Q1.木星は、どんな惑星ですか。
A1.木星は太陽系最大の惑星である。その成分のほとんどは水素とヘリウムである。

内部には高い圧カのために金属状になった水素からなる領域があり,さらに中心部には岩石や氷などからなるコアが存在すると推定されている。
一方,大気中にはアンモニアや硫化水素アンモニウムの雲がただよい,その下には液体アンモニアや液体へリウムの海が広がっていると思われる。
木星は太陽から遠くはなれており,表面温度はマイナス150℃という寒い世界である。
木星が太陽からの熱だけで温められているとすると,表面温度はさらに20℃も低くなる。
木星は太陽から受け取っている熱の2倍以上もの熱を,内部から放出しているのである。
熱の原因としては,木星がつくられたときに発生した重カエネルギーが有カ視されている。
木星は太陽と同様,水素やヘリウムでできているが,太陽のように核融合をおこすためにはまだまだ重さが足りない。
木星の基本データ
軌道長半径
(天文単位)
公転周期
(年)
自転周期
(日)
赤道半径
(km)
質量
(地球=1)
平均密度
(kg/u)
表面重力
(地球=1)
衛星数
 
5.203  11.86  0.414  71,492  317.83  1330  2.37 63
Q2.木星を望遠鏡で見るとあざやかな縮模様が見えます。これらの正体は何ですか。
A2.ボイジャー探査機やハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星の写真をみると,赤や茶色,白などの縞槙様が美しい。

この縞模様から推測できるように,木星大気中での風の動きは赤道方向に並行である。
領域によって西風と東風が交互に吹いているという点も,木星大気の大きな特徴である。
赤道付近では自転の影響を受け,風速毎秒100メートルにもなる西風が吹く。
しかし緯度20度くらいのところでは,逆に風速毎秒50メートルの東風が吹く。
緯度30度くらいになると,また強い西風の領域になる。
木星のあざやかな雲の色は,有機物か硫黄化合物が原因であるらしい。
大気中には,微量ではあるがメタンやエタンなどの有機物の材料になる物質がある。
木星大気中では雷がおきていることもわかっている。
こういった大気中の微量成分から,雷や荷電粒子などのエネルギーによって有機物が合成されている可能性は大いにあるだろう。
木星
Q3.木星にある大赤斑の正体は何ですか。
A3.木星の表面で最も特徴的なものといえば,南半球にみられる大赤斑である。

地球の直径の3倍をこえるこの巨大なだ円形の渦は,現在まで300年以上も消えずに観測されつづけている。
大赤斑の成因については,昔からいろいろ考えられてきている。
大気の下の地形の影響という説や,地球の台風に似たものであるという説、あるいは「ソリトン」とよばれる孤立した波であるという説などがあげられているが,いまだにはっきりしたことはわかっていない。
大赤斑のあざやかな赤い色はたいヘん印象的だが,これは赤リンによるものらしい。
1000年に一度といわれたシューメー力ー・レビー第9彗星の衝突によってあらわれた黒いまだら状の模様は,あたかも大赤斑の誕生をみているかのようであった。
シューメー力ー・レビー第9彗星の衝突後に放出された大気の成分から硫黄が検出されたことで,木星大気に硫黄が含まれていることがわかってきている。
Q4.木星には、磁場があるのですか。
A4.木星にはたいヘん強い磁場が存在する。その強さは,表面では地球の10倍以上にもなる。

磁場が強い理由は二つあげられる。
一つは木星の内部に大量の液体金属水素が存在すること,もう一つは木星の自転周期が約10時間とたいヘん速いことである。
液体金属水素が速い自転により高速で流動するために,大量の電流が木星内部で発生して強大な磁場のみなもとになっていると考えられる。
強い磁場の存在は,1950年代から推測されていた。
その証拠は木星から放射されるきわめて強い電波である。
木星からは波長のちがう3種類の電波が放射されている。
そのうち波長が最も長いデカメートル波は,木星の周囲から放射されている。
木星の強大な磁場にとらえられた荷電粒子が,磁カ線に沿って回転する際に電波を放射するのである。
電波の強さはときおりきわめて大きくなる。この現象を「バースト」とよぶ。
バーストは衛星イオが特定の位置にあるときにおきる。
木星磁場の本格的な調査は,パイオニア探査機の到着を待たなくてはならなかった。
パイオニア,ボイジャー両探査機により,木星磁場のくわしい観測が行われた。
その結果,木星の磁気圏は地球磁気圏の100倍以上もの広がりがあることがわかった。これは太陽系で最大である。
木星磁気圏の大きさは,太陽風の強さにより変化する。
強い太陽風が吹いてくれば,ちようど押しもどされるように磁気圏が収縮する。
しかし太陽風がやむと,すぐに磁気圏は元の大きさにもどる。
太陽風と磁気圏の作用により,地球と同じように木星にも極地方にオーロラが発生する。
Q5.木星にも土星のようにリングがあるというのですが、本当ですか。
A5.木星のリングは,ボイジャー探査機により発見された。

