官は、左の各号の一に該当する場合を除く外、その意に反して罷免されることがない。
 一 第五条第三項各号の一に該当するに至つた場合
 二 国会の訴追に基き、公開の弾劾手続により罷免を可とすると決定された場合
 三 任期が満了して、再任されず又は人事官として引き続き十二年在任するに至つた場合
2 前項第二号の規定による弾劾の事由は、左に掲げるものとする。
 一 心身の故障のため、職務の遂行に堪えないこと
 二 職務上の義務に違反し、その他人事官たるに適しない非行があること
3 人事官の中、二人以上が同一の政党に属することとなつた場合においては、これらの者の中一人以外の者は、内閣が両議院の同意を経て、これを罷免するものとする。
4 前項の規定は、政党所属関係について異動のなかつた人事官の地位に、影響を及ぼすものではない。
 
 (人事官の弾劾)
第九条 人事官の弾劾の裁判は、最高裁判所においてこれを行う。
2 国会は、人事官の弾劾の訴追をしようとするときは、訴追の事由を記載した書面を最高裁判所に提出しなければならない。
3 国会は、前項の場合においては、同項に規定する書面の写を訴追に係る人事官に送付しなければならない。
4 最高裁判所は、第二項の書面を受理した日から三十日以上九十日以内の間において裁判開始の日を定め、その日の三十日以前までに、国会及び訴追に係る人事官に、これを通知しなければならない。
5 最高裁判所は、裁判開始の日から百日以内に判決を行わなければならない。
6 人事官の弾劾の裁判の手続は、裁判所規則でこれを定める。
7 裁判に要する費用は、国庫の負担とする。
 
 (人事官の給与)
第十条 人事官の給与は、別に法律で定める。
 
 (総裁)
第十一条 人事院総裁は、人事官の中から、内閣がこれを命ずる。
2 人事院総裁は、院務を総理し、人事院を代表する。
3 人事院総裁に事故のあるとき、又は人事院総裁が欠けたときは、先任の人事官が、その職務を代行する。
 
 (人事院会議)
第十二条 定例の人事院会議は、人事院規則の定めるところにより、少なくとも一週間に一回、一定の場所において開催することを常例としなければならない。
2 人事院会議の議事は、すべて議事録として保管しなければならない。
3 前項の議事録は、幹事がこれを作成する。
4 人事院の事務処理の手続に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定める。
5 事務総長は、幹事として人事院会議に出席する。
6 人事院は、左に掲げる権限を行う場合においては、人事院の議決を経なければならない。
 一 人事院規則の制定及び改廃
 二 削除
 三 第二十二条の規定による関係庁の長に対する勧告
 四 第二十三条の規定による国会及び内閣に対する意見の申出
 五 第二十四条の規定による国会及び内閣に対する報告
 六 第二十八条の規定による国会及び内閣に対する勧告
 七 第二十九条の規定による職階制の立案
 八 第三十六条(第三十七条において準用する場合を含む。)の規定による
選考基準の決定及び選考機関の指定
 九 第四十八条の規定による試験機関の指定
 十 第六十条の規定による臨時的任用及びその更新に対する承認、臨時的任用に係る職員の員数の制限及びその資格要件の決定並びに臨時的任用の取消(人事院規則の定める場合を除く。)
 十一 第六十三条の規定による給与準則の立案
 十二 第六十七条の規定による給与準則の改定案の作成
 十三 削除
 十四 第八十七条の規定による事案の判定
 十五 第九十二条の規定による処分の判定
 十六 第九十五条の規定による補償に関する重要事項の立案
 十七 第百三条の規定による異議申立てに対する決定並びに同条の規定による国会及び内閣に対する報告
 十八 第百八条の規定による国会及び内閣に対する意見の申出
 十九 第百八条の三第六項の規定による職員団体の登録の効力の停止及び取消し
 二十 その他人事院の議決によりその議決を必要とされた事項
 
 (事務総局及び予算)
第十三条 人事院に事務総局及び法律顧問を置く。
2 事務総局の組織及び法律顧問に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定める。
3 人事院は、毎会計年度の開始前に、次の会計年度においてその必要とする経費の要求書を国の予算に計上されるように内閣に提出しなければならない。この要求書には、土地の購入、建物の建造、事務所の借上、家具、備品及び消耗品の購入、俸給及び給料の支払その他必要なあらゆる役務及び物品に関する経費が計上されなければならない。
4 内閣が、人事院の経費の要求書を修正する場合においては、人事院の要求書は、内閣により修正された要求書とともに、これを国会に提出しなければならない。
5 人事院は、国会の承認を得てその必要とする地方の事務所を置くことができる。
 
 (事務総長)
第十四条 事務総長は、総裁の職務執行の補助者となり、その一般的監督の下に、人事院の事務上及び技術上のすべての活動を指揮監督し、人事院の職員について計画を立て、募集、配置及び指揮を行い、又、人事院会議の幹事となる。
 
 (人事院の職員の兼職禁止)
第十五条 人事官及び事務総長は、他の官職を兼ねてはならない。
 
 (人事院規則及び人事院指令)
第十六条 人事院は、その所掌事務について、法律を実施するため、又は法律の委任に基いて、人事院規則を制定し、人事院指令を発し、及び手続を定める。人事院は、いつでも、適宜に、人事院規則を改廃することができる。
2 人事院規則及びその改廃は、官報をもつて、これを公布する。
3 人事院は、この法律に基いて人事院規則を実施し又はその他の措置を行うため、人事院指令を発することができる。
 
 (調査)
第十七条 人事院又はその指名する者は、人事院の所掌する人事行政に関する事項に関し調査することができる。
2 人事院又は前項の規定により指名された者は、同項の調査に関し必要があるときは、証人を喚問し、又は調査すべき事項に関係があると認められる書類若しくはその写の提出を求めることができる。
 
