宇宙論Q&A 宇宙論に関する疑問にお答えします     戻る

Q1.宇宙には、果てがあるのですか?
A1.これは、非常に難しい問題です。
宇宙がどんな形をしているかは、まだまだ解明されてはいませんが、いくつかのことはわかっています。

まずクエーサーなどの観測により、数十億光年から140億光年程度までの距離は観測されています。
もちろん宇宙の壁があるという観測事実はありません。
さらにクエーサーが高速で我々から遠ざかっていることがスペクトルの観測からわかっています。
だから宇宙が膨張しているということがわかり、ハッブルの法則より後退速度が距離に比例するということになり、宇宙は有限であると考えられるようになりました。
しかし有限であっても果てがあるとはいえません。例えば地球上を考えてみても有限なのに果てはないからです。
また特殊相対論から重力により空間が曲げられていると考えると、宇宙空間が有限で地球を一周すると元に戻るのと同様なトポロジーを持っているのかもしれません。
とにかく現在では、宇宙には果てはないが有限である可能性があると考えられます。
ただし宇宙が膨張しているという点は確実で、150億年前に宇宙が大爆発したというビッグバン理論の裏付けにもなります。
だがこの膨張が続くのか、収縮を始めるのかという点はまだはっきりとした結論がありません。
もし膨張が続くと、星雲間の間隔が開く一方になり、どこからも星間物質が補給されないとすると、やがて宇宙は白色矮星、中性子星、ブラックホールだけとなり、無の世界になるであろうし、収縮が始まると宇宙は高温の世界になり、一点に凝縮される事になります。
なんだかどっちに転んでもいいことなさそうですが、これ以外の考え方もありますので気を落とさないでください。
Q2.宇宙の始まりといわれるビッグバンとは何か?
A2.宇宙が膨張しているという事実は、いくつかの観測結果により確実視されています。
すると、以前は宇宙はもっと小さかったことになり、一点に収縮していた時点があるはずです。
そして誕生直後の宇宙が熱い火の玉で、その中でいろいろな原子がつくられ、火の玉が大爆発を起こして膨張を始めたというのが「ビッグバン理論」の考え方です。
その後の観測結果からもそれを裏付ける事実がいくつかみつかっています。
だが、どうして宇宙が爆発的に膨張を始めたかは説明ができていません。
さらに最近では無から宇宙が誕生したという理論が発表され、ビッグバンが発生した理由が考えられています。
Q3.宇宙には、グレートウォールという壁があるという。その正体は?
A3.我々の銀河系は、「局部銀河団」と呼ばれる20個からなる銀河系の一員です。
さらに我々は、おとめ座銀河団の仲間に入っています。これは5900万光年の距離にあり、2500万個の銀河から構成されています。
さらにこれらは「超銀河団」と呼ばれる集団をつくっています。これらは数億光年のオーダーの広がりを持ちます。
この超銀河団が網の目のようにつながった構造を持ち、壁をつくっているというわけです。
このつながりのことを「宇宙の大構造」と呼んでいますが、特に銀河が密に集まっている部分を「グレートウォール」と呼んでいます。
グレートウォールは、ここから約3億光年のところにあり、長さは約5億光年であり、数万個の銀河系により構成されています。
さらに、宇宙の大構造の網の目の内側には、ほとんど銀河が存在せず、これを「ボイド」(超空洞)と呼びます。
ボイドの中がどうなっているのかは、全くわかっていません。
だから銀河系も決して一様に分布しているのではなく、網の目のように分布しているわけである。
Q4.宇宙はどんな形をしているのでしょう。
A4.宇宙の形を考えようというのが宇宙のトポロジーです。
宇宙が無から生まれたとすると宇宙が無限の広がりを持つことはほとんど可能性がないとするのが、現在の考え方である。
つまり、「宇宙は有限だが果てはない」というのが現在の一般的な考え方である。
それを前提に宇宙のトポロジーを考えると三つの考え方があります。