リングは木星の半径の約1.8倍のところにあり,たいヘんに薄い。
そこから木星の表面までは,さらに薄いリングが広がっている。
この二つのリングを囲むような形で,ぽんやりとした物質の取り巻きが,はるか速くまで広がっていることがわかっている。
地上からのスぺクトル観測の結果では,リングを構成している物質は岩石(ケイ酸塩など)と思われているが,まだ確定はできていない。リングの粒子はマイクロメートルサイズのきわめて細かい物質である。このような細かい粒子は,木星の磁気圏との相互作用などにより10万年程度で木星本体ヘ落下してしまう。
リングを維持するためには粒子がどこからか供給されなければならない。この役割を果たしているのはリングのすぐ外側をまわる小衛星,アドラステアではないかと考えられている。イオの噴煙も供給源の一つとなっているだろう。
木星のリング
木星のリング
Q6.木星を小望遠鏡で見ると4つの衛星が見えます。これらの衛星のことを教えてください。
A6.木星は衛星を63個もしたがえている。そのうち内側に近いところには,とくに大きな四つの衛星がある。
これらは1610年にガリレオにより発見されたため,「ガリレオ衛星」とよばれている。


四つの衛星は木星に近い方からイオ,エウ口パ,ガニメデ,力リストと名づけられている。
イオとエウロパはほとんどが岩石でできており,ガニメデとカリストは比較的氷が多いが,それでも全体の半分程度である。
エウロパを除くガリレオ衛星はいずれも地球の月より大きく,ガニメデは水星の大きさを上まわる。
いずれも小望遠鏡でも簡単に見ることができる対象ですので、望遠鏡を持っている方はぜひ観察してください。
Q7.木星の衛星イオについて教えてください。衛星イオでは火山活動がみられるということですが、本当ですか。
A7.ガリレオ衛星のうち最も内側のイオは,表面が赤い衛星である。

イオの直径は3630キロ、木星との距離は、42万1605キロ、公転周期は1.769日である。ボイジャー探査機が送ってきたイオの表面の写真には,クレーターがほとんどみつからなかった。表面は色あざやかな模様でおおわれ,何かが流れた跡があちこちに見受けられた。
科学者たちはイオが普通の衛星ではないと確信した。
このときイオの写真の画像処理を行っていた科学者が,雨傘状の噴煙がイオの表面に噴き上がっているのを発見した。
太陽系で地球以外にはじめて活火山が発見された瞬間である。
画像をくわしく調ベた結果,合計9個の火山が活動しており,噴煙の高さは最大200キロ以上にも達することがわかった。
ニ酸化硫黄や硫黄からなる噴煙の量は,年間で100億トンにも上ると見積もられている。
地球の月とほぽ同じ大きさにもかかわらず,イオにいくつもの活火山があるのはなぜだろうか。
実はポイジャー探査機が接近する2週間前に,活火山の存在を予言した論文が発表された。
それによると,イオの活火山のエネルギー源は木星の強い潮汐力であるという。
イオのすぐ外側をまわる衛星エウロパの公転周期は,ちようどイオの2倍である。つまりイオは2回公転するたぴに,必ずエウロパに引っぱられてしまう。
このためイオの公転軌道は大きくひずみ,木星に近づいたりはなれたりすることになる。
強大な木星の引カによってイオの内部にひずみエネルギーがたまり,やがてそれが熱エネルギーとなってイオの内部をとかしてしまったらしい。
木星の衛星イオ
イオ
イオの表面は、赤い模様でおおわれ、あちこちで噴煙を上げている。しかも上空では、噴煙が凝結する様子も観測されている。あちこちの地形が非常に短期間で更新され、火山地形におおわれている。ほとんどクレーターはみあたらない。
Q8.木星の衛星エウロパについて教えてください。
A8.エウロパはイオの外側をまわる衛星である。
その表面は無数の筋模様でおおわれている。


