平成12年9月分 |
九月例会 ( 伝選)
作 品 | 作 者 |
曝す書に一圓五十銭といふ定價 | 上甲照子 |
木洩日の石のベンチに斑を描けり | 浅川光春 |
この川は里の要やあきつ群れ | 宮本しづ子 |
夫のゐることの嬉しき良夜かな | 菊池芳子 |
身に覚えなき草虱つけて来ぬ | 宇都宮石帆 |
吾が村は水豊かなり稲の花 | 竹崎恵美 |
花嫁に一村ゆるる稲の花 | 出井道好 |
乾き切る水掛地蔵竹の春 | 山本志津 |
背負われて遺影も踊る輪の中に | 二宮武夫 |
一服の茶菓のもてなし青すだれ | 浅川道子 |
遠来の子等をもてなす船遊び | 西村さつき |
さやさやと人も素直に秋の風 | 三好雪 |
一気なる暑さに耐えるすべもなし | 河野ミツエ |
つくつくし鳴けば気忙しと汝教師 | 松田真佐恵 |
物忘れ悲しむ姉と梨をむく | 三好正子 |
今夜こそと思ひ喜雨の音もなく | 宇都宮政子 |
つやつやと母と乗せ来る茄子の馬 | 井上明子 |
雨乞や飲む一杯の酒うまし | 宇都宮澄男 |
漁師縫ふ網に仄かな秋の海 | 井上定男 |
苦瓜の口あけてゐる夏の果て | 宮本ミユキ |
岬散歩うねりにふれし萩すすき | 山本真津子 |
外燈の途切れてよりの虫の闇 | 久保田ケイ子 |
寝たきりの母に告げたる魂迎え | 井上雅代 |
拗ねる子の手にしっかりと猫じャら | 清家幸子 |
星祭り孫の短冊飾るを待つ | 井上修 |
幾星霜越えて金婚秋高し | 富吉秋窓 |
早堀りの芋むす匂ひ秋感じ | 稲垣千代子 |
桐一葉憂悠をみせて孫が舞う | 紀伊野薫 |
一服を差し上げますと残暑便 | 宇都宮喜代 |
親と子の知恵を出し合う夏休み | 大塚チヤ子 |
よき人によき妻ありぬ新松子 | 菊池妙 |
せせらぎに声途切れがち法師蝉 | 那須陽子 |
夜の秋やかるきいびきを妻かきて | 宇都宮伝 |
太陽の匂うトマトを齧付く | 三好千栄子 |
評 点 | 作 品 | 作 者 |
十点 | 明け暮れを共にし妻の裸老ゆ | 石 帆 |
七点 | 裸子をしかと抱きしや慈女観音 | 雪 |
六点 | 喜雨きたる音して砂の匂ひたつ | 光 春 |
五点 | 逞しくなりし裸の吾子まぶし | ケイ子 |
四点 | 喜雨と言ふ程でもなく止みにけり | 石 帆 |
喜雨過ぎて棚田の青さ深くなり | 雅 代 | |
三点 | 喜雨の来て鴉いよいよ濡羽色 | 伝 |
差し上げし裸子空にかがやけり | 伝 | |
喝采し心に大地喜雨沁みる | 真佐恵 | |
気の逸るときには這うて裸の子 | 妙 | |
挨拶も一語に尽きる喜雨の朝 | 照 子 | |
二点 | 毬のごと逃ぐる裸子追いかける | 真佐恵 |
軒下の猫の椀にも喜雨あふれ | 真佐恵 | |
喜雨連れて赤子生まれて来たりけり | 妙 | |
生まれ来る命の重み裸の子 | 照 子 | |
土埃り匂いて喜雨のいたりけり | ミツエ | |
逃げ回る男勝りの真っ裸 | ミツエ | |
湯上りの裸で向う鏡かな | 正 子 | |
喜雨来たるぬれてもうれし帰り道 | 正 子 | |
その頃の夫若かりし裸かな | 幸 子 | |
写真帖ちんちん出した裸の子 | 武 夫 | |
喜雨一と夜生気みなぎる野菜畑 | さつき | |
裸の子よちよち歩く部屋の中 | 志 津 | |
喜雨ありて農捨てし人空仰ぐ | 恵 美 | |
一点 | 裸の子からゆきふぐり抱きあげる | ミユキ |
裸子のモミヂのような手口に入れ | 千代子 |
九月作品てんさく 毎月ほめるだけの句評を書いて来ましたが、今月は少し手を加へてみました 御参考になれば幸です 石帆 |
作 品 作 者 添削後 曝す書に一圓五十銭といふ定價 照子 曝す書は定価一円五十銭 吹かるればこすもすの花素直なり 光春 吹く風にコスモスの花素直なり この川は里の要やあきつ群れ しづ子 ふるさとをつらぬく川やあきつ群れ 山住ひ家の中まで蜻蛉とぶ 芳子 山住みは家の中まで蜻蛉とぶ 吾が村は水豊かなり稲の花 恵美 豊かなる水に恵まれ稲の花 燕去り家族と別れし思いかな 武夫 燕去り夫婦二人の我が家かな ビアガーデン女の卓や姦しき 道子 ビアガーデン女の卓は姦しき 満天に星をいただく涼しさよ ミツエ 満天に星のきらめく涼しさよ 洗ひ髪かわく涼しさ秋ひそみ 政子 洗ひ髪かわくを待てば夕月夜 岬散歩うねりにふれし萩すすき 真津子 萩すすき分けゆく岬の散歩道 よき人によき妻ありぬ新松子 妙 よき人によき妻あれや新松子
九 月 投 稿
投 句 | 作 者 |
☆シャワー全開夫をとられてなるものか | 松山市 S子 |
☆パスポート持たずに燕去って行った | 松山市(十三歳)阿部章 |
☆校庭が日焼けしている午後一時 | 宇和島市(?)斎藤時子 |
☆二の腕の太さ気にして夏が去る | 松山市 玉木弓子 |
☆好きなだけきれいになれる夢の中 | 伊予市 奥田真由子 |
☆水のめば水が話をしてくれる | 八幡浜市(十歳)山本啓太 |
◎西瓜食べ夢の形に切り取って | 西条市(十九歳)矢野俊子 |
☆くものすをぼうにまいたら糸車 | 川内町(八歳)藤田悠 |
口約束果たさぬままに秋たてり | 木魚仙2 |
襲ふことなき蓑虫は襲はれず | まさみ |
会 員 名 簿
上 甲 照 子 | 井 上 明 子 |
浅 川 光 春 | 宇 都 宮 澄 男 |
宮 本 し づ 子 | 井 上 定 男 |
菊 池 芳 子 | 宮 本 ミ ユ キ |
宇 都 宮 石 帆 | 山 本 真 津 子 |
竹 崎 恵 美 | 久 保 田 ケ イ 子 |
山 本 志 津 | 井 上 雅 代 |
二 宮 武 夫 | 清 家 幸 子 |
浅 川 道 子 | 井 上 修 |
西 村 さ つ き | 富 吉 秋 窓 |
三 好 雪 | 稲 垣 千 代 子 |
河 野 ミ ツ エ | 紀 伊 野 薫 |
松 田 真 佐 恵 | 宇 都 宮 喜 代 |
三 好 正 子 | 大 塚 チ ヤ 子 |
宇 都 宮 政 子 | 菊 池 妙 |
宇 都 宮 伝 | 那 須 陽 子 |
三 好 千 栄 子 |