平成12年8月分

八月例会  神童選
作 品 作 者

一本の綱で結ばれ鵜と鵜匠

菊池芳子

今日ひと日無事に終わりぬビール酌む

西村さつき

冷奴誰を恋てか招き猫 

上甲照子

大皿に盛りて子ら待つ一夜鮨

宮本しづこ

明方の夢の色なる桐の花

富吉秋窓

緑陰の虫の営み静かなる

宇都宮石帆

故も無く嫌はれ追はる蛇あはれ

松田真佐恵

夕涼み桂馬一手に逆転す

二宮武夫

農水踏日ねもす映す合歓の花

那須陽子

心太太平洋を見て啜る

出井道好

乳母車青田の道の果つるまで

山本志津

銀色に農婦の炊きし心太

竹崎恵美

うれしさよ男の子誕生法師蝉

三好正子

望郷のこの香この風稲の花

三好雪

首一つ出て五尺の青芒

浅川光春

旅プラン夫に渡して夏の月

井上雅代

せみしぐれ島に寄せ合ふ海の音

井上定男

孫の声はづんで行くよ夏休み

稲垣千代子

裸の子這うて地球を明るうす

菊池妙

夏野菜並べ夕餉の支度する

大塚チヤ子

まだ杖に頼らず老いの日焼して

久保田ケイ子

牛の鼻並べて神の代田掻く

清家幸子

夏の夜半待ちし雨音窓の外

宇都宮政子

山里の庭の涼しき石の椅子

河野ミツエ

背泳に小供のままの山河あり

宇都宮伝

新盆に友達欠くる三人かな

宇都宮喜代

老鴬や卓は切り株丸太椅子

井上明子

雨も止み我が世を得たり蝉しぐれ

宇都宮澄男

子等の声はづむ公園夏休み

浅川道子

雑草の中に西瓜の二つ三つ

宮本ミユキ

緑陰や陣取りあって家族連れ

三好千栄子


八月例会寸評  石帆選
作 品 作 者 寸 評

手土産に椀ぐ庭畑の茄子胡瓜

芳子

いづれも佳吟。批評省略くり返し読んで見て下さい。

葉ずれにも風の涼しさある水辺

さつき

廃園の静けさに鳴く蝉の声

照子

合歓の葉のねむりて星のふえ初む

しづ子

叱られてばかりいる子の夏休み

真佐恵

たくましい少年の姿が見える。
たのしい夏休みであろう。

夕涼み桂馬一手に逆転す

武夫

縁台の将棋であろう。
昔はよく見た風景であった。

心太太平洋を見て啜る

道好

雄大な一句。桂浜が思われる

佳古りし路地に朝顔紺溢れ

志津

「紺溢れ」がいい。
朝顔も毎年作ると紺が多くなると云ふ。

むくむくと湧いて足早雲の峰

正子

「湧いて足早」で雲の峰らしさの出た一句

望郷のこの香この風稲の花

稲の花の「この香この風」で望郷の念ひしひし。

牛の鼻並べて神の代田掻く

幸子

神撲田の田植風景。「牛の鼻並べて」がよい。

萍の水平かに流れ行く

ミツエ

萍の中を流れるので水の平かさがわかる

昨夜の雨にぬれてのびのびみみづ這ふ

喜代

「昨夜の雨に」の には不要。

艷々と洗ひし髪を星に乾す

ミユキ

「星に乾す」とはロマンチックな表現。

八月投句分
投 句 作 者

百円ですくった金魚みな元気

松山市石井小5年生

二宮良子

たくさんのがっきをつかう夏の雨

松山市石井小3年生

佐々木剛

お月さまおつゆに入れてたべたいな

八幡浜市神谷小2年生

鈴木裕太

学校が小さく見える夏の川

野村町野村小6年生

大塚舞子

台風が雨戸あいてにボクシング

重信町重信小4年生

小松健一

まくらもと人工衛星みたいな蚊

重信町重信小6年生

小松優一

たきつぼににじのあかちゃんみつけたよ

砥部町 5歳

どいしおり

炎帝に降参してる犬の舌 加茂米一
冷奴おぬしも箸をつけられよ 加茂米一