平成12年7月分

七月例会寸評 石帆
作 品 作 者 寸 評
番号を打たれて西瓜太りをり 菊池芳子 四句共に単純にして明快な句。
それでゐて急所を捉えて何れも佳吟。 
水打って蟻に大河をつくりけり 出井道好
髪洗ひゐし最中に客の来て 竹崎恵美
一泊の汗の下着を水洗い 西村さつき
漁夫帰る太平洋の日焼けして 富吉秋窓 「太平洋で」としたい。海の男のたくましさが思はれる。 
しまなみを跨ぐ大橋風薫る 宇都宮澄男 しまなみ海道を詠んで無難な句。
「風薫る」の季語が適切。初入会 
忘れ居し人夢に現れ明易し  松田真佐恵 忘れゐし人は友達か恋人か。明易しの季語が生きる。 
口紅を色濃く引いて梅雨に飽く 河野ミツエ 連日の雨に退屈した中年女の倦怠感がよくわかる。 
田植して棚田の水の匂ひけり 清家幸子  田植直後の田んぼの水の匂いを知っている人は鋭い。 
大の字がくの字となりて孫昼寝 井上雅代 大の字がくの字となるとは面白い形容。但し「孫」は使はない方がよい。句が甘くなる。 
でで虫に似て吾も又殻の中 三好 雪 全く抽象的な句でどうかなと考へられるがよいでせう。
ほととぎす暁暗深き峡の里 那須陽子  「暁暗深き」とはうまい表現。和泉の状景を描いて的確。 

七月題詠互選成績表(汗・夏座敷)

評 点 作 品 作 者

七点

綿を脱ぐ剣女の汗と白き歯と

光春

六点

ヘルパーの滴る汗の笑顔かな  

道好

お見合ひの二人きりなる夏座敷  

恵美

四点

家中の襖外して夏座敷     

喜代

三点

タオルもて禿頭の汗押し拭ふ   

石帆

夏座敷新聞めくる風の音    

真佐恵

仏飯の乾ききつたる夏座敷     

芳子

尺八のひとつ置きあり夏座敷     

山風に蝶吹かれ入る夏座敷     

ミユキ

二点

玉の汗ぬぐいて仕事一区切り    

ミツエ

茶殻まき母のそうじの夏座敷     

雅代

山門の風の汗の身を解きほぐし    

一点

汗ばむ手最後の一球ホームラン   

志津

自動ドアぱっと汗引くショッピング   

照子

汗に蒸せ農薬撒布も一苦労     

澄男

汗ひかる荷駄に擦れたる牛の鞍   

夏座敷寝息柔らか兄弟      

チヤ子

消毒のいで立ちのみで汗をかく    

武夫

浜風の通りぬけたる夏座敷     

正子

汗ばんで着きし峠の一休み      

政子