平成13年4月
会員作品


四月例会
三瓶俳句会
(神童選)

孫の事
友達に聞く
バレンタイン

大塚チヤ子

日の本の
ひかりとなりし
初つばめ

菊地妙子

種芋の芽
立ち促す
今朝の雨

宮本しづ子

抜けばなく
芽花懐し
道祖神

上甲照子

春昼に
声よくころぶ
鳶の愛

浅川光春

母の手を
離れ入園
児となりぬ

木村真佐惠

郵便夫
土筆摘みゐる
峽部落

菊地芳子

一と雨
の恵み仄かな
若葉風

井上定男

行きずりの
思いがけない
初音かな

三好雪

幾万の
蕾ひしめく
櫻かな

宇都宮均

しばらくは
無心となりて
花の下

西村さつき

この花に
出合ひ別れの
今もなほ

宮本ミユキ

のどけしや
ほとけの切手
さかさまに

神童

一礼に
交わす一礼
花の寺

山本志津

訪へば
すぐ喋り始む
籠の鳥

竹崎恵美

たっぷりと
栄養ふくむ
新芽もゆ

二宮武夫

白き花
楚楚と香わし
すももかな

稲垣千代子

大地震に
力満ちたる
初桜

宇都宮傳

亀鳴くや
耳も片耳
忘れぐせ

三好正子

木蓮の雨
粒はじく
梢かな

浅川道子

春の陽の
暖味に櫻
ふくらみぬ

宇都宮政子

大椿
歴史を語る
庭守る

久保田ケイ子

廚窓
初音に朝の
始まりし

三好千栄子

春潮の
波が波おす
瀬戸の海

清家幸子

名残り雪
兄安らかに
講参り

山本ノリ子

潮風に
ほどよくかわく
白魚干

山本真津子

海女の桶
焼印くっきり
磯開き

富吉窓秋

泣き止む子
遍路の鈴の
近ずけば

井上明子

ひねもすを
畑打つ都の
暮し捨て

松田真佐惠

雛納む
男雛女雛の
向い合い

河野ミツエ

食足りて
母の作りし
菜飯かな

井上雅代

八十路婆
野球に首筋
青く立て

宇都宮喜代

さし交す
枝の綾なす
桃の花

那須陽子

書に倦みて
フリージャの花
嗅いでみる

井上修


四月の作品寸評
石帆 盲評

さっそうと
バーゲンセールの冬帽子

大塚チヤ子   

バーゲンで買ったとは誰も知らない。

種芋の
芽立ち促す
今朝の雨     
宮本しづ子   

芋の発芽の季節である。句材清新でよい。
 
母の手を
離れ入園
児となりぬ         

木村真由美   

母の手を離れて園児に変身する子供の決心の瞬間。

合せ酢に
海の匂ひの
新若布    

菊地芳子

酢に浸されて新若布の香を放つ観察が鋭い。

行きずりの
思いがけない
初音かな

三好雪     

思いがけない時にきく初音はいつまでも忘れまい。

しばらくは
無心となりて
花の下

西村さつき   

花見の境地正にその通り。

ぶらんこを
降りて地球を
歩きだす

神童     

 小さくてもぶらんこは宇宙飛行なのだ。

訪へば
すぐ喋り始む
籠の鳥

竹崎恵美   

 カナリヤか十姉妹か。籠の鳥も囀りの季節である。

振り返り
校庭を去る
卒業生

二宮武夫   

 胸中に万感迫るものがあろう。よくわかる。

庭先の
つくし夕餉の
膳にあり

松田真佐惠 

庭先のつくしなので殊更に親近感がある。

花の座に
居て遠方の
花を見る

河野ミツエ  

誰でも頭上の花でなくて遠方の花を見る。

花菜畑
千里の果に
夕日落つ

那須陽子      

「千里の果」の落日に深い感じがこもる。


四月句会好句
井上 修選 
    
海からの
風に唄あり
磯遊び             

☆風に唄を感じる作者の感性がよいと思います。   

母の手を
離れ入園児となりぬ             

☆表現が素直のなかに「なりぬ」でまとめてます。

苗代の
水より一寸
苗に風                

☆苗代とその上をわたる風。すこし出た苗を据えた写生句。

ぶらんこを降りて地球を歩きだす        
☆表現がおもしろいと思います。
「地球が歩きだす」が現代句。

てのつぼに受けて味見の木の芽和え

☆「てのつぼ」というのは「手の壷」と漢字の方がわかりやすいのでは。「味見が木の芽和え」でよいと思います。

しだれ桜少し離れて見てをりぬ 

☆ものごとはその場より離れて見た方が良く分ります。

海女の桶焼印くっきり磯開き

☆桶の焼き印が生きている。

目鼻なく紙のひひなの立つばかり 

☆「立つばかり」がほのぼのとしたものがあります。

花の座に居て遠方の花を見る

☆似た句があります。

花衣細身の若さにほわせて

☆「細身の」「細身に」作者のねらいが の・に では変わって来ます。


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