海上自衛隊 護衛艦「じんつう」寄港レポート |
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全長109m、最大幅13.4m、吃水3.8mは、DEとしては最大です |
2012年6月10日、富山新港に護衛艦「じんつう」が寄港し、一般公開されました。DE-230「じんつう」は、「あぶくま」型護衛艦の2番艦で平成2年2月28日に竣工しています。現在は、護衛艦隊第13護衛隊に所属しています。
「あぶくま」型護衛艦は、2,000トン級の乙型護衛艦(DE)としては、いやに重武装であり、ハープーンSSM、アスロックSUM、76mm砲、CIWS、短魚雷を主兵装にしていて、対艦・対潜能力に優れています。
ただし、対空防御は76mm砲とCIWSと近接防御程度しかないのが弱点といえば弱点でしょう。
これで最近登場した、ESSMかSeaRamでも搭載すれば良いのですが、なかなか予算が付かないのでしょう。
この「あぶくま」型の船型は全体的に「あさぎり」型に類似しており、遮浪甲板型に近い、全通上甲板を有する長船首楼型の採用やクリッパー型の艦首形状も「あさぎり」型と同様となっています。。
ただし本型では、上部構造は従来通りの形状であるものの、船体の外舷には約7度の傾斜がかけられており、海上自衛隊の護衛艦としては初めて、ステルス性を意識した設計が行われています。
また乗組員の居住環境向上をはかるため、従来の3段ベッドにかえて2段ベッドを採用した最初の護衛艦となっています。
これらの居住性向上策の結果、基準排水量は、当初計画の1,900トンから2,050トンに大型化しています。
スペースの関係上、対潜戦に重要な哨戒ヘリコプターの搭載能力はないものの、後部甲板は、HIFR(飛行中のヘリコプターに対する給油)やVERTREP(ヘリコプターによる補給)に対応できるアプローチスペースが備えられており、後檣には進入角水平指示灯を装備したほか、船体安定化のためフィンスタビライザー1組を装備していて、緊急の際に哨戒ヘリへの給油やヘリコプターからの補給も考慮されています。
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左後方からの全景 |
主機としては、「いしかり」型以来のCODOG方式が採用されていますが、従来のDEでは1組のCODOG機関の出力を減速機を介して両舷2軸に分配する方式であったのに対し、本型においては左右2軸に1組ずつを配する方式とされていて、従来型DEに比べると抗堪性に優れています。
また機種も刷新されており、高速機としては、あさぎり型と同じくロールス・ロイス・川崎 スペイSM1Aガスタービンエンジンが搭載されています。一方、巡航機としては、海上保安庁のみはし型巡視船に搭載されたのと同型の三菱S12U-MTK
4サイクル直列12気筒ディーゼルエンジンが搭載されています。機関配置もあさぎり型と同様で、前部の第1機械室に左舷軸機を、後部の第2機械室に右舷軸機を配置しています。ただしDDと異なり、中間区画は設定されておらず、抗堪性は最低限のものとなっているのは、やむを得ないか。
電源としては、出力1,000 kWのガスタービン主発電機1基、500 kWのディーゼル主発電機2基、300 kWのディーゼル非常発電機1基を搭載しています。ガスタービン主発電機の原動機は、第1世代DDと同じ川崎重工業M1A-02ガスタービンエンジンであり、また発電機の総出力2,300
kWは、DEとしてはかなりの大出力といえます。例えば「はつゆき」型は、主発電機の合計出力2,200 kW です。
武装としては、「いしかり」及びゆうばり型では重量軽減のため採用されなかったアスロック対潜ミサイルを搭載し、さらにちくご型には無かったハープーン艦対艦ミサイルを装備して、DEとしては初めてバランスの取れた対潜・対水上能力を備えています。
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艦尾の様子がよくわかります |
また、やはりDEとして初めて電子攻撃機能を付与されていて、これは「あさぎり」型と同等です。ただし戦闘指揮所は戦術情報処理装置をもたない在来型であり、搭載武器システムの全能発揮上の制約となっています。
また「ちくご」型と同様、アスロックの予備弾は搭載されていないので、搭載弾は、8連装発射機に装填された即応弾8発のみとなります。発射機は前後煙突間の中部甲板に設置されているが、これは「やまぐも」型以降、2000トン級以下の護衛艦にアスロックを搭載する場合の標準的な要領となっています。「やまぐも」型で採用された際、艦首尾方向で相当の射界の制約があることが既に判明していましたが、当時、攻撃の際には複数艦で敵潜を包囲し、各艦がソナー探知を維持しつつ円運動しながら攻撃するという「サーキュラー・アタック」と呼ばれる手法が採用されていたことから、用兵者の強い不満には至らなかったとのことです。なおソナーとしては、アメリカ・レイセオン社の中周波ソナーであるDE-1167のライセンス生産によるOQS-8を船首装備として搭載しています。
日本近海での使用を前提としているため、対空兵装は、前甲板の76ミリ速射砲と後甲板の高性能20mm機関砲(CIWS)のみであり、対空戦闘能力が弱いのはやむを得ないところです。2,000トンクラスのDEですから、あれもこれもと詰め込むのは無理があります。
76ミリ砲と艦橋の間にRAM近接防空ミサイルの搭載スペースが用意されていますが、RAM装備の改装は現在のところ予定にはなく、空地となっています。また同様に、簡易型の戦術情報処理装置や曳航ソナーも後日装備予定であるが、これもまだ計画が立っていません。いつになったら改装するのでしょうかね。
「じんつう」は2003年11月6日、舞鶴地方隊第24護衛隊に編入。