 (給与の支払の監理)
第十八条 人事院は、職員に対する給与の支払を監理する。
2 職員に対する給与の支払は、人事院規則又は人事院指令に反してこれを行つてはならない。
 
 (内閣総理大臣)
第十八条の二 内閣総理大臣は、法律の定めるところに従い、職員の能率、厚生、服務等に関する事務(第三条第二項の規定により人事院の所掌に属するものを除く。)をつかさどる。
2 内閣総理大臣は、前項に規定するもののほか、各行政機関がその職員について行なう人事管理に関する方針、計画等に関し、その統一保持上必要な総合計画に関する事務をつかさどる。
 
 (人事記録)
第十九条 内閣総理大臣は、職員の人事記録に関することを管理する。
2 内閣総理大臣は、総理府、各省その他の機関をして、当該機関の職員の人事に関する一切の事項について、人事記録を作成し、これを保管せしめるものとする。
3 人事記録の記載事項及び様式その他人事記録に関し必要な事項は政令でこれを定める。
4 内閣総理大臣は、総理府、各省その他の機関によつて作成保管された人事記録で、前項の規定による政令に違反すると認めるものについて、その改定を命じ、その他所要の措置をなすことができる。
 
 (統計報告)
第二十条 内閣総理大臣は、政令の定めるところにより、職員の在職関係に関する統計報告の制度を定め、これを実施する。
2 内閣総理大臣は、前項の統計報告に関し必要があるときは、関係庁に対し随時又は定期に一定の形式に基いて、所要の報告を求めることができる。
 
 (権限の委任)
第二十一条 人事院又は内閣総理大臣は、それぞれ人事院規則又は政令の定めるところにより、この法律に基づく権限の一部を他の機関をして行わせることができる。この場合においては、人事院又は内閣総理大臣は、当該事務に関し、他の機関の長を指揮監督することができる。
 
 (人事行政改善の勧告)
第二十二条 人事院は、人事行政改善に関し、関係大臣その他の機関の長に勧告することができる。
2 前項の場合においては、人事院は、その旨を内閣に報告しなければならない。
 
 (法令の制定改廃に関する意見の申出)
第二十三条 人事院は、この法律の目的達成上、法令の制定又は改廃に関し意見があるときは、その意見を国会及び内閣に同時に申し出なければならない。
 
 (業務の報告)
第二十四条 人事院は、毎年、国会及び内閣に対し、業務の状況を報告しなければならない。
2 内閣は、前項の報告を公表しなければならない。
 
 (人事管理官)
第二十五条 総理府及び各省並びに政令で指定するその他の機関には、その庁の職員として人事管理官を置かなければならない。
2 人事管理官は、人事に関する事務を掌る。この場合において、人事管理官は、中央人事行政機関との緊密な連絡及びこれに対する協力につとめなければならない。
 
第二十六条 削除
 
第三章 官職の基準
 
第一節 通則
 (平等取扱の原則)
第二十七条 すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分、門地又は第三十八条第五号に規定する場合を除くの外政治的意見若しくは政治的所属関係によつて、差別されてはならない。
 
 (情勢適応の原則)
第二十八条 この法律に基いて定められる給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠つてはならない。
2 人事院は、毎年、すくなくとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与を決定する諸条件の変化により、俸給表に定める給与の百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。
 
第二節 職階制
 
 (職階制の確立)
第二十九条 職階制は、法律でこれを定める。
2 人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、分類整理しなければならない。
3 職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職については、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなければならない。
4 前三項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。
5 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第六条の規定による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であつて、かつ、この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。
 
 (職階制の実施)
第三十条 職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。
2 職階制の実施につき必要な事項は、この法律の定のあるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
 
 (官職の格付)
第三十一条 職階制を実施するにあたつては、人事院は、人事院規則の定めるところにより、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。
2 人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再審査し、必要と認めるときは、これを改定しなければならない。
 
 (職階制によらない官職の分類)
第三十二条 一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすることはできない。
 
 
第三節 試験及び任免
 (任免の根本基準)
第三十三条 すべての職員の任用は、この法律及び人事院規則の定めるところにより、その者の受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基いて、これを行う。
2 人事院は、試験を採用試験、昇任試験又はその両者を兼ねるもののいずれとするかを適宜決定する。
3 職員の免職は、法律に定める事由に基いてこれを行わなければならない。
4 前三項に規定する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
 
第一款 通則
第三十四条 削除
 
 (欠員補充の方法)
第三十五条 官職に欠員を生じた場合においては、その任免権者は、法律又は人事院規則に別段の定めのある場合を除いては、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの一の方法により、職員を任命することができる。但し、人事院が特別の必要があると認めて任命の方法を指定した場合は、この限りではない。
 
 (採用の方法)
第三十六条 職員の採用は、競争試験によるものとする。但し、人事院規則の定める官職について、人事院の承認があつた場合は、競争試験以外の能力の実証にもとづく試験(以下選考という。)の方法によることを妨げない。
2 前項但書の選考は、人事院の定める基準により、人事院又はその定める選考機関が、これを行う。
 
 (昇任の方法)
第三十七条 職員の昇任は、その官職より下位の官職の在職者の間における競争試験(以下試験という。)によるものとする。但し、人事院は、必要と認めるときは、試験を受ける者の範囲を、適宜制限することができる。
2 昇任すべき官職の職務及び責任に鑑み、人事院が、当該在職者の間における試験によることを適当でないと認める場合においては、昇任は、当該在職者の従前の勤務実績に基く選考により、これを行うことができる。
3 前条第二項の規定は、前項の選考にこれを準用する。
 
 (欠格条項)
第三十八条 左の各号の一に該当する者は、人事院規則の定める場合を除くの外、官職に就く能力を有しない。
 一 禁治産者及び準禁治産者
 二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
 三 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
 四 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十一条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
 五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
 
