平成13年8月例会 三瓶俳句会

 
水割りのレモン薄目に暑気払ひ

苦潮や渚に寄する破れ網

遠近の灯りそめたる夜鈎船

羅の若き僧達きびきびと

足もとへ土用大潮迫りくる

海原へ南つきささる梅雨末期

ゴキブリの交みしままに打ち殺す

母の真似出来ざりしまま盆が来る

千し藷に米ぱらぱらと終戦忌

余生とはかくも厳しや暑に耐えて

女房と語る苦楽も走馬灯

生かされて生きる喜び終戦日

藁屋根の橋の涼しさ渓深し

山無精のまれの旅終へ籐椅子に

渓流の飛沫に忘れゆく暑さ

誕生日碩洗ひて迎へけり

竹撓め秀先にくくる天の川

夕暮れの余韻の空に月涼し

八十の手振り足振り踊りけり

母を呼ぶ帰省子の声たくましき

虹消えてより虹の色くっきりと

豪快なはなしのあとの昼寝かな

根くらベしていて草に負けてをり

藷南瓜育つ記憶にいくさの日

銀婚を迎えし二人冷奴

祖母呼ベぱトマト畑より顔の出て

園庭も山も我が家も蝉時雨

何の罪ありてこの世の暑さかな

行水を見下ろしてゐる鴉かな

一枚のタオルが包む裸かな

青春や全力で鳴く油蝉

結界の静寂を破る蝉の声

神木に縋りて蝉の美声なる

蝉しぐれ落つる谷間の水しぶき

梅雨明けて窓開け放つ青き海

液弛ゆむ雲浮き沈む夏の海

朝からの蝉の一樹となっており

望郷の母の手料理山気の涼

風待ちの白粉左右に赤黄色

山深き桶ごの渕や滝の波

滝しぶく古き岩石こけ青し

いつまでも眺めていたい滝の音

鬼城句を繰り返し読む大暑かな

訪いもせず訪はれもせずに夏に寵る

一封を差し上げたしと暑気便り

皆同じ言葉とぴ出る猛暑かな

隣人と月下美人の開くまで

ほととぎす月夜の唄のすき通る

八月の六日の空を想像す

涼しさのこぱれる鈴を振って買う

朝顔に大きな声で挨拶す

炎天に沖縄想う終戦日

大輪の花火だけしか見えぬ窓

踊りの輪あちこち見知りの顔が見え

写経筆置けぱ一気に蝉しぐれ

住み古りし生活の匂ふ伊予簾

曾孫にも語りつぎたし素麦飯

油蝉声張り上げる大暑かな

陽の落ちし浜風嬉し夕涼み

九十を目の一朋に夏すごしかね

夏空え童顔球児の勝利の手

夕立にシャツターチャンスを逃しけり

体内を胃カメラ浴ぐ暑さかな

天狗岳峰雲つかみ空へ消ゆ

葉の裏に蝉蝉蝉のとまりおり

かずら橋酔ひて坐るや星月夜

塩もみの茶漬けの茄子に生き返る

サイレンのひびきかき消す蝉しぐれ

触妹の糸金糸銀糸に夕日かな

蝉の声聞くも疎まし更年期

炎天に石の魚の口開けて

夕映えに湧き出るごとく蜻蛉とぶ

朝椀ぎの茄子きくきくと塩揉みに

大声の悲鳴は蜂にさされしか

摘果する夏鳶の杜近く

山霧湧いて軒打つ音の番外寺

一杯の水を腸る朱夏の町

子に孫に曾孫百人生御魂

降るようにいつもの道や蝉時雨

日曜日大暑づかれか口噤む

冷厨の強くききゐて夫と居る

この炎天昼更けしともいふべきか

雲の峰九州へ船近づきぬ

羅は先代のものといひ僧読経

品書きの和紙に老舗のところてん

やわらかな雨でで虫の角たかし

夏風邪のいえて厨にカレーの香

一山を消りて走りし夏の霧

炎天の街をピアスがゆれてゆく

背山なる廃寺の庭に夜蝉鳴く

木耳やぬれて大きな耳立てり

祭笛遠くなり綿菓子ちぢむ

細目してやぎの仕草のみな涼し

真四角に生きて二人で冷奴

水打つて石に匂いの生まれけり

無理矢理に土用鰻を食ほさるる

平成13年7月題詠互遅成績表
   梅雨夏蝶
 
五点

独り身の病むは哀れや梅雨寒し
石帆

おいと呼ぶ一声ほしい夏の蝶   照子

蝶々の今日の高さよ梅雨晴るる  真津子

四点

忘れぐせ行き戻りして夏の蝶   正子

泥はねて児らのよろこぶ梅雨の道 恵美

三点

空梅雨の水の相談はかどらぬ   石帆

荒梅雨の川音高く走り行く    正子

梅雨寒や今朝の味噌汁一人膳   正子

レモン酢を効かせて梅雨の膳のものケイ子

また一つ計報の知らせ梅雨深し  ケイ子

梅雨晴れや一際高き鳶の笛    さつき

梅雨に飽き幾たび遠くの山をみる ミツヱ

熟睡して梅雨の目覚めの足の冷え ミユキ

ニ点

なまこ壁への字への字の梅雨しずく照子

木洩れ日をはじき高舞う夏の蝶  さつき

声を張り上げて園児の梅雨晴れ間 芳子

むんむんと草の香立ちて梅雨晴るる志津

一点

許されし思ひに梅雨の明けにけり 石帆

梅雨寵もり一合五勺の飯を炊く  照子

上げ潮の匂ふ橋上梅雨の月    さつき

何も無き庭に一閃夏の蝶     ミツヱ

何処此処となく百合活けて梅雨に飽く
ミツヱ
丁寧に羽根をたたみて夏の蝶   芳子

一言も負けぬ妻の眼梅雨の雷   芳子

梅雨晴の風に家中開け放つ    志津

白々と磯をさらして梅雨の果て  光春

夏蝶や石鎚めぎす老い盛り    光春

夏蝶や花に止まらずもつれ合う  武夫

梅雨末期どしやぶり雨の来る予感 雪

思いとは少し離れて夏の蝶    道好

御詠歌の寺の浄土の梅雨にをり  美直子

わさび田を渡って行けり夏の蝶    〃

弘法の像の放ちし大揚羽     伝

句会のすんぴよう      神童
 
ゴキブリのふみしままに打ち殺す 

恵美

打ち殺すは惨酷 打たれけりとすれば哀れさがでます。
母を呼ぶ帰省子の声にたくましさ 

マツコ


久しぶりの子の声に母は成長ぶりに感じている

豪快なはなしのあとの昼寝かな  

芳子

昼寝もおそらく高いびきですね。

銀婚を迎えし二人冷奴      

真由美

何ともいいよがなし  佳作
 
初めて皆さんの中から添削さしてもらい大変な事だと思いました。これからも宜しく。
 
わかりやすい言葉にしましょう。
 
母の真似出来ざりしまま盆かざり

出来ないままに

盆かざり母の真似さへ出来ぬまま
 
蝉の声聞くも疎まし更年期
   
このような句はとても新俳句です。

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