護衛艦「しらね」来港 平成26年8月3日
「しらね」
「しらね」DDH-143」
平成26年8月2日~4日に伏木港万葉埠頭に護衛艦「しらね」が来港して、体験航海及び艦内が一般公開されました。
護衛艦「しらね」DDH-143は、海上自衛隊のしらね型護衛艦の1番艦で、第3護衛隊群第3護衛隊に編入され、定係港が舞鶴となっています。
2015年3月に後継艦であるいずもが就役するため除籍予定です。
基準排水量は、5200トンと就役時点では護衛艦としては最大でしたが、こんごう型護衛艦が登場したことで、海上自衛隊最大の護衛艦の地位からは降りています。
「しらね」は、昭和50年度計画5200トン型ヘリコプター搭載護衛艦2403号艦として、石川島播磨重工業東京第1工場で1977年2月25日に起工し、1978年9月18日に進水、1980年3月17日に就役した後に護衛艦隊の直轄となり、横須賀に配備されています。
これ以降、「しらね」は当時最大の護衛艦であったことと、旗艦設計のためVIPを接遇できる公室等の設備を備えることから、外国艦艇訪問時のホストシップ、政府関係者の視察受け入れ、観艦式における観閲艦、また各種広報協力など、名実ともに海上自衛隊の顔として活躍してきました。
武装は、73式54口径5インチ単装速射砲2基、GMLS-3 シースパロー8連装発射機1基、74式アスロックSUM8連装発射機1基、高性能20mm機関砲2基、68式3連装短魚雷発射管2基を搭載しています。
このしらね型は、対潜・対空能力は高いのですが、対水上能力は127mm砲2基しかないのでイマイチ弱いのです。
これでハーブーンでも搭載していれば完璧なのですが、この艦はヘリコプター母艦であり、旗艦なので対水上能力は他の汎用艦に任せる設計となっているのでしょう。
前甲板には5インチ砲2基が搭載されています
前甲板には5インチ砲2基が搭載されています
船体・機関については、おおむね、先行するヘリコプター護衛艦であるはるな型(43/45DDH)のものが踏襲されています。
船型もほぼ同様で、遮浪甲板型(平甲板型)の後端をカットした長船首楼型が採用されており、限られた排水量要求をクリアしつつ、船体の後方3分の1を占めるヘリコプター甲板の横幅を確保し、なおかつ旗艦機能を持たせるために必要な艦内容積を増やすため、全長にわたるナックルが設けられている。加えて、指揮統制能力の強化に伴い艦橋構造物は3層から4層に拡大されています。そのため、はるな型に比べてしらね型が基準排水量で500トン上回ることになっています。
煙突がマストと一体化したマック方式の採用も踏襲されたが、はるな型に比べ艦外装備アンテナ・電子機器の数が著しく増加したため、電波干渉を防ぐ目的で本型では2本に増設やされた。また、第1マックは船体中心線上にあるが、第2マックは航空機発着艦時の利便性を考慮し、はるな型とは逆の右舷側にシフトされている。これは主機の煙路がマックのある舷側に配置されているため、これにより、ヘリコプターの格納様式もはるな型の右舷2機・左舷1機から、右舷1機・左舷2機となっている。
フィンスタビライザーの装備様式も異なっており、はるな型では5m²フィン2式であったのに対し、本型では8m²フィン1式で同等の減揺効果を確保している。また、フィンスタビライザーに関して、「くらま」は5m²フィン2式に回帰したとの資料もあるが、これは誤りである。また、はるな型では着水したヘリコプターをクレーンで船積みすることが考慮されていたが、ローターが停止するとHSS-2は転覆することが判明し、着水機を回収する状況そのものの現実味が薄いと判断されたことから、デッキクレーンはより小型の吊り上げ荷重5トンのものに変更された。
「SH-60J」哨戒ヘリコプター
「SH-60J」哨戒ヘリコプター
また、対潜戦のパッシブ戦への移行に対応し、水中放射雑音を低減するため、船体にマスカー、プロペラにプレーリーが装備されたともされている。
主機関については、「ひえい」のものが踏襲されている。主ボイラーは石川島播磨重工業・フォスターホイーラー社製D型2胴水管2基、蒸気性状は圧力60 kgf/cm² (850 psi)、温度480℃、蒸気発生量各130トン/時。主蒸気タービンは石川島播磨重工業のダブルフロー式ロックド・トレーン二段減速 2胴衝動型シリーズ・パラレル型、出力はそれぞれ35,000馬力 (26,000 kW)となっています。
搭載ヘリについては、はるな型と同様、最大で3機の哨戒ヘリコプターを搭載しているが、はるな型が当時HSS-2Aを運用していたのに対し、本型では新型のHSS-2Bへの更新が考慮されていたことが大きな変更点である。HSS-2Bは米海軍のSH-3Hに準じた機体であり、HSS-2Aがセンサとして機上レーダーとディッピングソナーしか持たなかったのに対して、HSS-2Bでは機上レーダーを高性能のAN/APN-182に更新するとともに、AN/ASQ-81磁気探知機(MAD)、AN/ALR-66電子戦支援装置(ESM)、ソノブイ受信機が追加されており、1980年12月に部隊使用承認を受けた。特にソノブイは、対潜戦のパッシブ戦化にあたって非常に重要であったが、その膨大な音響信号を機上で処理するのは困難であり、AN/UYK-20コンピュータを用いるOQA-201ソノブイ信号処理装置(SDPS)が艦上に配置された。また、後にはSH-60J、SH-60Kに順次に移行しています。
