Q1.金星は、どんな惑星ですか。 |
A1.金星の大気は,96%が二酸化炭素,残り3%が窒素,0.1%が水蒸気です。
地球の場合,水蒸気が大気の約2%を占めることを考えれば,金星の大気はきわめて乾燥した状態にあるといえます。
金星の大気はその温度の構造により,上層大気と下層大気に区分できます。
大気が薄い上層大気では,高度が高い層ほど太陽光に強く熱せられるので,大きな大気の流れもなく安定しています。
金星の高度50〜70キロの領域には,厚い雲が切れ目なく浮かび,それが上層大気と下層大気を分けています。
雲は濃硫酸の液滴からなり,視界は3キロくらいなので,雲というよりも霧に近い。
硫黄の粒子もまじっているため,雲の色は黄色みがかっています。
この雲が広がっている高度には,秒速100メートルにもおよぶ東西流が流れています。
この流れは4日でほぼ金星を一周する。
金星の自転周期は243日なので,自転スピードの実に60倍もの高速で東西流の大気が流れていることになります。
地球にも秒速100メートルのジェット気流があります。
しかし地球の自転速度は,赤道帯で秒速460メートルもあるのです。
金星の東西流のような巨大な大気の流れが,なぜ発生するのかはまだわかっていません。
金星の表面は、実際には平坦なのっぺりとした地形です。
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金星の基本データ
軌道長半径
(天文単位) |
公転周期
(日) |
自転周期
(日) |
赤道半径
(km)) |
質量
(地球=1) |
平均密度
(kg/u) |
表面重力
(地球=1) |
衛星数
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0.723 |
224.70 |
243.0 |
6052 |
0.815 |
5,240 |
0.91 |
0 |
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Q2.金星の表面は、当初考えられていたよりはるかに高温だったということですが、どうしてそんな高温の世界になってしまったのでしょうか。 |
A2.金星の地表付近の温度は,土地の高低によって多少のちがいはあるが,420〜485℃です。
硫黄や鉛,スズがとけてしまうほどの過酷な環境です。
表面の気圧は地球の約90倍,90気圧もあります。 この条件では,水の沸点は約300℃なので,金星表面には液体の水は存在できません。
したがって,現在の金星には地球のような海はありません。
地表付近の大気の密度は1立方センチあたり約0.1グラム,風速は秒速1〜2メートルです。
大気密度は地球の100倍もあり,金星表面付近では一酸化炭素を主成分とする濃密な大気が,ゆるやかに流れていると推測されます。
金星の地表をおおう溶岩流は,多量の黄鉄鉱を含んでいると考えられます。
金星表面は高温なため,黄鉄鉱が二酸化炭素や水と反応して大気中に亜硫酸ガスをふやす。
一度大気中につくられた亜硫酸ガスは,地表が高温なため下層大気にたまり,50〜70キロの高度に硫酸の微粒子からなる厚い雲をつくるのです。
金星がこれほどの高温の世界になったのは、太陽に近いために海が蒸発してしまい、二酸化炭素を吸収できなくなったために、温室効果が暴走したためであると考えられています。
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Q3.金星の地形は、どうなっているのですか。 |
A3.表面の約60%はなだらかな平原です。
マゼランの合成開口レーダーによって,金星表面のようすがくわしくわかってきました。
金星表面の地形は,なだらかな平原と高地,低地の大きく三つに分けられます。
このうち,なだらかな平原が金星全表面の約60%を占めます。
高地は平均面から2キロ以上の高度の地域で,全表面の約13%を占める代表的な高地として,アフリカ大陸に匹敵する大きさのアフロディテ大陸,オーストラリア大陸くらいのイジュタール大陸があげられます。
イジュタール大陸には金星の最高峰マックスウェル山がそびえます。山頂は平均面から高度11キロに達します。
平均面より低い地域は全表面の27%を占めます。
金星で最も低い場所は,南緯14度,東経156度にあるダイアナ谷で平均面より約2キロ低い。
金星の表面は全体的になだらかであり,大陸地殻と海洋地殻の高度差が約5キロもある地球の表面とは対照的です。
地球にみられるような,プレート状の地殻が水平運動するプレート・テクトニクスは,金星では発達していないらしい。
マゼランによって,より細かい興味深い地形がいくつもあることが明らかになりました。
直径25キロ,周囲からの高度500〜750メートルのパンケーキの形に似た火山性ドームもその一つです。
これは地表面近くまで上昇してきたマグマが,地面をもり上げてできたのではないかと考えられています。
直径200〜1000キロの巨大な円形の構造をもつ地形「コロナ」も同じような原因でできたとされます。
太陽系でこれまでみられなかった双子,あるいはそれ以上のマルチ・クレーターも確認されています。
濃密な大気中で隕石が破壊されてできたと考えられます。
金星では直径3キロ以下の小さなクレーターは発見されていません。
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ラビニア地域のハイポリタ線状地の立体画像 |
アフロディーテ大陸東端のマートマンズ標高8000m |
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Q4.金星の内部は、どうなっていますか。磁場はありますか。 |
A4.金星の内部構造はまだくわしくわかっていません。
大きさや質量が地球とほぼ同じであることや,金星と地球の軌道が近く,ほとんど同じ物質を集積して形成されたと考えられることなどから,金星は地球とよく似た内部構造をもつと推測されています。
地表から地下10〜30キロまで地殻が広がり,その下に深さ約3000キロまでマントルがあります。
地球との類推からマントル物質は,かんらん石と輝石を主とするケイ酸塩であると考えられます。
中心には半径約3000キロのコアがあると信じられていますが,確かな証拠はありません。
しかし金星の自転速度が遅いためか,磁場の強さは地球の10万分の1程度しかありません。
マゼランは重力分布データも観測しました。新たな重力分布データにより,金星の内部構造を明らかにできるかもしれません。
今後の解析が期待されます。
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