 (人事に関する不法行為の禁止)
第三十九条 何人も、左の各号の一に掲げる事項を実現するために、金銭その他の利益を授受し、提供し、要求し、若しくは授受を約束したり、脅迫、強制その他これに類する方法を用いたり、直接たると間接たるとを問わず、公の地位を利用し、又はその利用を提供し、要求し、もしくは約束したり、あるいはこれらの行為に関与してはならない。
 一 退職若しくは休職又は任用の不承諾
 二 試験若しくは任用の志望の撤回又は任用に対する競争の中止
 三 任用、昇給、留職その他官職における利益の実現又はこれらのことの推薦
 
 (人事に関する虚偽行為の禁止)
第四十条 何人も、試験、選考、任用又は人事記録に関して、虚偽又は不正の陳述、記載、証明、採点、判断又は報告を行つてはならない。
 
(受験又は任用の阻害及び情報提供の禁止)
第四十一条 試験機関に属する者その他の職員は、受験若しくは任用を阻害し、又は受験若しくは任用に不当な影響を与える目的を以て特別若しくは秘密の情報を提供してはならない。
 
第二款 試験
 (試験実施の場合)
第四十二条 試験は、人事院規則の定めるところにより、これを行う。
 
 (受験の欠格条項)
第四十三条 第四十四条に規定する資格に関する制限の外、官職に就く能力を有しない者は、受験することができない。
 
 (受験の資格要件)
第四十四条 人事院は、人事院規則により、受験者に必要な資格として官職に応じ、その職務の遂行に欠くことができない最小限度の客観的且つ画一的な要件を定めることができる。
 
 (試験の内容)
第四十五条 試験は、職務遂行の能力を有するかどうかを判定する事を以てその目的とする。
 
 (採用試験の公開平等)
第四十六条 採用試験は、人事院規則の定める受験の資格を有するすべての国民に対して、平等の条件で公開されなければならない。
 
(採用試験の告知)
第四十七条 採用試験の告知は、公告によらなければならない。
2 前項の告知には、その試験に係る官職についての職務及び責任の概要及び給与、受験の資格要件、試験の時期及び場所、願書の入手及び提出の場所、時期及び手続並びに人事院が必要と認めるその他の注意事項を記載するものとする。
3 第一項の規定による公告は、人事院規則の定めるところにより、受験の資格を有するすべての者に対し、受験に必要な事項を周知させることができるように、これを行わなければならない。
4 人事院は、受験の資格を有すると認められる者が受験するように、常に努めなければならない。
5 人事院は、公告された試験又は実施中の試験を、取り消し又は変更することができる。
 
 (試験機関)
第四十八条 試験は、人事院規則の定めるところにより、人事院の定める試験機関が、これを行う。
 
 (試験の時期及び場所)
第四十九条 試験の時期及び場所は、国内の受験資格者が、無理なく受験することができるように、これを定めなければならない。
  
第三款 任用候補者名簿
 
 (名簿の作成)
第五十条 試験による職員の任用については、人事院規則の定めるところにより、任用候補者名簿(採用候補者名簿及び昇任候補者名簿)を作成するものとする。
 
 (採用候補者名簿に記載される者)
第五十一条 採用候補者名簿には、当該官職に採用することができる者として、採用試験において合格点以上を得た者の氏名及び得点を、その得点順に記載するものとする。
 
 (昇任候補者名簿に記載される者)
第五十二条 昇任候補者名簿には、当該官職に昇任することができる者として、昇任試験において合格点以上を得た昇任候補者の氏名及び得点を、その得点順に記載するものとする。
 
 (名簿の閲覧)
第五十三条 任用候補者名簿は、受験者、任命庁その他関係者の請求に応じて、常に閲覧に供されなければならない。
 
 (名簿の失効)
第五十四条 任用候補者名簿が、その作成後一年以上を経過したとき、又は人事院の定める事由に該当するときは、何時でも、人事院は、任意に、これを失効させることができる。
 
第四款 任用
 
 (任命権者)
第五十五条 任命権は、法律に別段の定のある場合を除いては、内閣、各大臣(内閣総理大臣及び各省大臣をいう。以下同じ。)、会計検査院長及び人事院総裁並びに各外局の長に属するものとする。これらの機関の長の有する任命権は、その部内の機関に属する官職に限られ、内閣の有する任命権は、その直属する機関に属する官職に限られる。但し、外局の長に対する任命権は、各大臣に属する。
2 前項に規定する機関の長たる任命権者は、その任命権を、その部内の上級の職員に限り委任することができる。この委任は、その効力が発生する日の前に、書面をもつて、これを人事院に提示しなければならない。
3 この法律、人事院規則及び人事院指令に規定する要件を備えない者は、これを任命し、雇用し、昇任させ若しくは転任させてはならず、又はいかなる官職にも配置してはならない。
 
 (採用候補者名簿による採用の方法)
第五十六条 採用候補者名簿による職員の採用は、当該採用候補者名簿に記載された者の中、採用すべき者一人につき、試験における高点順の志望者五人の中から、これを行うものとする。
 
 (昇任候補者名簿による昇任の方法)
第五十七条 昇任候補者名簿による職員の昇任は、当該昇任候補者名簿に記載された者の中、昇任すべき者一人につき、試験における高点順の志望者五人の中から、これを行うものとする。
 
 (任用候補者の推薦)
第五十八条 任命権者が職員を採用し、又は昇任しようとする場合において、その請求があるときは、人事院は、人事院規則の定めるところにより、任命権者に対し、当該任用候補者名簿に記載された任用候補者の中当該任用の候補者たるべき前二条の規定による員数の者を提示しなければならない。
 