しらねは2007年12月14日に、横須賀基地に停泊中に火災事故を起こし、戦闘指揮所(CIC)内の機器を全損するという大変な不祥事を起こしています。2007年12月14日午後10時19分頃、無人のCICより乗組員が発見、初期消火にあたるも鎮火できないでいたのに、しらね・海上自衛隊から横須賀市消防局への通報は行なわれず、火災に気付き不審に思った市民からの通報により、消防局が海自へ問い合わせを行なっています。午後11時35分頃より横須賀市消防局が消火支援にあたり、完全鎮火は翌午前6時19分でした。
これを見ても船舶火災というのは恐ろしいものなのです。日本は船舶火災の怖さはよく経験しているはずなのですが、未だに対策が講じられていないのでしょうか。
火災発生当時、戦闘指揮所が無人であったために初期消火が遅れたことが指摘されています。
さらに内部構造の複雑さも相まって、鎮火までには約8時間を要し、内部のコンピューターや計器類が全損状態となったしまっています。これは消火に海水を使用したことが、電子機器の被害を拡大させたとの報道もあります。火災の他区画への延焼は防がれたが、消火活動による放水でCICの一つ下の区画に冠水被害が発生しています。ううむ、これは泣き泣きですね。
当初はCICのレーダーの液晶ディスプレイが火災の火元とされていましたが、調査の結果海上幕僚監部・事故調査委員会は、CICに無許可で持ち込まれ、艦内の電圧に変圧されていなかった中国製の「保冷温庫」の過熱が出火原因となったと結論づけています
他事案と合わせ、海上幕僚長や艦長などには減給処分が下されています。
さらに2008年12月15日午前、横須賀港内で護衛艦しらねと作業船が接触するという事故が発生しましたが、双方ともにけが人は出なかったのは不幸中の幸いでした。。ううむ、不祥事続きで呪われた艦になってしまったか。お払いしないといけませんね。
前述するように2007年(平成19年)12月の火災事故で同艦は指揮通信系統(CIC)をすべて交換しなければならなくなり、修理には約2年程度、費用は約200億円(最終的に約300億円程度に膨らむとの見方もあった)かかるとの暫定的な見積もりが出たことから、当初、防衛省と海上幕僚監部では、平成20年度末除籍予定のはるな型護衛艦「はるな」を延命させ「しらね」を除籍させる方向で検討していましたが、「はるな」の艦体の老朽化も進んでいたことから、「はるな」の指揮通信系統(CIC)移植による修理のほうが短期かつ安価(約50億程度)になることがわかり、こちらによる移植修理が行われています。

「ちくま」とタグボートが接舷作業中 マスト上部にはOPS-28、下部にはOPS-12
5インチ砲の射程は23000m程度です マスト上部にはOPS-28、下部にはOPS-12
74式アスロックSUM8連装発射機 73式54口径5インチ単装速射砲
74式アスロックSUM8連装発射機 73式54口径5インチ単装速射砲
SH-60J 73式54口径5インチ単装速射砲
SH-60J 73式54口径5インチ単装速射砲
後方から見たSH-60Jと格納庫 SH-60J
後方から見たSH-60Jと格納庫 SH-60J
ファランクス20mm機関砲(CIWS) 格納庫
ファランクス20mm機関砲(CIWS) 格納庫
ハープーンSSM4連装発射筒 68式324mm3連装短魚雷発射管
74式アスロックSUM8連装発射機 68式324mm3連装短魚雷発射管
OPS-12 3次元対空用と72式射撃指揮装置1型 格納庫
OPS-12 3次元対空用と72式射撃指揮装置1型 格納庫
後部ヘリコプター甲板とSH-60J 「しらね」全景
後部ヘリコプター甲板とSH-60J 「しらね」全景

護衛艦「しらね」型 性能諸元
排水量 基準:5200トン  満載:6800トン
全長 159m 全幅 17.5m
深さ 11.0m 吃水 5.3m
機関 石川島播磨FWD2 2胴水管型缶 2缶
石川島播磨2胴衝動型蒸気タービン
(35,000ps)
2基
スクリュープロペラ 2軸
機関出力 70,000PS
速力 32ノット以上
定員 350名
武装 73式54口径5インチ単装速射砲 2基
高性能20mm機関砲(CIWS) 2基
74式アスロックSUM8連装発射機 1基
GMLS-3 シースパロー 1基
68式324mm3連装短魚雷発射管 2基
艦載機 HSS-2A/B / SH-60J/SH-60K
哨戒ヘリコプター
3機
C4I AN/USC-42
MOFシステム(NORA-1, NORQ-1 SATCOM)
海軍戦術情報システム
(OYQ-6-2 CDS+リンク 11/14)
OYQ-101 ASWDS
TDS-2 目標指示装置
72式射撃指揮装置1型A (GFCS) 1基
81式射撃指揮装置2型12 2基
レーダー OPS-12 3次元対空レーダー 1基
OPS-28 対水上レーダー 1基
OPS-22 航海レーダー 1基
ソナー OQS-101艦首ソナー 1基
SQS-35(J) 可変深度ソナー 1基
電子戦 NOLQ-1 ESM/ECM
OLR-9B ミサイル警報装置
対抗手段 Mk.137 6連装デコイ発射機 4基
AN/SLQ-25 曳航式音響デコイ
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