エウロパの直径は3138キロ、木星との距離は67万927キロ、公転周期は3.551日である。
エウロパには、不思識なことにクレーターがほとんど見あたらない。
これはエウロパの表面が比較的新しいことを意味するものである。
エウロパの表面は、氷に覆われている。
筋模様の幅は数十キロで,長さは最大数千キロにもおよんでいる。
これはどうも氷の地殻の割れ目らしい。
エウロパの内部には,広大な氷のマグマ(水)が広がっているのかもしれない。
氷の地殻の割れ目から水のマグマが噴きだして固まり,表面がなめらかになっていることも考えられる。
エウロパには、テクトニクス活動が存在するらしい。 
エウロパ
木星の衛星エウロパ
エウロパ
Q9.太陽系最大の衛星ガニメデについて教えてください。
A9.ガニメデは直径5262キロという大きさをもつ,太陽系最大の衛星である。

木星との距離は107万256キロ、公転周期は7.155日である。
ガニメデの表面は,明るい部分と暗い部分の二つに分かれている。
明るい部分には筋のようにみえる谷が密集している。
暗い部分はクレーターにおおわれており,40億年以上前にできた地形であると考えられている。
ガニメデは、地球と同様にテクトニクスをもっていて、横ずれ断層や地殻変動の跡も存在する。
またガニメデは、固有の磁場を持っていることが確認されている。
つまりガニメデは、内部に鉄を多量に含む液体化したコアを持っていることになり、死んではいない天体ということになる。 
衛星で磁場が確認されているのは、ガニメデだけである。 
ガニメデ
木星の衛星ガニメデ
ガニメデ
Q10.衛星カリストについて教えてください。
A10.力リストは,ガリレオ衛星では最も外側を公転している。

カリストの直径は4800キロ、木星との距離は188万2765キロ、公転周期は、16.689日である。
カリストは、ほかのガリレオ衛星にくらべて表面の光の反射率が低く,暗くみえる。
おそらく表面は氷と岩石が混合した物質でできているのだろう。
カリストの表面はクレーターでおおわれているが,その中にひときわ巨大なクレーターが存在する。
同心円状のリングが取り巻くこのクレーターは「ヴァルハラ」と名づけられ,半径は1500キロにも達する。

ヴァルハラ
ヴァルハラは、多重輪構造の盆地の最もドラマチックな例です。
このような構造は非常に大きな衝突によってできると考えられています。
このようなものの他の例として、 月の東の海、 水星のカロリス盆地などがあります。
木星の衛星カリスト
カリスト
Q11.他の衛星についても教えてください。
A11.ガリレオ衛星の外側にも衛星がある。いずれも半径数十キロの小衛星である。

くわしい調査がなされていないためにこれらの衛星の実像はわかっていないが,小惑星が木星にとらえられたものではないかと推測されている。
ガリレオ衛星の内側にも小さな衛星がいくつか存在する。その中でもアマルテアは比較的大きい。
アマルテアは、135×82×75キロの大きさで、木星との距離は18万1279キロ、公転周期は0.4981日である。
不規則な形をしたこの衛星の表面温度を測定したところ,太陽からの熱だけでは説明できないことがわかった。
熱源は,アマルテアが木星の巨大な磁場の中を通過するために発生するジュール熱と考えられている。
アマルテアの表面は赤い色をしている。
これはイオの火山から放出された噴煙が木星ヘ引き寄せられる途中で,アマルテア表面に付着するためである。