 (条件附任用期間)
第五十九条 一般職に属するすべての官職に対する職員の採用又は昇任は、すべて条件附のものとし、その職員が、その官職において六月を下らない期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。
2 条件附採用に関し必要な事項又は条件附採用期間であつて六月をこえる期間を要するものについては、人事院規則でこれを定める。
 
 (臨時的任用)
第六十条 任命権者は、人事院規則の定めるところにより、緊急の場合、臨時の官職に関する場合又は任用候補者名簿がない場合には、人事院の承認を得て、六月を超えない任期で、臨時的任用を行うことができる。この場合において、その任用は、人事院規則の定めるところにより人事院の承認を得て、六月の期間で、これを更新することができるが、再度更新することはできない。
2 人事院は、臨時的任用につき、その員数を制限し、又は、任用される者の資格要件を定めることができる。
3 人事院は、前二項の規定又は人事院規則に違反する臨時的任用を取り消すことができる。
4 臨時的任用は、任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない。
5 前四項に定めるものの外、臨時的に任用された者に対しては、この法律及び人事院規則を適用する。
 
 
第五款 休職、復職、退職及び免職
 
 (休職、復職、退職及び免職)
第六十一条 職員の休職、復職、退職及び免職は任命権者が、この法律及び人事院規則に従い、これを行う。
 
第四節 給与
 
 (給与の根本基準)
第六十二条 職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす。
2 前項の規定の趣旨は、できるだけすみやかに達成されなければならない。
 
第一款 給与準則
 
 (給与準則による給与の支給)
第六十三条 職員の給与は、法律により定められる給与準則に基いてなされ、これに基かずには、いかなる金銭又は有価物も支給せられることはできない。
2 人事院は、必要な調査研究を行い、職階制に適合した給与準則を立案し、これを国会及び内閣に提出しなければならない。
 
 (俸給表)
第六十四条 給与準則には、俸給表が規定されなければならない。
2 俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。
 
 (給与準則に定むべき事項)
第六十五条 給与準則には、前条の俸給表の外、左の事項が規定されなければならない。
 一 同一の等級又は職級内における俸給の昇給の基準に関する事項
 二 その官職に職階制が初めて適用せられる場合の給与に関する事項
 三 時間外勤務、夜間勤務及び休日勤務に対する給与に関する事項
 四 特別地域勤務、危険作業その他特殊な勤務に対する手当てに関する事項
 五 扶養家族の数、常時勤務を要しない官職、生活に必要な施設の全部又は一部を官給する官職その他勤務条件の特別なものについて、人事院のなす給与の調整に関する事項
2 前項第一号の基準は、勤続期間、勤務能率その他勤務に関する諸要件を考慮して定められるものとする。
 
 (給与額の決定)
第六十六条 職員は、その官職につき職階制において定められた職級について給与準則の定める俸給額が支給せられる。
 
 (給与準則の改定)
第六十七条 人事院は、給与準則に関し、常時、必要な調査研究を行い、給与額を引き上げ、又は引き下げる必要を認めたときは、遅滞なく改定案を作成して、これを国会及び内閣に提出しなければならない。
 
第二款 給与の支払
 
 (給与簿)
第六十八条 職員に対して給与の支払をなす者は、先ず受給者につき給与簿を作成しなければならない。
2 給与簿は、何時でも人事院の職員が検査し得るようにしておかなければならない。
3 前二項に定めるものを除いては、給与簿に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定める。
 
 (給与簿の検査)
第六十九条 職員の給与が法令、人事院規則又は人事院指令に適合して行われることを確保するため必要があるときは、人事院は給与簿を検査し、必要があると認めるときは、その是正を命ずることができる。
 
 (違法の支払に対する措置)
第七十条 人事院は、給与の支払が、法令、人事院規則又は人事院指令に違反してなされたことを発見した場合には、自己の権限に属する事項については自ら適当な措置をなす外、必要があると認めるときは、事の性質に応じて、これを会計検査院に報告し、又は検察官に通報しなければならない。
 
第五節 能率
 
 (能率の根本基準)
第七十一条 職員の能率は、充分に発揮され、且つ、その増進がはかられなければならない。
2 前項の根本基準の実施につき、必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
3 内閣総理大臣(第七十三条第一項第一号の事項については、人事院)は、職員の能率の発揮及び増進について、調査研究を行い、これが確保のため適切な方策を講じなければならない。
 
 (勤務成績の評定)
第七十二条 職員の執務については、その所轄庁の長は、定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。
2 前項の勤務成績の評定の手続及び記録に関し必要な事項は、政令で定める。
3 内閣総理大臣は、勤務成績の優秀なものに対する表彰に関する事項及び成績のいちじるしく不良なものに対する矯正方法に関する事項を立案し、これについて、適当な措置を講じなければならない。
 
 (能率増進計画)
第七十三条 内閣総理大臣(第一号の事項については、人事院)及び関係庁の長は、職員の勤務能率の発揮及び増進のために、左の事項について計画を樹立し、これが実施に努めなければならない。
 一 職員の研修に関する事項
 二 職員の保健に関する事項
 三 職員のレクリエーションに関する事項
 四 職員の安全保持に関する事項
 五 職員の厚生に関する事項
2 前項の計画の樹立及び実施に関し、内閣総理大臣(同項第一号の事項については、人事院)は、その総合的企画並びに関係各庁に対する調整及び監視に当る。
 
第六節 分限、懲戒及び保障
 
 (分限、懲戒及び保障の根本基準)
第七十四条 すべての職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。
2 前項に規定する根本基準の実施につき必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
 
第一款 分限
 
第一目 後任、休職、免職等
 
 (身分保障)
第七十五条 職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。
2 職員は、人事院規則の定める事由に該当するときは、降給されるものとする。
 
