平成12年11月分

十一月月例会 神童選

作 品 作 者

柿の実の熟れ一片の雲置かず

宮本しづ子

菊活けて指に残りし香の仄と

菊池芳子

浮雲と歩む川辺の小春かな

上甲照子

文化祭短冊前に筆重く

宇都宮澄男

お旅処の神興にふれる異国の子

浅川光春

蜜柑摘み枝のラジオはのど自慢

二宮武夫

蓑虫の風にゆだねし命綱

西村さつき

着飾りし園児と出会う秋祭り

木村真由美

行く雲に心ひかれし花野かな

浅川道子

山茶花の花べんグラスにうかびをり

山本ノリ子

切り株の松脂白し秋の風

井上明子

遠き日を木の実独楽手になつかしむ

久保田ケイ子

窓あけて見れば出てゐる後の月

宇都宮石帆

地震の島逃れし人や秋深む

松田真佐恵

共に愛でし人偲びおり紅の萩

三好雪

人影のまばらな浜の秋の暮れ

宇都宮政子

菊人形菊の気品を身に老女

那須陽子

しし舞いぬ二人の門出文化の日

山本真津子

問いかくる亡夫返事か落葉降る

清家幸子

山の湖によりそっとゐる秋の暮

三好正子

刈田行く列車の速さゆるゆると

井上雅代

土庭のわが家亥の子をつきまくる

宮本ミユキ

運動会真顔の父の力走す

宇都宮伝

貧といふ清きものありなめこ汁

菊池妙

松茸の香りをわける夕御飯

大塚チヤ子

雨上り風に零の揺るる秋

三好千栄子

さりげなく聞いて身にしむ話かな

宇都宮喜代

晴天や肱川あらし秋つげる

稲垣千代子

幾万の露を宿せし葎かな

河野ミツエ

秋の蝶日のきらめきに見失ふ

山本志津

一合の温め酒こそわが薬

富吉秋窓

秋茄子のつやつやとして細りけり

竹崎恵美

落葉ふる真ん中に母置いて撮る

出井道好


十一月作品寸評    石帆選 

作 品 作 者 寸 評

名月や寺の名残りの石燈籠

しづ子

いづれもこの人達には手馴れた作品。
もう一歩踏み込んでほしい。

威し銃谺をかへす峽の空

芳子

浮雲と歩む川辺の小春かな

照子

蜜柑摘み枝のラジオはのど自慢

武夫

日曜日の蜜柑摘み・お天気もよいらしい。

着飾りし園児のと出会う秋祭り

真由美 作者は園長先生。
着飾ってゐても園児はすぐわかる。

慈なき余生の暮し菊活けて

ケイ子

この句「菊活けて」で生きた。

地震の島逃れし人や秋深む

真佐恵

三宅島を詠んだ句「秋深む」に想いがこもる。

菊人形菊の気品を身に老女

陽子

モデルはドラマ「葵」の春日局ででもあろうか。

問いかくる亡夫の返事か落葉降る

幸子

年月経ても妻の胸に亡夫は生きてる。
落葉の音は身にしみる

貧といふ清きものありなめこ汁

清貧に「なめこ汁」がぴったり

さりげなく聞いて身にしむ話かな

喜代

どんな話であろうか。
「身にしむ」季語がとけ込んでいる。

幾万の露を宿せし葎かな

ミツエ

この句秀作。「幾万の露」に感銘。

秋の蝶日のきらめきに見失ふ

志津

どちらも秋らしい写生句 佳作

落葉ふる真ん中に母置いて撮る

神童

 


十一月句会  井上修選

作 品 作 者 寸 評

柿の実の熟れ一片の雲置かず

宮本しづ子

「一片の雲置かず」でビシッと決まってます。

蓑虫の風にゆだねし命綱

西村さつき

細い糸を命綱として捉えた写生に感心します。

天高し時間止まりし昼の月

松田真佐恵

天の高いのを見ていると時間を忘れるという 作者の心境が羨ましいです。

菊人形菊の気品を身の老女

那須陽子

菊には気品を思わせるものがあのます。老ゆく者に気品が欲しいものです。

禅寺の大黒柱秋の暮れ

三好正子

禅寺の大黒柱としたところに落ち着きがあります。

土庭のわが家亥の子のつきまくる

宮本ミユキ

「つきまくる」のことばが生きてます。亥の子は地方によっていろいろあります。

貧といふ清きものありなめこ汁

菊地妙

「清貧の思想」という本がベストセラーになりました。
 こういう生き方にあこがれます。

雨上り風に零の揺るる秋

三好正子

観察の目のするどさに感心させられます。

秋の蝶日のきらめきに見失う

山本志津

するどい句で言うことはありません。 

落葉ふる真ん中に母置いて撮る

神童

真中にお母さんを置いて写真を撮るという作者の心遣いがいいです。


「気になった句」

作 品 作 者 寸 評
菊活けて指に残りし香の仄と(仄か) 芳子

着飾りし園児と出会う秋祭り

真由美 「着飾りし」が文語文ですから「出会ふ」いい句です。
切り株の松脂白し秋の風 明子 なにげないところに着目しています。
秋夕暮れ背にかんじて本を閉ず 政子 閉じは「づ」ほのぼのとしたいい句です。
灯下親し横書きの文字いびつなり 恵美 横文字の読み書きなかなかなじめません。
「いびつなり」と前の言葉にあいません。
真っ黒なピアノの上に曼珠沙華 神童 いい句です。「真っ黒」別のことばはないでしょうか。

 

宇和町フォーラム俳句大会の入選者「三瓶俳句会」

  ☆菊地妙様・宮本ミユキ様・神童

全国俳句大会の入選者

  ◎久保田ケイ子様・神童


投稿欄

弟と数えて分けるミカンかな

日浦小四年生

鍛冶屋ゆうき

保育園はじめてやったじこしょかい

六歳

そうみ

赤とんぼ夕焼け雲についてゆく

重信小四年生

大西さゆみ

ぶんかのひに父さんとおどってつかれたよ

六歳

工藤としこ

みかんつんで明日はきっとあやまろう

十歳

林浩文

むつかしいしゅくだいすんでみかん食べ

十歳

久保田里奈 

身障の父に手を貸す秋の夕

看護学校

菅野文子  

羽生五冠一度は七冠試したね
慎也
ほいくえんのぞいてみるとツリーがあった 椿小一年生 三好陽子
父さんとぼくの寒稽古はじまった 野村小二年生 渡辺博之
看護婦になる意志固し秋深し 帝京第五校 大塚麻美
秋の海東にかがやく星ひとつ 石井小六年生 高田淑子
ふとみると池に寒月うつってる 石井小六年生 西野めぐみ
党内の後かた消えていく菊の花 松山北高 岩崎京
サンタさん子供の夢は高い物 広島 雅美
==神童から雅美さんへ→サンタさんは神童の事ですか?(苦笑)
百姓の顔とは別の皮コート 野村町 大塚江美子