掃海艇「すがしま」来港 平成30年6月16日
掃海艇「すがしま」
掃海艇「すがしま」」
平成30年7月15日~16日とやま新港に掃海艇「すがしま」が来港して、一般公開されました。本艦は、すがしま型掃海艇の1番艦であり、ネームシップとなっています。
「すがしま」は、平成7年度計画掃海艇381号艇として、日本鋼管鶴見製作所で1996年5月6日に起工され、1997年8月25日に進水、1999年3月16日に就役し、第2掃海隊群第2掃海隊(横須賀)に編入されています。
すがしま型掃海艇は、自衛隊ペルシャ湾派遣の経験にもとづき、ヨーロッパから輸入した対機雷戦システムを搭載した機雷掃討用の中型掃海艇であり、03中期防・08中期防・13中期防にかけて計12隻が建造されています。
海上自衛隊掃海隊群では、1952年に設立された前身組織の保安庁警備隊時代より、太平洋戦争中に日米双方が日本近海に敷設した機雷の掃海作業というかたちで実任務を遂行してきました。
そして1954年には防衛庁が設立され、その後もそのノウハウを反映した掃海艦艇を国産しており、その実力は世界の主要海軍のなかもトップレベルにあるとされていました。しかし一方で、1990年代に至るまで時代を画するような新装備の導入もドラスチックな組織的変化もなく、地道で着実な整備が指向されていました。
ところが1991年の自衛隊ペルシャ湾派遣での経験が、この状況が変化を余儀なくされます。湾岸戦争中にイラク軍が使用した機雷のなかにはMANTA機雷のような新型のステルス機雷が含まれていて、これに対し、派遣部隊を構成していたはつしま型や、当時新鋭の中深度対応掃海艇であるうわじま型でも、探知・処分は極めて困難であることが判明したのです。また同作戦に参加した欧米諸国軍と比して、艇の安全性や処分作業の自動化・省力化において大きな立ち遅れがあるということが判明したのです。
「すがしま」を艦尾から
「すがしま」を艦尾から
このことから、1992年より海上幕僚監部において、平成6年度計画で建造する掃海艇(06MSC)における対機雷戦システムの研究が着手されました。
研究にあたっては、当時の欧米諸国掃海艇のなかでは最新であったイギリス海軍のサンダウン級機雷掃討艇がモデルとして採択され、1995年3月には2番艇「インバネス」への乗艦研修を含むイギリスでの現地調査が行われています。
これらの研究結果を総合して、06MSCは同級搭載の対機雷戦システムを導入した500トン型掃海艇として要求されたものの、大蔵省との折衝の過程で、予算枠上の問題から06MSCは従来のうわじま型に準じた設計とされ、新型掃海艇は次年度に見送りとなっています。
翌年度、510トン型として改めて要求がなされ、計画通り07MSCとして予算成立しました。