 (欠格による失職)
第七十六条 職員が第三十八条各号の一に該当するに至つたときは、人事院規則の定める場合を除いては、当然失職する。
 
 (離職)
第七十七条 職員の離職に関する規定は、この法律及び人事院規則でこれを定める。
 
 (本人の意に反する降任及び免職の場合)
第七十八条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
 一 勤務実績がよくない場合
 二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
 三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合
 四 官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
 
 (本人の意に反する休職の場合)
第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
 一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
 二 刑事事件に関し起訴された場合
 
 (休職の効果)
第八十条 前条第一号の規定による休職の期間は、人事院規則でこれを定める。休職期間中はその事故の消滅したときは、休職は当然消滅したものとし、すみやかに復職を命じなければならない。
2 前条第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。
3 いかなる休職も、その事由が消滅したときは、当然に終了したものとみなされる。
4 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中、給与準則で別段の定をしない限り、何らの給与を受けてはならない。
 
 (適用除外)
第八十一条 次に掲げる職員の分限(定年に係るものを除く。次項において同じ。)については、第七十五条、第七十八条から前条まで及び第八十九条並びに行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)の規定はこれを適用しない。
 一 臨時的職員
 二 条件付採用期間中の職員
 三 職階制による官職の格付の改正の結果、降給又は降任と同一の結果となつた職員
2 前項各号に掲げる職員の分限については、人事院規則で必要な次項を定めることができる。
 
第二目 定年
 
 (定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
2 前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。
 一 病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師 年齢六十五年
 二 庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則に定めるもの 年齢六十三年
 三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの 六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢
3 前二項の規定は、臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員には適用しない。
 
 (定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
 
 (定年退職者の再任用)
第八十一条の四 任命権者は、第八十一条の二第一項の規定により退職した者又は前条の規定により勤務した後退職した者について、その者の能力及び経験を考慮し、公務の能率的運営を確保するため特に必要あると認めるときは、人事院規則の定めるところにより、一年を超えない範囲内で任期を定め、その者を常時勤務を要する官職に採用することができる。
2 前項の任期又はこの項の規定により更新された任期は、人事院規則の定めるところにより、一年を超えない範囲内で更新することができる。
3 前二項の規定による任期については、その末日は、その者に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
 
 (定年に関する事務の調整等)
第八十一条の五 内閣総理大臣は、職員の定年に関する事務の適正な運営を確保するため、各行政機関が行う当該事務の運営に関し必要な調整を行うほか、職員の定年に関する制度の実施に関する施策を調査研究し、その権限に属する事項について適切な方策を講ずるものとする。
 
第二款 懲戒
 
 (懲戒の場合)
第八十二条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
 一 この法律又はこの法律に基づく命令に違反した場合
 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
 三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
 
 (懲戒の効果)
第八十三条 停職の期間は、一年をこえない範囲内において、人事院規則でこれを定める。
2 停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。停職者は、第九十二条の規定による場合の外、停職の期間中給与を受けることができない。
 
 (懲戒権者)
第八十四条 懲戒処分は、任命権者が、これを行う。
2 人事院は、この法律に規定された調査を経て職員を懲戒手続に付することができる。
 
 (刑事裁判との関係)
第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。この法律による懲戒処分は、当該職員が、同一又は関連の事件に関し、重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げない。
 
第三款 保障
 
第一目 勤務条件に関する行政措置要求
 
 (勤務条件に関する行政措置の要求)
第八十六条 職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。
 
 (事案の審査及び判定)
第八十七条 前条に規定する要求のあつたときは、人事院は、必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、且つ、職員の能率を発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない。
 
 (判定の結果採るべき措置)
第八十八条 人事院は、前条に規定する判定に基き、勤務条件に関し一定の措置を必要と認めるときは、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長に対し、その実行を勧告しなければならない。
 
 
第二目 職員の意に反する不利益な処分に関する審査
 
 (職員の意に反する降給等の処分に関する説明書の交付)
第八十九条 職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い、又は懲戒処分を行わうとするときは、その処分を行う者は、その職員に対し、その処分の際、処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
2 職員が前項に規定するいちじるしく不利益な処分を受けたと思料する場合には、同項の説明書を請求することができる。
3 第一項の説明書には、当該処分につき、人事院に対して不服申立てをすることができる旨及び不服申立期間を記載しなければならない。
 
 (不服申立て)
第九十条 前条第一項に規定する処分を受けた職員は、人事院に対してのみ行政不服審査法による不服申立て(審査請求又は異議申立て)をすることができる。
2 前条第一項に規定する処分及び法律に特別の定めがある処分を除くほか、職員に対する処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。職員がした申請に対する不作為についても、同様とする。
3 第一項に規定する不服申立てについては、行政不服審査法第二章第一節から第三節までの規定を適用しない。
 
 (不服申立期間)
第九十条の二 前条第一項に規定する不服申立ては、処分説明書を受領した日の翌日から起算して六十日以内にしなければならず、処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。
 
 (調査)
第九十一条 第九十条第一項に規定する不服申立てを受理したときは、人事院又はその定める機関は、ただちにその事案を調査しなければならない。
2 前項に規定する場合において、処分を受けた職員から請求があつたときは、口頭審理を行わなければならない。口頭審理は、その職員から請求があつたときは、公開して行わなければならない。
3 処分を行つた者又はその代理者及び処分を受けた職員は、すべての口頭審理に出席し、自己の代理人として弁護人を選任し、陳述を行い、証人を出席せしめ、並びに書類、記録その他のあらゆる適切な事実及び資料を提出することができる。
4 前項に掲げる者以外の者は、当該事案に関し、人事院に対し、あらゆる事実及び資料を提出することができる。
 
