デジカメ入門  画像形式について
デジタル一眼レフやハイエンドコンパクトデジカメを使っているあなたのカメラはJPEG画像の他にRAW画像でも撮影ができるかも知れません。
しかしこのRAW画像って言うのは何なのでしょうか。このRAW画像とJPEG画像の違いについて調べてみましょう。
難しい被写体を撮影しましょうJPEG画像は、フルカラーで高画質なのにサイズが小さいのです
1.JPEG画像はどんなデジカメでも撮影できます
JPEG画像で撮影した海王丸
JPEG画像で撮影した海王丸
1/500s F16 f=55.00mm ISO400
あなたの持っているデジカメがどんな機種であったとしても、必ずJPEG画像で撮影できるはずです。
JPEG(ジェイペグ)とは、コンピュータなどで扱われる静止画像のデジタルデータを圧縮する方式のひとつです。
JPEGは、非可逆圧縮の画像フォーマットなので、本来の画像を圧縮してファイルサイズを小さくすることができますが、元の画像に戻すことはできません。ただし、ファイルサイズが小さい割には画質の低下が小さいので、デジカメで用いる画像フォーマットとしては最適であることがわかります。
デジカメの中では撮影した画像を画像エンジンによって圧縮し、JPEG画像にしてメディアに格納しています。この際に圧縮率を上げれば、ファイルサイズが小さくなり、撮影枚数を増やすことができます。ただし画質はどうしても低下するので、高画質で撮影したい場合は、圧縮率を小さく設定して、画質の低下を少なくしますが、撮影枚数は少なくなります。
インターネット上でも写真を表示する場合は、このJPEG画像を使用するのが一般的ですので、何かと都合が良いのです。パソコン上でフルカラー静止画像を利用する場合の汎用フォーマットとしては、JPEGの他にPNG、BMP、TIFFなどがありますが、PNGは色数が多い場合は圧縮率が小さく、どうしてもファイルサイズが大きくなる傾向があって、デジカメ用画像フォーマットには向いていませんし、BMPやTIFFは非圧縮、もしくは可逆圧縮なので、やはりファイルサイズが大きくなります。
いろいろ考えるとやはりデジカメの撮影ではJPEG形式のフォーマットがもっとも適していることがわかります。
しかしJPEG形式の画像フォーマットにもいくつかの問題点があります。

2.JPEG画像の画質は圧縮によって劣化する

空に筋が入っているのがブロックノイズです
空に筋が入っているのがブロックノイズです
JPEG画像は、ファイルサイズの割には画質の低下が小さいのが特徴ですが、それでも画質の低下がないわけではありません。
JPEGでは、画像を固定サイズ(8×8画素)のブロックに分割し、ブロック単位で、離散コサイン変換(DCT: Discrete Cosine Transform)を用いて、空間領域から周波数領域へ変換します。この変換自体では情報量は削減されません。
変換されたデータは、量子化によって情報量を落としてから、ハフマン符号によるエントロピー符号化がなされ圧縮が行われます。エントロピー符号化は、データの生起確率の高低に応じて異なる長さの符号を割り当てることで圧縮を行う方法です。
まあ、わかりやすく言えば、ブロックごとにデータを間引きしているわけです。
JPEGではこのようにブロック単位で変換を行うため、圧縮率を上げるとブロックの境界にブロックノイズが生じます。このブロックノイズとは、デジタル映像圧縮を行った映像において画像の一部領域がモザイク状に見える現象を指します。
このノイズは、模様やエッジのある部分よりも、グラデーションなどのっぺりした画像で特に目立ちます。
アイトラムのあちこちにモスキートノイズが見られます
アイトラムのあちこちにモスキートノイズが見られます
また、周波数変換においては、低周波成分に画像のエネルギーが集中するため、高周波成分のエネルギーは小さくなり、このため量子化を行うと高周波成分はゼロに落ち、無くなってしまいます。その場合、画像の急峻な変化を十分に表現できないため、エッジ周辺ではモスキートノイズと呼ばれるノイズが生じてしまいます。とくに赤には弱く、小さくすると赤の部分でノイズが発生しやすくなります。
このことから、あまり圧縮率を上げると画質の低下が問題になるので、撮影時の設定では圧縮率は極力上げないようにしなければいけないことになります。
つまり自分のデジカメの設定で画像の品質にFineとNormalという設定があれば、Fineにしないと画質の低下が起こることになります。Normalに設定すると撮影枚数は多く撮れるのですが、画質を重視したいときは考えものということになります。
さらにもう一つの問題点は、これらのノイズが撮影時ばかりでなく画像編集ソフトによる加工時にも圧縮率を高く設定することにより、同様の問題が発生するという点にあります。これは保存するときはもちろんのこと画像に露出補正などの修正をかけるときにも画質の低下が起こることがあるので、あまりやたらに補正をかけるのも考えものということになります。特に写真に印字したいデータに関しては、JPEGの圧縮方式は非可逆圧縮であることを念頭に慎重に扱わないといけないことになります。