すがしま型掃海艇の船体設計は、おおむねうわじま型のものが踏襲され、使用樹種も下記の通りで同一のものとなています。


・ベイマツ - キール・スケグ、船底縦通材、チャイン材、フレーム、外板・甲板
・ケヤキ - キール摩材
・タモ - 合板

後甲板にはフランス製の無人潜水機PAP-104 Mk.5
後甲板にはフランス製の無人潜水機PAP-104 Mk.5
ただし、従来の掃海艇では掃海具の展張のために広い船尾甲板が要求されていたのに対し、本型ではサンダウン級と同様に掃討重視の艇とされたことからその必要は薄れた一方、居住性の向上や機雷処分具の格納庫を設ける必要があったことから、船首楼はかなり延長されています。これは、原型のサンダウン級を大きく上回る排水量であってはならないという制約によるものでもあったといえます。
船首楼後端の左舷側にはPAP-104 Mk.5機雷処分具2機分の格納庫が設けられており、レールにのせて後方に引き出すことができます。その後方の船尾甲板には、左舷側には機雷処分具の揚降用の掃討用クレーンが、右舷側には普通掃海具の揚降などに用いられる掃海用ダビットが設けられています。
また艦橋からの後方視界向上を意図し、掃海艇では初めて2本並列配置となったが、運用の結果、艦橋左右後方の視界を妨げることから、続くひらしま型(16MSC)では従来通りの1本煙突に戻されています。まあ、ちょっと考えればわかりそうなものなのですが。
すがしま型の推進方式は、従来のディーゼルエンジンによる機械駆動とともに、低速時用の補助推進装置として電動推進方式を併用しています。
これは、特に機雷掃討時には低速で長時間航走する必要があり、また放射雑音およびキャビテーションノイズ低減が求められたためです。
処分艇
処分艇
主機関はうわじま型と同じ6NMU-TA(B)Iが搭載されています。これは輸送艇1号型などに搭載された三菱重工業のSU系列ディーゼル(S6U)を非磁性化して技術研究本部が開発した4サイクル6気筒ディーゼルエンジンであり、同系列の機種ははつしま型後期型(60MSC)より踏襲されています。
また省力化のため、機関制御は全て艦橋からの遠隔操作であり、機械室は無人です。
なお水中放射雑音低減のため、主発電機4基は、各原動機とともに水線より上、船首楼内の第1甲板に配置されています。磁気掃海具が永久磁石式とされたこともあり、掃海発電機は搭載されていません。
機雷掃海時には航路保持が求められるのに対し、機雷掃討時には定点保持(Hoverring Positioning)が求められることから、GPSと連動した自動船位保持装置も本級より新たに導入されています。
機雷掃討の際の運動性能向上、ホーバリング性能向上のため、可変ピッチプロペラ、バウ・スラスター、シリング舵を採用し、これと連動する自動操艦装置の装備などで運用性の向上が図られています。


本型の装備としては、英サンダウン級で搭載された情報処理装置・機雷探知機・機雷処分具の3点セットが導入されています。また係維掃海具としてはうわじま型と同じものが搭載されていますが、感応掃海具の自艇搭載は断念されています。
本型の対機雷戦システムの大きな特徴が、情報処理装置を中核としたシステム構築がなされている点です。
巻き揚げ機
巻き揚げ機
その機種としては、英GECマルコーニ社製情報処理装置(NAUTIS-M; 最終バッチ2隻はNAUTIS-M-1)が採用されています。
これはサンダウン級用に開発されたもので、機雷戦艦艇で求められる対衝撃性(30G)、非磁性などの要求を達成しています。
3台のコンソールからなっており、レーダーや機雷探知機などと連接されて、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えています。

機雷探知機としては、可変深度式のTYPE-2093ソナーが搭載されています。これは上部構造物前端の甲板室内に設置されており、ウィンチによって300メートルの深度まで吊下することができます。機雷探知用としては80キロヘルツ、類別用としては350キロヘルツの周波数を使用しており、最大1,200メートルという長距離探知と0.3度の分解能を達成しています。最大使用速力は12ノットとなっています。

機雷処分具としては、初の海外機として、フランス製のPAP-104 Mk.5をライセンス生産により搭載しています。従来海自掃海艇が搭載してきた国産機が電源ケーブルによる外部給電を使用していたのに対し、電池を内蔵して、ケーブルは光ファイバーのみとすることで、活動可能時間が短縮したかわりに優れた機動性を備えています。英サンダウン級以外にも、仏・蘭・白共同開発のトリパルタイト型機雷掃討艇でも採用された傑作機であり、13か国の海軍に400機以上が納入されています。ベストセラーということですね。
すがしまのプレート
すがしまのプレート
原型となった英サンダウン級は機雷掃海能力を持たない掃討専用艇でしたが、日本近海には機雷掃討に不適な泥質の海底も多いことから、本型では機雷掃海能力も付与されています。
係維掃海具係維機雷に対しては、うわじま型と同じく53式普通掃海具(O型)改6が搭載されています。これは28MSC以来の53式普通掃海具(O型)をもとに、対艇掃海によって中深度域の掃海に対応したものです。
オロペサ型係維掃海具(O型掃海具)は、展開器と呼ばれる水中凧によって掃海索を左右数百メートルに展開するとともに沈降器によって一定深度に沈下させて曳航し、機雷の係維索を引っ掛けて、掃海索の数カ所に装備した切断器によってこれを切断していくものです。感応掃海具排水量でサンダウン級を大きく上回ることができないなどの設計上の制約の問題から、従来の海自掃海艇で採用されてきた国産機は搭載できなかった。このことから、感応掃海具としては、オーストラリアADI社製のDYAD(ダイヤード)を必要に応じて搭載する方式とされています。これは永久磁石式の磁気掃海具と水流を利用した音響発生装置(パイプノイズメーカ, PNM)による、設備電力を必要としない複合掃海具で、艦船の磁気分布を模倣できます。ただし感応掃海具を使用する際には母艦などからDYADを受け取る必要があるため、運用上の制約が大きく、続くひらしま型(16MSC)では自艇搭載が設計上の要求事項とされることになっています。

