PTAの歴史 〜 PTAがどうして生まれたのか
PTAは、19世紀末アメリカで起きた児童福祉のための母親運動が始まりと言われています。市や町の環境浄化活動や教育条件の整備向上を進める団体の集まりである〈父母と教師の全国協議会National Congress of  Parents and Teachers〉(1924結成)が最も有名です。
 日本でも、第2次大戦中までは父兄会、後援会、保護者会などが存在しましたが、これらは主に学校の財政面・物質面に奉仕する団体でした。戦後になり、日本のPTAは米国教育使節団報告書から始まりました。
アメリカは、日本社会の徹底した民主化を図るため、戦後いち早く教育専門家を派遣し、その基盤となって社会を支えてきた教育について抜本的な改革を進めようとしました。
使節団は、昭和21年(1946年)3月に来日し、早くも4月7日に報告書を発表していますが、この中で、PTAに関し次のようにふれています。
@「日本の教育の目的及び内容」の項で、
「教育といふことは、言ふまでもなく学校のみに限られたことではない。家庭、隣組その他の社会的機構は、教育において果たすべき夫々の役割を持っている。新しい日本の教育は、有意義な知識をうるために、できるだけ多くの資源と方法を開拓するよう努むべきである。」と、教育に果たすべき家庭の役割の重要性をうたっています。また、
A「初等及び中等学校の教育行政」の項で、
「教育委員会の教育長は、児童生徒の福祉増進および教育計画の改善のために、父母と先生の会に激励を与える義務を有する」とし、
B「成人教育」の項では、
「学校はまた、成人教育を振興するための潜在力であり、母胎である。学校に夜間部を設けたり、両親と教師の会の強化、討議や公開討論会のための校舎開放などは、学校が成人教育に提供しうる援助の2、3の例にしかすぎない。」としています。
直接PTAという言葉は使っていないが、PTAの役割の重要性と設置・支援の必要性を示唆しています。
また、昭和22年(1947)4月11日、極東委員会(米、英、ソ、中、仏、オランダ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、フィリピンの11か国からなる連合国の最高決議機関)も、「日本教育制度改革に関する指令」で「実行できるところでは、父母と市民は学校とその他の教育機関の管理に、その発展に、かつその活動に協力せしめられるべきである。」(第17項)とするとともに、
「教育団体、父母と先生の会の結成と頭の切り替えが奨励されなければならぬ。そして、日本人に、民主日本における教育方針の意味深い改革を認識させるために、それらの団体が具体的な教育上の問題を考究することを奨励しなければならない。」(第23項)
とし、PTAが民主主義教育推進のために積極的な役割を果たすことを期待し、勧奨しました。
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)はこうした基本方針を元に、一般成人に対して民主主義の理念を啓蒙することが、新生日本の政治基盤形成上、あるいは占領政策の目的達成上不可欠の要件であるとして重視し、そのための有効な方途としてPTAの設立と普及を奨励する方針を掲げています。
そして教育基本法の公布、6・3・3制の学校教育制度の発足とともに、PTAが誕生しました。
これは前述したアメリカの第1次教育使節団の報告書と翌47年3月この示唆をうけた文部省通達〈父母と先生の会教育民主化の手引〉にのっとって全国の小・中・高の学校単位につくられました。


 日本のPTAは発足当時、次の目的を実現することが期待されました。
1.児童青少年の福祉の増進
2.市民の権利と義務の理解をうながす成人教育の振興
3.民主教育の理解の推進
4.家庭と学校の連携協力
5.父母、教師、一般杜会の協力による児童青少年の健全育成
6.学校教育環境の整備
7.児童青少年の補導、保護、福祉に関する法律の制定
8.公立学校の教育予算の確保
9.地域の社会教育の振興
10.国際親善


こうしてPTAは子どもの幸せを守り、増進する民主的な任意団体として、教育問題の学習、父母と教師の親睦、環境浄化の奉仕活動、教育世論の形成などを推進していくことになりました。
しかし、そのほとんどが従来の後援会や父兄会などの性格をのこしたままであり、くわえて全員自動加入、学校単位の組織、在籍児童・生徒の両親に限る会員制、学校後援会的な性格など、アメリカとちがって地域活動、市民団体的な性格が弱いために、学校の付属機関のような存在になりやすく、実質的に活動が形骸化している形式的行事中心のPTAも少なくありません。
 ちなみに、PTA発祥の地アメリカでは、PTAは学校単位ではなくて地域単位で設置されているので、言ってみれば誰もが加入できるし、あるいは加入しなくても良いわけです。
 この傾向に対して、役員選出の民主化、任意加入制への切替え、地域単位のPTAづくり、成人教育活動の振興に努力するPTA改革の動きも進んできました。とくにPTAの主体である母親会員は、生活環境の浄化、小児麻痒ワクチンの緊急輸入、高校増設の要求、公教育費の私費負担の軽減などに活躍し、広報委員会や成人教育妻員会の活動を通して女性運動の活動家も生まれました。
 今日、主婦のパート労働への進出、受験教育の激化などで、役員・委員のなり手がなく、さらにはPTAのない学校も出てきていますが、校内暴力や非行の増加から〈地域の教育力〉の回復に努力しているPTAも少なくありません。