3.RAW画像は画質の劣化がありません
未編集の画像ですが露出オーバーになっています
未編集の画像ですが露出オーバーになっています
1/50s F5.6 EV=0.67 f=55.00mm ISO100
さて、一部のハイエンドデジカメやデジタル一眼レフで使用可能なRAW画像はどうなのか。
RAW画像(ローがぞう)は、デジタルカメラなどにおける現像されていない画像データのことです。英語でRawは「生」「未加工」を意味します。
デジタルカメラに搭載されている単板式カラーCCD・CMOSイメージセンサでは各画素が単色の色情報しか持ちません。このためデジタルカメラは撮影時に各画素に対してその周辺画素から足りない色情報を集め与えることで色情報を補完し、フルカラー画像を作り出す「デモザイク」(de-mosaic)処理を行っています。さらにデジタルカメラでは画像エンジンにより、デモザイクに並行して色や明るさのトーン等を自動レタッチする画像処理を行い、完成した画像をJPEGやTIFFなどの汎用画像フォーマットで保存しています。
しかし、これらデモザイクや自動レタッチ処理の精度は画像エンジンの性能に依存し、完成画像の画質に大きな影響を及ぼします。そのため各メーカーは、画像エンジンの性能を競うことで差別化を図る傾向が強くなりました。しかしここで問題点がいくつか存在します。
まず一つには、デモザイク後はホワイトバランスなどが固定されてしまうため容易に修正ができません。
また、最終保存に使われるJPEGフォーマットは前述するように非可逆圧縮なので、元データと比較すると原理的に画質劣化が避けられません。さらに、通常の画像フォーマットのビット深度は通常各色8ビット(合計24ビット)しかないため、通常12ビットの精度があるイメージセンサから受け取った情報を大幅に切り捨てるほかなく、撮影後の露出(画像の明暗や輝度)調整が困難となります。
RAWで撮影した編集済みの画像です
RAWで撮影した編集済みの画像です
つまり、通常の画像フォーマットで保存されたデータでは大胆なレタッチをしようとすればするほど画質低下が際立つことになります。このため、デジタル一眼レフカメラなど高機能カメラを中心に、デモザイク前の生データをそのままファイル保存する機能を持つものが登場し始めたわけです。この生データ画像を総称してRAWと呼んでいるわけです。
RAWデータは無圧縮か可逆圧縮であるためJPEGと比較すると非常に大きなファイルサイズになりますが、各画素に1つの色情報しか持たない特性上、TIFF(各色8ビット)と比較するとその半分以下で済みます。
RAW画像は専用の現像ソフトによって自由に調整・出力が可能で、この処理をフィルムになぞらえて「現像」と呼んでいます。RAW画像のデータフォーマットは現状では各メーカー・各機種によって異なり互換性がないため、現像にはそれに対応するソフトウェアを用意する必要があります。
通常はカメラメーカーがカメラを販売する際に自社製の現像ソフトウェアを添付しているほか、いくつかのソフトウェアメーカーからも各メーカーの機種に対応した現像ソフトウェアが発売されています。
現像ソフトウェアが採用するアルゴリズムによって現像された画像の画質傾向が異なるため、自分の好みや目的によって現像ソフトウェアを選び、使い分けているユーザーもいます。
デジタル一眼レフの雄、CANONではデジタル一眼レフカメラを購入する際にDigital Photo ProfessionalやZoomBrowser EXが添付されていて、これで現像できますので問題はありません。もちろん筆者もこれを使用して重宝しています。
2005年にはRAWフォーマットの互換性向上を目的としてアドビシステムズがDNGフォーマットを提唱していますが、カメラメーカー側の採用はまだ進んでいません。
マイクロソフトの「Windows Vista」以降では、WindowsフォトギャラリーでRAW画像が再生可能となりますが、更新プログラムやコーデックをインストールする必要があります。ただし編集はできないので、やはり専用ソフトが必要となります。

