弁護士報酬の敗訴者負担制度 
弁護士報酬の敗訴者負担制度とは、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度である。
同制度は、ドイツ、フランス、韓国、イングランド・ウェールズ(小額請求手続は除外)など各国で導入されており、各自負担が原則のアメリカにおいても、敗訴者負担が適用される場合も多い。
同制度については、2001年6月にとりまとめられた「司法制度改革審議会意見書」において提言された。それは、勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟をあきらめざるを得ない当事者に、その負担の軽減・公平化を図り訴訟を可能にする見地から、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟費用と認めて敗訴者に負担させる制度として導入が提言されている。
また、同意見書は、この「制度」を一律に導入するのではなく、不当に訴えの提起を萎縮させないために、導入しない訴訟の範囲や取り扱い方、敗訴者に負担させる場合の額の定め方等について検討すべきとしている。
この提言を踏まえ、現在、司法アクセス検討会において、検討が行われている。特に訴訟類型における導入の可否をめぐっては、行政訴訟、労働関係訴訟、個人の権利・利益の侵害に関する訴訟(医療過誤訴訟、消費者契約に関する訴訟、公害訴訟、薬害訴訟、環境訴訟等)、人事訴訟などの取り扱いについて議論されている。
この制度については、労働検討会では、訴訟へのアクセスを著しく阻害するために導入すべきではないという意見と、合理的で予測可能な額の弁護士費用を敗訴者に負担する制度であれば労働訴訟を対象外とすべきではないという意見が出され、行政訴訟検討会では、片面的敗訴者負担(原告が勝訴した場合に原告の弁護士費用を行政が負担し、被告が勝訴した場合は各自負担とする制度)にすべきという意見などが出されている。


【北陸工専労組の見解】
我々の見解としては、弁護士報酬の敗訴者負担制度は少なくとも労働問題に関する訴訟については導入すべきでないと考える。
もともと労働問題に関する訴訟の場合は、情報や証拠を押さえていることに関して圧倒的に使用者側が有利であり、労働者側が不利な状況でやむを得ず訴訟に踏み切っている場合が多く、決して対等の立場での訴訟ではない。
さらに資金面でも使用者側が圧倒的に有利な場合が多いわけであるから、これで弁護士報酬まで敗訴者負担となれば労働者側が訴訟へ踏み切ることができなくなるケースがあまりにも多くなることは目に見えている。
結論としては少なくとも労働訴訟に関して敗訴者負担制度の導入は認めることはできないという見解である。