平成13年7月会員作品
帆をおろし戻る釣り舟浜薄暑
しづ子
もてなしは冷やし西瓜と山の風
芳子
夏来る奉仕作業の鎌を買う
定男
帷子(かたびら)の明治の匂い残しをり
照子
梅雨晴れ間沖より拝す那智卍
光春
あめんぼの手足をのばすときのあり
真津子
朽ちかけし見張り番屋に月見草
石帆
いつまでも明るき夏至の庭にいる
明子
炎昼やスマートに来る巡視船
恵美
御詠歌の無心の鈴に暑気忘る
美直子
二の腕の太さ気にして夏来る
神童
水無月や我年重ね喜重となる
シナコ
手作りのシャワーで遊ぶ水着の子
真由美
あれそれで分かる夫婦の冷やし麺
武夫
夏座敷隣の部屋の時計鳴る
修
大人びて溝浚する茶髪の子
正子
五月晴れ博物館のほの暗し
さつき
正論を吐きたくうねる青嵐
雪
何処へ行く急ぎ足なる山の蟹
真佐恵
老いの手にほんのり匂ふ新茶かな
千代子
梅雨しとど流れる水や溝走り
政子
紫陽花の毬の浮き出る闇の庭
陽子
目薬が目より溢れて梅雨深し
幸子
太陽も月も撮せる青田かな
雅代
せがまれる昔話で昼寝かな
千栄子
車椅子押す緑陰の老夫婦
ミツエ
那智の滝しぶきに揺れている新樹
ケイ子
むだ口を叩きて忘る白日傘
道子
点滴を持て余しつつ梅雨に入る
秋窓
でで虫や友の秘めごとまだとけず
志津
夏の蝶緑の谷間ひらひらと
ノリ子
羽衣の舞うて蛍の火の舞うて
妙
どっしりとピアノが座る夏座敷
ミユキ
早乙女の懐古に負はれ吾を見る
傳
戻る