《 一 線 》   伊三 

一(一線に迷い込んだ少女)

うっとうしい梅雨になる前のまだ晴れた朝
心に決めていたとはいえ
カッターナイフを持つ手はふるえた
うらぎりものにバトルロワイヤルを始めるのだ
くさった学校はすてるほかない
そうつぶやきながら友達に
カッターナイフをふりまわしていた
赤い血がブラウスに返ってきて
そうして失神した
くさった物を除いたと思ったのに
チクチクと心が痛くてたまらない

二(飛んでしまった青年)

ビルの屋上(8階)
芝生とため池の向こうに神社の杜が見える
人は飛べるだろうか
池までは15メートルはない
バトルロワイヤル終章
走って飛んで鳥になる
眩しい光が目を射して
腕を拡げて暫くは

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ドストエフスキー「罪と罰」を思いながら