 @球型  Aトーラス型  Bクラインボトル型 の三つです。
もちろん現在の宇宙がどんな形をしているかはまったくわかりません。
トポロジー
 @球型    Aトーラス型 Bクラインボトル型
Q5.ブラックホールを抜けて他の宇宙へ移動できるというのは本当ですか。
A5.SFなどではよくある話ですが、実際に抜けられるとは思えません。

右の図は、ブラックホールからホワイトホールへワームホールを通って移動するという概念図です。
この考え方の前提は、宇宙が無からできたときに、たくさんの宇宙ができて、それがワームホールによってつながっているという考え方です。
ワームホールは、一方通行でその入り口がブラックホールで、出口がホワイトホールであるというわけで、ブラックホールから入ってホワイトホールへでてくるということが可能ならば遠距離の宇宙旅行も可能であるということになります。
しかしブラックホールへ入っても特異点に触れずにワームホールへ入れるとは思えませんので、仮にブラックホールがワームホールへの入り口であったとしても無理でしょう。
特異点に入るともはや脱出不可能であるというのが現在のブラックホールに対する考え方です。
また、ワームホールを抜けて他の宇宙へ移動したとして、戻るにはどうすればいいのでしょうか。ワームホールは、一方通行ですから。
ワームホール
Q6.光速の90%以上で航行できる宇宙船で宇宙旅行をすると、地球へ帰ってきた飛行士が地球にいる人より歳をとっていないという、双子のパラドックスは本当に起こるのですか。
A6.これは何ともいえません。
例えば光速に近い速度を与えたπ中間子が本来の寿命よりも長く存在できるというのは実際に観測されているし、アインシュタインの相対性理論から考えると、光速に近い速度で航行する宇宙船の内部は、時間の経過が遅くなることは考えられることです。
しかし、実際の生理現象まで遅くなるかというと絶対そうだとは言いきれません。しかし、そうなるとかえって怖いことになります。
本人がほんのわずかな時間だと思っている間に寿命が尽きてしまったりして・・・。
Q7.いわゆる多元宇宙、パラレルワールドは、実際に存在するのですか。
A7.現在の考え方では、この宇宙とは別の宇宙があっても少しも不思議ではないという理論がかなり有力です。
これは、無から宇宙が生まれるときにたくさんの宇宙が生まれたという考え方です。
もちろん他の宇宙と自由に行き来ができるかは別ですが。
SFでは、パラレルワールドはよく題材になりますが、ワームホールで移動することができそうもないので、実際にはどうでしょうか。
Q8.タイムマシンを使って時間を遡ったり、未来へ行ったりすることができるのでしょうか。
A8.現在の考え方では、不可能であると考えられます。
この問題は、SFなどでも取り上げられることの多い問題ですが、時間を遡っても過去に起きた出来事に干渉することは、因果律に反することです。
というのも、過去に起きていた出来事が起きなくなるようなことをしたら、未来にまで影響を与え、その人が過去へ行くことにすら、あるいは存在することすら出来なくなるかもしれないからです。
また未来へ行くとしても、そもそも未来は現時点で決定しているわけではないと考えるべきでしょう。もちろん未来がどうなるか十分に予測できる場合もあるでしょうが、全てが決まっているわけではないと考えるべきでしょう。
未来へ行き、未来を見て、現在に帰ってきて、自分が見た未来と異なる未来を実現することができるとしたら・・・、最初に見た未来は何だったのでしょうか。
だから、少なくとも過去へ行って過去に干渉することはできないと考えるべきでしょう。また未来へ行っても、それは可能性の未来の一つでしかないと考えるべきです。
Q9.太陽系には、多数の惑星が存在しますが、他の恒星系には惑星が存在するものがありますか。
A9.惑星は、自分で光を出さないので他の恒星系にある惑星を発見することは困難ですが、大きい惑星だと中心の恒星の動きにも影響を与えるので、光る恒星がないのにそれ以外で主星に説明できない動きがあれば、間接的に惑星の存在を推測できます。
