平成十三年九月
例会 恵美選


良妻やただなよなよと秋桜

ありがとうで結びし母の盆かざり

青空の大きくなりし今朝の秋

草陰にしずむ野仏虫の声

岩清水山の心を合掌に

頬さすり行く鮮やかな秋の風

散歩する石にまだある残暑かな

みんみんが法師に変わる風の夕

黄信号するりと渡る秋の風

夜の深み静けさを増す虫しぐれ

山裾の一人暮らしや虫の声

帰省子の何処へも行かず昼寝せり

敬老の日やいささかの金貰う

ゴムの木にからみ朝顔ほしいまま

二人とは好きな言葉や百日紅

窓の外虫の声聞き盆の月

難聴につれなく更ける虫の声

古里は何処よりも好き盆踊り

ぽたぽたと残暑落ち来る瓜拾う

百日紅公衆電話長話

ひまわりの頭垂れたる迷路かな

月を待つ小さなつぼみ女王花

台風のそれたる雨の蜜柑山

飛行雲真っ直ぐ延びて天高し

秋の蚊の気はいなく来て刺しにけり


八月席題互選
成績表
夕立・朝顔

五点 夕立に土の匂いと陽の匂い

志津

四点 朝顔や静けさを解く磯の音

照子

大夕立放牧の牛消
えにけり

雅代

三点 朝顔や一度限りの人生を

神童

教材の子の朝顔のついに咲き



二点 夕立の万物ここに蘇る

真佐江

夕立や一期一会の
軒を借り

さつき

夕立や霊送りに寺の庭

ミユキ


九月の寸評   石帆選

帰り来て独りの秋の灯を点す

宇都宮美奈子

秋の夜の孤独がよく出ている
淋しいと言わないのがよい。

虫の声聞き分けているしまい風呂

菊地芳子

農家の主婦の生活がしのばれる

新涼や潮満ち入り江の鰡の飛ぶ

西村さつき

ボラの飛ぶは新涼そのもの

山裾の一人暮らしや虫の声

宇都宮政子

平凡に詠んでいい句になった

夏帽子老いて今日より私一人

稲垣千代子

なぜ今日より私一人なのかそこがわからない

秋の蚊の気配なく来て刺しにけり
久保田ケイ子

あきのかは刺されると特に痛い

二の腕の冷える冷房美術館

宇都宮喜代

二の腕の冷えるとは美術館らしい感覚

新涼の風を背に受け畑の夫
那須陽子

大根播きであろう。新涼が生きる


気になった句
神童選

たてし竹外れてをりぬ名残茄子

次のようにしては

添えし竹外れてを
りぬ秋の茄子

爪立ててむぐヤ秋果の匂い立つ
秋果を具体的なものに
みかん、なしなどに

氏神は朝より灯る祭りの灯

俳句では祭りの季語は夏で、
京都の賀茂神社の祭りのことです。秋祭り、夏祭りにしては

ふる雨にこぼるる彩や百日紅

彩はいろとは読めません。
文字を自己流の読みとして使わないように


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