Q1.天王星とは、どんな惑星ですか。
A1.青緑色をした天王星は,主成分がガスからなる天王星型の惑星です。
大気の成分のほとんどは水素で,ほかにヘリウムやメタンなどが含まれています。
従来は木星型惑星に分類されていましたが、ボイジャー2号の観測により以前考えられていたよりも、水やメタン、アンモニアなどからなる氷を多量に含んでいて、天王星型惑星と分類されるようになりました。天王星の青緑色はこの水やメタンが原因で、赤色の光をメタンが吸収してしまうためと考えられています。
天王星の中心には岩や氷からなるコアがあると考えられていて,その上にガスと氷がまじり合った濃密な大気が存在するようです。
おだやかな外見とは反対に,天王星は太陽系の中でもかなり異常ともいえる特徴をもっています。
自転軸の傾きをみると,天王星では98度もあります。つまり天王星は,横倒しになった状態で太陽のまわりをまわっているのです。
しかも天王星の衛星もすベて,この自転軸の傾きに合わせて横倒しになった赤道面上を公転しています。
自転軸ばかりではなく、天王星の磁軸は自転軸から約60度もはなれたところにあるうえに,天王星の中心を通っていないのです。
磁軸は中心から30%もはなれたところを通っています。
過去に経験した大衝突の結果,このような特徴をもってしまったのかもしれません。
天王星とリング
天王星とリング
 
天王星の基本データ
軌道長半径
(天文単位)
公転周期
(年)
自転周期
(日)
赤道半径
(km))
質量
(地球=1)
平均密度
(kg/u)
表面重力
(地球=1)
衛星数
 
19.128 84.02 0.718 25,559 14.54 1270 0.89 27
Q2.天王星にもリングがあるって本当ですか。
A2.天王星にはリングが存在します。このリングは偶然に発見されました。

1977年3月10日,この日は天王星が背後にある星をかくす現象がおきるはずでした。
この現象を利用すれば,かくすほうの天体(この場合は天王星)の大きさや大気組成などを知ることができるので,観測の絶好のチャンスなのです。
インド洋上空で観測していたカイパー空中天文台のグループは,奇妙なことに予想より半時間も早く背後の星がかくれる現象を観測したのです。
ちょうどまばたくように背後の恒星の光が5回みえなくなったのです。
それから恒星は天王星の形にかくれ、しばらくして天王星の形から出てきた恒星は,ふたたび5回みえなくなりました。
このような現象は,天王星に5本のリングがあると考えればすぐに説明できます。
その後ボイジャー探査機の観測などにより,天王星には全部で11本のリングがあることがわかりました。
いずれも幅は数十キロと細く,土星のように幅が広くない点が大きな特微です。
天王星のリングは,ほとんどがメートルサイズより小さな物質からできているようです。
具体的な成分は不明ですが,たいヘん暗い物質でできていることはわかっています。
Q3.天王星のリングが細いのですぐになくなってしまいそうですが。
A3.天王星のリングの幅がせまいのはなぜでしょうか。
この理由としては,リングをはさむ位置にある二つの衛星が,どうやら重要なはたらきをしているらしいのです。

リングの外側にある衛星は,リング内の粒子を惑星の方ヘ進ませようとします。
ところがリングの内側にある衛星は,粒子を外側ヘはじき飛ばそうとする効果をもっています。
このため二つの衛星がまるで牧羊犬のように,リングの粒子が逃げだすのを防いでいるわけです。
このような役割をする衛星の組を「羊飼い衛星」とよんでいます。
アメリカの科学者ゴールドライヒとトレーメンは,天王星のεリングをはさむオフィーリアとコーデリアという二つの衛星が羊飼い衛星ではないかと推測しました。
右の写真は、上の衛星がコーデリア、下の衛星がオフィーリアです。
その後ほかの惑星についても,土星のFリングをはさむパンドラとプロメテウス,木星のリングをはさむアドラステアとメチスが羊飼い衛星であると考えられるようになりました。
おそらく天王星のほかのリングについても,小さな衛星,あるいは衛星ともいえないような小さな粒子が,羊飼い衛星の役割を果たしていると考えられます。
天王星のリングと羊飼い衛星
羊飼い衛星
Q4.天王星の衛星ミランダには、ひっかき傷のような地形がありますが、どうしてできたのですか。
A4.天王星の衛星は全部で27個存在します。
このうち五つは比較的大きく,地球からの観測でも発見されていました。
残りの衛星は,ボイジャー探査機の接近によってはじめてみつかった,半径20〜80キロ程度の小さな衛星です。