4.RAW画像で撮影してみましょう
RAW+JPEGに設定します
RAW+JPEGに設定します
筆者が持っているCanonのEOS Kiss Digital XやPanasonicのDMC-FZ30は、いずれもRAW画像での撮影が可能です。
あなたの持っているカメラがRAW画像での撮影が可能な機種であれば、RAW画像撮影の設定をしてみましょう。
この際に注意すべき点は、もしRAW+JPEGと両方の画像フォーマットで撮影できるのならその設定にしておいた方が無難ということでしょう。もっともRAW画像だけの設定にした方が撮影枚数は増えます。
CanonのEOS Kiss Digital Xは、RAW画像のみ、またはRAW+JPEGの設定が可能ですので、ここはRAW+JPEGに設定します。
CanonのEOS Kiss Digital Xの場合は、Menuボタンを押して、記録画質を選択し、Setボタンを押して、RAW画像撮影に設定します。
このあたりの設定は機種によって多少異なりますが、いずれにしてもRAW画像は同じ画像を撮影してもJPEG画像の3倍以上のファイルサイズとなります。
とは言え、TIFFファイルの半分以下なのです。
CanonのEOS Kiss Digital Xの場合は、2GBCFを使用した場合にJPEG画像のみの撮影だと516枚の撮影が可能なのに対して、RAW+JPEG設定だと111枚しか撮影できません。
ですから主にRAW画像の撮影を行うのであれば8GB程度の容量がないと満足な撮影ができないことになります。
ただし、8GBCFはたいへん高価なメディアとなります。
では、ここでJPEG画像とRAW画像のメリット・デメリットについてまとめてみましょう。

JPEG画像のメリット・デメリット
JPEGに設定されています
JPEGに設定されています
◆メリット
  • 一枚あたりのファイルサイズが小さいため、撮影枚数が多くなります。
  • 汎用性が高いため、特に専用ソフトがなくても、ほとんどのアプリケーションで見ることができます。
  • 現像を必要としません。そのまま利用できます。
◆デメリット
  • 不可逆圧縮のため、本来の画像に比べると画質が劣化します。
  • 画像加工などの処理をすると、さらに画質が劣化します。
  • 撮影時にホワイトバランスや露出設定が不正確だと、ソフトによる補正が難しくなります。
RAW画像のメリット・デメリット
RAW+JPEGに設定されています
RAW+JPEGに設定されています
◆メリット
  • 可逆圧縮のため、画質の劣化はありません。
  • 細部の描写もJPEG画像より優れていて、画質は極めて良好です。
  • 現像の際にホワイトバランスや露出をほぼ自由に修正できます。
  • 現像の際に画像の劣化はほとんどありません。
  • 色々な光源が混ざっている場合や、より繊細な描写が求められる場合も断然有利です。
◆デメリット
  • 一枚あたりのファイルサイズが大きく、撮影枚数が1/4以下になります。
  • RAW画像に対応した現像ソフトが必要で汎用性は低いと言えます。
  • さらに機種・メーカーによってRAW画像のフォーマットが異なり、互換性にも乏しいのです。
  • 実際に利用する際には現像が必要になり、JPEG画像に比べて手間がかかります。

これを見て気づくことは、RAW画像で撮影する場合、手間を惜しまなければ有利な点が多いということでしょう。
ただし、撮影枚数は少ないので大容量のメディアが必要となるのはやむを得ません。
しかしその点さえ注意すれば撮影時に多少の失敗は後でなんとでもなるという見方ができます。
ホワイトバランスや露出の補正も容易でその際の画質の劣化もなく、JPEG画像での撮影に比べてより精細な画像が撮影できるメリットは大きいと言えます。
逆にJPEG画像で撮影する場合は、ホワイトバランスや露出設定が重要でこれを正確に設定しないと良い絵にならないと言えます。しかしこれが実はこれが極めて難しい事だということはある程度デジカメで撮影した経験のある方はすぐに理解できることでしょう。
またJPEGの圧縮率を上げると画質はさらに低下するので、通常は最高画質に設定しておくべきでしょう。撮影枚数を増やしたい場合は、圧縮率を上げるのではなく大容量のメディアを使用するべきでしょう。