 
 さて、我々古里小学校PTA広報部はPTAがどうあるべきか、いかに活動すべきかを次項で考えてみましょう。
 PTAの意義 〜 PTAはどうあるべきか、何をすべきか
【PTAの意義と目的】
名称:「Parent(親)-Teacher(教師)-Assciation(会)」の略で、「父母と先生の会」と訳す。
目的:会員である父母と教師が協力して、「子どもの健全な成長をはかる」。

子供たちの幸福な成長をはかるためには、学校と家庭と地域社会とが、それぞれの役割を支え合って果たすことがもっとも大切である。そのためには、父母と教師が連携を深める場をもったり、お互いに学び合うことが必要である。ここにPTAが学習団体であり、成人教育団体と呼ばれる理由がある。

【PTAの活動】
 PATの目的に添う活動として、次のようなものがある。
@親と教師が、学校および家庭における教育について理解を深め、その振興に勤める活動。
 ●子どもの発達・心理や学校教育目標についての学習
 ●授業参観や他の学校行事への参加
A子どもの地域生活の援助や教育環境の改善などの促進活動
 ●子どもの生命を脅かすような環境を無くすための活動
 ●教育環境を充実させるための活動
 ●人権の尊重を子どもとともに実践して、障害児の援護や他人の心の痛みを感じることの出来る情操を養うための活動
 ●地域社会への参加などの活動
BPTA会員として、親同士が自己の向上を図れるような活動
 ●PTAの研修会や講習会の企画、会議の運営方法、広報紙作りの学習など

 
要するに、PTAの目的は、子どもの幸せを願うために、親や教師が学習し、マスコミや世論を動かし、実践活動をすすめていくことにある。

【PTAと学校の違い】
 PTAは、地域の親と教職員で組織・運営する自主的な任意団体。法的な制限はないが、活動のための経費は会費によってまかなわなくてはならない。
 これに対して、学校は、校長を中心として教職員が校務を分担し、教育を推進していくところであり、学校の設置や教職員の資格あるいは教育課程の基準についても、法的に定められた公の教育機関である。

【PTAと学校との連携】
 子どもたちの健全な成長と幸せを願う一念に燃えてPTAが存在しているのだから、当然PTAは学校教育と強い連携をとっていくことが強く望まれる。
 学校教育には、自ずから限界がある。親と教師がお互いに補い合い、子どもたちの健全な成長を図る学校教育活動が、よりよく推進されるように学校に協力していくのがPTAである。

【親と教師の関係】
 PTAは、親と教師のよりよい協力関係によって、活動を進めることが基盤となる。
この望ましい協力関係の原則は、親は教師によって、教師は親によって磨かれ成長しあう相互研磨の関係である。
つまり両者の立場は異なるが、子どもの健全な成長と幸せを願う共通の目的に向かって進む、助け合いの仲・信じあう仲・手を携える仲と言える。
昨今の何か良くないことがあれば教師のせいという風潮は好ましからざるものである。
 教師は学校教育に関しては専門家であり玄人であるが、父母は素人である。そのため、親だけの力や教師だけの力だけでは、子どもに対する望ましい教育は十分できない。「子どもの健全な成長と幸せ」「よりよいPTAづくり」という共通の目標は、親と教師とがそれぞれの立場を十分理解し、助け合ってはじめて実現が可能となる。

【PTAの活動内容】
 PTAは、親と教師が「子どもの健全な成長と幸せ」を共通の願いとして組織されている社会教育団体である。
 活動を進めるに当たっては、非政党的・非宗教的・非営利的でなくてはならない。また、学校の人事や管理に干渉することなどはあってはならない。
 子どもの幸せとは何か。子どもの健全な成長を図る上で今どのような課題があり、それをどう解決していったらよいのか、親と教師とが知恵を出し合って考え活動していく。
 親は家庭教育の責任者として、教師は学校教育の専門家として、それぞれの立場で独自性を発揮しながら、相互に高めあい活動を進めていくのが望ましい。

