平成13年2月分 会員作品

今月の内容
2月定例会(伝選)
2月作品寸評(石帆選)
2月句会(修選)※気になった句
ミッチさんの今回のお気に入り

 

2月定例会(伝選)

作 品 作 者
すくすくと寒竹の子や春隣 宮本しづ子
つきつきし姑の手鞄の果てにけり 井上明子
添い寝して一と夜の温み捨懐炉 上甲照子
石切りの山を残して山眠る 菊池芳子
大寒やタンスの中へペアリング 出井道好
雪しんしん屋根より上は黒い雪 竹崎恵美
祖母と孫話ちぐはぐ日向ぼこ 山本志津
余所行きの言葉を使ひ冬の町 井上定男
大空にのびる枯木の力かな 西村さつき
大師講唱える声や外は雪 二宮武夫
日向ぼこしてゐて眠くなりにけり 宇都宮石帆
廚にも男の日あり鰤さばく 浅川光春
風花の気まぐれに舞ふ一と日かな 三好雪
海鼠切って海の暗さの手に残る 宇都宮伝
膣温のまだ残り居し寒卵 松田真佐惠
面とれば幼子なりし里神楽 稲垣千代子
ちらほらと梅咲き初る明るさよ 三好正子
露天湯の身に寒月をまとひたり 浅川道子
春うらら居眠りしてゐる美容院 三好千栄子
先生を的に園児の雪合戦 木村真由美
わらぐろにカラスの群れの乱れとぶ 山本ノリ子
笹鳴きの人怖ぢもせず果樹畑 久保田ケイ子
早春や半島巡り灯台へ 井上雅代
漬石をごとりと戻す寒の闇 河野ミツエ
消えやらぬ岡の雪道梅の花 宇都宮政子
水仙の海へなだれる急斜面 清家幸子
梅の花ふと立ち止り深呼吸 山本真津子
干し網の如く磯菜の乾きをり 宮本ミユキ
早春賊打てば奏でるサヌカイト 菊地妙
せせらぎを聞きつつ峽の春を待つ 那須陽子
歩く子に両手さし出す犬ふぐり 宇都宮喜代
年賀状手書きの二行先に読む 富吉秋窓
戸一枚開けて商ふ吹雪かな 井上修
豆撒きもおっくうとなり鬼と棲む 神童

  2月作品寸評(石帆選)
作 品 作 者 寸 評
潮騒を遠く岬の山椿 宮本しづ子 須崎観音の句とわかる。 佳吟。
金婚の齢大事に豆を撒く 山本志津 結婚五十年。当人には深い感檄がある。おめでとう。
厨にも男の日あり鰤さばく 浅川光春 「厨にも男の日あり」は見事な表現。
腟温のまだ残り居し寒卵 松田真佐惠 「膣温のまだ残り居る」と現在形が良い。
面とれば幼子なりし里神楽 稲垣千代子 「幼子」とは小学生か。よくあること。佳吟
薮の中抽んでて梅咲きにけり。 三好正子 抽んでて」が梅らしくてよい。
先生を的に園児の雪合戦 木村真由美 正にその通り。園児の目標は先生だけ。
鮟鱇のせりの声高指躍る 井上雅代 あんこうは冬の美味。
漬石をごとりと戻す寒の闇 河野ミツエ 生活句。共感を呼ぶ句。
お茶室の一壷に一花寒椿 山本真津子 一壷一花、寒椿と力行音を重ねて響きがよい。
畑焼いてお天道様を煌しけり 菊地妙 この句俳句の限界。これ以上踏み出さないこと。
白梅の香りただよふ日差しかな 那須陽子 日差しが強くなると梅の香りも強くなる。
豆撒きもおっくうとなりし鬼と棲む 神童 この方は若いのに愛媛県に知られた人物。佳吟



2月句会(修選)※気になった句

作 品 気になった点
新居まだ庭整はず梅咲いて  新居のまだ整はず梅咲いて
先生を的に園児の雪合戦  「先生を」「先生は」?
春着の子絵馬をゆらして行きにけり  絵馬がゆらせるかどうか?
                                      


ミッチさんの今回のお気に入り

作 品 作 者
面とれば幼子なりし里神楽 稲垣千代子
生かされて未練ある故日向ぼこ 83歳 つや
じいちゃんの便りは雪の事ばかり 12歳 奈々
歳新た 花待つ日々も 友が逝く みきちゃん
そうじきで恋の悲しみ吸い取って 13歳 奈々子