平成13年12月分会員作品

 
今月の内容
平成十三年十二月例会  伝選  
十二月 寸評 石帆選
神童君の勉強会
 
 平成十三年十二月例会  伝選
夕潮の静かに満つる琵琶の花
万雷の山茶花一つほぐりけり
切干に日矢射し縮む匂いたつ
娘をむかえ弾む小春の厨事
たけくらべ日毎伸ぶ子や竹の春
活られて白菜らしくなりにけり
野仏にみかん供えるわが齢
百選の水に百の樹十二月
威勢よく来てもぎたての柿くれし
しめやかにつづく雨音秋深み
病院の窓より木の葉舞ふを見る
湯豆腐やみな肩書きのとれし顔
大根を洗う老婆の母に似て
角とれし洗濯板や帰り花
枝打ちの弟子残して山眠る
登園の親子の上に銀杏散る
太き柿両手に受けて戴きぬ
新宮のご誕生明るき十二月
七五三祖母も写真に加わりぬ
焚火の輪ぼっちり袖に穴をあけ
枯葉踏む熊野古道は大股で
子を待てば木の実しきりに降るばかり
しみじみと人の優しさ秋の声
萩寺と呼ばれし萩の帰り花
肩にあたる冬日は母の手のごとし
裏庭に妻の居る音冬ぬくし
しみとほる光と雲や冬近し
すっぽりと白髪を隠す冬帽子
釣仲間蜜柑運びの手伝いに
枯尾花なびきて光うすれけり
行く秋や国歌流るる慰霊祭
風となるものから散って行く木の葉
里の灯の見えぬ夜霧の峠越す
白菜を真半分に割りて干す


十二月 寸評 石帆選
作 品 作 者 寸 評
灯の入りて華やぎ初めし大聖樹  三好雪  見上げるツリーにも灯が点いてこそクリスマスとなる。
松茸を焼く火加減でありにけり  竹崎恵美  貴重な松茸だから火加減も油断出来ない。
活られて白菜らしくなりにけり 菊地芳子 よく見る畑の風景。
威勢よく来てもぎたての柿くれし 宇都宮美奈子 威勢よくが柿の新鮮味が見える。
我病みて秋の夜長に亡き夫想ふ  岡本シゲコ  自分の近況を正直に句にして夜長の思いが出た。
湯豆腐やみな肩書きのとれし顔  神童  忘年会であらうか。肩書きがとれると人は柔和になる。
過疎部落親も唄ひて亥の子つく  山本真津子  親も唄ひてで亥の子つきの風景が見える。
枝打ちの弟子残して山眠る  宇都宮喜代  桧か杉の株であろう。弟子残してはよい見つけ所
孫子住む京は遠しや鰯  松田真佐恵  鰯雲で京は遠しやの一語に切実感がこもる。
聞き流すことの轍して蜜柑剥く  河野ミツエ  話の内容は深刻らしい。私もきかないことのする。
すっぽりと白髪を隠す冬帽子  二宮武夫  作者は白髪をかくして若返ったつもりでおる。


神童君の勉強会

 ※気のついたことなど
・{琵琶}(楽器)−枇杷(果物)
・竹の春−(季語になく)竹の秋は春の季語
・戴く−頂く
 
・仮名遣いについて
  現代仮名遣いか、旧仮名遣いに統一しましょう。
  混用が見られます。 会員さんへ
  国語辞典を気軽に使い慣れて下さい。
 
・ルビはつけないように。読む人に任せたい。
・つくりごとも−結構だと思う。
  孫子住む京は遠しや鰯雲
例  孫子住む都は遠し鰯雲−これでいかが。