 PTAは、「児童・生徒の健全な成長は図ることを目的とし、親と教師が協力して学校および家庭における教育に関し理解を深め、その教育の振興に努め、さらに児童・生徒の校外における生活の指導、地域における教育環境の改善・充実を図るための会員相互の学習その他必要な活動を行う」団体である。(昭和43・文部省社会教育審議会報告)

【PTAの地域活動】
 子どもにとって「地域とは」すなわち、「生きることを学ぶ貴重な場」である。
 地域は、子どもが遊ぶところ・人と人の触れ合いを学ぶところ・自然や人間に触れる中で優しさやしなやかな心がはぐくまれ、人生の生き方を一つひとつ身につけて育っていくところである。
 子どもの生活の場は、発達段階に応じて、家庭から学校、近隣社会、周辺社会へと成長につれて拡大していく。
 子どもは、家庭や学校以外の地域社会においても多くのものを学び、吸収し様々な影響を受けて成長していく。それだけに、地域社会という子どもを取り巻く「場」(環境)のもつ意味は大変重要である。
 子どもの学習や生活は、「愛の学校」と言われる家庭で人間としての物の見方を学び、学習のしかたや集団生活のきまりを学校で学び、そして地域の自然および社会から人間関係の機微やその他多くのことを学ぶ。
 子どもの成長と教育を考えるとき、家庭と学校と地域が連携し合ってこそ、子どもはよりよく育つ。そして父母も教師も共に成長し、それぞれが人間としての力を身につけることができる。
 そして家庭・学校・地域を結びつけるキーポイントがまさにPTAである。

【PTAが実践している地域活動】
@資源回収
 この活動を通して地域との交流、教師と父母・子ども及び地域の人たちとの相互理解が深まる。
 しかも重要な収入源であり、特別会計に納められることになっている。

Aバザー
 学校と地域への関心と協力体制を掘り起こす。不要品を集めて、再販することで物のありがたみ、物を大切にするということを実践する。さらには重要な収入源であり、これも特別会計に納められることになっている。

B地区活動
 各地区毎にその地域の特色を生かした活動を考え実践していく。

C交通安全指導
 保護者が毎朝の街頭指導に立つ。これにより長年交通事故が発生していない。

D世代間交流
 公民館などの協力を得て、子どもたちと地域の人たちとの交流活動に協力する。
 餅つき大会、田植え、稲刈り、左義長などがある。

E危険箇所点検、看板設置
 古里地区の危険箇所に看板を設置し、環境部がそれを点検している。
 子どもたちが安全に通学、あるいは活動できるための環境を整備している。
 子どもたちが事故に遭ってからでは遅いのである。

【広報活動の意義】
 PTA活動において一番大切なことは、全会員が会員としての自覚を持ちながら、お互いの共通理解を深め、信頼感を高めていくことである。そのためには、会員の一人ひとりが、「早く、正確に」PTA活動の状況を知っていることが必要である。
 しかし、そうした活動のすべてに参加するということは、実際には非常に難しい。そこで広報活動が重要な役目を果たすことになる。
@情報を知らせる(会員が情報を知る広場である)
Aみんなの意見を取り上げる(みんなが意見を話す広場である)
B会員の意識を高める(学習の場でもある)
だが広報活動も決してそのPTAの活動を超えるものではなく、PTA活動が沈滞していれば、広報活動も沈滞するのはむしろ当然です。そしてPTA活動はその性格上、何も努力しなければ沈滞するのが当然といえます。

【家庭教育の意義】
 子どもにとってもっとも身近な存在であることを親自身が自覚し、一人ひとりが絶えず努力を積み重ね、より聡明な親になることである。今や社会環境は急激な変化にさらされています。そういう時代に即応しながら、あらゆる問題を取りあげて問題解決に取り組み、子どもの良き見本になりたいものである。
 「子どもは親を写した鏡」と言われるが、幾つになっても「努力する姿・一生懸命やる姿」という親の姿勢を子どもに見せ続けていきたいと願う。

【学級・学年活動の意義】
 PTA活動の中でも一番子どもに身近なものが学級・学年活動である。
 授業参観・学級懇談会・学校保健委員会・親子活動、スキー実習など子どもたちのより豊かな成長に直接的にかかわるような活動を実践していくことが重要である。

なお、文責は広報部長 小沢慎一にあります。