 (調査の結果採るべき措置)
第九十二条 前条に規定する調査の結果、処分を行うべき事由のあることが判明したときは、人事院は、その処分を承認し、又はその裁量により修正しなければならない。
2 前条に規定する調査の結果、その職員に処分を受けるべき事由のないことが判明したときは、人事院は、その処分を取り消し、職員としての権利を回復するために必要で、且つ、適切な処置をなし、及びその職員がその処分によつて受けた不当な処置を是正しなければならない。人事院は、職員がその処分によつて失つた俸給の弁済を受けるように指示しなければならない。
3 前二項の判定は、最終のものであつて、人事院規則の定めるところにより、人事院によつてのみ審査される。
 
 (不服申立てと訴訟の関係)
第九十二条の二 第八十九条第一項に規定する処分であつて人事院に対して審査請求又は異議申立てをすることができるものの取消しの訴えは、審査請求又は異議申立てに対する人事院の裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができない。
 
第三目 公務傷病に対する補償
 
 (公務傷病に対する補償)
第九十三条 職員が公務に基き死亡し、又は負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくはこれに起因して死亡した場合における、本人及びその直接扶養する者がこれによつて受ける損害に対し、これを補償する制度が樹立し実施せられなければならない。
2 前項の規定による保証制度は、法律によつてこれを定める。
 
 (法律に規定すべき事項)
第九十四条 前条の補償制度には、左の事項が定められなければならない。
 一 公務上の負傷又は疾病に起因した活動不能の期間における経済的困窮に対する職員の保護に関する事項
 二 公務上の負傷又は疾病に起因して、永久に、又は長期に所得能力を害せられた場合におけるその職員の受ける損害に対する補償に関する事項
 三 公務上の負傷又は疾病に起因する職員の死亡の場合におけるその遺族又は職員の死亡当時その収入によつて生計を維持した者の受ける損害に対する補償に関する事項
 
 (補償制度の立案及び実施の責務)
第九十五条 人事院は、なるべくすみやかに、補償制度の研究を行い、その成果を国会及び内閣に提出するとともに、その計画を実施しなければならない。
 
第七節 服務
 
 (服務の根本基準)
第九十六条 すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
2 前項に規定する根本基準の実施に関し必要な事項は、この法律に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。
 
 (服務の宣誓)
第九十七条 職員は、政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。
 
 (法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
2 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
3 職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。
 
 (信用失墜行為の禁止)
第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
 
 (秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。
3 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。
4 前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。
 
 (職務に専念する義務)
第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
2 前項の規定は、地震、火災、水害その他重大な災害に際し、当該官庁が職員を本職以外の業務に従事させることを妨げない。
 
 (政治的行為の制限)
第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
 
 (私企業からの隔離)
第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
2 職員は、離職後二年間は、営利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。
3 前二項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
4 営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は、人事院規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。
5 人事院は、人事院規則の定めるところにより、前項の報告に基き、企業に対する関係の全部又は一部の存続が、その職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。
6 前項の通知を受けた職員は、その通知の内容について不服があるときは、その通知を受領した日の翌日から起算して六十日以内に、人事院に行政不服審査法による異議申立てをすることができる。
7 第九十条第三項並びに第九十一条第二項及び第三項の規定は、前項の異議申立てのあつた場合に、第九十二条の二の規定は、第五項の通知の取消しの訴えについて、これを準用する。
8 第六項の異議申立てをしなかつた職員及び人事院が異議申立てについて調査した結果、通知の内容が正当であると決定せられた職員は、人事院規則の定めるところにより、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。
9 人事院は、毎年、遅滞なく、国会及び内閣に対し、前年において人事院がした第三項の承認の処分(第一項の規定に係るものを除く。)に関し、各承認の処分ごとに、承認に係る者が離職前五年間に在職していた第二項の人事院規則で定める国の機関における官職、承認に係る営利企業の地位、承認をした理由その他必要な事項を報告しなければならない。
 
 (他の事業又は事務の関与制限)
第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
 
 (職員の職務の範囲)
第百五条 職員は、職員としては、法律、命令、規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない。
 
 (勤務条件)
第百六条 職員の勤務条件その他職員の服務に関し必要な事項は、人事院規則でこれを定めることができる。
2 前項の人事院規則は、この法律の規定の趣旨に沿うものでなければならない。
 
第八節 退職年金制度
 
 (退職年金制度)
第百七条 職員が、相当年限忠実に勤務して退職した場合、公務に基く負傷若しくは疾病に基き退職した場合又は公務に基き死亡した場合におけるその者又はその遺族に支給する年金に関する制度が、樹立し実施せられなければならない。
2 前項の年金制度は、退職又は死亡の時の条件を考慮して、本人及びその退職又は死亡の当時直接扶養する者のその後における適当な生活の維持を図ることを目的とするものでなければならない。
3 第一項の年金制度は、健全な保険数理を基礎として定められなければならない。
4 前三項の規定による年金制度は、法律によつてこれを定める。
 
 (意見の申出)
第百八条 人事院は、前条の年金制度に関し調査研究を行い、必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。
 
第九節 職員団体
 
 (職員団体)
第百八条の二 この法律において「職員団体」とは、職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう。
2 前項の「職員」とは、第五項に規定する職員以外の職員をいう。
3 職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。ただし、重要な行政上の決定を行う職員、重要な行政上の決定に参画する管理的地位にある職員、職員の任免に関して直接の権限を持つ監督的地位にある職員、職員の任免、分限、懲戒若しくは服務、職員の給与その他の勤務条件又は職員団体との関係についての当局の計画及び方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが職員団体の構成員としての誠意と責任とに直接に抵触すると認められる監督的地位にある職員その他職員団体との関係において当局の立場にたつて遂行すべき職務を担当する職員(以下「管理職員等」という。)と管理職員等以外の職員とは、同一の職員団体を組織することができず、管理職員等と管理職員等以外の職員とが組織する団体は、この法律にいう「職員団体」ではない。
4 前項ただし書に規定する管理職員等の範囲は、人事院規則で定める。
5 警察職員及び海上保安庁又は監獄において勤務する職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない。
 