これらの衛星の中でとくに話題を集めたのは,5大衛星のうち最も内側をまわるミランダです。
右の写真でもわかるように、半径わずか250キロ程度のこの小さな衛星ミランダの表面に,まるで何かでひっかいたような巨大な地形や,深さ20キロに達する溝がみつかりました。
このような地形は,過去にミランダが破壊されたあと再度集積するという過程を,何度かくりかえした跡だという説もあるが,まだその原因はわかっていません。
ほかの5大衛星はいずれも表面がクレーターにおおわれた氷衛星で,マイナス200℃の凍りついた死の世界のように思われます。
しかし,直径が約1600キロと天王星の衛星中最大のティタニアの表面にはクレーターが比較的少なく,地質学的に比較的最近何かの活動があったのではないかと考えられます。それを裏づけるかのように,東西に走る長さ1500キロ以上の断層谷が発見されました。
しかしティタニアがどのような歴史をたどってきたのか,そしてほかの衛星がどのように進化してきたのか,ボイジャー探査機の調査によってもまだほんとうの素性は解明されていません。
天王星の衛星ミランダ
ミランダ
アリエル オベロン
アリエル オベロン
ティタニア ウンブリエル
ティタニア ウンブリエル
天王星の衛星の基本データ
衛星名 直径
(km)
質量
(kg)
平均軌道半径
(km)
公転周期
(日)
発見者 発見年
コーディリア 40±6 4.5×1016 49,770 0.335034 ボイジャー2号 1986
オフィーリア 43±8 5.4×1016 53,790 0.3764 ボイジャー2号 1986
ビアンカ 51±4 9.3×1016 59,170 0.434579 ボイジャー2号 1986
クレシダ 80±4 3.43×1017 61,780 0.46357 ボイジャー2号 1986
デスデモナ 64±8 1.78×1017 62,680 0.47365 ボイジャー2号 1986
ジュリエット 94±8 5.57×1017 64,350 0.493065 ボイジャー2号 1986
ポーシャ 135±8 1.68×1018 66,090 0.513196 ボイジャー2号 1986
ロザリンド 72±12 2.54×1017 69,940 0.55846 ボイジャー2号 1986
キューピッド <17.8 3.8×1015 74,800 0.618 ハッブル宇宙望遠鏡 2003
ベリンダ 81±16 3.57×1017 75,260 0.623527 ボイジャー2号 1986
ペルディータ <26.6 1.3×1016 76,420 0.638 Karkoschka 1999
パック 162±4 2.89×1018 86,010 0.761833 ボイジャー2号 1985
マブ <24.8 1.0×1016 97,734 0.923 ハッブル宇宙望遠鏡 2003
ミランダ 471.6±1.4 (6.6±0.7)×1019 129,390 1.413479 カイパー  1948
アリエル 1157.8±1.2 (1.35±0.12)×1021 191,020 2.520379 ラッセル  1851
ウンブリエル 1169.4±5.6 (1.17±0.13)×1021 266,300 4.144177 ラッセル  1851
チタニア 1577.8±3.6 (3.53±0.09)×1021 435,910 8.705872 ハーシェル  1787
オベロン 1522.8±5.2 (3.01±0.07)×1021 583,520 13.463239 ハーシェル  1787
フランシスコ <12 1.3×1015 4,276,000 -266.6 カベラーズ・グラッドマン 2001
キャリバン <98 7.3×1017 7,231,000 -579.7 グラッドマン  1997
ステファノー <20 6×1015 8,004,000 -677.4 カベラーズ 1999
トリンキュロー <10 7.5×1014 8,504,000 -759 ホルマン 2001
シコラクス <190 5.4×1018 12,179,000 -1288.3 ニコルソン 1997
マーガレット <11 1.3×1015 14,345,000 1694.8 シェパード 2003
プロスペロー <30 2.1×1016 16,256,000 -1977.3 グラッドマン  1999
セティボス <30 2.1×1016 17,418,000 -2234.8 カベラーズ 1999
ファーディナンド <12 1.3×1015 20,901,000 -2823.4 ホルマン 2001
注 公転周期が負の値の衛星は、逆行衛星である