詩というハンケチ   伊三 作 
 
 
誰にもらったこのハンケチは
誰にあげようこのハンケチを
 
蒼い万年筆のインキの滲んだ
洗っても乾かしても消えない滲み
赤ずんだり漂白された青にも見える
古ぼけたハンケチ
逢い引きのときにも
別れ話をしたときにさえ
つっこんだポケットで触れていた
生まれた幼子をあやすのに
イナイイナイバーのアカンベー
娘の結婚式で涙も拭いた
使い捨て時代の
喜怒哀楽と春夏秋冬
青いインキの色あせた
 
父も死んで母も逝き
誰にわたそうこのハンケチを