下記の衛星は、木星の主な衛星である。
衛星名 直径
(km)
質量
(kg)
平均軌道半径
(km)
公転周期
(日)
発見者 発見年
メティス 40×60 1.2 ×1017 127,690 0.29478 サイノット 1979
アドラステア 26×20×16 7.5 ×1015 128,690 0.29826 ジェウィット 1979
アマルテア 262
×146
×134
2.1 ×1018 181,170 0.49817905 バーナード 1892
テーベ 110×90 1.5 ×1018 221,700 0.6745 サイノット 1979
イオ 3,660.0
×3,637.4
×3,630.6
8.9 ×1022 421,700 1.769137786 ガリレオ 1610
エウロパ 3,121.60 4.8 ×1022 671,034 3.551181041 ガリレオ 1610
ガニメデ 5,262.40 1.5 ×1023 1,070,412 7.15455296 ガリレオ 1610
カリスト 4,820.60 1.1 ×1023 1,882,709 16.6890184 ガリレオ 1610
テミスト 8 6.9 ×1014 7,391,645 129.827611 コワール 1975
レダ 20 1.1 ×1016 11,097,245 238.824159 コワール 1974
ヒマリア 170 6.7 ×1018 11,432,435 249.726305 ペリネ 1904
リシテア 36 6.3 ×1016 11,653,225 256.995413 ニコルソン 1938
エララ 86 8.7 ×1017 11,683,115 257.984888 ペリネ 1905
S/2000 J 11 4 9.0 ×1013 12,570,575 287.931046 シェパード 2000
カルポ 3 4.5 ×1013 17,144,875 458.624818 シェパード 2003
S/2003 J 12 1 1.5 ×1012 17,739,540 482.691255 シェパード 2003
エウポリエ 2 1.5 ×1013 19,088,435 538.779839 シェパード 2001
S/2003 J 3 2 1.5 ×1013 19,621,780 561.517739 シェパード 2003
S/2003 J 18 2 1.5 ×1013 19,812,575 569.728015 グラッドマン 2003
テルクシノエ 2 1.5 ×1013 20,453,755 597.606695 シェパード 2003
エウアンテ 3 4.5 ×1013 20,464,855 598.093368 シェパード 2001
ヘリケ 4 9.0 ×1013 20,540,265 601.401918 シェパード 2003
オーソシエ 2 1.5 ×1013 20,567,970 602.619143 シェパード 2001
イオカステ 5 1.9 ×1014 20,722,565 609.426611 シェパード 2000
S/2003 J 16 2 1.5 ×1013 20,743,780 610.362159 グラッドマン 2003
アナンケ 28 3.0 ×1016 20,815,225 613.518491 ニコルソン 1951
プラクシディケ 7 4.3 ×1014 20,823,950 613.904099 シェパード 2000
ハルパリケ 4 1.2 ×1014 21,063,815 624.541797 シェパード 2000
ヘルミッペ 4 9.0 ×1013 21,182,085 629.80904 シェパード 2001
スィオネ 4 9.0 ×1013 21,405,570 639.802554 シェパード 2001
ムネーメ 2 1.5 ×1013 21,427,110 640.76866 シェパード 2003
S/2003 J 17 2 1.5 ×1013 22,134,305 672.751882 グラッドマン 2003
アイトネ 3 4.5 ×1013 22,285,160 679.641347 シェパード 2001
カレ 2 1.5 ×1013 22,409,210 685.323873 シェパード 2001
タイゲテ 5 1.6 ×1014 22,438,650 686.674715 シェパード 2000
S/2003 J 19 2 1.5 ×1013 22,709,060 699.124764 グラッドマン 2003
カルデネ 4 7.5 ×1013 22,713,445 699.326904 シェパード 2000
S/2003 J 15 2 1.5 ×1013 22,721,000 699.676116 シェパード 2003
S/2003 J 10 2 1.5 ×1013 22,730,815 700.129403 シェパード 2003
S/2003 J 23 2 1.5 ×1013 22,739,655 700.53799 シェパード 2003
エリノメ 3 4.5 ×1013 22,986,265 711.964625 シェパード 2000
アエーデ 4 9.0 ×1013 23,044,175 714.656754 シェパード 2003
カリコレ 2 1.5 ×1013 23,111,825 717.806112 シェパード 2003
カリュケ 5 1.9 ×1014 23,180,775 721.020662 シェパード 2000
エウリドメ 3 4.5 ×1013 23,230,860 723.358859 シェパード 2001
コレー 2 1.5 ×1013 23,238,595 723.720459 シェパード 2003
パシテー 2 1.5 ×1013 23,307,320 726.932963 シェパード 2001
キュレーネ 2 1.5 ×1013 23,396,270 731.098603 シェパード 2003
エウケラデ 4 9.0 ×1013 23,483,695 735.19998 シェパード 2003
S/2003 J 4 2 1.5 ×1013 23,570,790 739.293961 シェパード 2003
ヘゲモネ 3 4.5 ×1013 23,702,510 745.500007 シェパード 2003
アーケ 3 4.5 ×1013 23,717,050 746.185469 シェパード 2002
カルメ 46 1.3 ×1017 23,734,465 747.008062 ニコルソン 1938
イソノエ 4 7.5 ×1013 23,832,630 751.646937 シェパード 2000
S/2003 J 9 1 1.5 ×1012 23,857,810 752.838751 シェパード 2003
S/2003 J 5 4 9.0 ×1013 23,973,925 758.341296 シェパード 2003
パシファエ 60 3.0 ×1017 24,094,770 764.082032 メロッテ 1908
シノーペ 38 7.5 ×1016 24,214,390 769.779665 ニコルソン 1914
スポンデ 2 1.5 ×1013 24,252,625 771.603566 シェパード 2001
アウトノエ 4 9.0 ×1013 24,264,445 772.167762 シェパード 2001
カリロエ 9 8.7 ×1014 24,356,030 776.543335 シェパード 1999
メガクリテ 5 2.1 ×1014 24,687,240 792.436947 シェパード 2000
S/2003 J 2 2 1.5 ×1013 30,290,845 1,077.02 シェパード 2003