 (職員団体の登録)
第百八条の三 職員団体は、人事院規則で定めるところにより、理事その他の役員の氏名及び人事院規則で定める事項を記載した申請書に規約を添えて人事院に登録を申請することができる。
2 職員団体の規約には、少なくとも次に掲げる事項を記載するものとする。
 一 名称
 二 目的及び業務
 三 主なる事務所の所在地
 四 構成員の範囲及びその資格の得喪に関する規定
 五 理事その他の役員に関する規定
 六 次項に規定する事項を含む業務執行、会議及び投票に関する規定
 七 経費及び会計に関する規定
 八 他の職員団体との連合に関する規定
 九 規約の変更に関する規定
 十 解散に関する規定
3 職員団体が登録される資格を有し、及び引き続いて登録されているためには、規約の作成又は変更、役員の選挙その他これらに準ずる重要な行為が、すべての構成員が平等に参加する機会を有する直接かつ秘密の投票による全員の過半数(役員の選挙については、投票者の過半数)によつて決定される旨の手続を定め、かつ、現実にその手続によりこれらの重要な行為が決定されることを必要とする。ただし、連合体である職員団体又は全国的規模をもつ職員団体にあつては、すべての構成員が平等に参加する機会を有する構成団体ごと又は地域若しくは職域ごとの直接かつ秘密の投票による投票者の過半数で代議員を選挙し、この代議員の全員が平等に参加する機会を有する直接かつ秘密の投票による全員の過半数(役員の選挙については、投票者の過半数)によつて決定される旨の手続を定め、かつ、現実に、その手続により決定されることをもつて足りるものとする。
4 前項に定めるもののほか、職員団体が登録される資格を有し、及び引き続いて登録されているためには、前条第五項に規定する職員以外の職員のみをもつて組織されていることを必要とする。ただし、同項に規定する職員以外の職員であつた者でその意に反して免職され、若しくは懲戒処分としての免職の処分を受け、当該処分を受けた日の翌日から起算して一年以内のもの又はその期間内に当該処分について法律の定めるところにより不服申立てをし、若しくは訴えを提起し、これに対する裁決若しくは決定又は裁判が確定するに至らないものを構成員にとどめていること、及び当該職員団体の役員である者を構成員としていることを妨げない。
5 人事院は、登録を申請した職員団体が前三項の規定に適合するものであるときは、人事院規則で定めるところにより、規約及び第一項に規定する申請書の記載事項を登録し、当該職員団体にその旨を通知しなければならない。この場合において、職員でない者の役員就任を認めている職員団体を、そのゆえをもつて登録の要件に適合しないものと解してはならない。
6 登録された職員団体が職員団体でなくなつたとき、登録された職員団体について第二項から第四項までの規定に適合しない事実があつたとき、又は登録された職員団体が第九項の規定による届出をしなかつたときは、人事院は、人事院規則で定めるところにより、六十日を超えない範囲内で当該職員団体の登録の効力を停止し、又は当該職員団体の登録を取り消すことができる。
7 前項の規定による登録の取消しに係る聴聞の期日における審理は、当該職員団体から請求があつたときは、公開により行わなければならない。
8 第六項の規定による登録の取消しは、当該処分の取消しの訴えを提起することができる期間内及び当該処分の取消しの訴えの提起があつたときは当該訴訟が裁判所に係属する間は、その効力を生じない。
9 登録された職員団体は、その規約又は第一項に規定する申請書の記載事項に変更があつたときは、人事院規則で定めるところにより、人事院にその旨を届け出なければならない。この場合においては、第五項の規定を準用する。
10 登録された職員団体は、解散したときは、人事院規則で定めるところにより、人事院にその旨を届け出なければならない。
 
 (法人たる職員団体)
第百八条の四 登録された職員団体は、法人となる旨を人事院に申し出ることにより法人となることができる。民法(明治二十九年法律第八十九号)及び非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)中民法第三十四条に規定する法人に関する規定(民法第三十四条ノ二、第三十八条第二項、第五十六条、第六十七条、第七十一条、第七十七条第三項、第八十三条ノ二、第八十四条第三号ノ二及び第八十四条ノ二並びに非訟事件手続法第百二十二条ノ二を除く。)は、本条の法人について準用する。この場合においては、これらの規定中「主務官庁」とあるのは「人事院」と、「定款」とあるのは「規約」と読み替えるほか、民法第四十六条第一項第四号中「設立許可」とあるのは「法人ト為ル旨ノ申出」、同法第六十八条第一項第四号中「設立許可」とあるのは「登録」と、同法第七十七条第一項中「破産及ビ設立許可ノ取消」とあるのは「破産」と、非訟事件手続法第百二十条中「許可書」とあるのは「法人ト為ル旨ノ申出ノ受理証明書」と読み替えるものとする。
 
 (交渉)
第百八条の五 当局は、登録された職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。
2 職員団体と当局との交渉は、団体協約を締結する権利を含まないものとする。
3 国の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができない。
4 職員団体が交渉することのできる当局は、交渉事項について適法に管理し、又は決定することのできる当局とする。
5 交渉は、職員団体と当局があらかじめ取り決めた員数の範囲内で、職員団体がその役員の中から指名する者と当局の指名する者との間において行なわなければならない。交渉に当たつては、職員団体と当局との間において、議題、時間、場所その他必要な事項をあらかじめ取り決めて行なうものとする。
6 前項の場合において、特別の事情があるときは、職員団体は、役員以外の者を指名することができるものとする。ただし、その指名する者は、当該交渉の対象である特定の事項について交渉する適法な委任を当該職員団体の執行機関から受けたことを文書によつて証明できる者でなければならない。
7 交渉は、前二項の規定に適合しないこととなつたとき、又は他の職員の職務の遂行を妨げ、若しくは国の事務の正常な運営を阻害することとなつたときは、これを打ち切ることができる。
8 本条に規定する適法な交渉は、勤務時間中においても行なうことができるものとする。
9 職員は、職員団体に属していないという理由で、第一項に規定する事項に関し、不満を表明し、又は意見を申し出る自由を否定されてはならない。
 