すがしまの経歴は、次の通りです。
2000年3月13日、掃海部隊の改編により、掃海隊群第3掃海隊(横須賀)に編入。
2004年3月24日、第3掃海隊が廃止となり、横須賀地方隊第41掃海隊に編入。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災に対し、災害派遣のため横須賀から緊急出港する。
2012年3月21日、舞鶴地方隊第44掃海隊に編成替え。
2014年6月20日から6月29日、硫黄島周辺海域で平成26年度実機雷処分訓練に参加。
2016年6月17日から6月23日、硫黄島周辺海域で平成28年度実機雷処分訓練に参加。
2017年2月1日から2月10日、伊勢湾で平成28年度機雷戦訓練に参加。

後甲板にはクレーンが搭載されています 煙突が2本あるのは珍しい
後甲板にはクレーンが搭載されています 煙突が2本あるのは珍しい
係維掃海具用の巻き揚げ機 盾がならんでいますね
係維掃海具用の巻き揚げ機 処分艇
JM61-M 20mm多銃身機銃 サイズ4フロート
JM61-M 20mm多銃身機銃 サイズ4フロート
いわゆる20mmバルカン砲です 信号旗
いわゆる20mmバルカン砲です 信号旗
ブリッジの艦長席 ブリッジ内部の様子
ブリッジの艦長席 ブリッジ内部の様子
掃海隊司令席 レーダー
掃海隊司令席 レーダー
電子海図表示装置 電源制御監視装置
電子海図表示装置 電源制御監視装置
掃海隊司令は一等海佐となります 操舵装置
掃海隊司令は一等海佐となります 操舵装置
海図表示装置には海王丸も映っています 艇長はたいていは三等海佐なのでこの色です
海図表示装置には海王丸も映っています 艇長はたいていは三等海佐なのでこの色です
ブリッジから見た20mm機関砲 ジャイロコンパス
ブリッジから見た20mm機関砲 ジャイロコンパス
司令席には双眼鏡が 今時、伝声管があったとは
司令席には双眼鏡が 今時、伝声管があったとは
館内通路 巻き揚げ機
館内通路 巻き揚げ機
応急制御監視盤 自動操艦装置は定点保持に必要です
応急制御監視盤 自動操艦装置は定点保持に必要です
操艦装置パネル すがしま全景
操艦装置パネル すがしま全景
次は「ひゅうが」 展開機を浮上させるフロート
次は「ひゅうが」 展開機を浮上させるフロート

掃海艇「すがしま」型 性能諸元
排水量 基準:510トン 満載:590トン
長さ 54m 9.4m
深さ 4.5m 喫水 3m
主機械 CODOE方式(最大1,800hp
三菱6NM-TA(B)Iディーゼル (900hp) 2基
電動機 (130 kW/170 hp) 2基
スクリュープロペラ 2軸
速力  14kt 
 乗員  45人 
兵装 JM61-M 20mm多銃身機銃 1門
搭載艇  4.9m型複合作業艇  1隻
ジェミニ・ディンギー処分艇   1隻
C4ISTAR  NAUTIS-M情報処理装置 1式
レーダー NAUTIS-M情報処理装置 1基
 ソナー TYPE-2093 可変深度式 1基
掃海具   PAP-104 Mk.5機雷処分具 2機
53式普通掃海具(O型)改  
DYAD感応掃海具  
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ミサイル艇「うみたか」
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