実際にいくつかの恒星系で間接的に惑星が存在することがほぼ確認されています。
現在では、ほとんどの恒星系には大なり小なり惑星系が存在すると考えられています。                         
Q10.太陽系には生命が存在する天体は、地球の他には確認されていません。しかし他の恒星系にある惑星上に他の生命体が存在するのでしょうか。その確率は、どのくらいでしょうか。
A10.まず太陽のような落ち着いた恒星には、生命が誕生し進化する余地があるでしょうが、太陽より大きく、寿命が短い恒星には、長く生命が存在することはできないでしょう。
例えば赤色超巨星だったら、もし惑星を持っていたとしても膨張するに従って惑星を呑み込んでしまうでしょう。
逆に赤色矮星などは、性質も落ち着いているし、激しい現象が起こらないし、寿命も長いので、じっくりと生命が進化する余地がある可能性があります。
実際に惑星が地球のような生命が誕生し存続できる環境になるには、太陽から近すぎず遠すぎず、それに適度な重力を保つだけの大きさという条件が必要になるので、それに見合う惑星は、そうやたらにはないかもしれません。
太陽系の中でも、金星は大きさは十分であったが、太陽に近すぎたために灼熱地獄の世界になっているし、火星は太陽から遠いのと、大気を保つには小さすぎたためにかなり温度が低く、大気も薄い世界です。
いずれにしてもあまり派手な星よりは、主系列星のほうが生命が誕生できる可能性が高いでしょう。
しかし、今のところ他の天体の生命は確認されてはいません。生命が存在する確率も、全くわかってはいません。
しかし宇宙は広いので、生命体が他の惑星には全く存在しないと考えるのは無理があると考えられます。
宇宙に電波を発信して宇宙人との対話を実現しようとする計画が過去にも行われてはいますが、まだ実際に宇宙人から返事が来たという話もありません。
Q11.宇宙には4つの力があると言われていますが、どんな力ですか。
A11.宇宙には、重力、電磁気力、核力、弱い力の4つの力があります。
しかしもともと宇宙には実は一つの力しかなかったと言われています。
それが宇宙誕生直後にまず重力が分岐し、さらに他の3つの力に分岐したと考えられています。しかも、4つの力に分岐したのはあくまで確率的にそうなったに過ぎず、たまたまだったと考えられています。
ですから、核力がない宇宙があったとしても不思議ではなかったというわけです。
我々人間から見れば重力はいつも体感しているでしょうが、それ以外の力としてはほとんどが電磁気力で説明できます。
重力は、実はこの中では最も弱い力なのですが、遙か遠方にまで力が及ぶ性質があるのでマクロ的な宇宙を普遍的に支配している力は重力です。
電磁気力は、原子核と電子を結合する力で電気と磁気が実は統一して考えることができることはかなり以前から知られていました。これは皆さんもすぐに理解できるでしょう。つまり電磁石の存在が電気と磁気が実は同一のものだと証明できるわけです。それを合わせて電磁気力と呼んでいるわけです。
核力は、陽子と中性子を結合する力、弱い力は中性子を陽子と電子と反電子ニュートリノに崩壊させる力です。
いずれも素粒子レベルでは重要な力と考えられますが、大統一理論では、電磁気力と核力と弱い力とはもともと同一のものであり、統一して考えられると考えられています。
まず電磁気力と弱い力は、完全に統一して考えることができます。これを電弱力と呼びます。
さらに電弱力と核力を統一して考えることができれば大統一理論の完成となるのですが、これは現時点では完全に立証されたとは言えませんので、今後の研究が待たれるところでしょう。陽子崩壊が確認されればこの理論の正当性が証明できることになるのですが、
神岡鉱山のカミオカンデ・スーパーカミオカンデにおける実験結果では陽子崩壊が観測されていません。
このことから陽子の寿命は1034年以上はあると考えられています。