2005年6月17日、大湊地方隊第25護衛隊に編入、舞鶴から大湊に転籍。
2008年3月26日、自衛艦隊の大改編により第25護衛隊が第15護衛隊に改称され、護衛艦隊隷下に編成替え。
2010年7月23日から7月27日まで、ロシアのウラジオストク沖で日露捜索・救難共同訓練SAREXに「DDH-142 ひえい」と共に参加。
2011年6月1日、編成替えにより護衛艦隊第13護衛隊に編入、大湊から佐世保に転籍。
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モーターボートと並ぶとその巨大さがわかります |
ハープーンSSM、CIWSが後部に配置されています |
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アスロック8連装発射機 |
76mm砲の後部 |
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FCS-2、OPS-14、OPS-28Cが設置されています |
62口径76mm単装速射砲 |
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FCS-2は76mm砲の管制用です。 |
アスロックには予備弾がなかったりします |
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ハープーンとアスロックを両方持っているのはすごいですよ |
HOS-301短魚雷発射管 |
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68式324mm短魚雷は対潜兵器です |
CIWSは対空近接防御用兵器です |
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CIWSとハープーンSSM |
CIWSの砲身の様子がよくわかります |
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ハープーンSSM |
ハープーンSSM発射管の様子がよくわかります |
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HOS-301短魚雷発射管は両舷に配置されています |
アスロックは前後に撃てないのです |
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ハープーンSSM発射筒 |
マストに一等海佐の隊司令旗がありますね |
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ハープーンSSM |
艦橋、煙突、アスロック、煙突と構造物があります |
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マストには、2次元レーダーがあります |
しかしこれではアスロックを前後に撃てないよね |
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62口径76mm単装速射砲 |
航海用、対空用、射撃指揮レーダー |
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内火艇 |
アスロックランチャーはかなり大型なのです |
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内火艇 |
電子戦装置群 |
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CIWS |
レーダー群 |
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じんつう全景 |
パープーンSSMと短魚雷発射管 |
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護衛艦「じんつう」 性能諸元 |
基準排水量 |
2,000トン |
満載排水量 |
2,500トン |
全長 |
109m |
全幅 |
13.4m |
深さ |
7.8m |
吃水 |
3.8m |
機関 |
CODOG方式 (最大 27,000ps) |
川崎/ロールス・ロイススペイSM1A
ガスタービンエンジン(13,500ps) |
2基 |
三菱 S12U-MTK
ディーゼルエンジン(4,650PS) |
2基 |
推進器(260rpm) |
2軸 |
速力 |
最大27ノット |
航続距離 |
5,624海里 (18ノット巡航時) |
定員 |
120名 |
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武装 |
ハープーンSSM4連装発射筒 |
2基 |
62口径76ミリ単装速射砲 |
1基 |
74式アスロックSUM8連装発射機 |
1基 |
20mmファランクスCIWS |
1基 |
68式324mm3連装短魚雷発射管 |
2基 |
艦載機 |
VERTREP・HIFR可能 |
C4I |
MOFシステム+リンク 11 |
OYQ-7 戦術情報処理装置 |
81式射撃指揮装置2型22E 砲FCS |
1基 |
レーダー |
OPS-14C対空レーダー |
1基 |
OPS-20航海レーダー |
1基 |
OPS-28C 低空警戒/対水上 |
1基 |
ソナー |
OQS-8 |
1基 |
電子戦 |
NOLR-6B ESM+OLR-3 ジャミング |
対抗手段 |
Mk.137チャフ発射機 |
2基 |
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