 (職員団体のための職員の行為の制限)
第百八条の六 職員は、職員団体の業務にもつぱら従事することができない。ただし、所轄庁の長の許可を受けて、登録された職員団体の役員としてもつぱら従事する場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の許可は、所轄庁の長が相当と認める場合に与えることができるものとし、これを与える場合においては、所轄庁の長は、その許可の有効期間を定めるものとする。
3 第一項ただし書の規定により登録された職員団体の役員として専ら従事する期間は、職員としての在職期間を通じて五年(国営企業労働関係法(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号の職員として同法第七条第一項ただし書の規定により労働組合の業務に専ら従事したことがある職員については、五年からその専ら従事した期間を控除した期間)を超えることができない。
4 第一項ただし書の許可は、当該許可を受けた職員が登録された職員団体の役員として当該職員団体の業務にもつぱら従事する者でなくなつたときは、取り消されるものとする。
5 第一項ただし書の許可を受けた職員は、その許可が効力を有する間は、休職者とする。
6 職員は、人事院規則で定める場合を除き、給与を受けながら、職員団体のためその業務を行ない、又は活動してはならない。
 
 (不利益取扱いの禁止)
第百八条の七 職員は、職員団体の構成員であること、これを結成しようとしたこと、若しくはこれに加入しようとしたこと、又はその職員団体における正当な行為をしたことのために不利益な取扱いを受けない。
 
第四章 罰則
 
第百九条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
 一 第七条第三項の規定に違反して任命を受諾した者
 二 第八条第三項の規定に違反して故意に人事官を罷免しなかつた閣員
 三 人事官の欠員を生じた後六十日以内に人事官を任命しなかつた閣員(此の期間内に両議院の同意を経なかつた場合には此の限りでない。)
 四 第十五条の規定に違反して官職を兼ねた者
 五 第十六条第二項の規定に違反して故意に人事院規則及びその改廃を官報に掲載することを怠つた者
 六 第十九条の規定に違反して故意に人事記録の作成、保管又は改訂をしなかつた者
 七 第二十条の規定に違反して故意に報告しなかつた者
 八 第二十七条の規定に違反して差別をした者
 九 第四十七条第三項の規定に違反して試験の公告を怠り又はこれを抑止した職員
 十 第八十三条第一項の規定に違反して停職を命じた者
 十一 第九十二条の規定によつてなされる人事院の判定、処置又は指示に故意に従わなかつた者
 十二 第百条第一項又は第二項の規定に違反して秘密を漏らした者
 十三 第百三条の規定に違反して営利企業の地位についた者
 
第百十条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
 一 第二条第六項の規定に違反した者
 二 削除
 三 第十七条第二項の規定による証人として喚問を受け虚偽の陳述をした者
 四 第十七条第二項の規定により証人として喚問を受け正当の理由がなくてこれに応ぜず、又は同項の規定により書類又はその写の提出を求められ正当の理由がなくこれに応じなかつた者
 五 第十七条第二項の規定により書類又はその写の提出を求められ、虚偽の事項を記載した書類又は写を提出した者
 六 第十八条の規定に違反して給与を支払つた者
 七 第三十三条第一項の規定に違反して任命をした者
 八 第三十九条の規定による禁止に違反した者
 九 第四十条の規定に違反して虚偽行為を行つた者
 十 第四十一条の規定に違反して受験若しくは任用を阻害し又は情報を提供した者
 十一 第六十三条第一項又は第六十六条の規定に違反して給与を支給した者
 十二 第六十八条の規定に違反して給与の支払をした者
 十三 第七十条の規定に違反して給与の支払について故意に適当な措置をとらなかつた人事官
 十四 第八十三条第二項の規定に違反して停職者に俸給を支給した者
 十五 第八十六条の規定に違反して故意に勤務条件に関する行政措置の要求の申出を妨げた者
 十六 削除
 十七 何人たるを問わず第九十八条第二項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者
 十八 第百条第四項の規定に違反して陳述及び証言を行わなかつた者
 十九 第百二条第一項に規定する政治的行為の制限に違反した者
 二十 第百八条の二第五項の規定に違反して団体を結成した者
2 前項第八号に該当する者の収受した金銭その他の利益は、これを没収することができないときは、その価値を追徴する。
 
第百十一条 第百九条第二号より第四号まで及び第十二号又は前条第一項第一号、第三号から第七号まで、第九号から第十五号まで、第十八号及び第二十号に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし又はほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する。
 
附 則(抄)
 
第一条 この法律中附則第二条の規定は、昭和二十二年十一月一日から、その他の規定は、昭和二十三年七月一日からこれを施行する。
2 この法律中人事院及び服務に関する規定(これらに関する罰則及び附則の規定を含む。)以外の規定は、法律、人事院規則又は人事院指令の定めるところにより、実行可能な限度において、逐次これを適用することができる。
 
第十三条 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。
 
第十六条 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、船員法(昭和二十二年法律第百号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第百五十七号)及び船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和四十二年法律第六十一号)並びにこれらの法律に基いて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない。
 
第十八条 第百八条の六の規定の適用については、国家公務員の労働関係の実態にかんがみ、労働関係の適正化を促進し、もつて公務の能率的な運営に資するため、当分の間、同条第三項中「五年」とあるのは、「七年以下の範囲内で人事院規則で定める期間」とする。